月曜日, 5月 08, 2017

ショルティ George Solti

George Solti Conducts Opera Works
George Solti Conducts Opera Works

ショルティ、主として1950年代のオペラ名曲選である。ウィーン・フィルと「指輪」全曲録音の金字塔を打ち立てたショルティが、それ以前の40年代後半から50年代にかけて、旺盛にオペラに注力していたかの証左がここにある。

R.シュトラウスやワーグナーのドイツものに加えて、イタリア歌劇も積極的に取り上げられている(「椿姫」「オテロ」「アイーダ」など、但し原曲のドイツ語による上演でこの点、要留意)。

小生、以下の4枚がお勧めで、ショルティに興味があり、このスーパー廉価であればライヴラリーに加えて損はないだろう。

◆オペラ管弦楽集、名場面集→Solti - the Opera Conductor, Vol. 1 (1952-1959)
◆R.シュトラウス集→Solti - The Opera Conductor, Vol. 2 (1952, 1957)
◆ワーグナー集1、3→Solti - The Opera Conductor, Vol. 3 (1957, 1958)Solti - The Opera Conductor, Vol. 5 (1957)

(備考)収録内容抄。全くの参考まで(括弧内、録音年)。
【CD1】
1.オッフェンバック『ホフマン物語』から Barcarole (1959)
2.ドリーブ『ラクメ』から、Sari Barabas/ SDR 交響楽団(1952)
3.サン・サーンス『サムソンとデリラ』から、シミオナート(1956ライブ)
4.グリンカ『 ルスランとリュドミラ』序曲/ベルリン ・ フィル(1959)
5. チャイコフスキー『オネーギン』から、テバルディ ' 1956年(ライブ)
6.マスカーニ『カヴァレリア・ルスティカーナ』から、シミオナート(1956ライブ)
7.ロッシーニ『セヴィリアの理髪師』序曲/ ロンドン・フィル(1955)
8.モーツァルト『フィガロの結婚』から、 シミオナート(1956ライブ)
9.ヴェルディ『椿姫』第1幕序曲(1959)
10.ジョルダーノ『アンドレア・シェニエ』から、バスティアニーニ(1956ライブ)
11.ボーイト『メフィストーフェレ』から、テバルディ(1956ライブ)
12.ポンキエッリ『ジョコンダ』から、テバルディ+シミオナート(1956ライブ)
13.同、ダンス音楽(1959)

以上、記載のないオーケストラは、シカゴのリリック・オペラ (3、5、6、8、10-12)、ロイヤル ・ オペラハウス、コヴェントガーデン(1, 9, 13)

【CD2】
R.シュトラウス『エレクトラ』抜粋(エレクトラ:クリステル ゴルツほか)/バイエルン国立管弦楽団、ミュンヘン(1952)
『アラベラ』抜粋(アラベラ:リザ・デッラ ・ カーサほか/ウィーン ・ フィル(1957)

【CD3〜5】
ワーグナー『ラインの黄金』抜粋(1958)、『ワルキューレ』抜粋※
※第1幕:バイエルン国立歌劇場合唱団&管弦楽団、ミュンヘン (1947ライブ)
 第3幕:ウィーン・フィル(1957)

【CD6】
ロッシーニ『セミラーミデ』抜粋/ケルン放送合唱団&交響楽団(1958)

【CD7】
ヴェルディ『アイーダ』抜粋/バイエルン国立歌劇場合唱団&管弦楽団、ミュンヘン(1949)
同『ファルスタッフ』抜粋/ケルン放送合唱団&交響楽団(1950)

【CD8】
ヴェルディ『運命の力』序曲/ロンドン・フィル(1952)
同『椿姫』抜粋/バイエルン放送合唱団&管絃楽団(1951)、ロイヤル・オペラ・ハウス、コベントガーデン ロンドン(1959)

【CD9】
プッチーニ『トゥーランドット』抜粋/ケルン放送合唱団&交響楽団(1956)

【CD10】
モーツァルト『魔笛』抜粋/ヘッセン放送合唱団&交響楽団(1955)
同『コジ・ファン・トゥッテ』抜粋/フランクフルト歌劇場合唱団&管弦楽団(1958ライブ)
同『ドン・ジョヴァンニ』抜粋/フランクフルト歌劇場合唱団&管弦楽団(1959ライブ)

