ブラームス:交響曲全集
ベーム&ウィーン・フィル
空前の反響を呼んだというベーム&ウィーン・フィル初来日公演の直後、1975年の5~6月にウィーンのムジークフェラインザールでセッション・レコーディングされたもので、日本でも年内に緊急発売されて1976年度レコード・アカデミー賞を受けるなど各方面から絶賛された名盤です。
いかにもベームらしい揺ぎない構築力を示す堂々たる演奏が揃っていますが、オーケストラがウィーン・フィルということもあって、どっしりしたフレームの中で、楽員がニュアンス豊かな音楽を展開する様子は実に魅力的。第1番第1楽章の序奏部における壮大な力感表出などさすがですが、一方で、第4番では、晩年のベームならではの渋味を含んだ味わいのある情感が深い感動を呼び起こします。ウィーン・フィルの響きも充実した美しいもので、名コンマス、ゲアハルト・ヘッツェルによる第1番第2楽章の甘美なヴァイオリン独奏や、独特の濃厚な音色の木管ソロのなど、ムジークフェラインザールならではのトゥッティの素晴らしい響きと相まってトータルな魅力を実感させてくれます。
組み合わせの『ハイドンの主題による変奏曲』『悲劇的序曲』『アルト・ラプソディ』は、交響曲のあと、1976年と77年に収録されており、こちらも高水準な仕上がりです。
中でも『アルト・ラプソディ』はスケールの大きな演奏で、厳しく彫琢されたオーケストラ・サウンドをバックに、クリスタ・ルートヴィヒがほの暗い声で切々と歌い上げ、ウィーン楽友協会合唱団の男声団員の面々が深々とした合唱であたたかく締めくくっています。トータル220分収録。(HMV)
【収録情報】ヨハネス・ブラームス
CD1
・交響曲第1番ハ短調
Op.68
・ハイドンの主題による変奏曲 Op.56a
CD2
・交響曲第2番ニ長調 Op.73
・アルト・ラプソディ
Op.53
・悲劇的序曲 Op.81
CD3
・交響曲第3番へ長調 Op.90
・交響曲第4番へ長調
Op.98
クリスタ・ルートヴィヒ(Ms)
ウィーン楽友協会合唱団
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
カール・ベーム(指揮)
ブラームス:交響曲全集
ジュリーニ指揮ウィーン・フィルハーモニー1989~91年デジタル録音。交響曲全曲と悲劇的序曲、ハイドン変奏曲を収録。完全主義者ジュリーニがウィーン・フィルと築き上げたモニュメンタルなブラームスが、細部の繊細な質感に至るまで完璧に再現されるのは優秀録音の醍醐味。ムジークフェラインザールならではの深く美しい響きが存分に味わえる素晴らしいセットです。
交響曲第1番
1991年4月、ウィーン、ムジークフェラインザール
横の線に重きを置いたブラームス。劇的な緊迫感よりは旋律表現が重視されており、滲み出る情感には独特な魅力が備わっています。特に第2楽章と第4楽章は美しい仕上がりで、この作品ならではの旋律美が倍化されて迫ってくるような錯覚さえ覚えるほど。トゥッティでも決して汚い響きにならないオーケストラのサウンドも見事です。
交響曲第2番
1991年4月、ウィーン、ムジークフェラインザール
遅いテンポを採用し、作品の細部に宿る美を徹底的に追求した趣の個性的な演奏。特に第2楽章の深みのある美しさは信じがたいもので、主題の波打つ様子やパッセージの受け渡しなど、室内楽的表現と管弦楽的表現のあいだを自在に往復するウィーン・フィルの技量はさすがとしか言いようがありません。
9分7秒からのクライマックスは本当に凄い音楽になっていて、ジュリーニの枠の大きさが完璧に生かされた演奏には圧倒されるばかり。 ギュンター・ヘルマンスの捉えたVPOサウンドが骨太で聴き栄えが良いのも美点です。
交響曲第3番
1990年5月、ウィーン、ムジークフェラインザール
オープニングの緊迫した雰囲気からもジュリーニの好調ぶりが伝わってきます。鋭利な管楽器群、うなるコントラバス、量感豊かなティンパニと、ウィーン・フィルならではのサウンドが実に立派。
そうしたオケの特質が最もよく表れているのが第2楽章と第3楽章で、多彩な音色で情感豊かに波打つ音楽は素晴らしいとしか言いようがありません。
終楽章では一転、快速なテンポでダイナミックな音楽を構築しており、骨太なカンタービレの果てに訪れる静かで印象的なコーダも、各パートの克明な響き具合が立体的で、冒頭主題による終焉も美しく決まっています。 第1楽章呈示部反復実行。
交響曲第4番
1989年5月、ウィーン、ムジークフェラインザール
第1楽章冒頭から美しいカンタービレを満喫させる名演。オケがオケだけに全曲に頻出するピツィカートも実にセンスがよく、コントラストをはっきりさせるというよりは、横の流れを重視したジュリーニの解釈を巧みにフォローしているのがポイント。第1楽章コーダにおけるティンパニの迫力技も聴きものです。
