月曜日, 5月 02, 2016

ラヴェル Maurice Ravel



















ラヴェルは愛煙家だったようで、多くの写真は紫煙とともにある。まずは、弦楽四重奏曲ヘ長調をふくむアルバムから。

Mozart/Dvorak/Ravel
Mozart/Dvorak/Ravel

1945年から1980年まで活躍したイタリア四重奏団(パオロ・ボルチャーニ〔第1vn〕、エリサ・ペグレッフィ〔第2vn〕、ピエロ・ファルッリ〔va:当時〕、フランコ・ロッシ〔vc]〕は、イタリアを代表するグループでオールラウンダーの幅広いレパートリーで鳴らした。

ドヴォルザーク、ラヴェルは彼らの正規盤では聴けない演目であることが稀少価値であることの一方、録音については、ライヴ音源なので仕方がないけれど、高音域〔第1vn〕が強調されすぎており、本団の良さである厚い中声部のふくらみあるアンサンブルがやや痩せて聴こえる点が残念である。

【イタリア四重奏団/モーツァルト、ドヴォルザーク、ラヴェル 1968】
・モーツァルト:弦楽四重奏曲第15番ニ短調 K.421
・ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番ヘ長調 op.96『アメリカ』
・ラヴェル:弦楽四重奏曲ヘ長調
 イタリア四重奏団
 録音:1968年9月10日、アスコーナ[ステレオ]

→ Great Chamber Music にて聴取

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ブーレーズのラヴェル。その斬新なアプローチは多くの支持を得てきた。

Ravel: Pierre Boulez Conducts
Ravel: Pierre Boulez Conducts

ブーレーズのラヴェル集5枚組。ただし、ベルリン・フィル盤 ラヴェル:ボレロ、スペイン狂詩曲、他 などもありこれは旧録音である。

ラヴェルの音楽は、誇り高き本場フランスのオケで・・・といった先入主も(一部には)あるが、早くから米国などで受容された事実が示すように、本来、現代性、コスモポリタン性に富む。しかし、管弦楽曲に関する限り、超一流のオケであることは必須要件だろう。本集の太宗をしめるクリーヴランド管、ニューヨーク・フィルはその点では申し分のない技量である。

また、ラヴェルの魅力は、管と弦の<完全融合>のえもいわれぬ<愉悦感>にあると思うが、ブーレーズは実にブレンダー能力の高いシェフである。音量よりも特有の柔らかなリズムと研ぎ澄まされた絶妙な音質に耳を傾ける見事な成果である。

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オーマンディも知る人ぞ知る名演を残している。

ボレロ~ラヴェル&ドビュッシー..
ボレロ~ラヴェル&ドビュッシー..

1960~70年代、日本でのオーマンディの評価は不当に低かったと思う。それはさらに一時代前、かのカラヤン/フィルハーモニー管弦楽団の清新溌剌たる演奏についてすら、音が「軽い」と一刀両断に評論家からいわれたくらい、「重厚なドイツ的な響き」、「艶やかなウイーンの響き」こそ最上といったステロタイプ化された価値観が、当時の日本では根強かったからかもしれない。

それゆえ1967年のオーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団の初来日ライヴをはじめて聴いた人は、その響きの明耀さと技量の確かさに舌をまいたという。それは1970年のセル/クリーヴランド管弦楽団の来日公演でも音色、アンサンブルこそフィラデルフィアとは異なれ同様の驚きがあったことだろう。今日からは隔世の感があるけれど、これは海外来日クラシック音楽界揺籃期の出来事である。

さて本盤。いま虚心坦懐に耳をかたむけると、この曲集の完成度が実に高いことがわかる。特に「ダフニスとクロエ」の色彩感あふれる表現ぶりー水に反射する陽光に似たりーにはぞくぞくするような感動がある。それはオーマンディが巷間いわれるように技術的に「巧い」からだけではなく、曲の本質をしかと掴み、フィラデルフィア管弦楽団と完全共有していたからこそではないかと思わせる。ドビュッシー、ラヴェルといえばミュンシュLa Merやブーレーズラヴェル:作品集(SACD)の演奏も好きだが、この曲集には真似のできないオーマンディ流の自然体の構えと独立の美意識があろう。
 
→ Eugene Ormandy Conducts 20th Century Classics

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デュトワはラヴェルでも、もちろんはずせない。

ラヴェル:バレエ「ダフニスとクロエ」全曲 他
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デュトワの「ダフニスとクロエ」(全曲版)である。ラヴェルは本曲を交響曲に比定しており、全曲版は50分を超す大曲である。特定の柔和なモティーフがいくども繰り返されることから、心地よき一種の睡眠効果があり、緊張感を持続して最後まで惹きつけるには、並々ならぬ求心力を要する。

ミュンシュ ラヴェル:ダフニスとクロエ(全曲) の歴史的な名演が良く知られるが、ここでは各楽器の特性を前面に、名手の饗宴といったアラカルトな魅力を出していた。対して、デュトワはむしろ純音楽的に、全体の<物語を紡ぐ>といった表題性をいかしたアプローチで、バレエというビジュアルな要素がなくとも、十全に聴き手の想念の世界を喚起するような<真正面>からの取り組みである。