Solti - the Opera Conductor, Vol. 1 (1952-1959)
Solti - the Opera Conductor, Vol. 1 (1952-1959)

ショルティ、1950年代のオペラ名曲選第1集。テバルディ(ソプラノ)、シミオナート (メゾ・ソプラノ)などの名歌手の聴かせどころも魅力。

<収録演目>
1.歌劇「ルスランとリュドミラ」 - 序曲/ベルリン・フィル
2.歌劇「ラクメ」 - 第2幕 鐘の歌/サーリ・バラバシュ (ソプラノ)、南西ドイツ放送交響楽団(1952)

3.歌劇「サムソンとデリア」 Op. 47 - 第2幕 Sieh, mein Herz erschliesset sich
4.歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」Voi lo sapete
5.歌劇「フィガロの結婚」 K. 492 - 第2幕 ママも知る通り/ジュリエッタ・シミオナート (メゾ・ソプラノ)、シカゴ・リリック・オペラ管弦楽団(1956)
→3〜5/ジュリエッタ・シミオナート (メゾ・ソプラノ)、シカゴ・リリック・オペラ管弦楽団 (1956)

6.歌劇「エフゲニー」・オネーギン Op. 24 - 第1幕 Tatiana' Letter Scene
7.歌劇「メフィストフェレ」 - 第3幕 マルゲリータの死
8.歌劇「ジョコンダ」 - 第2幕 そして,呪いを!/
→6〜8/レナータ・テバルディ(ソプラノ)、シカゴ・リリック・オペラ管弦楽団(1956)

9.歌劇「ホフマン物語」 - 舟歌(管弦楽編)
10.歌劇「椿姫」 - 第1幕への前奏曲
11.歌劇「ジョコンダ」 - 第3幕 時の踊り
→9〜11/コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団 (1959)

12.歌劇「アルジェリアのイタリア女」 - 序曲/ロンドン・フィル(1955)
13.歌劇「アンドレア・シェニエ」 - 第3幕 祖国の敵/エットーレ・バスティアニーニ (バス・バリトン)/シカゴ・リリック・オペラ管弦楽団(1956)

George Solti Conducts Opera Worksでの購入がスーパー廉価である。

Solti - The Opera Conductor, Vol. 2 (1952, 1957)
Solti - The Opera Conductor, Vol. 2 (1952, 1957)

ショルティ、1950年代のオペラ名曲選第2集。R.シュトラウスのオペラ2曲からの抜粋。エリーザベト・ヘンゲン (コントラルト)、リーザ・デラ・カーザ(ソプラノ)などの名歌手の聴かせどころも魅力。

◆歌劇「エレクトラ」(抜粋)
Christel Goltz (ソプラノ)/エリーザベト・ヘンゲン - Elisabeth Hongen (コントラルト)/Ferdinand Frantz (バス・バリトン)、バイエルン州立管弦楽団(1952)

◆歌劇「アラベラ」(抜粋)
リーザ・デラ・カーザ - Lisa Della Casa (ソプラノ)/ヒルデ・ギューデン - Hilde Guden (ソプラノ)/ジョージ・ロンドン - George London (バリトン)/Otto Edelmann (バス)、バイエルン州立管弦楽団(1957)

George Solti Conducts Opera Worksでの購入がスーパー廉価である。

Solti - The Opera Conductor, Vol. 3 (1957, 1958)
Solti - The Opera Conductor, Vol. 3 (1957, 1958)

ショルティ、1950年代のオペラ名曲選第3集。ワーグナーの「指輪」2曲からの抜粋。ワーグナー歌手として一世を風靡したジョージ・ロンドン (バリトン)、フラグスタート (ソプラノ)などの名歌手の聴かせどころも魅力。

◆楽劇「ラインの黄金」(抜粋)

