1984年3月7日,NHKホールでのコンサート・ライヴ。全曲74分13秒
有名なN響とのライヴである。本当に久しぶりに聴く。まずもって驚かされるのはN響の緊張感あふれる応対で、第1楽章から管楽器も実力を思いっきり発揮すべく、奮戦の気構えで臨場している様が伝わってくる。
マタチッチの音楽づくりは、いつもどおり隈取りくっきり、リズムも小刻み、よく切れる包丁でザクザクと刃をいれていく印象ながら、その切り口はけっして大雑把ではない。否、細部に神経の行き届いた、それでいて生き生きとした溌剌さを失わせない統率力こそその持ち味だろう。名シェフといった趣である。 かつ、ハイテンションの気迫が最後まで衰えない。演奏がすすむほど熱気が籠もってくる感じで、こういうライブに居合わせたら、聴衆は徐々に「金縛り」の状況になっても不思議はない。
全般にテンポは早く、第3楽章も一気に駆け抜ける爽快感があり、そのため弦、木管の叙情性あふれる表情は抑えられているように感じる。