土曜日, 8月 18, 2012

マリア・カラスを聴く

Live Recordings
http://www.amazon.co.jp/Live-Recordings-Maria-Callas/dp/B0088618G8/ref=pd_sim_sbs_m_1

まずは、直近に書いた組み物のレビューから。


 12名の作曲家の30作品集。プッチーニとヴェルディは主要演目がこのセットでほぼすべて揃う(いかにカラスが短期間に驚異的な活動をしていたかの証左)。指揮者も大御所セラフィン(★で表示)でほぼ1/3、ほかの共演も豪華で、エーリヒ・クライバー、カラヤン、バーンスタイン、デ・サバータ、ジュリーニらが名を連ねる(なお、下記ではグイなど記載を省略したものもある)。 

 各曲別にはカラスにはメキシコ・ライブやコヴェント・ガーデンなど複数音源があり、どれを取るかはリスナーの好みもあろうし、『カルメン』やジョルダーノの作品などは入っていないが、余程のイタリアオペラ(ないしカラス)のファンでない限り、本セットのカヴァーで十分だろう。以下は簡単な演目リスト。ご参考まで。

<収録情報>

【ベッリーニ】 『ノルマ』全曲★(1954S)、『清教徒』全曲★(1953S)、『夢遊病の女』全曲/バーンスタイン(1955L

【ケルビーニ】 『メデア(メディア)』全曲/バーンスタイン(1953L

【ドニゼッティ】 『アンナ・ボレーナ』全曲(1957L)、歌劇『ランメルモールのルチア』全曲★(1953S

【グルック】 『アルチェステ』全曲/ジュリーニ(1954L)、『トーリードのイフィジェニー』全曲(1957L

【レオンカヴァッロ】 『道化師』全曲★(1954S

【マスカーニ】 『カヴァレリア・ルスティカーナ』全曲★(1953S) 

【ポンキエッリ】 『ジョコンダ』全曲(1959S

【プッチーニ】 『ボエーム』全曲(1956S)、歌劇『蝶々夫人』全曲/カラヤン(1955S)、『マノン・レスコー』全曲★(1957S)、『トスカ』全曲/サーバタ(1953S)、『トゥーランドット』全曲★(1957S

【ロッシーニ】 『アルミーダ』全曲★(1952L)、『セヴィリアの理髪師』全曲(1957S)、『イタリアのトルコ人』全曲(1954S

【スポンティーニ】 『ヴェスタの巫女』全曲(1954L

【ヴェルディ】 『アイーダ』全曲★(1955S)、『仮面舞踏会』全曲(1956S)、『運命の力』全曲(1954S)★、『マクベス』全曲/サーバタ(1952L)、『ナブッコ』全曲(1949L)、『リゴレット』全曲★(1955S)、『椿姫』/ジュリーニ全曲(1955L)、『トロヴァトーレ』全曲/カラヤン(1956S)、『シチリア島の夕べの祈り』全曲/エーリヒ・クライバー(1951L

【ワーグナー】 『パルジファル』全曲(イタリア語)(1950L

<摘要>S:セッション録音、L:ライブ録音、★はセラフィン指揮、/は他の特色ある指揮者を記載

ー ◆ - ◇ - ◆ - ◇ -


 今年の夏休みはマリア・カラスをずっと聴いていた。MP3ダウンロードの各盤にデータを記載することでずいぶんと整理ができた。いわゆる「カラス本」は数多く、ディスコグラフィが巻末に収められているものもあるが、やはり自分で整理してみないとわからないことが多い。カラス本にも数冊目を通したが、どれも大変な研究成果である。大いに啓発された。それだけ、このディーヴァがいまも多くのファンを魅了し、歴史的な音源のなかで密やかに、しかし堂々と「君臨」しているということだろう。以下は各音源の情報のほんの一部をランダムに・・・



Bellini: Norma


◆ベッリーニ:歌劇『ノルマ』全曲


 マリア・カラス(ノルマ)
 クルト・バウム(ポリオーネ)
 ジュリエッタ・シミオナート(アダルジーザ)
 ニコラ・モスコーナ(オロヴェーゾ)、他

 メキシコ・ベラス・アルテス劇場管弦楽団&合唱団
 グィード・ピッコ(指揮)

 録音時期:1950523
 録音場所:メキシコ
 録音方式:モノラル(ライヴ)


◆ベルリーニ:歌劇『ノルマ』全曲
 

 ノルマ:マリア・カラス
 アダルジーザ:エベ・スティニャーニ
 ポリオーネ:マリオ・フィリッペスキ
 オロヴェーゾ:ニコラ・ロッシ=レメーニ、他

 ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団
 トゥリオ・セラフィン(指揮)

 録音:1954年(モノラル)


 
◆ベッリーニ:歌劇『ノルマ』

 マリア・カラス(ノルマ)
 マリオ・デル・モナコ(ポリオーネ)
 ジュリエッタ・シミオナート(アダルジーザ)
 ニコラ・ザッカリア(オロヴェーゾ)
 ガブリエッラ・カルトゥラン(クロティルデ)
 ジュゼッペ・ザンピエーリ(フラーヴィオ)

 ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団
 アントニーノ・ヴォットー(指揮)

 録音:1955年12月7日(ライヴ、モノラル)

→『ノルマ』はこのほかにも数多くの音源がある。


Bellini: I puritani (1953)

◆ベルリーニ:歌劇『清教徒』(全曲)

 マリア・カラス(ソプラノ)
 ジュゼッペ・ディ・ステーファノ(テノール)
 ローランド・パネライ(バリトン)
 ニコラ・ロッシ=レメーニ(バス)
 アンジェロ・メルクリアーリ(テノール)
 カルロ・フォルティ(バス)
 アウローラ・カッテラーニ(ソプラノ)

 ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団
 トゥリオ・セラフィン(指揮)

 録音:1953年3月24、26、27、29-31日、4月1日、3日
 場所:ミラノ、聖エウフェーミア大聖堂)