ジョージ・ロンドン - George London (バリトン)/キルステン・フラグスタート - Kirsten Flagstad (ソプラノ)/ワルデマール・クメント - Waldemar Kmentt (テノール)/エベルハルト・ヴェヒター - Eberhard Wachter (バリトン)/セット・スヴァンホルム - Set Svanholm (テノール)/パウル・クーン - Paul Kuen (テノール)/Jean Madeira (メゾ・ソプラノ)/Gustav Neidlinger (バス・バリトン)/Walter Kreppel (バス)/クルト・ベーメ - Kurt Bohme (バス)
Oda Balsborg (ソプラノ)/ヘティ・プリュマッハー - Hetty Plumacher (メゾ・ソプラノ)
Ira Malaniuk (ソプラノ)、ウィーン・フィル(1958)

◆楽劇「ワルキューレ」 - 第2幕

キルステン・フラグスタート - Kirsten Flagstad (ソプラノ)/セット・スヴァンホルム - Set Svanholm (テノール)、ウィーン・フィル(1957)

George Solti Conducts Opera Worksでの購入がスーパー廉価である。

Wagner: Der Ring des Nibelungen (Ring Cycle Complete)
Wagner: Der Ring des Nibelungen (Ring Cycle Complete)

最近、Wagner: The Operas が販売されているので購入にあたって比較されたいが、ショルティの偉業を世に知らしめたアルバムである。彼がウィーン・フィルを振ってこの史上初のセッション録音「指輪」全曲指揮者として登壇した当時、正直、その背景がよくわからなかった。 
 
 近時、それ以前の分厚い蓄積 George Solti Conducts Opera Works に接して、なるほどと得心した。この人は1940年代後半から50年代にかけてオペラ分野の録音でコツコツと努力をかさね実績を積み上げ、その確実な<布石>と<強運>をもって栄えある地位をえた。しかも、そこにとどまらず、一層の精進をかさねウィーン・フィル、シカゴ響とその後も録音を継続し、1958年から85年まで23年の歳月を費やして前人未踏の巨大なワーグナー・アルバムを残した。
 
 この時代、黄金期の歌手のラインナップが凄い。ニルソン、ヴィントガッセン、ジョージ・ロンドン、フラグスタート、ジェームズ・キング、クレスパン、ホッター、フィッシャー=ディースカウ、クリスタ・ルートヴィヒ、マルガ・ヘフゲン・・・、目が眩むような豪華絢爛たる布陣である。その点でも、文字通りの歴史的名盤であり金字塔の名にふさわしい。

【収録情報】

・ワーグナー:『ラインの黄金』
ジョージ・ロンドン(ヴォータン)
キルステン・フラグスタート(フリッカ)
クレア・ワトソン(フライア)
ヴァルデマール・クメント(フロー)
エバーハルト・ヴェヒター(ドンナー)
セット・スヴァンホルム(ローゲ)
パウル・クーエン(ミーメ)
ジーン・マデイラ(エルダ)
グスタフ・ナイトリンガー(アルベリヒ)
ヴァルター・クレッペル(ファゾルト)
クルト・ベーメ(ファフナー)
オーダ・バルスボーグ(ヴォークリンデ)
ヘティ・プリマッハー(ヴェルグンデ)
イラ・マラニウク(フロースヒルデ)

・ワーグナー:『ワルキューレ』
ジェームズ・キング(ジークムント)
レジーヌ・クレスパン(ジークリンデ)
ゴットロープ・フリック(フンディング)
ハンス・ホッター(ヴォータン)
ビルギット・ニルソン(ブリュンヒルデ)
クリスタ・ルートヴィヒ(フリッカ)
ブリギッテ・ファスベンダー(ヴァルトラウテ)
ベリット・リンドホルム(ヘルムヴィーゲ)
ヘルガ・デルネッシュ(オルトリンデ)
ヴェラ・シュロッサー(ゲルヒルデ)
ヘレン・ワッツ(シュヴェルトライテ)
ヴェラ・リッテ(ジークルーネ)
クラウディア・ヘルマン(ロスヴァイゼ)
マリリン・タイラー(グリムゲルデ)

・ワーグナー:『ジークフリート』
ヴォルフガング・ヴィントガッセン(ジークフリート)
ビルギット・ニルソン(ブリュンヒルデ)
ハンス・ホッター(さすらい人)
ゲルハルト・シュトルツェ(ミーメ)
グスタフ・ナイトリンガー(アルベリヒ)
クルト・ベーメ(ファフナー)
マルガ・ヘフゲン(エルダ)
ジョーン・サザーランド(森の小鳥)

