木曜日, 10月 31, 2013

またも シノーポリ  ブルックナー4番、7番

ヴェルディ:序曲、前奏曲集


シノーポリについては、以下でこのブログで取り上げてきました(特にⅤを参照)。今回はブルックナー2曲について付記しておきます。5,8番はそのうち書こうと思っています。

【シノーポリ】
http://shokkou3.blogspot.jp/2011/12/blog-post_23.html

【シノーポリⅡ】
http://shokkou3.blogspot.jp/2011/12/blog-post_4381.html

【シノーポリⅢ】
http://shokkou3.blogspot.jp/2011/12/blog-post_678.html

【シノーポリⅣ】
http://shokkou3.blogspot.jp/2011/12/blog-post_98.html

【シノーポリⅤ】
http://shokkou3.blogspot.jp/2011/12/blog-post_5893.html

Bruckner: Symphony No.4 "Romantic"
http://www.amazon.co.jp/Bruckner-Symphony-Romantic-Staatskapelle-Dresden/dp/B00DGNZBW0/ref=cm_cr-mr-title

シノーポリのブルックナーでは、なにより重厚で緻密な音の響きを重視しているように思う。それは伝統あるドレスデンとの共演だからというよりも、ブルックナーの本源的な魅力をそこに見ているからであり、よって、速度の可変、フレージングの技法は意識的に抑制されている。

このシノーポリのオーソドックスともいえるブルックナー解釈は本番に限らず、残された録音すべてに共通する。劇的な様相をさほど感じることがない一方、滔々たる流れは聴きこめば心地よき快感にかわる。

4番では第2楽章。静寂な朝靄のなか、ほの明るき黎明、そして一気に立ち上がる日の出をへてふたたび静謐な空気に包まれていく・・・といったイメージが丹念な音の積み重ねによって見事に表現されている。他方、終楽章での激しい盛り上がりを期待すると肩透かしをくう。一種ユニークだが、背後の一貫した音響美を最後まで味わおうとするリスナー向けの演奏ともいえよう。

ブルックナー:交響曲第7番
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%8A%E3%83%BC-%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC7%E7%95%AA-%E3%82%B7%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%9D%E3%83%AA-%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%BC%E3%83%83%E3%83%9A/dp/B00067SR3E/ref=cm_cr-mr-title

シノーポリのブルックナーは7番に限らず、変則的ではないオーソドックスな演奏である。シノーポリは、ブルックナーのもつ重厚で緻密な音の響きをなによりも大切にしており、テンポを意識的に動かしたり、過度にフレーズを強調するといったことがない。極力、素材の良さを丹念に引き出せば、そこから自然に感動が生まれると、しかと確信しているような演奏である。

 第2楽章の音響美がそうした特質をもっとも端的にあらわしているが、楽章ごとにかくあるべしというイメージはもっており、第3楽章の「ほどよき」快活さ、終楽章の「節度ある」盛り上げ方とも落ち着いた演奏スタイルを堅持する。

 劇的な演奏を好むリスナーには少しく物足りなさを感じるかも知れないが、じっくりとブルックナーの楽曲にふれたい向きにはその丁寧さに得心できるのではないかと思う。

土曜日, 10月 26, 2013

バルトーク ピアノ協奏曲全集(第1~3番)

Bartok: Ctos P/Pno 1 & 3
http://www.amazon.co.jp/Bartok-Ctos-London-Symphony-Orchestra/dp/B00004Z339/ref=wl_it_dp_o_pC_nS_nC?ie=UTF8&colid=2AP6H65EZ6KPB&coliid=IZGSU2S40HBFB


いま聴いているのはスティーヴン・コヴァセヴィッチとコリン・デイヴィス/ロンドン響、BBC響による演奏。バルトークの3曲の変遷はドラマティックで、第1番第3楽章の強靭、激烈な音響と第3番第2楽章の諦観的な静寂美の対照などは、表現者にとっては面白くもありしんどくもあろうが、コヴァセヴィッチは深く作曲家の心情に寄り添い感動的なピアニズムを展開している。デイヴィスの追走も見事で一気に聴かせる好演である。

