土曜日, 8月 28, 2010

ベーム ブルックナー8番

 ベームのブルックナー交響曲第8番、終楽章。これは実に見事な演奏である。ブルックナーは当初、この交響曲を自信をもって書いた。しかし、ブルックナーを取り巻くシンパはこの作品について厳しい評価をした。7番は成功した。そのわかりやすさ、ボリューム感からみると、8番は晦渋であり、なんとも長い。ブルックナー使徒達は、8番での評価の低下を懼れて、いろいろとブルックナーに意見をした。ブルックナーは深刻に悩み自殺も考えたと言われる。悩みは続き、9番が未完に終わったのも、この桎梏からブルックナー自身が脱けられなかったからかも知れない。
 さて、ベームの演奏が見事なのは、ブルックナーの当初の「自信」に共感し、それを最大限、表現しようとしているからではないかと感じる。もちろん8番の名演はベームに限らない。このブログでも繰り返し取り上げてきたように、クナッパーツブッシュ、フルトヴェングラー、シューリヒト、クレンペラー、ヨッフム、チェリビダッケ、ヴァント、初期のカラヤンなど大家の名演が目白押しであり、どれが最も優れているかといった設問自体がナンセンスとすら思う。皆、このブルックナー最後の第4楽章に重要な意味を見いだし、魂魄の演奏をぶつけてきており火花が散るような割拠ぶりである。
 ベームの演奏は、そうしたなかにあってベームらしい「オーソドックス」さが売りかも知れない。テンポは一定、ダイナミズムの振幅は大きくとり、重厚かつノーミスの緻密さを誇る。しかし、それゆえに、「素材」の良さをもっとも素直に表出しているように思う。飽きがこない、何度も聴きたくなるしっかりとした構築力ある演奏。いまはこれに嵌っている。

(参考)ブルックナー交響曲第8番第4楽章
Finale. Feierlich, nicht schnell  ハ短調、2/2拍子。ソナタ形式。
 弦五部が前打音つきの4分音符を連打する中から、第1主題が金管のコラールと、トランペットのファンファーレで奏でられる。コラールのようなこの第1主題は、ブルックナー自身によれば「オルミュッツにおける皇帝陛下とツァーリの会見」を描いたものであり、「弦楽器はコサックの進軍、金管楽器は軍楽隊、トランペットは皇帝陛下とツァールが会見する時のファンファーレを示す」。

休止が置かれ、弦楽器を主体とする第2主題が変イ長調で始まる。その途中(第93小節以後)から、交響曲第7番で用いられたモチーフが取り入れられる。

第3主題は変ホ短調のジグザグとした旋律でこの主題には nicht gebunden (音をつながずに)という標語もある。

第3主題が休止で中断すると、159小節からホ長調のコラールが入る。すぐに第1主題の荒々しい行進曲「死の行進」が入る。この後ソナタ形式の展開部に入るが、ほとんど第3主題と第1主題の交替で進む。

再現部は第437小節から始まり、第2主題は第547小節から、第3主題がハ短調で再現される。これは短く、すぐに第1楽章の第1主題が第617小節から全合奏で再現される。再び第3主題のリズムと交代しながら、コーダへと移行する。

コーダは第647小節から始まる。第1・第2ヴァイオリンが上昇音型を始め、テノールチューバが荘重さを強める。まず最初に、第679小節からホルンによって第2楽章のスケルツォ主題が戻ってくる。やがてハ長調で、全4楽章の4つの主題の音形が重ね合わされる。第1楽章の主題はファゴット、第3・第4ホルン、トロンボーン、ヴィオラ、コントラバス、バス・チューバが、第2楽章の主題はフルート・クラリネット・第1トランペット、第3楽章の主題はヴァイオリンと第1・第2ホルンが、そして第4楽章の主題要素は第1楽章のものと織り合わされて、全曲を力強く締めくくる。これが「闇に対する光の完全な勝利」と称賛されるゆえんである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC8%E7%95%AA_(%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%8A%E3%83%BC)#.E7.AC.AC4.E6.A5.BD.E7.AB.A0

土曜日, 8月 21, 2010

クラシック音楽 聴きはじめ 12 ムラヴィンスキー

 
レニングラード・フィルは、日本にEXPO’70で来演したが、残念ながらこの時はヤンソンスの代演となった。しかし、それですら衝撃的で言葉を失った鮮烈な記憶がある。オケのメンバーはステージ上、誰も無駄話などしない。皆がソリストのような緊張感にあふれ、彼らの合奏は、よく訓練された軍隊の一糸乱れぬ閲兵式を彷彿とさせるものであった。そして、数年後、今後はムラヴィンスキーご本人で、さらに強烈なライヴ体験を味わった。 