・ワーグナー:『神々の黄昏』
ヴォルフガング・ヴィントガッセン(ジークフリート)
ビルギット・ニルソン(ブリュンヒルデ)
グスタフ・ナイトリンガー(アルベリヒ)
ゴットロープ・フリック(ハーゲン)
クレア・ワトソン(グートルーネ)
ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(グンター)
クリスタ・ルートヴィヒ(ヴァルトラウテ)
ルチア・ポップ(ヴォークリンデ)
グィネス・ジョーンズ(ヴェルグンデ)
モーリーン・ガイ(フロースヒルデ)
ヘレン・ワッツ(第1のノルン)
グレース・ホフマン(第2のノルン)
アニタ・ヴェルキ(第3のノルン)

 録音時期:
 『ラインの黄金』:1958年9月24日〜10月8日
 『ワルキューレ』:1962年5月6日〜18日、10月21日〜11月5日
 『ジークフリート』:1964年5月下旬〜6月上旬、10月26日〜11月26日
 『神々の黄昏』:1965年10月29日〜11月19日
 録音場所:ウィーン、ゾフィエンザール
 録音方式:ステレオ(アナログ/セッション)

Wagner: The Operas
Wagner: The Operas

ショルティの偉業を再認識させるアルバムである。彼がウィーン・フィルを振って史上初のセッション録音「指輪」全曲指揮者として登壇した当時、正直、その背景がよくわからなかった。並みいるワーグナー指揮者群像のなかにあってなぜショルティなのか? 
 
 最近、それ以前の分厚い蓄積 George Solti Conducts Opera Works に接して、なるほどと得心した。この人は1940年代後半から50年代にかけてオペラ分野の録音でコツコツと努力をかさね実績を積み上げ、その確実な<布石>と<強運>をもって栄えある地位をえた。しかも、そこにとどまらず、一層の精進をかさねウィーン・フィル、シカゴ響と録音を継続し、1958年から85年まで23年の歳月を費やして前人未踏の巨大な本ワーグナー・アルバムを残した。
 
 この時代、黄金期の歌手のラインナップが凄い。ニルソン、ヴィントガッセン、ジョージ・ロンドン、フラグスタート、ジェームズ・キング、クレスパン、ホッター、フィッシャー=ディースカウ、クリスタ・ルートヴィヒ、マルガ・ヘフゲン、プラシド・ドミンゴ、ルネ・コロ、ジェシー・ノーマン・・・、目が眩むような豪華絢爛たる布陣である。

 ショルティ再評価はこのアルバムに限定されない裾野の広さ(たとえばバルトークやR.シュトラウスなど)をみせるが、本セットはまちがいなくその中核を形成する。質量ともに本年、最強といってよい廉価盤集の登場である。

(参考)本集年代順録音記録
◆指輪 Wagner: Der Ring des Nibelungen (Ring Cycle Complete) 1958〜1965年
◆トリスタンとイゾルデ Tristan Und Isolde 1960年
◆タンホイザー Tannhauser (Slipcase) 1970年 
◆パルジファル Parsifal-Comp Opera 1971、72年
◆マイスタージンガー Die Meistersinger Von Numberg 1975年
◆オランダ人 Wagner: Flying Dutchman 1976年
◆ローエングリン ワーグナー:歌劇「ローエングリン」全曲 1985年
ほかに管弦楽集などがある。

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The Hungarian Masters
The Hungarian Masters

ショルティ/ロンドン・フィルによるバルトーク、コダーイ集。収録されている各曲は以下のとおり。ショルティには録音の良い新盤 Solti Conducts Bartok もあるが、40代の昇竜の勢いをもっていたこの時期、十八番のハンガリーものの迫力は聴きもの。

◆バルトーク:舞踏組曲(1952年録音)

1923年ブダペスト市制50周年記念のために作曲された祝祭的作品。ストラヴィンスキーを連想させるような鋭いリズムの打ち降しとどこか懐かしい素朴なフォークロアの見事な融合をショルティは生き生きと活写している。

