日曜日, 5月 29, 2016

Shostakovich: All Symphonies ショスタコーヴィチ

交響曲全集 ロジェストヴェンスキー、コンドラシン、スヴェトラーノフ、ムラヴィンスキー、テミルカーノフ、イワノフ、バルシャイ、他(10CD)

Shostakovich: All Symphonies



15曲のうち、初演指揮者がその後、録音した音源が、4、6、8、131415番の6曲ある。一方で、5、6、8、9、1012番の6曲を初演したムラヴィンスキーの収録分は2曲にとどまり、コンドラシンが、2、3、4、1213番の5曲(全体の1/3)を振っている。

様々な制約があるのかも知れないが、ユニークさを出すのであれば、極力、初演指揮者による編集という手もあったのではないかとも思う。とはいえ、お家芸を誇る一流の指揮者の競演であり演奏に定評があることに変わりはない。

一方で、ショスタコーヴィチでは録音の鮮度にこだわりのある向きもあろう。その点では、本集はいまや録音時点がやや古く、色褪せてみえるかも知れない。同一指揮者による全集で、録音も新しく廉価盤としては、ショスタコーヴィチ 交響曲 を聴く


などの選択肢もあろう。
 

<収録情報:(→では初演について記載)。*は初演指揮者>

第1番:ロジェストヴェンスキー/ソ連国立文化省響(1984年)

(→1926年、ニコライ・マルコ/レニングラード・フィル)

 

第2番:コンドラシン/モスクワ・フィル、ソ連国立アカデミー合唱団(1972年)

(→1927年、マルコ/レニングラード・フィル、レニングラード国立アカデミー・ア・カペラ合唱団)

 

第3番:コンドラシン/モスクワ・フィル、ソ連国立アカデミー合唱団(1972年)

(→1930年、アレクサンドル・ガウク/レニングラード・フィル)

 

第4番:*コンドラシン/モスクワ・フィル(1966年)

(→1961年、コンドラシン/モスクワ・フィル)

 

第5番:スヴェトラーノフ/ソ連国立響(1977年)

(→1937年、ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル)

 

第6番:*ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル(1972年)

(→1939年、ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル)

 

第7番:スヴェトラーノフ/ソ連国立響(1968年)

(→1942年、サムイル・サモスード/ボリショイ劇場管弦楽団)

 

第8番:*ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル(1961年)

(→1943年、ムラヴィンスキー/ソヴィエト響)

 

第9番:ロジェストヴェンスキー/ソ連国立文化省響(1983年)

(→1945年、ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル)

 

10番:テミルカーノフ/レニングラード・フィル(1973年)

(→1953年、ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル)

 

11 : コンスタンティン・イワノフ/ソ連国立響(1965年)

(→1957年、ナタン・ラフリン/ソヴィエト国立響)

 

12 : コンドラシン/モスクワ・フィル(1972年)

(→1961年、ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル)

 

13番:*コンドラシン/モスクワ・フィル、ソ連国立アカデミー合唱団、ゥール・エイゼン(バス)(1967年)

(→1962年、コンドラシン/モスクワ・フィル、ロシア共和国合唱団&グネーシン音楽大学合唱団、バス独唱ヴィタリー・グロマツキー)

 

14番:*ルドルフ・バルシャイ/モスクワ室内管、(ソプラノ)ガリーナ・ヴィシネフスカヤ、(バス)マルク・レシェーチン(1969年)

(→1969年、バルシャイ/モスクワ室内管、(ソプラノ)マルガリータ・ミロシニコワ、(バス)エフゲニー・ウラジミロフ)

 

15番:*マキシム・ショスタコーヴィチ/モスクワ放送響(1972年)

(→同上)

 

http://www.angelfire.com/teoi143/music/shostakovich/shostakovich_gallery.htm
 

火曜日, 5月 24, 2016

器楽の愉悦 Chamber Music

Great Chamber Music
Great Chamber Music

 有名な保養地ルガーノ、アスコーナ他でのライヴ録音集。1953~1992年までの約40年間の記録だが、登壇した演奏家が錚々たるもの。ヴァイオリンは、ミルシテイン、グリュミオー、シェリングが、チェロはフルニエ、フルートはランパル、そして四重奏団では、イタリア、ジュリアード、スメタナの3つの有名どころが並ぶ。さらに、一世を風靡したボスコフスキー/ウィーン八重奏団からカルミニョーラまで、なんとも豪華な陣容である。
 曲目も実に多彩(以下を参照されたい)で、この価格であればもったいないほどの内容。