バルトーク:ピアノ協奏曲全集
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%AF-%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E5%85%A8%E9%9B%86-%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%83%BC%E7%AE%A1%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%9B%A3/dp/B00005FL6I/ref=sr_1_1?s=music&ie=UTF8&qid=1382846138&sr=1-1&keywords=%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%B1%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%80%80%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%AF


小生の好む別の演奏。ショルティの揺るぎないバルトーク像をこちらはアシュケナージが深く理解し完全に融合した演奏。いわばピアノ付交響曲全集。
 
 
バルトーク:ピアノ協奏曲全集
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%AF%EF%BC%9A%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E5%85%A8%E9%9B%86-%E3%82%B7%E3%83%95%EF%BC%88%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A5%EF%BC%89/dp/B004YSDMI6/ref=pd_cp_m_0

(参考)

【バルトーク ピアノ協奏曲第1番】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC1%E7%95%AA_(%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%AF)

【バルトーク ピアノ協奏曲第2番】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC2%E7%95%AA_(%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%AF)

【バルトーク ピアノ協奏曲第3番】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC3%E7%95%AA_(%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%AF)

【スティーヴン・コヴァセヴィチ】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%BB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%81

土曜日, 10月 19, 2013

チェリビダッケのレニングラード

Dmitry Shostakovich : Symphony No. 7 - Leningrad
http://www.amazon.co.jp/Dmitry-Shostakovich-Symphony-No-Leningrad/dp/B0045OYLLG/ref=sr_1_4?s=dmusic&ie=UTF8&qid=1382238022&sr=1-4&keywords=celibidache+leningrad


チェリビダッケのショスタコーヴィッチ交響曲第7番「レニングラード」を聴く。19461222日、ベルリン・フィルを振ってのライヴ盤。翌年、フルトヴェングラーがベルリンに復帰するので、チェリビダッケが単独でベルリン・フィルに君臨していた最後の頃の録音。
録音はあまり良くはないが、リスニングの集中を妨げるものではない。感想は複雑である。ベルリンは1945年当時のロシア軍に蹂躙され一般市民(特に女性)に多くの犠牲者がでた。その翌年にこの演目である。普通、音楽は(時代状況などとは独立して)そのものとして楽しめばよいというスタンスだが、取り上げている演目にも政治的な纏がある以上、そう単純ではないだろう。
演奏には熱気が感じられ、チェリビダッケらしい粘着力ある分厚い音づくりも看取できるが、ベルリン・フィルの演奏には珍しくやや求心力が低下するような場面もあって、全体から受ける印象がうまく表現できない。


Shostakovich : Symphonie No. 7, en do majeur, Op. 60 Leningrad
http://www.amazon.co.jp/Shostakovich-Symphonie-No-majeur-Leningrad/dp/B005TROT24/ref=sr_1_1?s=dmusic&ie=UTF8&qid=1382238022&sr=1-1&keywords=celibidache+leningrad

【以下は引用】
1945年4月だけでも4000人が自殺したと報じられたベルリン。
牧師は妻と娘を射殺して自殺、H夫人は娘の喉を切り、2人の息子と自分を撃った・・、
ナチだったミスKは首を吊り、ミセスNは毒を仰いだ・・。
それ以外の無数の自殺者は記録されておらず、総数は不明のようです。
この恐怖のもとになったのは、ボルシェヴィキのソ連兵です。
人間狩りのような強姦が幾例か紹介され、強姦された女性の1割が自殺し、
1946年にベルリンで生まれた子供の5%が「ルッセンキンダー(ロシア人の子)」と呼ばれたなど、
あの強烈だった「1945年・ベルリン解放の真実 戦争・強姦・子ども」をも彷彿とさせます。
(出典) http://ona.blog.so-net.ne.jp/2013-02-09

