クラシック音楽を聴きはじめた頃、その有力な媒体はNHK-FM放送であった。レコードは高くて、そうそう手が出なかったから、なによりもFMからのソースが有り難かった。そこで、はじめに集中して耳を傾けたのが、写真のメンゲルベルクである。
1940年代の録音で、ブラームスの第1番、ベートーヴェンの第5,6番などをアムステルダム・コンセルトヘボウで聴いた。いわゆる名曲シリーズでは、ドボルザークの第9番はアンチェル/チェコ・フィル、チャイコフスキー第3番「ポーランド」はマルケヴィッチ/ロンドン交響楽団、ビゼーの交響曲は、ミュンシュ/フランス国立SO、ブラームスの第3番はワルター/ニューヨーク・フィル、シューベルトの第9番はベーム/ベルリン・フィルといったライン・ナップだった。音は良くなかったが、いまからみても贅沢な演奏であったと思う。
交響曲ばかりを聴いていたわけではない。ピアノは、バックハウス、ケンプ、ルビンシュタインなどを好んで聴いた。ヴァイオリンはシェリングの全盛時代だったが、オイストラフ、メニューヒンもよく流れていた。イ・ムジチの「四季」は、シェフがアーヨからミケルッチにかわって演奏スタイルも理知的になっていた。フルートでも金色のランパルか銀色のニコレか・・・といったライヴァル的な視点も楽しかった。
ワーグナーの楽劇も、いまよりもはるかに注目されていた。年一度のバイロイト特集は、憧れをもって集中して聴いた。また、ザルツブルク音楽祭やウィーン芸術週間なども、通常のレーベルを超えた演奏者の組み合わせにチェックは欠かせなかった時代である。