(収録情報)
【ウィーン八重奏団/シューベルト:八重奏曲他 1953、1956】
・シューベルト:八重奏曲ヘ長調 D.803
 ウィリー・ボスコフスキー(指揮)ウィーン八重奏団
 録音:1953年6月25日 ルガーノ[モノラル]
・シューベルト:グラン・デュオ イ短調 D.574
 フランコ・グッリ(vn)、エンリカ・カヴァッロ(p)
 録音:1956年7月9日、ルガーノ[モノラル]

【ミルシテイン/リサイタル1957】
・J.S.バッハ:シャコンヌ(無伴奏パルティータ第2番 BWV.1004より)、無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番 BWV.1005~第4曲
・モーツァルト:アダージョ ホ長調 K.261、ロンド ハ長調 K.373
・ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調 op.24『春』
・パガニーニ:カプリース第11番ハ長調 op.1-11、カプリース第5番イ短調 op.1-5
・ストラヴィンスキー:ロシアの歌
・リース:常動曲 op.34-5
・パラディス:シシリエンヌ 変ホ長調
 ナタン・ミルシテイン(vn)、アルトゥール・バルサム(p)
 録音:1957年10月11日、アスコーナ[モノラル]

→ Nathan Milstein

【グリュミオー&ハスキル/リサイタル1960】
・モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第34番変ロ長調 K.378
・ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第4番イ長調 op.23、ヴァイオリン・ソナタ第10番ト長調 op.96
 アルテュール・グリュミオー(vn)、クララ・ハスキル(p)
 録音:1960年8月22日、アスコーナ[モノラル]

→ 別音源だが モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ集 も参照

【フルニエ/ベートーヴェン・リサイタル 1964】
・ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第2番ト短調 op.5-2、第3番イ長調 op.69、『マカベウスのユダ』の主題による12の変奏曲ト長調 WoO.45、『魔笛』の主題による12の変奏曲 op.66、
 ピエール・フルニエ(vc)、ジャン・フォンダ(p)
 録音:1964年8月21日、アスコーナ[モノラル]

→ Beethoven;Cello Sonatas etc.

【イタリア四重奏団/モーツァルト、ドヴォルザーク、ラヴェル 1968】
・モーツァルト:弦楽四重奏曲第15番ニ短調 K.421
・ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番ヘ長調 op.96『アメリカ』
・ラヴェル:弦楽四重奏曲ヘ長調
 イタリア四重奏団
 録音:1968年9月10日、アスコーナ[ステレオ]

【ジュリアード弦楽四重奏団/ベートーヴェン、ベルク 1970】
・ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第16番ヘ長調 op.135
・ベルク:抒情組曲
 ジュリアード弦楽四重奏団
 録音:1970年8月24日、アスコーナ[ステレオ]

【シェリング/ベートーヴェン、ブラームス、バッハ 1975】
・J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ ニ短調 BWV.1004
・ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第1番ニ長調 op.12-1
・ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調 op.78
 ヘンリク・シェリング(vn)、エウジェニオ・バグノーリ(p)
 録音:1975年9月、アスコーナ[ライヴ]

→ Violin Sonata.1 / 1 / Partita.2: Szeryng

【スメタナ四重奏団/シューベルト:『死と乙女』 1979、1982】
・ハイドン:弦楽四重奏曲団第39番ハ長調 Hob.'V-39
・シューベルト:弦楽四重奏曲第14番ニ短調 D.810『死と乙女』
 録音:1982年3月15日、ルガーノ[ステレオ]
・シューベルト:弦楽四重奏曲第1番変ホ長調 D.87
 スメタナ四重奏団
 録音:1979年3月19日、ルガーノ[ステレオ]
 
【ランパル、トリオ・パスキエ/モーツァルト:フルート四重奏曲集 1982】
・モーツァルト:フルート四重奏曲第1番ニ長調 K.285、第2番ト長調 K.285a、第3番ハ長調 K.285b、第4番イ長調 K.298、前奏曲とフーガ ニ短調 K.404、オーボエ四重奏曲 ヘ長調 K.370~ロンド、アダージョ ロ短調 K.540
 ジャン=ピエール・ランパル(fl)、トリオ・パスキエ
 録音:1982年9月21日、アスコーナ[ステレオ]

【カルミニョーラ、ザンチェッタ、ポギ、メルリ-ニ、ブルネッロ、ロッシ/ブラームス
1992】
ブラームス:弦楽六重奏曲第1番変ロ長調 op.18、第2番ト長調 op.36
 ジュリアーノ・カルミニョーラ(vn)、ステファーノ・ザンチェッタ(vn)、トマーゾ・ポギ(va)、ファブリツィオ・メルリ-ニ(va)、マリオ・ブルネッロ(vc)、フランコ・ロッシ(vc)
 録音:1992年4月6日、ボローニャ[ステレオ]