Shostakovich: Symphony No. 7 in C Major, Op. 60 - 'Leningrad'
http://www.amazon.co.jp/Shostakovich-Symphony-No-Major-Leningrad/dp/B0043ARQ28/ref=sr_1_3?s=dmusic&ie=UTF8&qid=1382238022&sr=1-3&keywords=celibidache+leningrad

交響曲第7番 ハ長調 「レニングラード」 Op. 60
Symphony No. 7 in C Major, Op. 60, "Leningrad"
録音: 22 December 1946
»  I. Allegretto, "The War"26:08              
»  II. Moderato poco allegretto, "Memories"11:41  
»  III. Adagio, "My Native Field"22:37        

メンデルスゾーン

Mendelssohn/ Portrait
http://www.amazon.co.jp/Mendelssohn-Portrait-Yehudi-Menuhin/dp/B0027LZ4DI/ref=cm_cr-mr-img

メンデルスゾーン/ポートレイト(10CD)


録音時点が1935年から1997年まで60年以上の懸隔があるので、まず曲目によってチェックが必要だろう(特に協奏曲)。しかし、そこを踏まえたうえでもこれは買い物である。特に、ミュンシュの『イタリア』、『宗教改革』は切れ味よい名演で小生のお奨め。『スコットランド』はザンデルリンクの1994年の録音。『真夏の夜の夢』のフリッチャイも定評ある音源。
 加えて録音は古いが、ピアノ曲やピアノ三重奏曲は大家が競う。バッハを再評価したメンデルスゾーンのオルガン曲集も興味深い。

<収録情報>

◆交響曲
・第3番『スコットランド』(1994年)ザンデルリンク/ロイヤル・フィル
・第4番『イタリア』(1958年)ミュンシュ/ボストン交響楽団
・第5番『宗教改革』(1957年)同上
 

◆協奏曲
・ヴァイオリン協奏曲ニ短調(1952年)メニューイン(ヴァイオリン、指揮)/RCAビクター・ストリング・オーケストラ
・ヴァイオリン協奏曲ホ短調(1949年)ハイフェッツ;ビーチャム/ロイヤル・フィル
・ピアノ協奏曲第1番(1957年)ゼルキン;オーマンディ/フィラデルフィア管

◆管弦楽曲、オラトリオ
・劇音楽『真夏の夜の夢』より(1950年)リタ・シュトライヒ(ソプラノ);フリッチャイ/ベルリン・フィル
・オラトリオ『エリア』全曲(1947年)ハロルド・ウィリアムズ(バス・バリトン);マルコム・サージェント/リヴァプール・フィル、ハッダーズフィールド合唱協会
 

◆器楽曲、室内楽
・チェロ・ソナタ第1番、第2番、協奏的変奏曲;シムカ・ヘレド(チェロ)、シモーネ・ディナースタイン(ピアノ)
・ピアノ三重奏曲第2番(1948年);オイストラフ(ヴァイオリン)、クヌシェヴィツキー(チェロ)、レフ・オボーリン(ピアノ)
・弦楽四重奏曲第1番(1935年) ブダペスト弦楽四重奏団

◆ピアノ曲、オルガン曲
・無言歌集より(Op.19-119-330-130-238-138-653-153-562-567-285-4102-1102-3102-6)(1995年)ローナン・オハラ
・無言歌集~紡ぎ歌 op.67-41950年)ルービンシュタイン
・厳格な変奏曲(1946年)ホロヴィッツ
・序奏とロンド・カプリチオーソ(1957年)ルドルフ・ゼルキン

・オルガン作品集(前奏曲に短調、フーガ ニ短調、前奏曲とフーガ op.37-1、前奏曲とフーガ op.37-2、主題と変奏 ニ長調、アレグロ、コラールとフーガ、ソナタ第1 op.65-1、ソナタ第4 op.65-4)(1997年) ウルリック・スパング=ハンセン(オルガン)
 at the Stumm organ in the Hof - und Stadtkirche St. Paulus, Kirchheimbolanden





