土曜日, 2月 17, 2007

ジュリーニ ブルックナー第7番

















 ジュリーニのブルックナーは、テンポが遅い部分では少し味付けが濃厚に感じることもありますが決して嫌いではありません。後期3曲はいずれも細心の注意力をもって音楽を組み立てており、しかも高い集中力が持続する点で稀有な演奏といえると思います。
 7番(1986年6月ウィーン〈デジタル録音〉)を取り出してきました。これほど見事な演奏が千円で聴けるというのは申し訳ないような、(一方、新譜であるだけで、内容は本盤に比べてはるかに劣るにもかかわらず価格は3倍もするようなCDがあることを思うと)少しく変な気もします。
 第2楽章の静寂さの表現がとても深く感じます。孤独な心情、歩み寄る死への道程ではあっても、この遅い遅い楽曲に込められているものは、この世への絶望でもなければ、死への戦慄でもない。透明な空気のなかにほの明るく陽光がさしているような感じ。朝日ではなく黄昏の残映にせよ、それはあくまでも肯定的なものであることを確信させる・・・。ジュリーニの演奏からはそうした人生のもつ重みが伝わってきます。

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