土曜日, 4月 14, 2007

ヨッフム ブルックナー9番

 ブルックナー:交響曲第9番ニ短調 ドレスデン国立歌劇場管弦楽団(シュターツカペレ・ドレスデン) オイゲン・ヨッフム(指揮) 録音:1978年(ステレオ)
 ワルターを味わったあと、ヨッフムが聴きたくなった。ノヴァーク版のよる演奏であり、9番はヨッフムの「公式」録音では3度目になる。
 第1楽章の迫力が凄い。ヨッフム75歳のときの録音だが、枯れた要素などは微塵もない。競(せ)っているような少し前のめりの感じもあるが、次から次に畳み込むような強奏がつづき、第1楽章に全体の頂点を形成することを意図しているような意欲的な演奏である。第2楽章のスケルツオも、これと連続し速度ははやくリズムの切れ味は鋭い。一気に駆け抜けるような文字通りの「快走」である。一転、第3楽章に入ると大胆に減速し、フレーズは滔々と伸ばし、じっくりとメロディを奏でていく。色調も明から仄かに翳りをもちブルックナー交響曲群全体の「終章」的な重みを持たせていく。考え抜いた演奏であるが姑息な演出を感じることはない。こうとしか演奏できない、否、これこそがこの曲のもつ特質なのだと言わんばかりの説得力である。強奏は緩めないが、ダイナミズムの振幅は次第に狭まり、その一方で感情表出の濃度がましていく。しかし音の透明度は変わらない。そこから受ける印象は陳腐な表現だが、「天への飛翔」といったところであろうか。見切った演奏である。

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