第2楽章はウィーン・フィルならではの濃密な美感が堪能できる見事な演奏で、特に、2分57秒からの美しさはまさにジュリーニ芸術の真骨頂とでも言いたくなる音楽といえ、以下、クライマックスの第2主題再現部(9分10秒から)に至るまで、陶然とするばかりの「美」をたっぷりと味わうことが可能です。
一転して第3楽章は豪壮な迫力に満ち、強大でしかも立体的という、ウィーン・フィル固有のフォルテの魅力を存分に味わわせてくれるほか、ホルンとティンパニの巧さにも感激。
第4楽章も凄い音楽。ジュリーニの息長く絶妙なカンタービレ解釈にひたすら感謝したくなる重厚なソノリティをベースに、室内楽的な弱音部が美しく照射された名演。 特に、6分37秒からの再現部の驚くべき迫力とスケール感、腰の据わったヘヴィーな音楽づくりは、変化に富む表情を捉えきって申しぶんがなく、天才としか言いようのないティンパニストのバチさばきと併せて無類の感動を与えてくれます。
ハイドンの主題による変奏曲
1990年5月、ウィーン、ムジークフェラインザール
全体にかなり遅めのテンポ設定ですが、変奏曲という作品の性格もあって、その遅さがむしろプラスに作用している場面が多いのが特徴。 主題がどのように変形されているのかが、微視的なスタイル&録音状態ということもあって非常に判りやすくなっているのです。
また、トラック11などに代表される、ウィーン・フィルならではの楽器の音がクローズアップされて面白いのも美点と言えるでしょう。
悲劇的序曲
1989年5月、ウィーン、ムジークフェラインザール
交響曲第4番と同時期に収録されているせいか、緊張感みなぎる音楽づくりは共通で、ときに息苦しいまでの濃密なカンタービレが、ウィーン・フィルの美音を得て緻密に立体的に表現されるさまはまさに圧巻。
この作品の魅力の大きな部分を形成する対位法的書法への配慮も万全で、細かな音色変化を可能にするオーケストラと、完全主義者ジュリーニならではの共同作業の成果として、後半は特に聴きごたえがあります。
【収録情報】・ブラームス
Disc1
・交響曲第1番ハ短調
Op.68
Disc2
・交響曲第2番ニ長調 Op.73
Disc3
・交響曲第3番へ長調
Op.90
・ハイドンの主題による変奏曲 Op.56a
Disc4
・交響曲第4番へ長調 Op.98
・悲劇的序曲
Op.81
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
カルロ・マリア・ジュリーニ(指揮)
HMV レビュー から引用
ウィーン・フィルSHM-CD名盤シリーズ
ウィーン・フィル来日記念盤
初回限定生産 SHM-CD仕様
ブラームス:交響曲第4番/レヴァイン&ウィーン・フィル
レヴァインにとって2度目の録音となったブラームスの交響曲全集はウィーン・フィルとのライヴでした。名実ともに巨匠の道へと歩み始めた彼を象徴する演奏です。交響曲第4番は来日公演曲目。(ユニバーサルミュージック)
【収録情報】
・ブラームス:交響曲第4番ホ短調
作品98
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:
ジェイムズ・レヴァイン
録音時期:1994年11月
録音場所:ウィーン、ムジークフェラインザール
録音方式:デジタル(ライヴ)
HMV レビュー から引用
2012年ザルツブルク音楽祭のライヴ!
ヤンソンス&ウィーン・フィル
充実のプログラムで聴かせる白熱の演奏2012年ザルツブルク音楽祭のライヴ映像。2012年に共演20周年を迎えたマリス・ヤンソンスとウィーン・フィル。ニューイヤー・コンサートに続きザルツブルク音楽祭でも相性抜群のコンビネーションと冴えわたる指揮振りで充実のプログラムを聴かせてくれています。
スペインの伝説上の人物ドン・ファンを主題としたニコラウス・レーナウの詩に基づいて作曲されたR.シュトラウスの交響詩第1作目『ドン・ファン』。ウィーン・フィルの艶やかな音色としなやか表現力でR.シュトラウスの魅力が凝縮された演奏も特筆すべき点ですが、R.シュトラウスを得意とするヤンソンスの巧みなドラマ作りと、磨き抜かれた響きは、まさにヤンソンスの独壇場ともいえるでしょう。スウェーデン出身現在絶好調のソプラノ、ニーナ・ステンメが歌うワーグナーのヴェーゼンドンク歌曲集。そしてヤンソンスが実演でもよく取り上げ、バイエルン放響やオスロ・フィルとの共演盤でも高い完成度の音楽を披露しているブラームスの交響曲第1番。情緒溢れる旋律を描き出し、ウィーン・フィルの美麗な音色を引き出すヤンソンスの情熱が注ぎ込まれた演奏は、作品に新たな生命力を与えています。(キングインターナショナル)
【収録情報】
・R.シュトラウス:交響詩『ドン・ファン』
Op.20
・ワーグナー:ヴェーゼンドンク歌曲集
・ブラームス:交響曲第1番ハ短調 Op.68
ニーナ・ステンメ(ソプラノ)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
マリス・ヤンソンス(指揮)
収録時期:2012年8月
収録場所:ザルツブルク音楽祭(ライヴ)
収録時間:95分