→カラス26才の初のレコーディングは、1949年2月『清教徒』から「あなたの優しい声が」と『ノルマ』から「清き女神よ」であった。その意味では本演目はカラスのもっとも重要なレパートリーのひとつといえるだろう。


 
Vincenzo Bellini: La sonnambula

◆ベッリーニ:歌劇『夢遊病の女』全曲

 マリア・カラス(ソプラノ)
 フィオレンツァ・コソット(メゾ・ソプラノ)
 ニコラ・ザッカリア(バス)
 ニコラ・モンティ(テノール)
 ユージニア・ラッティ(ソプラノ)
 ジュゼッペ・モレーシ(バリトン)
 フランコ・リッチャルディ(テノール)、他

 ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団
 アントニーノ・ヴォットー(指揮)

 録音時期:1957年3月3-9日
 録音場所:ミラノ、聖エウフェミア大聖堂
 録音方式:モノラル(セッション)




Bellini: Il Pirata

◆ベッリーニ:歌劇『海賊』全曲

 マリア・カラス(イモージェネ)
 ピエール・ミランダ・フェッラーロ(グアルティエーロ)
 コンスタンティーノ・エゴ(エルネスト)
 チェスター・ワトソン(ゴッフレード)、他

 アメリカン・オペラ・ソサエティ管弦楽団&合唱団
 ニコラ・レッシーニョ(指揮)

 録音時期:1959年1月27日
 録音場所:ニューヨーク、カーネギー・ホール
 録音方式:モノラル(ライヴ)

→『海賊』はカラスのスカラ座との多くの共演のなかでの最後の演目となったものだが、その録音記録は現状、知られていない。本盤は、その後のカーネギー・ホールでのライヴ盤で唯一の全曲盤である。



Verdi: La traviata

◆ヴェルディ:歌劇『椿姫』

 マリア・カラス(ヴィオレッタ)
 ピエロ・カンポロンギ(ジョルジュ・ジェルモン)
 ジュゼッペ・ディ・ステファノ(アルフレード・ジェルモン)

 メキシコ・ベラスアルテス歌劇場管弦楽団、合唱団
 ウンベルト・ムニャーイ(指揮)

 録音時期:1952年6月3日
 録音方式:モノラル(ライヴ)


◆ヴェルディ:歌劇『椿姫』全曲

 マリア・カラス(S:ヴィオレッタ)
 チェーザレ・ヴァレッティ(T:アルフレード・ジェルモン)
 マリオ・ザナージ(Br:ジョルジョ・ジェルモン)
 マリー・コリアー(S:フローラ)
 リー・ロバーツ(Ms:アンニーナ)、他

 コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団&合唱団
 ニコラ・レッシーニョ(指揮)

 録音:1958年6月、コヴェント・ガーデン王立歌劇場(ライヴ、モノラル)



◆ヴェルディ:歌劇『椿姫』


Callas, Maria (Soprano),
Kraus, Alfredo (Tenor),
Sereni, Mario (Baritone),
Zanini, Laura (Mezzo Soprano),
de Castro, Maria Cristina (Soprano),
de Palma, Piero (Tenor),
Malta, Alvaro (Baritone),
Susca, Vito (Bass),
Maddalena, Alessandro (Bass),
Leitao, Manuel (Bass)

指揮者 : Ghione, Franco
演奏  : Lisbon San Carlos National Theater Chorus, Lisbon San Carlos National Theater Orchestra

録音場所: 03/27/1958, San Carlos Theater, Lisbon, Portugal [Live]

Verdi: La forza del destino (1954)


◆ヴェルディ:歌劇『運命の力』全曲

 レオノーラ:マリア・カラス
 ドン・アルヴァーロ:リチャード・タッカー
 ドン・カルロ:カルロ・タリアブエ
 グァルディアーノ神父:ニコラ・ロッシ=レメーニ
 フラ・メリトーネ:レナート・カペッキ
 プレツィオシッラ:エレナ・ニコライ、他

 ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団
 トゥリオ・セラフィン(指揮)

  録音時期:1954
 録音方式:モノラル(セッション)


Il Trovatore, Mexico, 1950

◆ヴェルディ:歌劇『トロヴァトーレ』全曲

Callas, Maria (Soprano),
Warren, Leonard (Baritone),
Simionato, Giulietta (Mezzo Soprano),
Baum, Kurt (Tenor),
Moscona, Nicola (Bass),
Sagarminaga, Carlos (Tenor)

指揮者 : Picco, Guido, Picco, Guido
演奏  : Mexico City Palacio de Bellas Artes Orchestra, Mexico City Palacio de Bellas Artes Chorus

録音場所: 06/20/1950, Teatro de Bellas Artes, Mexico City [Live]

→一般には1956年盤(カラヤン/ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団)が有名 Verdi: Le Trouvere

Verdi: Aida (1951)
◆ヴェルディ:歌劇『アイーダ』全曲

Callas, Maria (Soprano),
Del Monaco, Mario (Tenor),
Taddei, Giuseppe (Baritone),
Dominguez, Oralia (Mezzo Soprano),
Ruffino, Ignacio (Bass),
Silva, Roberto (Bass), Sagarminaga,
Carlos (Tenor), Rodriguez,
Rosita (Soprano)

指揮者 : de Fabritiis, Oliviero, de Fabritiis, Oliviero
演奏  : Mexico City Palacio de Bellas Artes Orchestra, Mexico City Palacio de Bellas Artes Chorus

録音場所: 07/03/1951, Mexico City, Mexico [Live]

→一般には1955年盤が名盤として有名 Aida - Verdi

◆ヴェルディ:歌劇『アイーダ』全曲

マリア・カラス(ソプラノ:アイーダ)
リチャード・タッカー(テノール:ラダメス)
フェドーラ・バルビエリ(メゾ・ソプラノ:アムネリス)
ティート・ゴッビ(バリトン:アモナスロ)
ニコラ・ザッカリア(バス:エジプト王)
ジュゼッペ・モデスティ(バス:ランフィス)、他
 
ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団(ノルベルト・モーラ合唱指揮)
トゥリオ・セラフィン(指揮)

録音時期:1955年8月10-12日、16-20日、23-24日
録音場所:ミラノ・スカラ座
録音方式:モノラル

Verdi: Rigoletto

◆ヴェルディ:歌劇『リゴレット』全曲

 ジルダ:マリア・カラス
 マントヴァ公爵:ジュゼッペ・ディ・ステーファノ
 リゴレット:ピエロ・カンポローニ、他

 メキシコ・ベラス・アルテス劇場管弦楽団&合唱団
 ウンベルト・ムニャーイ(指揮)

 録音時期:1952年6月17日
 録音場所:メキシコ、ベラス・アルテス劇場
 録音方式:モノラル(ライヴ)

→1955年のセッション録音盤 Verdi: Rigoletto (1955) もある。

◆ヴェルディ:歌劇『リゴレット』全曲

 ジルダ:マリア・カラス
 リゴレット:ティト・ゴッビ
 マントヴァ公爵:ジュゼッペ・ディ・ステーファノ
 スパラフチーレ:ニコラ・ザッカリア
 マッダレーナ:アドリアナ・ラッザリーニ
 ジョヴァンナ:ジュウゼ・ジェルビーノ
 モンテローネ伯爵:プリニオ・クラバッシ、他

 ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団(コーラス・マスター:ノルベルト・モーラ)
 トゥリオ・セラフィン(指揮)

 録音時期:1955年9月3-16日
 録音場所:ミラノ、スカラ座
 録音方式:モノラル(セッション)

 Callas: Verdi's Nabucco

◆ヴェルディ:歌劇『ナブッコ』

 マリア・カラス(アビガイッレ)
 ジーノ・ベキ(ナブッコ)
 ジーノ・シニムベルギ(イズマェーレ)
 ルチアーノ・ネローニ(ザッカーリア)

 ヴィットリオ・グイ(指揮)
 サン=カルロ劇場管弦楽団、合唱団

 録音時期:1949年12月20日
 録音方式:モノラル(ライヴ)

Giuseppe Verdi: Un Ballo In Maschera

◆ヴェルディ:歌劇『仮面舞踏会』全曲 

Callas, Maria (Soprano),
Di Stefano, Giuseppe (Tenor),
Gobbi,Tito (Baritone),
Barbieri, Fedora (Mezzo Soprano),
Ratti, Eugenia (Soprano),
Giordano,Ezio (Bass),
Maionica, Silvio (Bass),
Zaccaria, Nicola (Bass),
Ercolani, Renato (Tenor)

指揮者: Antonino, Votto, Antonino
演奏 : Milan Teatro alla Scala Chorus, Milan Teatro alla Scala Orchestra

録音場所: 09/1956, La Scala Theater, Milan, Italy [Studio]

◆ヴェルディ:歌劇『仮面舞踏会』全曲

 マリア・カラス(ソプラノ:アメリア)
 ジュゼッペ・ディ・ステーファノ(テノール:リッカルド)
 エットーレ・バスティアニーニ(バリトン:レナート)
 ジュリエッタ・シミオナート(アルト:ウルリカ)、他

 ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団
 ジャナンドレア・ガヴァッツェーニ(指揮)

 録音:1957年11月7日、ミラノ、スカラ座(ライヴ、モノラル)

Puccini: Tosca (1953)
◆プッチーニ:歌劇『トスカ』全曲

 マリア・カラス(トスカ)
 ジュゼッペ・ディ・ステーファノ(カヴァラドッシ)
 ピエロ・カンポロンギ(スカルピア)
 ジルベルト・チェルダ(アンジェロッティ)、他

 メキシコ・ベラスアルテス劇場管弦楽団&合唱団
 グィード・ピッコ(指揮)

 録音時期:1952年7月1日
 録音場所:ベラスアルテス劇場
 録音方式:モノラル(ライヴ)

→一般には1953年盤が決定的名演として有名 Tosca

 
◆プッチーニ:歌劇『トスカ』全曲

 フローリア・トスカ:マリア・カラス
 マリオ・カヴァラドッシ:ジュゼッペ・ディ・ステーファノ
 スカルピア:ティト・ゴッビ
 アンジェロッティ:フランコ・カラブレーゼ
 スポレッタ:アンジェロ・メルクリアーリ
 堂守:メルキオーレ・ルイゼ
 シャルローネ/看守:ダリオ・カゼッリ
 羊飼い:アルヴァーロ・コルドーヴァ
 ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団(コーラス・マスター:ヴィットーレ・ヴェネツィアーニ)
 ヴィクトール・デ・サーバタ(指揮)

 録音時期:1953年8月
 録音場所:ミラノ、スカラ座
 録音方式:モノラル(セッション)

→『トスカ』はこのほかにも数多くの音源がある。

Ponchielli: La Gioconda (1959)

◆ポンキエッリ:歌劇『ジョコンダ』全曲

 マリア・カラス
 フィオレンツァ・コッソット
 イレーネ・コンパネエズ
 イヴォ・ヴィンコ
 ピエル・ミランダ・フェッラーロ
 ピエロ・カップッチッリ、他

 ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団
 アントニーノ・ヴォットー(指揮)



Gaetano Donizetti: Lucia di Lammermoor

◆ドニゼッティ:歌劇『ランメルモールのルチア』全曲

マリア・カラス(S)
 ジュゼッペ・ディ・ステーファノ(T)
 ティート・ゴッビ(Br)
 ラファエル・アリエ(Bs)
 ヴァリアーノ・ナターリ(T)
 アンナ・マリア・カナーリ(Ms)
 ジーノ・サッリ(T)
 フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団&合唱団
 トゥリオ・セラフィン(指揮)
 録音:1953年、フィレンツェ(モノラル)