Great Concertos
Great Concertos

ハスキルのモーツァルト23番(1953年)、ベートーヴェン4番はグルダ(1965年)、「皇帝」はバックハウス(1961年)、クライバーンのチャイコフスキー1番(1962年)、ルービンシュタインのショパン(ソロ)。以上、ピアノだけでも名手の十八番が並ぶ。
 オイストラフはモーツァルト3番とブラームスの協奏曲(1961年)を引っさげ、バウムガルトナーで聴くヴィヴァルディ、チェロではシュタルケルとフルニエの聴き比べが可能。
 さらに、協奏曲ライヴ集のいわば「オマケ」ながら、指揮者に注目すれば、シューリヒトでモーツァルト40番、シェルヘンでブラームス3番、クリュイタンスでフランク「交響曲」、ストコフスキーでチャイコフスキー「ロメオとジュリエット」などが併録されている。
 1枚で本価格でも安いくらい。廉価盤ながら秀逸な内容、10倍の魅力といっても過言ではないだろう。

(収録情報)
【ハスキル/モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番他】

・モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488
 クララ・ハスキル(p)
 オトマール・ヌシオ(指揮) スイス・イタリア語放送管弦楽団
 録音:1953年6月25日、ルガーノ
・ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第7番 ハ短調 Op.30
 クララ・ハスキル(p) アルテュール・グリュミオー(vn)
 録音:1959年9月1日、アスコーナ

【バックハウス&シューリヒトの「皇帝」】

・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 Op.73「皇帝」
・モーツァルト:交響曲第40番 ト短調 K.550
・メンデルスゾーン:序曲『フィンガルの洞窟』
 カール・シューリヒト(指揮) スイス・イタリア語放送管弦楽団
 ヴィルヘルム・バックハウス(p)
 録音:1961年4月27日 ルガーノ、アポロ劇場

→ Beethoven ; Mozart ; Mendelssohn

【クライバーン/チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番】

・チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第番1番 変ロ短調 Op.23
 ヴァン・クライバーン(p)
 ピエトロ・アルジェント(指揮)スイス・イタリア語放送管弦楽団
 録音:1962年5月25日、ルガーノ

・幻想序曲『ロメオとジュリエット』
 レオポルド・ストコフスキー(指揮)スイス・イタリア語放送管弦楽団
 録音:1968年8月7日、ルガーノ[ステレオ]

→ Piano Concerto 1 / Romeo & Juliet Overture

【グルダ&クリュイタンス/ベートーヴェン第4番他】

・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 Op.58
・フランク:交響曲 ニ短調
 フリードリヒ・グルダ(p)
 アンドレ・クリュイタンス(指揮)スイス・イタリア語放送管弦楽団
 録音:1965年5月14日、ルガーノ[ステレオ]

→ Beethoven: Piano Concerto No.4 / Franck: Symphony 

【ルービンシュタイン/ショパン他】

・モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488
 オトマール・ヌシオ(指揮) スイス・イタリア語放送管弦楽団
 録音:1961年5月12日、ルガーノ
・ショパン:夜想曲第2番 嬰ヘ長調 Op.15
・ヴィラ=ロボス:『赤ちゃんの家族』~道化人形
 録音:1961年5月8日、ボローニャ
・ショパン:幻想曲 へ短調 Op.49、前奏曲第15番 変ニ長調 Op.28『雨だれ』、同第8番 嬰へ短調 Op.28、同第23番 ヘ長調 Op.28、同第24番 ニ短調 Op.28、バラード第3番 変イ長調 Op.47、子守歌 変ニ長調 Op.57、ワルツ第2番 嬰ハ短調 Op.64、練習曲第5番 ホ短調 Op.25
 録音:1970年11月7日、ボローニャ[ステレオ]
 アルトゥール・ルービンシュタイン(p)

 
【オイストラフ/ブラームス:ヴァイオリン協奏曲、他】

・ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77
・モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調 K.216
 オトマール・ヌシオ(指揮)スイス・イタリア語放送管弦楽団
 ダヴィド・オイストラフ(vn)
 録音:1961年6月11日、ルガーノ

【ウート・ウーギ/ベートーヴェン、チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲】

・ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.61
 録音:1970年11月5日、ルガーノ[ステレオ]
・チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.35
 録音:1981年9月18日、ルガーノ[ステレオ]
 マルク・アンドレーエ(指揮)スイス・イタリア語放送管弦楽団
 ウート・ウーギ(vn)

