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「新世界」をかけるのはとても久しぶりの気がする。テンシュテットを聴きたくてなににするか暫し考え、手が伸びたのがこのCDだった。1984年3月14~15日ベルリンでの録音である。カラヤンが帝王としてベルリンに最も君臨していた時代にもかかわらず、テンシュテットは同時期に比較的多くの録音をベルリン・フィルと残している。ライヴェルの存在には人一倍厳しかったと言われるカラヤンがなぜそれを許容したのか、という疑問は残るが、東独出身でおそらくは自分とは全く違うタイプの演奏家であり、覇を競う相手とは考えていなかったのかも知れない。
たしかにカラヤン/ベルリン・フィルとは少しく趣きのことなった「新世界」である。ベルリン・フィルはとても伸び伸びと演じているように聞こえる。テンシュテットらしくオケの自由度の幅をとり、全体に鷹揚とした構えながら、要所要所では鋭角的なリズミックさを強調しつつメロディの丹念な彫刻はキチンと行っていく。木訥とした泥臭さをどこか遠くに感じさせながら、ベルリン・フィルのアンサンブルは申し分ない。弦と木管が前面にでて、全体にしなやかな感じをだしている。聴いて飽きのこない佳演だと思う。
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