グールドのベートーヴェン/ピアノ・ソナタに対するアプローチの独自性は、よく知られているとおり、最後期の30~32番をまっさきに録音したことにある。いわばベートーヴェンの<ゴール>の作品をグールドは録音の<スタート>に置いた。では、その後、連続して作品群を取り上げたかというと、次の録音は8年後の64年に5~7番、66年に8~10番、67年に有名な14番「月光」、17番「テンペスト」、18番、23番「熱情」をとりあげて、以降はふたたび録音を休止、結果、初期の1~3番は最後の79年までかけて録音といった逆さまの対応となった。実にユニークな、(ある意味でへそ曲がりな)録音記録である(下記を参照)。
演奏も独自のグールド流が貫かれ、このベートーヴェンは、バッハ、ブラームスのいわゆる<3B>いずれにも共通し感受性豊かで自由な発想のもと、極度の緊張感とともに作品への凄まじいほどの没入度を感じる。その評価はリスナーの好み次第だが、小生はベートーヴェンの強烈なパッションを炙りだし尽くそうとするようなグールドの厳しい対峙をときたま無性に聴きたくなる一人である。
第1番 1974,76,79年 ※1
第2番 1976年7月、1979年6,7月 ※1
第3番 1974,76,79年 ※1
第5番 1964年9,7,11月、※2
第6番 1964年9,7,11月、※2
第7番 1964年9,7,11月、※2
第8番「悲愴」1966年4月18,19日、※2
第9番 1966年2~5月、※2
第10番1966年2~5月、※2
第12番「葬送」1979年9月4,5日、※1
第13番 1979年9月4,5日、※1
第14番「月光」1967年5月15日、※2
第15番「田園」1976年7月、1979年6,7月 ※1
第16番 1971年8月、1973年5月 ※1
第17番「テンペスト」1967年1月、※2 &1971年8月 ※1
第18番 1967年3月10日 ※2
第23番「熱情」 1967年10月18日、※2
第30番 1956年6月20~29日、※2
第31番 1956年6月20~29日、※2
第32番 1956年6月20~29日、※2
※1:トロント、イートンズ・オーディトリアム
※2:ニューヨーク、コロムビア30番街スタジオ
(参考)
http://shokkou.blog53.fc2.com/blog-entry-312.html
http://freizeit-jiyuu.blogspot.jp/2006/08/blog-post_12.html
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