ページ

金曜日, 3月 27, 2015

若きクーベリックを聴こう! 

Rafael Kubelik: Legendary and Rare Recordings


 本集の目玉、ブラームス交響曲全集は、4番(1956324-25日)、2番(195734-8日)、1番(同年923-24日)、3番(同年928-29日)の順で、ウィーン・ゾフィエンザールにてDECCAによってステレオ初期収録されたもの。フルトヴェングラー亡き後、カラヤンのウィーン席巻までの空隙を埋めるかのように、若き俊英クーベリックがいかに当時注目されていたかの証左。演奏は作為性のないストレートな解釈だが、ときに凝縮されたパッショネイトさもあって好演(但し、音は籠もってややクリアさに欠ける)。その後、同じDECCAで斬新なカラヤン盤(1番、3番)が出たので、いわばお蔵入りになってしまったが、クーベリック後継全集盤(バイエルン放送響)との聴きくらべも楽しいメモリアルである。

 ドヴォルザークも以下のとおり充実。晩年の感動の記録もあるが、ここでは同時期のウィーン・フィルとの7番、9番、スラヴ舞曲集や、ヤナーチェクのシンフォニエッタの直情的な解釈に魅力。

<収録情報>
【シューベルト】
・交響曲第9番ハ長調 D.944『グレート』(1959年)ロイヤル・フィル

【ブラームス】
・交響曲全集(195657年)V

【ドヴォルザーク】
・交響曲第7番ニ短調 Op.701956年)V
・交響曲第8番ト長調 Op.881948年)P
・交響曲第9番ホ短調 Op.95『新世界より』(1956年)V

・チェロ協奏曲ロ短調 Op.104/ピエール・フルニエ(1951年)P
・伝説 Op.59より第10番(1949年)V
・スケルツォ・カプリチオーソ Op.661950年)V
・スラヴ舞曲集 Op.46Op.721955年)V

【スメタナ】
・歌劇『売られた花嫁』より(序曲、ポルカ、フリアント、道化師の踊り)(1951年)P
・交響詩『ハーコン・ヤール』 Op.161945年)チェコ・フィル

【ヤナーチェク】
・シンフォニエッタ(1955年)V

【バルトーク】
・弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽(1951年)シカゴ交響楽団

<摘要> 
V:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
P:フィルハーモニア管弦楽団
 
http://www.amazon.co.jp/Rafael-Kubelik-Legendary-Rare-Recordings/dp/B00LCKYZQW/ref=sr_1_5?s=music&ie=UTF8&qid=1427482505&sr=1-5&keywords=kubelik

Rafael Kubelik/ Complete Masterpieces


 1950年代の若きクーベリックの才気あふれる活躍ぶりを伝える選集。以下、序曲、協奏曲、交響曲、管弦楽曲が多彩に居並び、オーケストラも欧州、英米の名門6管弦楽団と共演。

 ドヴォルザーク、スメタナ、ヤナーチェクなど得意の民族系のラインナップに加えて、マーラー、ムソルグスキーも聴きもの。早速、目当てのひとつ ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」、モーツァルト:交響曲第38番「プラハ」 を取り出す。前者は特に多くの音源を残した十八番の演目だが、この30代半ばの快演は期待以上、胸のすくストレートな魅力をたたえる。ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」 も曖昧さのない、それでいてボキャブラリー豊かな明解な演奏。ほかにもスーパー廉価盤ならでは、<意想外>の佳演が味わえる好box

(収録内容)
【序曲】 
・モーツァルト:序曲集(『ドン・ジョヴァンニ』、『後宮からの逃走』、『皇帝ティートの慈悲』、『偽の女庭師』、『劇場支配人』)(1952年)P
・メンデルスゾーン:『真夏の夜の夢』序曲(1952年)P

【協奏曲】
・ブラームス:ピアノ協奏曲第1番、(ピアノ)ソロモン(1952年)P
・ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番、(ヴァイオリン)イダ・ヘンデル(1948年)P
・バルトーク:管弦楽のための協奏曲、2つの肖像、(ヴァイオリン)スティーヴン・スタリック(1959年)R

【交響曲】
・モーツァルト:交響曲第38番『プラハ』(1952年)P
・ドヴォルザーク:交響曲第9番『新世界から』録音:(1951年)C、スラヴ狂詩曲 Op.45-31959年)R
・マーラー:交響曲第1番『巨人』(1954年)V、交響曲第5番(1951Live)A
・マルチヌー:交響曲第4番(1948年)Cz

【管弦楽曲】
・ムソルグスキー/ラヴェル編:組曲『展覧会の絵』(1951-53年)C
・スメタナ:交響詩『モルダウ』(同上)C
・ヒンデミット:ヴェーバーの主題による交響的変容(同上)C
・シェーンベルク:管弦楽のための5つの小品(同上)C
・ヤナーチェク:シンフォニエッタ(1955年)V
・マルチヌー:2群の弦楽合奏とピアノ、ティンパニのための二重協奏曲(1950年)P

<摘要>
A:アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
C:シカゴ交響楽団
Cz:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
P:フィルハーモニア管弦楽団
R:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
V:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

http://www.amazon.co.jp/Rafael-Kubelik-Complete-Masterpieces/dp/B00B3R6RPG/ref=sr_1_3?s=music&ie=UTF8&qid=1427482505&sr=1-3&keywords=kubelik

  Mahler: Symphony No.5

 クーベリックには、バイエルン放送交響楽団とのマーラー交響曲全集(録音:1967-71年、ミュンヘン、ヘルクレスザールにおけるステレオ録音)があり代表盤のひとつである。

