Art of Charles Dutoit (Coll) Box set
http://www.amazon.co.jp/dp/B000J233PI/ref=pdp_new_dp_review
デュトワのCD6枚組である。デュトワは特に、ラヴェル バレエ「ダフニスとクロエ」全曲 他 などのフランスものでは当代随一という名声を手にしてきた。鋭敏すぎる感覚をそのまま出すことなく、あたかも最上のシルクのヴェールで包み込んだような風情があり、その実、知的なエスプリと卓抜なユーモアをその背後にしかと感じさせる、こういった演奏スタイルこそデュトワの独壇場である。
ベルリオーズ Symphonies Fantastique Op 14 / Harold in Italy やストラヴィンスキー演奏でも、その特質が発揮される。激しく「荒くれた」表現力はここでは完全にセーブされ、気品に満ち明るい音調が全体を支配する。「柔らか」でありながら解釈は緻密であり、気高く美しい新境地を拓いた。
また、それ以外の演目においても、各楽器の特性を前面に、名手の饗宴といったことよりも、むしろ整序されたアンサンブルを重視し、全体を純音楽的に磨き上げている。「シェエラザード」などはその典型であろう。
全般に、純音楽的に<物語を紡ぐ>といった表題性をいかしたアプローチが得意で、聴き手の想像力に訴え、感性を刺激する名指揮者である。
(収録情報)
【CD1】
・メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」
・ベルリオーズ:序曲「宗教裁判官」
・スッペ:喜歌劇「軽騎兵」序曲
・サン=サーンス:交響詩「オンファールの糸車」/フィルハーモニアo.
・シャブリエ:狂詩曲「スペイン」
・レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」
・チャイコフスキー:幻想序曲「ロメオとジュリエット」
【CD2】
・リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」(1983年)
→ R.コルサコフ:交響組曲<シェエラザード>他
・ムソルグスキー/ラヴェル編:組曲「展覧会の絵」(1985年)
【CD3】
・コダーイ:組曲「ハーリ・ヤーノシュ」
・コダーイ:ガランタ舞曲
・バルトーク:管弦楽のための協奏曲
【CD4】
・ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲(1989年)
・イベール:交響組曲「寄港地」(1992年)
・イベール:バッカナール(1992年)
・ラヴェル:バレエ「マ・メール・ロワ」(1983年)
→ ラヴェル:マ・メール・ロア、クープランの墓、他
・ガーシュウィン:パリのアメリカ人
【CD5】
・プーランク:フランス組曲/フランス国立
・プーランク:バレエ「牝鹿」/フランス国立
・ストラヴィンスキー:交響曲ハ調 /スイス・ロマンドo.
・ストラヴィンスキー:3楽章の交響曲 /スイス・ロマンドo.
【CD6】
・ストラヴィンスキー:バレエ「ペトルーシュカ」(1986年)
・ストラヴィンスキー:オーケストラのための4つのエテュード(1986年)
・ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」(1984年)
→ ストラヴィンスキー:管弦楽作品集
<ボーナスDVD>
・プロコフィエフ:「ロメオとジュリエット」組曲(抜粋)
トロント・ダンス・シアター
・プロコフィエフ:交響曲第1番「古典交響曲」
ラヴェル:バレエ「ダフニスとクロエ」全曲 他
デュトワの「ダフニスとクロエ」(全曲版)である。ラヴェルは本曲を交響曲に比定しており、全曲版は50分を超す大曲である。特定の柔和なモティーフがいくども繰り返されることから、心地よき一種の睡眠効果があり、緊張感を持続して最後まで惹きつけるには、並々ならぬ求心力を要する。
ミュンシュ ラヴェル:ダフニスとクロエ(全曲) の歴史的な名演が良く知られるが、ここでは各楽器の特性を前面に、名手の饗宴といったアラカルトな魅力を出していた。対して、デュトワはむしろ純音楽的に、全体の<物語を紡ぐ>といった表題性をいかしたアプローチで、バレエというビジュアルな要素がなくとも、十全に聴き手の想念の世界を喚起するような<真正面>からの取り組みである。
ラヴェルの最高傑作を信任し、自身の解釈に絶対の自信をもっていたからだろう。緻密な音楽構成のもと、微妙なニュアンスの変化に聴き手の神経の波動がセットされれば、その照準のまま最後まで音楽的な満潮・引潮に乗ってドライヴしていく。それによって陶然としたラヴェルの世界に引き込むことは十分に可能と考えていたのではないか。その取り組みは見事に成功していると思う。
Symphonies Fantastique Op 14 / Harold in Italy CD, Import
http://www.amazon.co.jp/Symphonies-Fantastique-Op-Harold-Italy/dp/B0000261DK/ref=cm_cr_dp_asin_lnk
魅力的な演目の組み合わせである。ベルリオーズの『幻想交響曲』、『イタリアのハロルド』(ヴィオラ:ピンカス・ズーカーマン)の代表的2曲に加えて、『ロメオとジュリエット』から「ロメオひとり - キャピュレット家の饗宴」と「愛の情景」が収録されている。
録音は、モントリオールのサントゥスタシュ教会でなされ、残響が豊かで奥行のある音が心地よい。
『幻想』は、デュトワが十八番としていた演目で、構成美を崩さぬ品のある解釈。クリュイタンス盤を彷彿とさせるものがある。一方、『ハロルド』も同様な解釈ながら、こちらは、マルケヴィッチのシャープさには及ばないながら、本曲の特質を見事に浮かびあがらせている。「山におけるハロルド、憂愁、幸福と歓喜の場面」では、ズーカーマンの妙技を際立たせ、「夕べの祈祷を歌う巡礼の行列」は朗々とした讃歌を歌い上げ、「アブルッチの山人が、その愛人によせるセレナード」ではフォークロア的な親しみやすさを強調し、「山賊の饗宴、前後の追想」のフィナーレも見事な締めくくりである。
R.コルサコフ:交響組曲<シェエラザード>他
ラヴェル:マ・メール・ロア、クープランの墓、他
ストラヴィンスキー:管弦楽作品集 Box set, CD, Import
ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」「ペトルーシュカ」
ストラヴィンスキー:「火の鳥」全曲
メンデルスゾーン : 劇付随音楽「真夏の夜の夢」
レスピーギ:交響詩「ローマの松」 「ローマの祭り」 「ローマの噴水」
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