【バウムガルトナー/ヴィヴァルディ他】

・ヴィヴァルディ:2本のヴァイオリンのための協奏曲 変ロ長調
 Paul Ezergailis, Roger Pyne (vn)
・パーセル:シャコンヌ ト短調
・バッハ:チェンバロ協奏曲 ト短調 BWV.1058
 ミエチスラフ・ホルショフスキー(p)
 録音:1981年9月4日

・モーツァルト:『5つのフーガ』 K.405~第5番、第8番、第9番
 録音:1968年9月2日、ロカルノ

・ヴィヴァルディ:チェロ協奏曲ホ短調
 ピエール・フルニエ(vc)
・メンデルスゾーン:弦楽のための交響曲第10番ロ短調
 ルドルフ・バウムガルトナー(指揮)ルツェルン祝祭弦楽合奏団
 録音:1970年9月11日、アスコーナ[ステレオ]

【シュタルケル/ハイドン、ショスタコーヴィチ他】

・ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第1番 変ホ長調 Op.107
・バッハ:無伴奏チェロ組曲第2番 BWV.1008~サラバンド
 マルク・アンドレーエ(指揮) スイス・イタリア語放送管弦楽団 ルガーノ

・ハイドン:チェロ協奏曲第1番 ハ長調 Hob.VIIb:1
・クープラン: 演奏会用小品
 ルドルフ・バウムガルトナー(指揮)ルツェルン祝祭弦楽合奏団 ロカルノ
 ヤーノシュ・シュタルケル(vc)
 
【フルニエ&シェルヘン/ドヴォルザーク:チェロ協奏曲】

・ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104
・ブラームス:交響曲第3番 ホ長調 Op.90
 ヘルマン・シェルヘン(指揮) スイス・イタリア語放送管弦楽団
 ピエール・フルニエ(vc)
 録音:1962年4月25日

→ Great Conductors Great Chamber Music も推賞

日曜日, 5月 15, 2016

バルトーク Bartók Béla


https://c1.staticflickr.com/3/2433/4195702556_130687da05.jpg


一時、バルトークばかり聴いていた。クラシック音楽を聴きはじめた頃は、あまり馴染めなかった。たぶんフリッツ・ライナーの演奏がバルトーク開眼の切っ掛けであったと思うが、面白くなって集中的に作品に接した。

その後、ショルティの旧盤、新盤をBOXセットで聴いて、管弦楽の多元的な響きの虜になった。まぎれもなく20世紀を代表する天才的な作曲家(生没年:1881325日~1945926日)の一人である。

ハンガリアン・ファミリー(2):バルトーク
http://freizeit-jiyuu.blogspot.jp/2006/07/blog-post.html
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バルトーク:打楽器、弦楽器、チェレスタのための音楽、ディヴェルティメント、中国の不思議な役人

バルトーク:打楽器、弦楽器、チェレスタのための音楽、ディヴェルティメント、中国の不思議な役人 

 
 <打楽器、弦楽器、チェレスタのための音楽について>
第1楽章冒頭、半音階的な主題が、現代の闇を覗くような不気味な、底知れぬ不安をかきたて(弦楽器は混濁と清浄の2つの弾き分けをしている)、第2楽章のパーカッションとピアノの特色のある打鍵と弦の跳ねるような追尾(バルトーク・ピッツィカート)はとても躍動的。シカゴ響の巧さとともに、ショルティ得意の鋭角的なアプローチが冴えわたる。

第3楽章の(右サイドからの)拍子木による幕開けの後は第1楽章の不安が再来しサイコ・ストーリーのバックにぴったりの曲が展開され、あたかも闇の深さとともに不安が高鳴るさまを示しているようだ。終楽章では、暗く長い洞窟から突然、抜け出したような驚きを感じる。民族的なメロディと強いリズミックな音感が綾を成し壮大なクライマックスにいたる。

旧盤同様、ショルティの演奏は以上の過程を整然かつ濃厚に描いているが、シカゴ響の妙技と物量がものを言い、熱のこもった秀逸な記録となっている。 


バルトーク:管弦楽のための協奏曲&舞踏組曲
 
バルトーク:管弦楽のための協奏曲&舞踏組曲
 




ハーリ・ヤーノシュ/ハンガリー曲集

ハーリ・ヤーノシュ/ハンガリー曲集


ショルティがいかにバルトークほか故国ハンガリーの音楽を愛し生涯、それに拘っていたか。その優れた成果がここにある。

若き日の地道な演奏の積み上げ The Hungarian Masters をへて、その集大成 Solti Conducts Bartok にいたる。本集はそのエッセンスを聴くことができる。一貫して明快な解釈で、躍動感にすぐれ、かつフォークロアの気高い情感に心動く。半世紀におよぶショルティのこの作曲家への熱い思い入れは響きあう魂の声とでもいうべき共感に支えられていると感じる。 
 