 5番では1971年のスタジオ録音のほか、10年後、同メンバーによるライヴ盤(録音:1981612日)もあり、双方とも名演の評価が高い。さて、本盤は71年からさらに約20年遡ったクーベリック37才にコンセルトヘボウを振ってのライヴ盤(録音:1951921日)。若きクーベリックはシカゴ交響楽団の音楽監督を務めていた頃だから客演での収録であったろう。

 これは大変、貴重な記録である。コンセルトヘボウの演奏が実にすばらしい。メンゲンベルク、ベイヌムに鍛えられマーラーをこよなく得意とするこの楽団の当時の実力をあますところなく表現している。たとえば第3楽章、導入部のホルンからスケルツォ主題へとつながる木管楽器の乗りの良さ、ピッツィカートの弾んだ楽しさといい満喫できる。一転、第4楽章のハープと弦楽器の美しく切ない響きも素直に心にとどく。その音質はほのかに耀(あかる)さをたたえ少しも諦観的ではない。終楽章はリズミックに次々にめまぐるしく展開する第1、第2、コデッタ主題との掛け合いが聴きもので、まるで名人芸の競い合いを楽しんでいるかのように表情は大らかで豊かだ。全般にクーベリックらしい熱きオケ・コントロールがゆきとどきその秀でた力量に感心する。録音の古さは否めないが演奏の充実ぶりはそれをはるかに凌ぐだろう。
 
 
商品の詳細

 クーベリックには、バイエルン放送交響楽団とのマーラー交響曲全集(録音:1967-71年、ミュンヘン、ヘルクレスザールにおけるステレオ録音)があり代表盤のひとつである。

 1番ではほかに数種のライヴ盤が残されている。バイエルン放送交響楽団との1979211日の録音 Mahler Symphony 120年前のRAIトリノ交響楽団とのもの(録音:1959424日)Mahler/Janacek: Symphony No 1 に加えて、本盤はRAI盤からさらに約5年前の19546月にウィーン・フィルを振っての音源で、クーベリック40才頃の録音。シカゴを去って、コヴェント・ガーデン王立歌劇場の音楽監督に就任する前年にあたり、ウィーン客演時の記録である。

 1951年の5番(コンセルトヘボウ)のライヴ演奏 Mahler: Symphony No.5 もすばらしかったが、本盤もそれに負けない魅力をたたえる。なんといっても音響のみずみずしさが新鮮だ。第1楽章、弦のフラジオレット、郭公の鳴き声からホルンに続く、柔らかで包み込まれるような弦と木管の融合には至福感がありこれが途切れることなく終楽章まで続行する。全体に自然体な構え、素直で伸び伸びとし奇を衒うことなき運行、ウィーン・フィルの最良のものを引き出している。
 
 ワルター/ニューヨーク・フィル盤が世にでたのが同年の1954年。ワルター/コロンビア響盤が1961年、バーンスタイン/ニューヨーク・フィル盤が1966年のリリースであったことを考えると、このクーベリック盤の先駆性に思いはいたる。
 
 
 
ブルックナー:交響曲第3番
 
ブルックナー:交響曲第4番
 
  クーベリック晩年の母国チェコへのセンセーショナルな帰還、そこでのスメタナやドボルザークの不滅の名演は日本のマスコミでも大きく取り上げられました。クーベリックはヨッフムのあとを継ぎバイエルン放送交響楽団の常任指揮者に就任し欧州では大きな地歩を築きますが、来日が晩年までなかったこともあり、日本での評価はいまひとつだったと思います。
  なによりも、その禿頭の風貌を含め「フルトヴェングラーⅡ世」といった風評が強すぎ、日本における「フルトヴェングラー神話」("Ⅰ世"への異常な関心!)が吹きやまぬ状況にあって、マスコミが勝手に冠した"Ⅱ世"の呼号のせいで、クーベリックはいつもその後景にあったと言えるのかも知れません。
  しかし、その大きな音楽の造型性、深い精神性の表出と真摯な迫力に魅せられていたファンも少なからずいたことも事実です。ことブルックナーに関しては、3番、4番、8番、9番くらいしか手に入らず全貌を把握することは出来ませんが、構成力の大きな格調高い音楽は素晴らしいものです。変な言い方ですが、クーベリックとヨッフムの旧盤は、その演奏の最高の質とCDのなんとも安いプライスがアンバランスで、その意味で皮肉なことにブルックナーではもっともお買い得な演奏と言えるでしょう。
 
商品の詳細
http://www.amazon.co.jp/Coronation-Spazenmesse-Exsultate-Norma-Procter/dp/B0000012UK/ref=sr_1_30?s=music&ie=UTF8&qid=1427524730&sr=1-30&keywords=kubelik+mozart


なんど聴いてもこころ洗われる想いがする精妙なる音楽。「戴冠ミサ」がかの遺作レクイエム以上に良い曲ではないかと思わせる完成度と昇華感。この演奏を残してくれたクーベリックに感謝の気持ちを伝えたくなる名演奏。

(録音記録)

◆ミサ曲ハ長調K.317「戴冠ミサ」(1. キリエ、2. グローリア、3. クレド、4. サンクトゥス-ベネディクトゥス、5. アニュス・デイ)

◆ミサ・ブレヴィス ハ長調K.220(196b)「雀」(6. キリエ、7. グローリア、8. クレド、9. サンクトゥス、10. ベネディクトゥス、11. アニュス・デイ)

12.エクスルターテ・ユビラーテK.165(158a)‾モテット「踊れ,喜べ,幸せな魂よ」 Allegro-Andante-Vivace

13.アヴェ・ヴェルム・コルプスK.618

(演奏)クーベリック/バイエルン放送交響楽団・合唱団、但し12のみベルンハルト・クレー/ドレスデン国立管弦楽団(Orgel:ハンス・オットー)、61113は合唱指揮:ハンス・シュレムス/レーゲンスブルク教会合唱団