◆ドニゼッティ:歌劇『ランメルモールのルチア』全曲

 マリア・カラス(ルチア)
 ロランド・パネライ(エンリコ)
 エウジェニオ・フェルナンディ(エドガルド)
 ジュゼッペ・モデスティ(ライモンド)
 エルヴィラ・ガラッシ(アリーザ)
 ディノ・フォルミチーニ(アルトゥーロ)
 ヴァリアノ・ナタリ(ノルマンノ)

 RAIローマ管弦楽団&合唱団
 トゥリオ・セラフィン(指揮)

 録音:1957年6月26日

→マリア・カラスのランメルモールのルチアにはカラヤン指揮(録音:1955年9月29日) 
 Gaetano Donizetti: Lucia Di LammerMoorもある。

◆ドニゼッティ:歌劇『ランメルモールのルチア』全曲

 マリア・カラス(ソプラノ)
 ジュゼッペ・ディ・ステーファノ(テノール)
 ロランド・パネライ(バリトン)
 ニコラ・ザッカリア(バス)、他

 ミラノ・スカラ座合唱団
 ベルリンRIAS交響楽団
 ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)

 録音:1955年9月29日、ベルリン(ライヴ、モノラル)

Gaetano Donizetti: Anna Bolena

◆ドニゼッティ:歌劇『アンナ・ボレーナ』全曲

 マリア・カラス(アンナ・ボレーナ)
 ジャンニ・ライモンディ(リッカルド・ペルシー卿)
 ニコラ・ロッシ=レメーニ(エンリコ8世)
 ジュリエッタ・シミオナート(ジョアンナ・セイモー)、他

 ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団
 ジャナンドレア・ガヴァッツェーニ(指揮)

 録音時期:1957年4月14日
 録音場所:ミラノ、スカラ座
 録音方式:モノラル(ライヴ)


 

Donizetti: Poliuto

◆ドニゼッティ:歌劇 「ポリウート」 Poliuto

Callas, Maria (Soprano),
Corelli, Franco (Tenor),
Bastianini, Ettore (Baritone),
Zaccaria, Nicola (Bass),
Pelizzoni, Rinaldo (Tenor),
de Palma, Piero (Tenor),
Carbonari, Virgilio (Bass),
Morresi, Giuseppe (Bass Baritone)

指揮者: Votto, Antonino
演奏 : Milan Teatro alla Scala Orchestra, Milan Teatro alla Scala Chorus

録音場所: 12/07/1960, La Scala Theater, Milan, Italy [Live]



Rossini: Il barbiere di Siviglia


◆ロッシーニ:歌劇『セビリアの理髪師』全曲

 ロジーナ:マリア・カラス(ソプラノ)
 フィガロ:ティト・ゴッビ(バリトン)
 アルマヴィーヴァ伯爵:ルイジ・アルヴァ(テノール)
 バルトロ:フリッツ・オレンドルフ(バリトン)
 ドン・バジリオ:ニコラ・ザッカリア(バス)
 ベルタ:ガブリエッラ・カルトゥラン(ソプラノ)
 フィオレロ:マリオ・カーリン(バリトン)、他

 フィルハーモニア管弦楽団&合唱団(合唱指揮:ロベルト・ベナーリオ)
 アルチェオ・ガリエラ(指揮)

 録音:1957年(ステレオ)



Gioacchino Rossini: Armida

◆ロッシーニ:歌劇『アルミーダ』全曲

 マリア・カラス(アルミーダ)
 マリオ・フィリッペスキ(ジェルナンド&ウバルド)
 ジャンニ・ライモンディ(カルロ)
 フランチェスコ・アルバネセ(リナルド)、他

 フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団&合唱団
 トゥリオ・セラフィン(指揮)

 録音時期:1952年4月26日
 録音場所:フィレンツェ
 録音方式:モノラル(ライヴ)


Luigi Cherubini: Medea

◆ケルビーニ:歌劇『メディア』全曲

 マリア・カラス(メディア)
 ジョン・ヴィッカーズ(ジャゾーネ)
 ジョーン・カーライル(グラウチェ)
 ニコラ・ザッカリア(クレオンテ)
 フィオレンツァ・コッソット(ネリス)、他

 コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団&合唱団
 ニコラ・レッシーニョ(指揮)

 録音時期:1959年6月30日
 録音場所:ロンドン、コヴェント・ガーデン王立歌劇場
 録音方式:モノラル(ライヴ)

Christoph Willibald Gluck: Ifigenia in Tauride

◆グルック:歌劇『タウリスのイフィゲニア』全曲

 マリア・カラス(イフィゲニア)
 ディーノ・ドンディ(オレスト)
 フランチェスコ・アルバネーゼ(ピラード)
 フィオレンツァ・コッソット(デアーヌ)、他

 ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団
 ニーノ・サンツォーニョ(指揮)

 録音:1957年6月1日(ライヴ、モノラル)



Studio Recordings
http://www.amazon.co.jp/Studio-Recordings-Maria-Callas/dp/B0088617P0/ref=ntt_mus_ep_dpi_1

土曜日, 8月 11, 2012

ソニー フランスのボックス・セット Classique-La Discotheque Ideale

Classique-La Discotheque Ideale

 
 価格、内容からは大変な廉価盤選集。以下は作曲家別を中心とするチェック・リストを作成した。ただし、他のbox setですでになんどもリ・パッケージされているものもあり、また全体の基本コンセプト、統一感は希薄。一般には自分のコレクション上、重複覚悟で何点が新規の魅力的な「買い」かによっての判断となろう。

  小生は、VOL.1のヒルデガルト・フォン・ビンゲン作曲集/セクエンツィアー中世音楽アンサンブル(1994年)から聴く。この清浄な妙なる響きを聴いて、買って損なしと得心した。人それぞれ、お目当てを楽しんで探し、価格を考量のうえどうぞ!