ムラヴィンスキーは旧ソビエト連邦時代、全ソビエト指揮者コンクールで優勝、直ちに当時同国最高のレニングラード・フィル(現在のサンクトペテルブルク)の常任となる。1938年、時に35才の俊英であった。  
本盤所収の録音は、4番(1960年9月14~15日、ロンドン、ウェンブリー・タウンホール)、5番(同年11月7~9日、ウィーン、ムジークフェラインザール)、6番(同年11月9~10日、5番と同じ)であり、この「幻の」指揮者とオケの実質、西欧デビュー盤である。 これぞチャイコフスキー本国の正統的な解釈の演奏というのが当時のふれこみであったろうが、実際は、そんな生易しいものではなく、冷戦時代の旧ソ連邦の実力を強烈に印象づける最高度の名演である。  
十八番の名演といった表面的なことでなく、この時代、このメンバーでしかなしえない、極度の緊張感と強力な合奏力を背景とした、比類なきチャイコフスキー演奏といってよいだろう。4、5、6番ともに通底する一貫した解釈と各番の性格の違いの明確な浮き彫りにこそ、本盤の特色がある。  録音は半世紀前であり、いまのレヴェルでは物足りないだろうが、それを上回る往時の覇気がある。歴史的名盤である。


日曜日, 8月 08, 2010

ブルックナー メモ書き

http://www.hmv.co.jp/product/detail/217761

 shokkouブログではユニーク・ジャケットの<拾遺集>を取り上げました。ブルックナーのCDジャケットは、作曲家の肖像、教会など地味なものが多く、ハッとする、あまり目をひくものがないのですが、ちょっと茶目っ気の滲むものもあり、楽しめると思います。
http://blog.livedoor.jp/shokkou/archives/1834533.html

 上記の「女性入り」はブルックナー系では珍しいのですが、これはジャケットではなく演奏そのものがユニークなので掲載しました。

 ブルックナー・ブログは「夏バージョン」ということで、<自然系>のジャケットを並べてみました。虹のかけ橋も、夏にふさわしいのでは・・・。どうぞあわせてご覧下さい。
 さて、最近は・・・。alneoにベームを入れて、携帯して聴いています。

ベーム→
http://shokkou.spaces.live.com/blog/cns!9E9FE7463122BF4E!1305.entry?&_c02_owner=1

<自然系>
http://shokkou.spaces.live.com/default.aspx?&_c02_owner=1&wa=wsignin1.0&sa=39283556


【HMV レビュー】 (以下は引用)
ブルックナー:交響曲第7番 室内アンサンブル版  リノス・アンサンブル

 1999年デジタル録音。シェーンベルクがウィーンで主宰した「私的室内楽協会」コンサートのための編曲リストの中に、ブルックナーの交響曲第7番が存在することは以前から知られていましたが、1921年夏の初演以降、取り上げられた記録はなぜかまったくなく、このCDに収められた演奏が80年ぶりの蘇演となるのは少し意外な気もします。
 交響曲第7番は、ブルックナーの交響作品の中では珍しく初演から成功し、当時から比較的ポピュラーな人気を獲得していたもので、ヨハン・シュトラウの編曲などで知られていた私的室内楽協会が、編曲の対象に選んだとしても不思議はありません。
 この室内楽版は、クラリネット、ホルン、ハーモニウム、ピアノ、弦楽四重奏、コントラバスの9人編成を採っています。編曲の実作業はシェーンベルク門下の3人が分担しておこなったとのこと。ハンス・アイスラーが第1楽章と第3楽章、エルヴィン・シュタインが第2楽章、カール・ランクルが第4楽章をそれぞれ担当していますが、音を聞く限りそれぞれ編曲者が違うという感じはあまりしません。おそらくスコアリングの綿密な打ち合わせが当事者間でおこなわれていたのでしょう。
 新ウィーン楽派の面々によるブルックナー観が、この編曲を通して見えてくるのは間違いありません。ブルックナーの作品はよく「オルガン的」と言われ、実際、オルガンによる演奏もリリースされているのですが、この編曲ではむしろその「オルガン臭」が排除されているのが印象的です。ハーモニウムやピアノも、足りない声部の単なる補強ではなく、音色パレット上の一構成要素として作用し、色彩の変化が元のオーケストラ版よりも強くなっているのがポイントとなっています。
 第7番はブルックナーの交響曲の中では最も親しみやすい旋律美を持つ作品ですが、前半2楽章の重さに較べ、後半2楽章、というよりも第4楽章がフル・オーケストラで聴くとアンバランスなほど軽い感じがしていたことも確か。が、このヴァージョンで接するとそうした問題が解消され、一貫したムードが保たれているように聴こえるのが面白いところです。
 室内楽版ならではの自発的アンサンブルや、自由でのびやかな歌いまわしが楽しめるのもこのヴァージョンの魅力のひとつ。
 名手揃いのドイツのグループ、リノス・アンサンブルはその利点を最大限に生かしており、大オーケストラによる演奏ではマスクされてしまいがちな対旋律や経過句を明瞭かつ立体的に響かせることに成功していて、作品の構造面への興味を抱かせる効果も十分といったところです。たいへん優れた編曲作品の登場と言えるでしょう。  

土曜日, 8月 07, 2010

CD時代の終焉!

 もはやCD価格は存在しなくなったともいえる時代であろうか。上記の25枚の全集などは、なお真っ当な?値段がついているほうだが、HMVでの安売りは尋常ではない。1枚100円程度のボックスセットがどんどんでており、単品で買うよりも破格に安いという現象が怒濤のように押し寄せている。
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