◆バルトーク:弦楽器 打楽器とチェレスタのための音楽(1955年録音)

第1楽章の半音階的な主題は不気味な、底知れぬ不安をかきたて、第2楽章のピアノの特色のある打鍵と弦の跳ねるような追尾(バルトーク・ピッツィカート)はとても躍動的。第3楽章の拍子木による幕開けの後は第1楽章の不安が再来しサイコ・ストーリーのバックにぴったりの曲が展開され、終楽章は民族的なメロディと強いリズミックな音感が綾を成し壮大なクライマックスにいたる。ショルティの演奏は以上の過程を整然かつ濃厚に描いており秀でたもの。

◆コダーイ:組曲『ハーリ・ヤーノシュ』(1955年録音)

「プレリュード」の音楽的冗談<くしゃみ>の絶妙な表現、聴かせどころ第2曲「ウィーンの音楽時計」の無類の楽しさ、第4曲「戦争とナポレオンの敗北」にみる大胆なウイッティさ、第3曲「歌」、第5曲「間奏曲」でのやるせない民謡への郷愁、終曲「皇帝と廷臣たちの入場」の最高潮への誘導、ショルティの演奏は完璧という言葉を連想させるにたる周到な出来映え。

◆コダーイ:ガランタ舞曲(1952年録音)

1933年ブダペスト・フィル創立80周年記念のため作品された曲。ジプシーのメロディが多用され、哀愁もあるがエネルギーにも満ちた、かつ管弦楽の能力を最大限引き出すようなこの曲をショルティは自信をもって堂々と仕上げている。

◆コダーイ:ハンガリー民謡『孔雀』による変奏曲(1954年録音)

第2次世界大戦が勃発した1939年に、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団創立50周年記念のために作曲された曲。『孔雀』は正確には「孔雀は飛んだ」という民謡で、マジャール人のオスマン帝国支配下での自由への情熱を意味し、当時のファシズムに対しての抵抗がこめられていた。ショルティは晩年、世界平和への音楽での貢献を企図するが、そのいわば<表象>ともなった曲で、この頃から重要な「持ち駒」であった。切れ味のよい色彩感に富む演奏である。

◆コダーイ:ハンガリーの詩篇<英語歌唱>(1954年録音)
ウィリアム・マカルパイン(テノール)、ロンドン・フィルハーモニー合唱団

1923年ブダペスト市制50周年記念のために作曲された曲。16世紀の詩篇(ハンガリー語訳)がベースで、ハンガリー革命後の反動にあたって、革命派だったコダーイの思いをこの詩篇の歌詞によって表現しているといわれる。ショルティは、ここでも同国人の気概をもって集中力ある名演に仕上げている。

なお、ヤーノシュ・クルカ/北西ドイツ・フィルによるリスト集<ハンガリー狂詩曲第6番『ペシュトの謝肉祭』、レーナウの『ファウスト』による2つのエピソード(夜の行列/村の居酒屋での踊り)、交響詩『フン族の戦い』>(1982年録音)がCD1に所収されている。

Kodaly, Z.: Hary Janos Suite / Bartok, B.: Music for Strings, Percussion and Celesta (Solti) (1955)
Kodaly, Z.: Hary Janos Suite / Bartok, B.: Music for Strings, Percussion and Celesta (Solti) (1955)

ショルティには録音の良い新盤Concerto for Orchestra Music for Strings PercussioLast Recordingもあるが、40代の昇竜の勢いをもっていたこの時期、十八番のハンガリーものの迫力は聴きもの(演奏はロンドン・フィル)。

◆コダーイ:組曲『ハーリ・ヤーノシュ』(1955年録音)

 「プレリュード」のくしゃみの絶妙な表現、聴かせどころ第2曲「ウィーンの音楽時計」の無類の楽しさ、第4曲「戦争とナポレオンの敗北」にみる大胆なウイッティさ、第3曲「歌」、第5曲「間奏曲」でのやるせない民謡への郷愁、終曲「皇帝と廷臣たちの入場」の最高潮への誘導、ショルティの演奏は完璧という言葉を連想させるにたる出来映え。

◆バルトーク:『弦楽器 打楽器とチェレスタのための音楽』(1955年録音)

