土曜日, 7月 22, 2017

今日の気分は リパッティ Dinu Lipatti

生誕100年記念BOX ~ リパッティ・コレクション (100th Anniversary Edition ~ Dinu Lipatti Collection) [12CD Box] [輸入盤] [日本語帯・解説・歌詞対訳付]
生誕100年記念BOX ~ リパッティ・コレクション (100th Anniversary Edition ~ Dinu Lipatti Collection) [12CD Box] [輸入盤] [日本語帯・解説・歌詞対訳付]

しばらく聴かないと、ときたま古巣にかえるようにふとリパッティを取り出したくなる。なぜかはよくわからないが、これも一種の中毒症状かも知れない。
クラシック音楽に親しむと、リパッティへの関心はだれでもが一度は抱くと思う。
美男にして抜群の技量、惜しまれての夭折、そして晩年の鮮烈なエピソードなど、永遠の若手天才ピアニストの線条的な生きざまは、とてもドラマティックである。

最近、100 Piano Masterworks  を聴いていて、現代のピアニストのテクニックの凄さと感性の柔らかさには感心しつつ、一方でリパッティの凄さに改めて刮目した。

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リパッティは、自身も作曲をし、また独特の音楽的感性から他の編曲者への関心も高かった。潜在的なレパートリーは下記をみても豊富だが、病をえてからはそれを広げることはおそらく難しかったであろう。
ショパンのワルツ集を除けば、重複して収録したもの(※※は2つ、※※※は3つの音源を表示)はけっして多くない。むしろ、最晩年の録音を別とすれば周到に考え抜いて曲目を選び、後世に貴重な記録を残してくれた。
今日の厳格なテクスト主義とは異なれども、抜群の技量のもと、タッチの柔らかさと、思念の豊かさでは現代の若手ピアニストの演奏を先取りしているようにも感じるときがある。

なお、いまなら Dinu Lapatti Collection: 100th Anniversary Edition (12CD) でより廉価で入手可能。

<収録情報>
【J.S バッハ】
パルティータ第1番変ロ長調 BWV.825
アルマンド~パルティータ第1番変ロ長調 BWV.825(チェンバロ、ピアノ)※※
ブゾーニ編:「トッカータ ハ長調」による即興(チェンバロ演奏)
ブゾーニ編:いざ来たれ、異邦人の救い主よ BWV.659
ブゾーニ編:主イエス・キリスト、われ汝を呼ぶ BWV.639※※
ブゾーニ編:ピアノ協奏曲第1番ニ短調 BWV.1052
ヘス編:主よ、人の望みの喜びよ BWV.147※※※
ケンプ編:シチリアーノ~フルート・ソナタ第2番 BWV.1031

【D.スカルラッティ】
ソナタ ホ長調 L.23
ソナタ ト長調 L.387, K.14
ソナタ ニ短調 L.413

【モーツァルト】
ピアノ協奏曲第21番ハ長調 K.467
ピアノ・ソナタ第8番イ短調 K.310※※

【シューベルト】
即興曲 変ホ長調 D.899-2
即興曲 変ト長調 D.899-3

【シューマン】
ピアノ協奏曲イ短調 Op.54※※
交響的練習曲 Op.13~第9変奏

【ショパン】
ピアノ協奏曲第1番ホ短調 Op.11
練習曲 変ト長調 Op.10-5『黒鍵』※※
練習曲 ホ短調 Op.25-5
ピアノ・ソナタ第3番ロ短調 Op.58
ノクターン第8番変ニ長調 Op.27-2※※
華麗なワルツ第2番変イ長調 Op.34-1
ワルツ集※※(第1番~第14番、うち第3番※※※)
マズルカ第32番嬰ハ短調 Op.50-3
舟歌 Op.60

【リスト】
ピアノ協奏曲第1番変ホ長調
ペトラルカのソネット第104番
演奏会用練習曲『軽やかさ』
小人の踊り

【ブラームス】
間奏曲 イ短調 Op.116-2
間奏曲 変ホ短調 Op.117-1
間奏曲 変ロ短調 Op.117-2
間奏曲 変ホ短調 Op.118-6(断片)
ワルツ Op.39~第1,2,5,6(2種),10,14,15番
ワルツ集『愛の歌』 Op.52(全18曲+第1曲繰り返し)

【グリーグ】
ピアノ協奏曲イ短調 Op.16

【ラヴェル】
道化師の朝の歌
バズレール編:ハバネラ形式による小品

【フォーレ】
カザルス編:夢のあとに Op.7-1

【リムスキー=コルサコフ】
熊蜂の飛行

【バルトーク】
ピアノ協奏曲第3番

【エネスコ】
ピアノ・ソナタ第1番嬰へ短調~第2楽章
ブーレ~ピアノ組曲第2番ニ長調 Op.10
ピアノ・ソナタ第3番ニ長調 Op.24
ヴァイオリン・ソナタ第2番ヘ短調 Op.6
ヴァイオリン・ソナタ第3番イ短調 Op.25

【リパッティ】
古典様式による小協奏曲 Op.3 ※※
左手のためのソナチネ
ルーマニア舞曲集

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グリーグ&シューマン:ピアノ協奏曲
グリーグ&シューマン:ピアノ協奏曲

グリーグ&シューマンのピアノ協奏曲集は、パッケージ販売の定番。演奏時間や音楽の雰囲気でシナジー効果が高いからであろう。しかし、両曲ともに天下の名演というのはなかなか難しい。
小生は、リヒテルとマタチッチのユニークな組み合わせによる1枚 グリーグ & シューマン: ピアノ協奏曲(クラシック・マスターズ) がお気に入りだが、このリパッティ盤も別のテイストで得難い演奏。シューマンの第2楽章を聴くと、ゆっくりとしたテンポのなか、リパッティの凛とした抒情性をクリアに浮き彫りにし、これをシルキーに包み込むようなカラヤンの追走に惚れ惚れする。その一方、同じフィルハーモニー管を振っての1年違いの収録なのに、グリークでは、リパッティの至芸はかわらないが、ガリエラの音づくりは、甘ったるく雑味があるように感じてしまう。安普請の書割りといっては失礼かも知れないが、カラヤンとの差は歴然。

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ブザンソン音楽祭における最後のリサイタル(クラシック・マスターズ)
ブザンソン音楽祭における最後のリサイタル(クラシック・マスターズ)

演奏家、コンサートの関係者、そして当日の聴衆も、演奏家本人の死期が近いことを知りながらそこに臨場している。演奏家は直前に一時しのぎの注射を何本も打ち、渾身の力を振り絞ってピアノの前に座ったという。その演奏家は「聖者のような風格があった。彼の思考と行動の高潔さと高遠さ、彼の善良さと寛大さは周囲の人たちに信頼と希望と思いやりをよびさました」(録音を担当したウォルター・レッグの追悼文)。そして、本コンサートは「あの死滅した星がその光輝によってなおわれわれに光を与えてくれるように」(マドレーヌ・リパッティ夫人の言葉/三浦淳史訳、以上ライナーノートより引用)いまも聴きつがれる玲瓏なる奇跡の記録である。

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