ペルシャの市場&剣の舞い~オーケストラの玉手箱
なんと言っても最右翼はこれだろう。アーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団のクラシック小品集といえば、それだけで駄演なし、文句なく楽しめる一大トップ・ブランドだった。
クラシック・ファンのみならず、誰でもが親しめ、寸鉄の如きインパクトのある元気な曲(剣の舞い)から、知らずに涙腺を刺激する感傷的な曲(ホフマンの舟歌)まで、なんでもどうしてここまで巧く演奏できるのだろうかという一種の驚きがあった。しかも、指揮者やオケが目立つことなく、リスナーが曲に自然にはいっていけるところが真の名人芸ということだろう(1956~60年のステレオ録音)。
アーサー・フィードラーはボストンの名家に生まれ、最高度の英才教育をうけたのちに欧州でさらに研鑽を積んだいわば正統派。ボストン・ポップス管弦楽団は母体がボストン響で、けっしてイージーリスニングな俄か仕立ての軽いオケではない。最強の組み合わせが、ニッチを攻めてこのジャンルで他を寄せつけない成果を生んだとも言えよう。そこが往時のアメリカらしい商業主義的にもダントツの逞しさかも知れない。
<収録情報>
・ペルシャの市場(ケテルビー)
・剣の舞い(ハチャトリアン)
・火祭りの踊り(ファリャ)
・ハンガリー狂詩曲第2番嬰ハ短調(リスト)
・ワルキューレの騎行(ワーグナー)
・くまばちは飛ぶ(リムスキー=コルサコフ)
・ホフマンの舟歌(オッフェンバック)
・ワルツ「ドナウ河のさざ波」(イヴァノヴィッチ)
・スケーターズ・ワルツ(ワルトトイフェル)
・ワルツ「金と銀」(レハール)
・メリー・ウィドウ・ワルツ(レハール)
・愛の夢(リスト~ハーバート編)
・グリーンスリーヴズによる幻想曲(ヴォーン・ウィリアムズ)
・ジェラシー(ガーデ)
ヨーロッパの都市で、物見遊山で教会に立ち寄るとパイプオルガンの壮麗な響きがドームに満ちていることがある。正式なミサや演奏会ではなく、若きオルガニストが練習しているときにも遭遇する。聴いていると、この楽器の操舵がとてつもなく難しいであろうことが素人でもわかる。そうしたオルガニストの文字通り頂点にながらく鎮座した女性こそがマリー=クレール・アランである。
アランの演奏は、けっして高踏的で近づきにくいものではない。オルガンの響きの奥深さ、全身を包む音の抱擁感、そして大樹によりかかっているような安定感と安心感、そうしたオルガン特有の良さをしみじみと伝えてくれる。
このアンコール集は、ドイツ正統派からフランスの機知に富む小品まで、アラン得意の演目がラインナップされている。素晴らしいオルガンの入門盤である。
CD 3:アランMarie-Claire Alain J.S.バッハ『オルガン名曲集』
CD17:アランMarie-Claire Alain フランク『オルガン作品集』
CD22:アランMarie-Claire Alain リスト:十字架の道、ミサ・コラリス
CD32:アランMarie-Claire Alain ジャン・アラン:オルガン、弦楽五重奏、ティンパニのためのサラバンド、デュリュフレ:アランの名による前奏曲とフーガ、3つの舞曲他
ほかに登場しており、そのレパートリーの広さと存在感の大きさを知ることができる。
ピーターと狼(紙ジャケット仕様)
このジャケットが有名でへ併録されている「青少年のための管弦楽入門」は目立たないのだが、実はこれが隠れた名演。小生は大変気に入っている。
オーマンディ/フィラデルフィア管の技量・音楽美をあますところなく表現しようとした意欲作である。端正にして、どの楽器もこれぞヴィルトゥオーソというプライドをもって臨場し、そして全体はまた一味違う融合感をだしている。
オーマンディが手塩にかけた管弦楽団そのものが一個の精妙な作品に思えてくる。以下の順に耳を寄せてフィラデルフィア・サウンドを愉しみたい。
Ⅰ主題(全管弦楽、木管楽器、金管楽器、弦楽器、打楽器、全管弦楽)、Ⅱ変奏(フルート、ピッコロ→オーボエ→クラリネット→ファゴット→ヴァイオリン→ヴィオラ→チェロ→コントラバス→ハープ→ホルン→トランペット→トロンボーン→チューバ→ティンパニ→大太鼓とシンバル→タンブリンとトライアングル→小太鼓とウッドブロック→シロフォン→カスタネットとタムタム→むち)、Ⅲフーガ/全管弦楽
Eugene Ormandy Conducts 20th Century Classics
魔法使いの弟子~フランス管弦楽曲名曲集
ラヴェルの「ボレロ」は1928年の作曲。一方、デュカスの「魔法使いの弟子」は遡ること約30年前の1897年の作品。しかし、この2作品、よく似ているところがある。同じメロディとリズムが繰り返されて、それが徐々に拡大されていく展開。前者はクールで怜悧な構え、一方、後者は物語性に富む感情表出にもあふれた展開。
小生、「ボレロ」はシノーポリが好みだが、本曲ではミュンシュの思い切りのよい、それでいてウイットも満載した演奏に脱帽する。こうした演目におけるミュンシュの明快で胸のすく棒には大家の自信と余裕を感じる。
Un Siecle De Musique Fran にて聴取
Herbert von Karajan - Portrait
カラヤンには各曲で旧録、新録もありこの1集は注目度は一般には低いだろう。ところが、ここには2つの熱気に満ちた、この時代特有のカラヤンの滅法、激しい演奏のライヴの一部が収録されている。ウィーン響との「カルメン」とバイロイト祝祭管との「マイスタージンガー」前奏曲である。できれば全曲を味わいたいが、エッセンスを聴くだけでもその凄みは実感できるだろう。
<収録情報>
・J.シュトラウス:喜歌劇『こうもり』序曲(1955年)P
・R.シュトラウス:歌劇『ナクソス島のアリアドネ』〜プロローグ(1954年)P
・ビゼー:カルメン組曲(1954年)ウィーン交響楽団
・ワーグナー:『ニュルンベルクのマイスタージンガー』〜第1幕への前奏曲、第3幕への前奏曲(1951年) バイロイト祝祭管弦楽団
・モーツァルト:歌劇『魔笛』序曲、僧侶の行進(録音時期:1953年)P
・フンパーディンク:歌劇『ヘンゼルとグレーテル』前奏曲集(1953年)P
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