<収録情報>(録音時点)

【ヴィヴァルディ】

・協奏曲集『四季』/ヴェニス・バロック・オーケストラ(1999年)

 イ・ムジチで「四季」を知って以来、どちらかというとしっかりとした合奏にこの曲の魅力を感じてきたが、ジュリアーノ・カルミニョーラとヴェニス・バロック・オーケストラのテイストはまったく別で、「軽みの美学」とでも表現すべきか、音はとても優しくて、テンポはあくまでも軽快かつ可変的。
  特色としては、即興的な雰囲気も感じさせる自由度が高く、各楽器の個性を思うさま前面にだしたような演奏である。ちょっと表情をつけすぎといった場面もあるけれど、全般に快速で一瞬たりともあきさせない。こうした「四季」もあるのだといった新鮮な印象。聴きおわったあとによき爽快感がある。
【ロッシーニ】

・アリアとデュエット集/カサロヴァ(メゾ・ソプラノ)(1999)

  ヴェッセリーナ ・ カサロヴァのロッシーニを聴く。非常に奥行きのあるメゾ・ソプラノで、「セヴィリアの理髪師」(チューリヒ歌劇場)、ロッシーニ:歌劇「チェネレントラ」、ロッシーニ : 歌劇「タンクレディ」全曲(いずれもミュンヘン放送管弦楽団)などの全曲録音でも知られる第一人者。  
 最近、ロッシーニの歌劇は世界的に再評価されており、この曲集でもその魅力のエッセンスは十分に伝わってくる。カサロヴァの表現力豊かでよく伸びる詠唱はバックで流しているだけでもなんとも心地よさを感じる。2曲所収の「アルジェのイタリア女」を聴いていると、地中海の輝く太陽のような曲筋を南ドイツの透明感あるオケの音色ととともにコロラトゥーラの歌姫は余裕をもって歌いきっている姿が連想できる。良き選集である。

【バッハ】

・ゴルトベルク変奏曲/グールド(1981)

・マタイ受難曲(ハイライト)/レオンハルト指揮(1989年)

・無伴奏チェロ組曲第1~3番/ヨーヨー・マ(19941997)

【 モーツァルト】

・レクィエム ニ短調K.626(バイヤー版)/アーノンクール指揮(2003年)

 フランツ・バイヤー(Franz Beyer)校訂版。この楽譜は1980年に出版されたが、アーノンクールははやくも翌年、この版による録音をウイーン・フィルと世に問うており、本盤はその後20余年をへた再録である。一般にバイヤー版のほうが、オーケストラの響きが純化され、その分独唱がクリアに前面にでるように思うが、それ以上に指揮者の個性如何というのがこの曲の最大の特色かも知れない。
  ぼくは、従来、求心力のあるべーム盤や同じバイヤー版ではバーンスタインの劇的な表現に惹かれてきたが、このアーノンクールの演奏も見事である。これはレクイエムらしいレクイエムであり、モーツアルト演奏の第一人者を自負するアーノンクールの解釈ー流麗さなどのシンフォニックな部分を削ぎ、厳格なレクイエムとしての演奏ーをめざしているように感じる。一聴に値する成果。

【ベートーヴェン】

・交響曲第5番『運命』、第7/バーンスタイン指揮(1964年、1958年)

【メンデルスゾーン】

・ピアノ三重奏曲第1番、第2/スターン他(1966年、1979年) 

【シューベルト】

・交響曲第9番『グレート』/ヴァント指揮(1995年)

 この曲は、凡庸な演奏だと、独活の大木のような感もあり退屈さを伴うが、見事な演奏だと見上げる大樹のごとく堂々とした威容をしめしそこにはビビッドな感動がある。ヴァントの演奏は後者の典型である。個々のフレーズを大事に扱い周到な意味づけを行い、過度な音量は排除しつつも、全体の構えは実に堅牢、かつ大きい。
 ブルックナーで幾多の名演を世におくりだしたヴァントは、シューベルトとブルックナーの近似性を感じていたかも知れない。ふと、ブルックナーを聴いているような錯覚におちいる部分もある。ベルリン・フィルの音色には磨かれた輝きがあり素晴らしい演奏である。

【ショパン】

・ワルツ第1~14番/ルービンシュタイン(1963年)

・ピアノ協奏曲第1(ピアノ六重奏版)/ルイサダ(ピアノ)(1998年)下記参照

【ブラームス】

・交響曲第1番、第3番/ワルター(1953年)

 最近のリマスター技術の飛躍的な進歩によって、古い演奏の良さが再評価される傾向にある。ワルターのブラームスもその一つであり、晩年のコロムビア響とのステレオ録音ブラームス交響曲全集よりも、剛毅、大胆なニューヨーク・フィルとのモノラル演奏Brahms: The Symphoniesを評価する向きも多い。
  1番と3番のカップリングだが、録音は3番(19531221,23日)、[2番(1228日)]、1番(1230日)と一気呵成に行われた。1958年に心臓発作で倒れる以前、高齢なるもなおエネルギッシュなワルターの元気な姿を彷彿とさせる記録である。
 それにしても、なんとも思い切りのよりブラームスであり、リズムの刻み方、メロディの明確なる彫琢、熱気あるオケの操舵とも実に魅力的である。このワルターの成果は、先行録音をよく研究していたカラヤン/ウイーン・フィルの両曲の名演Legendary Decca Recordingsの下敷きになっているように感じた。交互に比較するのも一興。

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・ヴァイオリン協奏曲/ハイフェッツ&ライナー(1955年)

【チャイコフスキー】

・ヴァイオリン協奏曲/ハイフェッツ&ライナー(1957年)

【ドヴォルザーク】

・交響曲第8番、第9番/セル(1958年、1959年)

・ピアノ五重奏曲/ルイサダ(ピアノ)(1998年)
 
まったく非本質的な話しながら、このジャケットはとてもかわっている。欧米人はふつうひとまえでは靴を脱がないマナーがあるともいわれるが、外の砂場?(たぶん)で6人の黒装束の男たちがはだしで立っている。腕組みしている者あり、ポケットに手を突っ込んでいる者あり。中央に立つルイサダの口元には微かな薄い笑いがあるように見えるが、これを取り囲むターリヒ四重奏団の面々はなぜか渋面ずらである。あえて、はだしを見せているのは「自然体の構え」を表現したいからかも知れない。

 ショパンよりもドヴォルザークにより感じるが、乗りのよいリラックスした雰囲気の演奏である。伸び伸びといかにも楽しそうな邂逅を感じさせる。また、ショパンのピアノ六重奏版の演奏も、いささかパセティックで大袈裟なオケの追走がない分、これはこれでピアノが強調され、すっきりしていて楽しめる。2曲ともに明るい感性がバックにあり、颯爽としている。仏頂面はジャケットだけのパロディかな?