フルトヴェングラー ブラームス 交響曲 を聴く

Brahms: Symphonies

http://www.amazon.co.jp/Brahms-Symphonies-J/dp/B000002S69/ref=sr_1_fkmr0_1?s=music&ie=UTF8&qid=1382114703&sr=1-1-fkmr0&keywords=furtwangler+brahms+1947

◆第1番

 1952127日、ウィーン/ムジークフェラインザールでの録音。同番のベルリン・フィルとの演奏にくらべて録音が悪く、音の分離・解像が十分ではないのでフルトヴェングラー・ファン以外の向きには多分に欲求不満がたまるかも知れない。

 しかし、演奏は素晴らしい。また、この時代のフルトヴェングラーのブラームス解釈が、同時代および後世にひとつの「規範」として認識されていたのではないかとの思いを強くする。各楽章の位置づけが明確で、古典的な厳格な形式美を追求しつつ、ロマンティックな楽想をときに自由に展開する縦横さは絶妙である。特に第4楽章はテンポをあげて、前3楽章に対してすっきりと運行するが、意外にもカラヤンの同楽章の演奏はこれと近似していると感じた。

 ブラームス好きには、他盤との聞き比べでときに耳を傾けるとよい名演であると思う。
 
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%B9-%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC1%E7%95%AA-%E3%83%95%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%BC-%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%A0/dp/B00069BOEG/ref=cm_cr-mr-title
 
◆第2番

 195257日、ミュンヘン・ドイツ博物館でのベルリン・フィルとの演奏。低弦のアンサンブルが見事で、木管のこれに寄り添うような響きも大変美しく、最近の演奏に慣れているとティンパニーが少し強調されすぎているように感じる部分はあるが、全体の統一感はいささかも損なわれていない。

 フルトヴェングラーの演奏では情熱的な強奏に魅力を感じる向きも多いが、この2番を聴いているとその背後にある音楽の堅固な「構築力」により特質を感じる。細部まで神経の行きとどいた「集中力」の持続する演奏でもある。

 録音後、20年以上も一般に公開されなかったものだが、この盤がお目見えして以降、ブラームスの2番では間違いなく名演の一角を占める代表的な1枚である。


◆第3番

 19491218日、ティタニア・パラストでのベルリン・フィルとの演奏。聴き手が受けとるロマンティックな感興とは別に、厳しく統率された演奏である。テンポの緩急が自在だがけっして乱れない。これは指揮者とオーケストラが本当に一体化して、音楽空間で完全に融合しているからこそ可能な技芸であると感じる。弦のピッチが揃い、第3楽章のオーボエやホルンの抒情的な表現も全体のバランスに配意し音の運行には細心の注意が払われている。各パートがお互いによく聴き合って慎重に奏でているからだろう。

 演奏からうける表面的な印象は異なるが、緩楽章、滔々たる実に遅いテンポ、特に弱音部での研ぎ澄まされた感性の表出では、チェリビダッケの演奏との共通点を連想する。ブラームスの音楽はかくあるべし、との自信に満ちた秀演である。

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%B9-%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC3%E7%95%AA-%E3%83%95%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%BC-%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%A0/dp/B00005HQJ5/ref=cm_cr-mr-title
 
◆第4番

 19481024日、ティタニア・パラストでの演奏。フルトヴェングラーのブラームスでは、憂愁の深みを表現するうえで、感情移入によるテンポの大胆な緩急などについて多く語られるが、それに加えて、この演奏でのリズムの刻み方の切れ味はどうだろう。

 一般に語られる4番のもつブラームスの「人生の秋、枯淡の味わい」といった抒情的な解釈よりも、古典的な造形美を最後まで貫き、絶対音楽のもつ孤高性こそを生涯、変わることなく主張したブラームスの芯の強い本質にフルトヴェングラーは、鉈を振り下ろすような圧倒的にリズミックな隈取りと時に自信に満ちた強大なダイナミクスをもって応えているように思われる。

