Szell Conducts Haydn
セル/クリーヴランド管弦楽団のハイドン。完璧なまでのオーケストラ操舵ー透明度の高い完全なアンサンブル、管弦の均衡ある展開、基本的に一定かつ軽快なスピード感ーは、デジタル化の時代にあっても違和感なき心地よさで、古さを全く感じさせない。
フリッツ・ライナー(1888年生まれ)、ジョージ・セル(1897年)、ユージン・オーマンディ(1899年)、ドラティ・アンタル(1906年)、ゲオルグ・ショルティ(1912年)、クリストフ・フォン・ドホナーニ(1929年)ー彼らはいずれもハンガリーで生まれ(あるいは血縁があり)アメリカのメジャーオケで活躍した大家である。このハンガリアン・ファミリーは、いずれもハイドンを得意とし名演を残している。とくに交響曲全曲録音を制覇したドラティの偉業が光るが、後期曲に関してセルの高純度の演奏はその双璧にある。
<収録情報>
【CD1】交響曲第93番ニ長調(1968年4月18日)、第94番ト長調『驚愕』(1967年5月5日)、第95番ハ短調(1969年1月17日)
【CD2】交響曲第96番ニ長調『奇跡』(1968年10月11日)、第97番ハ長調(1969年10月3日)、第98番変ロ長調(1969年10月10日)
【CD3】交響曲第92番ト長調『オックスフォード』(1961年10月10日)、第99番変ホ長調(1957年10月25日)
【CD4】交響曲第88番ト長調『V字』(1954年4月9日)、第104番ニ長調『ロンドン』(1954年4月9日)、第97番ハ長調(1957年10月25日)
※括弧内は録音時点。1954年分のみモノラル
➡ The Complete Columbia Album Collection も参照
➡ Szell Conducts Haydn
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ハイドン:交響曲第99番 第100番「軍隊」 第103番「太鼓連打」
Sym.99, 100, 101, 102, 103, 104を一気に聴く(本集では99, 100, 103を収録)。1958、1959年の収録の古い音源だが、ビーチャム閣下(1879~ 1961年)とロイヤル・フィルは、英国と所縁の演目として、愛情とプライドをもってハイドンの後期の精華を取り上げている。
ハイドンの交響曲というのは難物である。一定以上の演奏はできても、これぞ本領といった高みに達することのハードルは高い。ビーチャム翁、最晩年のハイドンは、大家の悟りの境地とでもいうべきか、珠玉のものであると感じた。
屈託や余分な作為が一切なく、音楽がほんとうにこよなく<音を楽しむ>営為になっているようだ。それが、ハイドンの一見大らかで、しかし、的をはずさない深い魅力を湛えた曲想に<ふわり>と重なっている。演奏スタイルは、ぎちぎちとしたところが全くない自由度の高いもので、明るくおっとりとしたハイドンのイメージが純化されており、春風駘蕩といった雰囲気がリスナーを包み込んでくる。得難い名演である。
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Haydn: Syms 94, 100 & 101
ハイドンの交響曲全集の録音!ー100曲以上の曲を丹念に「入れ込んでいく」のだから、その作業たるや想像を絶する忍耐がいるだろう。手元にあるその1枚を聴く。ドラティの演奏は本当に素晴らしい。101番が聞きものだが、ドラティの正確無比な運行が、文字通り精密な「時計」を連想させる。
フィルハーモニア・フンガリカは1956年のハンガリア動乱によって移住した音楽家を集めて1957年に結成されたとのこと。ハンガリアン・ファミリーの一人、ドラティとの相性は言うまでもなく抜群で、室内楽的なアンサンブル、透明度の高い音色はハイドンにとても良くマッチしている。ハイドン全集は、英国デッカがハンガリーとの関係が深かったがゆえに実現した企画とのことだが、移住者にとっては経済的にも干天の慈雨であったかも知れない。ドラティの演奏の精巧さはライナーやセルらに共通するもの。このグループの指揮者の実力には改めて驚かされる。
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カール・ミュンヒンガー/ウィーン・フィルによるハイドンの交響曲。第96番「奇蹟」、第104番「ロンドン」(1957年5月録音)、第100番「軍隊」(1961年4月録音)の3曲が所収されている。いずれもウィーンにてセッション収録(LondonPOCL2118にて聴取)。音質はこの時代のものとしては良好。
ミュンヒンガーの古典派クラシック演奏の実力が当時、欧州でも十分に認められて、ウィーン・フィルとの作品づくりにいたった記念すべき1枚であるとともに、いまにいたるまで名盤の評価がかわらない。何度聴いても飽きのこないオーソドックスな演奏であるとともに、テンポが実に安定しており、そのしっかりとした土台のうえに、ハイドンの交響曲の構築美をウィーン・フィルの馥郁たる響きにのせて表現している。聴かせどころはけっして外さず「軍隊」第4楽章の追い込みなどは迫力十分。一方、「ロンドン」第1楽章提示部の重々しい雰囲気の表出などでは、さりげなき、しかし確かな技量を存分に感じさせる。
ベーム/ウィーン・フィルによるハイドンの交響曲。第88番「V字」、第89番(1972年9月録音)、第92番「オックスフォード」(1974年4月録音)の3曲が所収されている。いずれもウィーン、ムジークフェラインザールで収録。
ベーム翁の79才にかけての録音だが、おそらくそうした年齢は演奏からは感じられないだろう。全体としては瑞々しくも快活である。テンポは遅め、かつベームらしくあまり細かく動かさないが、それによる滞留感などはない。この楽章の表現には、最適な管理としてこれだけの音楽的な時間配分が必要といった感すらある。それでいて、自信に満ち、たとえば「V字」の第4楽章の軽妙洒脱な表現ぶりでは、ウィーン・フィルと“ハイドンらしい”音作りを楽しんでいるような余裕もある。大家の臨場とはこうしたものかと自然に納得してしまう。そうした意味では、作品を選ばず、前後2曲に比べてあまり有名ではない第89番も実に魅力的な曲に仕上げている。ベームの真骨頂だろう。
ハイドンの交響曲全集を録音するという偉業をなしとげたドラティ。その演奏は細部までゆるがせにしない「均質さ」では一貫しており曲目によって解釈やスタイルに一切のブレがない。したがって、全曲どれをチョイスしても当たり外れはないだろう。その一方で、一部の曲では、ハイドンの“遊び心”というか軽妙洒脱さやスリリングな妙味にはやや欠けるという見方もある。
収録されているのは、第45番、第48番、第49番で、各「告別Abschiedssinfonie」、「マリア・テレジアMaria Theresia」、「受難La passione」と呼ばれる。収録は、第49番が1969年、それ以外が1971年でいずれもドイツ、マールの聖ポニファティウス教会にて行われたと手元のジャケットにある(London223E 1150)。音質は良好。
一般に有名なのは「告別」だが、メロディの美しさとかぐわしき気品からは「マリア・テレジア」が際だっており気に入った。ただし、最近の研究ではどうも表題との関連性には疑問があるようで、その点は留意。「受難」では第2楽章のシンコペーションの活用が印象的。
『ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団』(10CD)
CD1
ハイドン:
・交響曲第94番『驚愕』
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)
録音:1951年
・交響曲第96番『奇跡』
ブルーノ・ワルター(指揮)
録音:1937年
・交響曲第101番『時計』
フリッツ・ブッシュ(指揮)
録音:1950年
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