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【ドビュッシー】

・管弦楽作品集/ミュンシュ(1956年、1962年)

ミュンシュのドビュッシーは最晩年のミュンシュ&パリ管/ドビュッシー:交響詩「海」 他 (Berlioz:Symphonie fantastique&Debussy:La Mer / Munch & Orchestre de Paris (14/11/1967)) があまりにも有名だが、慣れ親しんだボストン響を振った本盤の秀演も甲乙はつけがたいだろう。なによりも豊かな表情と高音部の伸びやかさに特色のあるボストン・サウンドはミュンシュが磨いたものであり、このフランスものの1枚はその到達点を示している。
 全般にテンポがはやく、曖昧さのない歯切れの良いサウンドで、しかもその質量は軽からず重からずの程よさ、ドビュッシーのきらきらと揺らめくような色彩感が幽玄郷にあるごとく示される。こうした至芸はミュンシュの独壇場ともいえるだろう。

【収録情報】は下記のとおり。

・ドビュッシー:交響詩『海』La Mer1956年)

・ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲Pr'lude ' l'Apr's-midi d'un faune1962年)

・ドビュッシー:交響組曲『春』Suite symphonique 'Printemps'1962年)

・ドビュッシー:夜想曲Nocturnesより(雲Nuages、祭りF'tes)(1962年)

・イベール:交響組曲『寄港地』Ports of Call1956年)

【ラヴェル】

・管弦楽作品集/ブーレーズ(1970年、1974年)

 ブーレーズの名盤(1974年の録音)。ただし、ベルリン・フィル盤ラヴェル:ボレロ、スペイン狂詩曲、他ありこれは旧録音である。
ラヴェルの音楽は、誇り高き本場フランスのオケで・・・といった先入主も(一部には)あるが、早くから米国などで受容された事実が示すように、本来、現代性、コスモポリタン性に富む。しかし、管弦楽曲に関する限り、超一流のオケであることは必須要件だろう。本盤のニューヨーク・フィルはその点では申し分のない技量である。
また、ラヴェルの魅力は、管と弦の<完全融合>のえもいわれぬ<愉悦感>にあると思うが、ブーレーズは実にブレンダー能力の高いシェフである。音量よりも特有の柔らかなリズムと研ぎ澄まされた絶妙な音質に耳を傾ける1枚だろう。

【ラフマニノフ】

・ピアノ・ソナタ第2/ホロヴィッツ(1980年)
・ピアノ協奏曲番3/ホロヴィッツ&オーマンディ(1978)
 ピアノ協奏曲第3番は、ラフマニノフ自身がオーマンディ/フィラデルフィア響をバックに録音しているラフマニノフ:自作自演~ピアノ協奏曲第2&3番。一方、同時代人として作曲家から篤い信頼をかちえていたホロヴィッツはライナー盤(1951年)とともに四半世紀をへて、このオーマンディ/ニューヨーク・フィル盤(1978年)を残している。これだけの事実で歴史的名盤の資格は十分すぎるものがある。
 その演奏には背筋にひびくような凄みがある。縦横に拡散し、さんざめくラフマニノフの華麗な音響とふと兆すやるせない哀調をこれほどまでに大きく、深く表現した演奏は稀有だろう。特に第3楽章、ライヴならではの異常なファナティックさは「鬼神、ここに在り」といった風情。 
一方、ピアノソナタ第2番はホロヴィッツが伝道師的な役割を果たして、スタンダードにした伝説の曲。はてしなきパッションと強靭な迫力に文字通り圧倒される。

<<その他>>

・カバリエのドニゼッティ、ベッリーニ:アリア集(1965年)

・ジョン・ウィリアムズのアランフェス協奏曲他(1967年、1974年)

・小澤征爾のカルミナ・ブラーナ(1969年)

19691117日、ボストン/シンフォニー・ホールでの録音。小澤征爾、得意の演目であるとともに、本曲での代表的な名演である。約20年後のベルリン・フィルとの成果オルフ:カルミナ・ブラーナもあるが、ボストン盤の潔癖な表現にも独立した価値がある。
一般に、ボストン盤では小澤、若き日の熱情がPRされるが、実は徹底したスコア研究の成果を「楷書」でしめしたような周到な棒さばきで、一部の隙もなく構成される一方、爆発的な迫力も管弦楽の均衡を崩さずに見事に表現している。
 カルミナ・ブラーナは、宗教曲ではなく、世俗的な欲望をおおらかに歌ったものだが、ここでの小澤の表現は、むしろ節度をもった、品格ある音楽的なアプローチを感じさせ、この曲の格調の高さを聴衆に訴えているように思う。

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・クライバーのニューイヤー・コンサート(抜粋)(1989年)

・ヒルデガルト・フォン・ビンゲン作曲集/セクエンツィアー中世音楽アンサンブル(1994年)

・ローラン・コルシアのラヴェル/ツィガーヌ他(1999年)

リヒテルの魅力

Icon: Sviatoslav Richter


 14枚の構成は、ピアノソロ、協奏曲、ヴァイオリン・ソナタ等からなるスーパー廉価盤集。ソロ曲はいずれもリヒテル十八番で定評あるもの。以下では協奏曲集を中心にコメント。 