  第1楽章の半音階的な主題は不気味な、底知れぬ不安をかきたて、第2楽章のピアノの特色のある打鍵と弦の跳ねるような追尾(バルトーク・ピッツィカート)は躍動的。拍子木による幕開けの後は第1楽章の不安が再来しサイコ・ストーリーのバックにぴったりの曲が展開される。終楽章は民族的なメロディと強いリズミックな音感が綾を成しクライマックスにいたる。ショルティの演奏は以上の過程を整然かつ濃厚に描いており実に秀でたもの。

The Hungarian Mastersにてスーパー廉価にて購入可能である。

Kodaly, Z.: Dances of Galanta / Bartok, B.: Dance Suite (London Philharmonic, Solti) (1952)
Kodaly, Z.: Dances of Galanta / Bartok, B.: Dance Suite (London Philharmonic, Solti) (1952)

ショルティには録音の良い新盤Concerto for Orchestra Music for Strings PercussioLast Recordingもあるが、40代の昇竜の勢いをもっていたこの時期、十八番のハンガリーものの迫力は聴きもの(演奏はロンドン・フィル)。

◆コダーイ:ガランタ舞曲(1952年録音)

   1933年ブダペスト・フィル創立80周年記念のため作品された。ジプシーのメロディが多用され、哀愁もあるがエネルギーにも満ちた、かつ管弦楽の能力を最大限引き出すような難曲をショルティは自信をもって堂々と仕上げている。

◆バルトーク:舞踏組曲(1952年録音)

   1923年ブダペスト市制50周年記念のために作曲された祝祭的作品。ストラヴィンスキーを連想させるような鋭いリズムの打ち降しとどこか懐かしい素朴なフォークロアの見事な融合をショルティは活写している。

The Hungarian Mastersにてスーパー廉価にて購入可能である。

Kodály: Háry János Suite
Kodály: Háry János Suite

ショルティには録音の良い新盤Concerto for Orchestra Music for Strings PercussioLast Recordingもあるが、40代の昇竜の勢いをもっていたこの時期、十八番のハンガリーものの迫力は聴きもの(演奏はロンドン・フィル)。

◆コダーイ:組曲『ハーリ・ヤーノシュ』(1955年録音)

 「プレリュード」のくしゃみの絶妙な表現、聴かせどころ第2曲「ウィーンの音楽時計」の無類の楽しさ、第4曲「戦争とナポレオンの敗北」にみる大胆なウイッティさ、第3曲「歌」、第5曲「間奏曲」でのやるせない民謡への郷愁、終曲「皇帝と廷臣たちの入場」の最高潮への誘導、ショルティの演奏は完璧という言葉を連想させるにたる出来映え。

The Hungarian Mastersにてスーパー廉価にて購入可能である。

Kodaly, Z.: Psalmus Hungaricus / Peacock Variations (Lpo, Solti) (1954)
Kodaly, Z.: Psalmus Hungaricus / Peacock Variations (Lpo, Solti) (1954)

ショルティには録音の良い新盤Concerto for Orchestra Music for Strings PercussioLast Recordingもあるが、40代の昇竜の勢いをもっていたこの時期、十八番のハンガリーものの迫力は聴きもの(演奏はロンドン・フィル)。

◆コダーイ:ハンガリーの詩篇<英語歌唱>(1954年録音)
ウィリアム・マカルパイン(テノール)、ロンドン・フィルハーモニー合唱団

1923年ブダペスト市制50周年記念のために作曲された曲。16世紀の詩篇(ハンガリー語訳)がベースで、ハンガリー革命後の反動にあたって、革命派だったコダーイの思いをこの詩篇の歌詞によって表現しているといわれる。ショルティは、ここでも同国人の気概をもって集中力ある名演に仕上げている。

◆コダーイ:ハンガリー民謡『孔雀』による変奏曲(1954年録音)

第2次世界大戦が勃発した1939年に、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団創立50周年記念のために作曲された曲。『孔雀』は正確には「孔雀は飛んだ」という民謡で、マジャール人のオスマン帝国支配下での自由への情熱を意味し、当時のファシズムに対しての抵抗がこめられていた。ショルティは晩年、世界平和への音楽での貢献を企図するが、そのいわば<表象>ともなった曲で、この頃から重要な「持ち駒」であった。切れ味のよい色彩感に富む演奏である。