 しかもオーケストラは指揮者の意図を明確に理解し、細心の注意と最大限の集中力をもって臨場している。だからこそ、そこから湧きたつ音楽は、少しの曖昧さもなく説得的であり、深い感興をリスナーに与えることができるのだと思う。ドイツ的な名演という意味は、彼らのもつ「絶対音楽」の伝統を誇りをもって示しうるところにこそあるのかも知れないーーそうしたことをこの類い希な名演はわれわれに教えてくれている。
 

ーーーーーーーーーーーーーー
  かつてドイツ滞在中、毎朝、日が昇らずマイナス20度の寒さに街頭にでる経験をしたが、北ドイツの冬は暗くて実に寒い。同じドイツでもバイエルンなどの南の地方は少しく印象がちがうが、北方の生活者には憂鬱症といつも熟考する思慮深さ、そして厳しい環境、困難に負けない強い意志などがない交ぜになっているように感じることがある。よくブラームスを聴きながら通勤したが、これぞ風景と一体の感興があった。

 この4番は、交響曲作曲家として満を持しての決意表明たる1番、比較的温暖で明るい2番をへて、叙情性のもっとも良くでた3番ののち、晩年の集大成としての作品だが、ウイーンでの名声や華やかな生活の影響などどこにも感じられず、原点回帰、ブラームスの心象風景たる北ドイツの冬の寂寥感を強く意識させる。

 フルトヴェングラーの演奏は、その寂寥たる雰囲気を保ちながらも、その一方、上に記したように北方ドイツ人の強靭な意志をより印象づける。大胆なリズミックさとどこまでも底知れず沈降していく深みの感覚、テンポのたくまぬ可変性、フレージングの自由な処理、そして全体から受ける孤独に耐える知性的な闘争心。こういう演奏は他にない。
 
http://shokkou3.blogspot.jp/2010/12/blog-post.html
http://shokkou.blog53.fc2.com/blog-entry-187.html

ブラームス:交響曲第1番ハ短調Op.68 他 [モノラル] (Brahms: Symphony No.1 / Furtwangler, VPO (1947))
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%B9-%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC1%E7%95%AA%E3%83%8F%E7%9F%AD%E8%AA%BFOp-68-Brahms-Symphony-Furtwangler/dp/B0024P85VK/ref=sr_1_1?s=music&ie=UTF8&qid=1382114703&sr=1-1&keywords
=furtwangler+brahms+1947

   1947年のウィーン・フィルとのライヴ録音。リマスターによって音は聴きやすく雑音は非常に少ない。同コンビでは、1952年ムジークフェラインザールでの録音 があり、一般にはこちらを選択すべきだろうが、5年前の本盤も受ける印象はまったく変わらない。

 全4楽章を貫く基本線が明確で各楽章の構成力がしっかりとしている。そのうえで、表現ぶりは、ときに激しい気魄を、ときに胸奥に深く迫る豊かな叙情性を強調する。気魄あふれる強奏ではテンポをはやめ、叙情的な弱奏では思い切って緩める。その強弱、緩急の妙に独特の滋味が加わり、フルトヴェングラーならではのスタイルが表出される。本盤ではライヴゆえか、ウィーン・フィルの嫋々たる響きをたたえた木管の独奏パートも前面に出している。

月曜日, 10月 14, 2013

Great Conductors

Great Conductors


 スイスの都市ルガーノ、アスコーナで195468年に収録された10名の指揮者のライヴ録音集。1994年デジタル録音、デルマンのブルックナー:交響曲第9番が異色でついている。
全体としては、ベートーヴェンの交響曲が多く、4番(サヴァリッシュ)、5番(シェルヘン)、6番(フルトヴェングラー)、7番(ビーチャム)、8番(クナッパーツブッシュ)といった重厚なラインアップが揃う。
 ほかに、アンチェルのドヴォルザーク:交響曲第9番、バルビローリのヴォーン・ウィリアムズ:交響曲第8番、セルのシューマン:交響曲第2番など得意の演目が並び、この破格の値段なら文句なく楽しめる。録音もモノラルながら聴きやすい。