ラヴェルの最高傑作を信任し、自身の解釈に絶対の自信をもっていたからだろう。緻密な音楽構成のもと、微妙なニュアンスの変化に聴き手の神経の波動がセットされれば、その照準のまま最後まで音楽的な満潮・引潮に乗ってドライヴしていく。それによって陶然としたラヴェルの世界に引き込むことは十分に可能と考えていたのではないか。その取り組みは見事に成功していると思う。

ラヴェル:マ・メール・ロア、クープランの墓、他
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デュトワの「マ・メール・ロワ」を聴いて、フランスものでは当代随一という気がした。鋭敏すぎる感覚をそのまま出すことなく、あたかも最上のシルクのヴェールで包み込んだような風情があり、その実、知的なエスプリと卓抜なユーモアをその背後にしかと感じさせる、こういった演奏スタイルはラヴェルにまさに向いている。

前奏曲から第5場まで、マザーグースの寓話が情景とともに浮かび上がる。紡ぎ車の踊り、パヴァーヌでは、眼前に眠れる森の美女が玲瓏として現れるような錯覚すらある。美女と野獣の対話、一寸法師、妖精の園へと聴きすすむにつれ、物語の進行におもわず引き込まれる。所収外だが「ダフニスとクロエ」でも同様な感想をもった。デュトワの妙技といえよう。
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次はシノーポリ。これも現代演奏の規範のひとつと思う。

Bolero, Daphnis Et Chloe.2 / La Mer: Sinopoli / Po
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シノーポリ/フィルハーモニア管による「ラヴェル, ドビュッシー」集。「ボレロ」、「ダフニスとクロエ第2組曲」から無言劇、全員の踊り、「海 3つの交響的スケッチ」海の夜明けから真昼まで、波の戯れ、風と海との対話を収録。1988年8月ロンドンでのデジタル録音。

シノーポリがこの曲集が苦手の訳がない。ラテンの血はイタリアもフランスも共通するものも多い。イタリアオペラで鍛えた感性表現は当然、フランスものでもしっくりとくるものもあろう。さて、それに加えて、である。フランス的理詰め、エスプリ、哲学的直観―これらは、いずれもシノーポリの得意とするところ。フランス人はイタリアオペラを好みつつも、安普請なところはちょっと低くみるような「意地悪」もあるが、その優越感のなせるところは、自分たちの文化の背後に、理詰め、エスプリ、哲学的直観があるという自負によるからかも知れない。しかし、シノーポリは最高度にそれらを持っている。

まず「ボレロ」を聴いて参る。わずかに音に混濁があるようにも感じるが、理知的な名演。対して、「ダフニスとクロエ」と「海」は鷹揚としたスタイルであくまでもメローディアスな音楽空間にたゆたうような錯覚がある。しかし、それは単に「上手い」のではなく、音楽(作曲家)のツボを1点、迷うことなく瞬時にぴたりと押さえたような演奏をイメージさせる。
http://shokkou3.blogspot.jp/2015/07/blog-post.html

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ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、ラヴェル:ピアノ協奏曲

  ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、ラヴェル:ピアノ協奏曲

エリーヌ・グリモー 名演集(5枚組、下記)の中から聴く。ラフマニノフ、天下の名曲、あまたの名演が屹立し、グリモー自身の新盤ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、≪音の絵≫から 他もあるなか、地味な印象ながらこのデビュー盤の魅力も捨てがたい。40代、最近のグリモーの大胆な音づくりとは異なった、楷書的な演奏ながら、肩に無用な力にはいらない自然体のアプローチで、なにより音にこめられた煌く感性がとても佳い。一方のラヴェルは、明るく、おそらく狙い通りのやや機械的な、おどけた表情も見事にみせてこれも楽しめる。へスス・ロペス=コボスという指揮者はコンチェルトの巧者で、ソリストの地の良さを最大限、プレイアップしている。爽やかなアルバムである。

→ エリーヌ・グリモー 名演集(5枚組)/Helene Grimaud: The Piano Collection


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http://shokkou.blog53.fc2.com/blog-entry-463.html

ラヴェル作品集Disc13-14
● 『シェエラザード』序曲
● 高雅で感傷的なワルツ
● バレエ音楽『マ・メール・ロワ』
● 『ジャンヌの扇』~ファンファーレ
● 組曲『クープランの墓』
● 海上の小舟
● ボレロ

ニューヨーク・フィルハーモニック
ピエール・ブーレーズ(指揮)
録音:1971-1976年

● スペイン狂詩曲
● 道化師の朝の歌
● 亡き王女のためのパヴァーヌ
● 左手のためのピアノ協奏曲ニ長調

フィリップ・アントルモン(ピアノ:協奏曲)
クリーヴランド管弦楽団
ピエール・ブーレーズ(指揮)
録音:1969-1970年

Disc15
● ピアノ協奏曲ト長調

フィリップ・アントルモン(ピアノ)
フィラデルフィア管弦楽団
ユージン・オーマンディ(指揮)
録音:1964年

● 弦楽四重奏曲ヘ長調

ジュリアード弦楽四重奏団
録音:1992年

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