The Hungarian Masters
 
上記3曲以外の主要な演目について、ショルティの旧盤から。

◆バルトーク:舞踏組曲(1952年録音)

1923年ブダペスト市制50周年記念のために作曲された祝祭的作品。ストラヴィンスキーを連想させるような鋭いリズムの打ち降しとどこか懐かしい素朴なフォークロアの見事な融合をショルティは生き生きと活写している。

なお、ショルティについては以下も参照。
 http://shokkou3.blogspot.jp/2014/07/blog-post_9169.html 

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Saturday, July 15, 2006

バルトーク:管弦楽のための協奏曲

バルトーク:管弦楽のための協奏曲

ライナーのバルトークは極めて激しい気迫に満ちている。そのライナーを聴く。


◆管弦楽のための協奏曲 Sz116(1955年10月22日録音)
◆弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽 Sz106(1958年12月28、29日録音)

◆5つのハンガリー・スケッチ op38(同上)
 
どうしてこんなに自信にみちた演奏ができるのだろう。曖昧さが微塵もない。こうとしか演奏できない、といった「一意的」明確性の提示である。「聴覚」は一瞬も気のぬけない対応が求められる、ある種、締め付けられるような緊張感が漲る演奏である。
 
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◇バルトーク ピアノ協奏曲全集(第1~3番)
 
Bartok: Ctos P/Pno 1 & 3
 
コヴァセヴィッチとコリン・デイヴィス/ロンドン響、BBC響による演奏。小生の好むアシュケナージとショルティの組み合わせ バルトーク:ピアノ協奏曲全集 では、ショルティの揺るぎないバルトーク像をアシュケナージが理解し完全に融合したような演奏で、いわばピアノ付交響曲全集。一方、本盤ではコヴァセヴィッチとデイヴィスが対等な立場で共同作業を行なっている印象。
バルトークの3曲の変遷はドラマティックで、第1番第3楽章の強靭、激烈な音響と第3番第2楽章の諦観的な静寂美の対照などは、表現者にとっては面白くもありしんどくもあろうが、コヴァセヴィッチは深く作曲家の心情に寄り添い感動的なピアニズムを展開している。デイヴィスの追走も見事で変化に富んだ3曲の起伏をならし鷹揚に構えて一気に聴かせる好演である。
 
 
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Solti Conducts Bartok

フリッツ・ライナー(生年1888~没年1965年)、ジョージ・セル(18971970年)、ユージン・オーマンディ(18991985年)、アンタール・ドラティ(190688年)、フェレンツ・フリッチャイ(191463年)、イシュトヴァン・ケルテス(192973年)そしてゲオルグ・ショルティ(191297年)。彼らの多くはブダペストで生まれ、リスト音楽院に学び、アメリカのメジャー・オーケストラで活躍した<ハンガリアン・ファミリー>である(ドホナーニをふくめ彼らこそが全米主要オケのビルダーだった)。欧州で活動したフリッチャイ、ケルテスは残念ながら早世し、ふたりより年長のショルティはもっとも活動時期が長かったので、故国の大音楽家バルトークについても多くの素晴らしい音源を残してくれたが、以上の各人のバルトーク演奏はいずれも甲乙つけがたい見事なものである。
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バルトーク:弦楽四重奏曲全集(2枚組)/Bartok: String Quartets
バルトーク:弦楽四重奏曲全集(2枚組)/Bartok: String Quartets

古き民族音楽のハンターたるバルトークは、弦楽四重奏曲では、そうしたフォークロアを援用することなく、むしろ実験的な手法に挑戦しているように思う。不協和音、十二音階、無調的展開、残された6曲には様々なフラグメントが詰め込まれており、それが現代音楽を好むリスナーには大きな魅力だろう。 

ルービン四重奏団の演奏は丹念である。第1番から第6番まで一気に聴くが、作曲年代の時代状況(2つの大戦の間)や作曲家の心象(不安と悲哀)を肌身で感じられるような趣きがある一方、過激なスタイルをとらず、手堅く作品の多面性をキチンと表現しようとしているようだ。大人しめの演奏ながら個々の作品の意味を十分に吟味しており、後期の演目ほどむしろ古典回帰している面も浮かび上がってくる。繰り返し聴きたくなる良き演奏である。