Solti Conducts Bartok
Solti Conducts Bartok

ゲオルグ・ショルティのバルトークは秀でたものである。バルトークは亡命先の米国で死したが、ショルティらの尽力により、その亡骸は40年余をへた1988年7月7日にハンガリーに移送され、国葬によりブダペストのファルカシュレーティ墓地に埋葬されたという。いかにショルティが、故国の大作曲家バルトークを敬慕していたかのこれは良きエピソードだろう。

ハンガリー出身指揮者を見てみよう。フリッツ・ライナー(生年1888〜没年1965年)、ジョージ・セル(1897〜1970年)、ユージン・オーマンディ(1899〜1985年)、アンタール・ドラティ(1906〜88年)、フェレンツ・フリッチャイ(1914〜63年)、イシュトヴァン・ケルテス(1929〜73年)そしてゲオルグ・ショルティ(1912〜97年)。彼らの多くはブダペストで生まれ、リスト音楽院に学び、アメリカのメジャー・オーケストラで活躍した<ハンガリアン・ファミリー>である(ドホナーニをふくめ彼らこそが全米主要オケのビルダーだった)。欧州で活動したフリッチャイ、ケルテスは残念ながら早世し、ふたりより年長のショルティはもっとも活動時期が長かったので、故国の大音楽家バルトークについても多くの素晴らしい音源を残してくれたが、以上の各人のバルトーク演奏はいずれも甲乙つけがたい見事なものである。

ショルティのバルトークには1950年代からのロンドン・フィルを振っての旧録音(下記 The Hungarian Masters)と本集メインのシカゴ響との晩年までの新録音があるが、一貫して明快な解釈で、躍動感にすぐれ、かつフォークロアの気高い情感に心動く。半世紀におよぶショルティのこの作曲家への熱い思い入れは丹念にトレースしたい歴史的記録である。推薦します。

【収録情報】

◆管弦楽のための協奏曲 Sz.116 シカゴ響(1980年1月)
→ バルトーク:管弦楽のための協奏曲&舞踏組曲
◆舞踏組曲 Sz.77 シカゴ響(1981年1月)
◆弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽 Sz.106 シカゴ響(1989年11月)
→ バルトーク:打楽器、弦楽器、チェレスタのための音楽、ディヴェルティメント、中国の不思議な役人
◆組曲『中国の不思議な役人』 Op.19, Sz.73 シカゴ響(1989年5月、90年2月)
◆ディヴェルティメント Sz.113 シカゴ響(1989年1月)
◆5つのハンガリーの風景 Sz.97 シカゴ響(1993年11月)
◆ルーマニア民俗舞曲 Sz.68 シカゴ響(1993年11月)

◆カンタータ・プロファーナ『魔法にかけられた鹿』 Sz.94 ブダペスト祝祭管弦楽団
◆ピアノ協奏曲第1番 Sz.83 アシュケナージ/ ロンドン・フィル
◆ピアノ協奏曲第2番 Sz.95 アシュケナージ/ ロンドン・フィル
◆ピアノ協奏曲第3番 Sz.119 アシュケナージ/ ロンドン・フィル
◆ヴァイオリン協奏曲第1番 Sz.36 チョン・キョンファ/ シカゴ響
◆ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz.112 チョン・キョンファ/ ロンドン・フィル
◆歌劇『青ひげ公の城』全曲 Op.11, Sz.48 コロシュ・コヴァーチュ(バス/青ひげ),
 シルヴィア・シャシュ(ソプラノ/ユディット)ロンドン・フィル

(バルトーク、コダーイ旧録音)
・バルトーク:舞踏組曲、弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽、ハンガリー詩篇3
・コダーイ:ガランタ舞曲、孔雀の主題による変奏曲、『ハーリ・ヤーノシュ』組曲
 ロンドン・フィル
→ 上記 The Hungarian Masters 、ハーリ・ヤーノシュ/ハンガリー曲集
・ヴァイネル:チョンゴルとティンデ、小オーケストラのためのセレナーデ ブダペスト祝祭管弦楽団

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