 ここまで絢爛にして豪華、聞き比べができる第一級のピアノ協奏曲集はちょっと考えられない。バックを務める指揮者群の顔ぶれは、カルロス・クライバーはじめ、ムーティ、カラヤン、マゼール、マタチッチである。とくにリヒテルvsマタチッチの共演は特異の名演。リヒテルのハンマーのような屈強さ、マタチッチの無骨といった表面的な印象を超えて、迫力満点のグリーグでは思わぬ抒情性にはっと心がぐらつく。その一方、たっぷりの哀愁のシューマンの底にはとぐろを巻く強い情念が疼く。しかし、こうした意表を衝くスリリングさの先に、どちらも、とびっきりに、こころを籠めた真の「音楽」を感じる。多くのヴァイオリン・ソナタはいずれも若き天才といわれたオレグ・カガン(199043才で逝去)との共演。リヒテル・ファミリーといわれた2人の演奏の呼吸は見事にぴたりと合っている。文句なく推薦します。 

<収録情報>

【CD1】ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第1番、第7番(1976年)、第17番ニ短調(1961年)、アンダンテ・ファヴォリ(1977年)

【CD2】シューベルト:ピアノ・ソナタイ長調D.664、幻想曲ハ長調D.760「さすらい人」(バドゥラ-スコダ編、1963年)、シューマン:幻想曲ハ長調Op.171961年)

【CD3】シューマン:蝶々Op.2、ピアノ・ソナタ第2番ト短調Op.22、ウィーンの謝肉祭の道化Op.261962年)

【CD4】ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調Op.24「春」、※(1976年)、シューベルト:ピアノ五重奏曲イ長調D.667「ます」ボロディン四重奏団、ゲオルグ・ヘルトナーゲル(コントラバス、1980年)

【CD5】モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタニ長調K.306、同変ロ長調K.378、同変ロ長調K.372、アンダンテとアレグレットハ長調K.404/385d、※(1974年)

【CD6~7】ヘンデル:クラヴィーア組曲第2番、第3番、第5番、第8番、第9番、第12番、第14番、第16番(1979年)

【CD8】ブラームス:マゲローネのロマンスOp.33(全15曲)、ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン、1970年)

【CD9】モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番変ホ長調K.4821979年)、ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番ハ短調Op.371977年)、ムーティ(指揮)フィルハーモニー

【CD10】ベートーヴェン:三重協奏曲ハ長調Op.56、オイストラフ(ヴァイオリン)、ロストロポーヴィチ(チェロ)、カラヤン(指揮)ベルリン・フィル(1969年)、

・同:ヴァイオリン・ソナタ第4番イ短調Op.23、※(1976年)

【CD11】ブラームス:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調Op.83、マゼール(指揮)パリ管弦楽団(1969年)、モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタト長調K.379、※(1974年)

【CD12】ドヴォルザーク:ピアノ協奏曲ト短調Op.33、クライバー(指揮)バイエルン国立管弦楽団(1976年)、バルトーク:ピアノ協奏曲第2Sz.83、マゼール(指揮)パリ管弦楽団(1969年)

【CD13】グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調Op.16、シューマン:ピアノ協奏曲イ短調Op.54、マタチッチ(指揮)モンテ・カルロ国立歌劇場管弦楽団(1974年)

【CD14】プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第5番ト長調Op.55、マゼール(指揮)ロンドン交響楽団(1970年)、ベルク:室内協奏曲※、ユーリ・ニコライエフスキー(指揮)モスクワ音楽院器楽アンサンブル(1977年)

http://www.amazon.co.jp/Icon-Sviatoslav-Richter/dp/B001B1R1HC/ref=sr_1_135?s=music&ie=UTF8&qid=1344706994&sr=1-135

Piano Concertos



 ドヴォルザーク/ピアノ協奏曲は、19766月にクライバー/バイエルン国立管弦楽団との共演。一方、グリーグとシューマンは、197411月にマタチッチ/モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団バックでの収録。どちらも個性的な指揮者とピアニストの邂逅で話題になったもの。
 ドヴォルザークはクライバー・サウンドが冴え、リヒテルの燦然たる音を、どこまでも豊かに包摂するような技芸をみせる。だが、聴き物はマタチッチとの(日本的な表現で恐縮だが・・・)いわば「四つ相撲」的な2曲。 

 一般的なコメント―リヒテルの「ハンマーのような屈強さ」、マタチッチの「野太い無骨さ」、といった先入主をもって臨むと意外な印象をうける。迫力満点のグルーグで、思わぬ深い抒情の部分ではっと、リスナーの感性がぐらつく。かたや、たっぷりの哀愁のシューマンの底に、実はとぐろを巻く強い情念が折りに噴き出す。一筋縄ではいかない2人の巨匠の複雑な展開と表現ぶり。だからこそ面白いのだが、聴き終えた感慨はシンプル。リヒテルの、とびっきりに、こころを籠めた演奏に満足することだろう。3人の「巨匠時代」の貴重なモニュメント的好セット。

ショパン ピアノ曲集はどれに?

Chopin Complete Edition


 17枚CDの全集。演奏の質は高くアシュケナージ、ポリーニ、ツィマーマンらいずれも推薦盤に名を連ねたもの。普段はなかなか聴けない曲も収録されており、系統的にショパンを聴きたい向きには好適。ただしショパンはディープな好事家も多いので、各曲演奏に拘りもあろう。極力、同一の演奏者で揃えたいという方には別のチョイスもある(たとえばルビンシュタインやフランソワなどの豊潤な演奏をシリーズで聴くのも一考)。以下に本ボックスのラインナップを掲げてみた。参考まで!