<収録情報> 【指揮者】録音時点(年代順)

【フルトヴェングラー】1954515

・モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番二短調 K.466

・ベートーヴェン:交響曲第6番ホ長調 『田園』

 イヴォンヌ・ルフェビュール(p

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
      (ルガーノ、アポロ劇場)

Beethoven/Mozart/Strauss
【クナッパーツブッシュ】19561018

・ベートーヴェン:交響曲第8番ヘ長調 op.93

・ブラームス:交響曲第2番ニ長調 op.73

 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
      (アスコーナ)
 
Beethoven:Symphony 8 /Brahms:Symphony 2
http://www.amazon.co.jp/Beethoven-Symphony-Brahms/dp/B000009L70/ref=cm_cr-mr-title
 

【ジョージ・セル】1957531日、1968119

・シューマン:交響曲第2番ハ長調 op.61

・ドビュッシー:交響詩『海』

・ベルリオーズ:『ファウストの劫罰』
      ~ラコッツィー行進曲

 クリーヴランド管弦楽団(ルガーノ)
 

セル指揮クリーヴランド管 シューマン:交響曲第2番 ルガノ・ライヴ

 【トーマス・ビーチャム】19571020

・ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調 op.92

・ヘンデル/ビーチャム編曲:組曲『バースの恋』

・ディーリアス:楽園への道

・シベリウス:『カレリア』組曲~行進曲風に

ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
      (アスコーナ)

Beethoven/Handel/Delius/Sibeli

【カレル・アンチェル】19581010

・スメタナ:歌劇『売られた花嫁』序曲

・ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調
        op.95『新世界より』

・ムソルグスキー/ラヴェル編曲
      :組曲『展覧会の絵』

 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
      (アスコーナ)
 

【ジョン・バルビローリ】1961411

・『エリザベス朝組曲』[バルビローリ編曲]

・ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲第8番二短調

R.-コルサコフ:スペイン奇想曲 op.34

・シャブリエ:狂詩曲『スペイン』

 ハレ管弦楽団(ルガーノ)
 
1961 Lugano Concert & Berne Recordings-Vaughan Wil
http://www.amazon.co.jp/1961-Lugano-Concert-Berne-Recordings-Vaughan/dp/B00E8CK6HS/ref=cm_cr-mr-title 

【チェリビダッケ】1963614

・シューベルト:交響曲第8番ロ短調
      D.759『未完成』

・チャイコフスキー:組曲『くるみ割り人形』
      op.71a


【サヴァリッシュ】196464

J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第5
      ニ長調 BWV.105

・シューベルト:交響曲第3番ニ長調 D.200

・ベートーヴェン:交響曲第4番変ロ長調 op.60

 ルチアーノ・スグリッツィ(cem)

 スイス・イタリア語放送管弦楽団(ルガーノ)

Bach/Beethoven/Schubert
http://www.amazon.co.jp/Bach-Beethoven-Schubert-Sawallisch/dp/B00004VTW5/ref=cm_cr-mr-title

 
  【ヘルマン・シェルヘン】1965224-26

・ベートーヴェン:交響曲第5
      ハ短調 op.67『運命』

 [リハーサル(44:40)と全曲演奏]

 スイス・イタリア語放送管弦楽団(ルガーノ)

Hermann Scherchen Conducts Beethoven
http://www.amazon.co.jp/Scherchen-Conducts-Beethoven-Orchestra-Televisione/dp/B00F6J9JCU/ref=cm_cr-mr-title
 
 
【ヴラディーミル・デルマン】1994

・ブルックナー:交響曲第9番二短調

 エミリア・ロマーニャ「アルトゥーロ・
      トスカニーニ」交響楽団
 

Bruckner: Symphony n.9