【収録概要 西暦は録音年月】

CD1】ピアノ協奏曲第1番、第2番 ツィマーマン(ピアノ、指揮)ポーランド祝祭管弦楽団 19998

CD2】 モーツァルトの歌劇《ドン・ジョヴァンニ》の「お手をどうぞ」による変奏曲 ポーランド民謡の主題による幻想曲  ロンド《クラコヴィアク》  Cアンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ アラウ(p) ロンドン・フィル 指揮:インバル 19706月、19726

CD3】 バラード全集(4曲)  幻想曲ヘ短調 ツィマーマン(p19877月   3つの新しい練習曲  葬送行進曲  3つのエコセーズ アナトール・ウゴルスキ(ピアノ)19993

CD4】 練習曲集作品1012曲)  練習曲集作品2512曲)  舟歌嬰ヘ長調作品60  子守歌変ニ長調作品57 ポリーニ(p19721月&5月、19909

CD5CD6】マズルカ全集 アシュケナージ(p197685

CD7CD8】夜想曲全集マリア・ジョアン・ピリス(p19951月~966

CD9】ポロネーズ全集Vol.1(第17番)ポリーニ(p197511

CD10】 アンダンテ・スピアナート ト長調と華麗なる大ポロネーズ アルゲリッチ(ピアノ)19741月、7月   ポロネーズ全集Vol.2(第816番)  2つのブーレ  ギャロップ・マルキ変イ長調遺作  アルバムの一葉ホ長調遺作  カンタービレ変ロ長調遺作  フーガ イ短調遺作  ラルゴ 変ホ長調遺作 ウゴルスキ(p19993

CD11】 前奏曲全集(26曲)ラファウ・ブレハッチ(p20077月 即興曲全集(4曲)ユンディ・リ(p20046月、20019

CD12】 スケルツォ全集(4曲)ポリーニ(ピアノ)19909月   ロンドハ短調作品1  ロンド ヘ長調作品5《マズルカ風》 リーリャ・ジルベルシュテイン(p19993月   ロンド変ホ長調作品16ミハイル・プレトニョフ(p199611月  2台のピアノのためのロンド ハ長調作品73 クルト・バウアー、ハイディ・ブング(p195845

CD13】ピアノ・ソナタ全集  第1番ハ短調作品4 ジルベルシュテイン(p19993月   第2番変ロ短調作品35《葬送》  第3番ロ短調作品58 ポリーニ(p19849

CD14】 ドイツ民謡《スイスの少年》による序奏と変奏曲ホ長調遺作  《パガニーニの想い出》変奏曲イ長調遺作  華麗なる変奏曲変ロ長調作品12  4手のための変奏曲ニ長調遺作  ヘクサメロン変奏曲ホ長調  演奏会用アレグロ イ長調作品46  ボレロ ハ長調作品19  タランテラ変イ長調作品43 アシュケナージ(p)ヴォフカ・アシュケナージ(p197883

CD15】ワルツ全集(19曲)アシュケナージ(p197584

CD16】室内楽作品集  ピアノ三重奏曲ト短調作品8 ボサール・トリオ 19708月 序奏と華麗なるポロネーズ作品3 ロストロポーヴィチ(チェロ)アルゲリッチ(p19803月 マイアベーアの歌劇《悪魔のロベール》の主題による大二重奏曲ホ長調 アンナー・ビルスマ(チェロ)ランバート・オーキス(p)19931月   チェロ・ソナタ作品65 ロストロポーヴィチ(チェロ)アルゲリッチ(p19803

CD17】歌曲集  《ポーランドの歌》作品74遺作(17曲)  魅惑  ドゥムカ エルジビェータ・シュミトカ(ソプラノ)マルコム・マルティノー(p19991


Chopin Collection

 近年、ショパンに関しても、ルビンシュタインに限らずフランソワなど、リヴァイバル盤がふたたび注目されている。その理由は、本全集を聴き直してみて、改めてその薫りたつような品位にあると感じる。真似のできないこの時代特有の演奏家の品位と作曲家に対する熱情が、本全集の底流にも溢れている。演奏技術の高度化では「後世恐るべし」だが、落ち着いて、演奏家の深い解釈にじっくりと耳を傾けるなら、本全集の価値はいまも決して減じてはいない。なにより、これが「全身全霊の1枚」といった極度の集中力が演奏家にも録音技師にも、強くあった時代だからかも知れない。ショパン演奏には特に好みがわかれ「煩型」も多いからそこは割り引いても、この価格なら★4以上の値打ちは十分あるだろう。


L'integrale


サンソン・フランソワ(1924-1970年)の文字通りの集大成である。1970年代、レコードを集中して聴きはじめた頃、フランソワはすでに活動を終えており当初は親近感がなかった。その後、ショパンを聴くようになって、ルビンシュタインとフランソワの演奏には深く心動かされた。当時、ショパンではこの2人が、一方ドイツ系ではバックハウスとケンプがそれぞれ2大巨匠というのが通り相場だった。 

 神童中の神童であり、19才でロン・ティボー国際音楽祭で優勝するが、これでもあまりに遅すぎるデビューと言われた天才肌のピアニスト。46才での逝去は普通なら「これから円熟期」と惜しまれるところだが、この人に限っては、23才のSP録音から20年にわたってすでに下記の膨大なディスコグラフィを残していたのだから驚愕を禁じえない。抜群のテクニックを軽く超越したような奔放、華麗な演奏スタイルはこの時代でしか聴けない大家の風貌である。本価格とボリュームなら文句の言いようのないボックスセット。

<収録内容>

CD1~14:ショパン、CD15~16:ラヴェル、CD17:ラヴェル、フランク、CD18:フランク、フォーレ、CD19:フォーレ、ドビュッシー、CD20~22:ドビュッシー他、CD23:フランソワ、ヒンデミット、CD24: J.S.バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、CD25:ベートーヴェン、シューマン、CD26:シューマン、リスト、CD27:メンデルスゾーン、リスト、CD28:リスト、CD29:プロコフィエフ、バルトーク、スクリャービン、CD30:プロコフィエフ、CD31:(SP録音)ショパン、ラヴェル他、CD32:ブザンソン音楽祭(19569月)、モントルー音楽祭(1957917日)他、CD33:ブザンソン音楽祭(1958912日)他、CD34:日本来日公演(東京、1956126日、196758-9日)、CD35~36:サル・プレイエルリサイタル(196411720日)