火曜日, 7月 16, 2024

ピアノの巨人たち 3 3人の女性ピアニスト

 

ここでは、3人の女流ピアニストに注目したい。はじめに、ハスキルから。

ハスキル 独自の秀演

ここではクララ・ハスキルの深い演奏に感嘆する。ルーマニア生まれで、生涯難病と闘いながら、研ぎ澄まされた感性を磨きつづけたピアニストである。グリュミオーはハスキルがもっとも音楽的に信頼したパートナーの一人であり、それゆえに、この詩情に満ちたモーツァルトの名品で文字通り、二人三脚とも言える独自の秀演を残してくれた。

”崇高(たか)きものを求めし ミューズの使者達が 心ひとつになるとき かくもあらんと奏したるモーツァルトの透明な響きに 光り溢れる”

→マルケヴィッチとの素晴らしい成果もある。  
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番・第24番  も参照。

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自然な心理の起伏感、凛然としたスタイル

 ハスキルはモーツァルトの協奏曲、とりわけ20番をこよなく愛し得意としていた。スヴォボダ/ヴィンタートゥール交響楽団(1950年9月)、イッセルシュテット/ベロミュンスター・スタジオ管(1952年12月)、フリッチャイ/ベルリン放送響(1954年1月)、パウムガルトナー/ウィーン響(1954年10月)などのほか、唯一のステレオ録音が本演奏。一方、24番は、クリュイタンス/フランス国立放送管(1955年)  Andre Cluytens - Noble Maitre de Musique  の名盤も知られているが、両番ともこのマルケヴィチ/ラムルー管(1960年11月)盤は出色の記録である。

ハスキルとマルケヴィチ/ラムルー管は、揺ぎない信頼感に支えられており、本盤以前に、すでにベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番(1959年12月)、ショパン:ピアノ協奏曲第2番、ファリャ:『スペインの庭の夜』(いずれも1960年10月)を収録しており相性の良さでは定評がある。

ハスキルのモーツァルト演奏の特質は、自然な心理の起伏感と凛然としたスタイルが融合していることにあるように思う。しかも苦労と激動の人生、折節その演奏の積み重ねによって、協奏曲のみならず、グリュミオーとのヴァイオリン・ソナタ  
Great Chamber Music  などでも、ときに神々しいまでの高みに達しているように感じる。
半世紀以上もまえの記録であり、いまや録音の古さは否めないが、ハスキルの代表盤であり、語り継がれるその至芸に思いをはせるにふさわしい1枚。

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絶品のモーツァルト、ハスキルの芸術

クララ・ハスキル(1895~1960年)の活動期最後の10年間を中心とする選集。難病を抱えつつ、ピアノに全身全霊を捧げた。透明感あるモーツァルトではいまでも根強いファンが多い。グリュミオーとのヴァイオリン・ソナタ、マルケヴィチとのピアノ協奏曲第20番、第24番を聴けるだけでも本集の価値は十分。推奨します。

<収録情報>録音年別
【1934年】
・ハイドン:アンダンテと変奏曲 Hob.XVII:6

【1950年】
・D.スカルラッティ:ソナタ集(嬰ハ短調 K.247、ト短調 K.2、ハ長調 K.132、ト短調 K.35、嬰ホ長調 K.193、ヘ短調 K.386、ヘ短調 K.519、ロ長調 K.322、イ短調 K.87、ハ長調 K.515、ヘ長調K.437)
→  
Scarlatti: Sonatas
・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番 スヴォボダ/ヴィンタートゥール響

【1951年】
・シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番 D.960
・シューマン:色とりどりの小品 Op.99
・シューマン:ピアノ協奏曲 Op.54 オッテルロー/ハーグ・フィル
→  
Schumann: Piano Concerto in A minor; Kinderszenen etc.
・ラヴェル:ソナチネ

【1954年】
・モーツァルト:ピアノ・ソナタ第10番 K.330、デュポールのメヌエットによる9つの変奏曲 K.573
・モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番 K.271『ジュノーム』パウムガルトナー/ウィーン響
・モーツァルト:ロンド K.386 パウル・ザッハー/ウィーン響

・シューマン:森の情景
→  
Schumann: Piano Concerto in A minor; Kinderszenen etc.

【1955年】
・シューマン:子供の情景
→  
Schumann: Piano Concerto in A minor; Kinderszenen etc.

【1956年】
・J.S.バッハ:2台のチェンバロのための協奏曲 BWV.1061
・モーツァルト:2台のピアノのための協奏曲変ホ長調 K.365 (ピアノ)ゲザ・アンダ、ガリエラ/フィルハーモニア管
→  
バッハ:2台のピアノのための協奏曲第2番、モーツァルト:2台のピアノのための協奏曲
・モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第32番 K.454、第35番 K.526 (ヴァイオリン)グリュミオー
→  
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ集

【1957年】
・ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第1番、第4番、第5番『春』、第6番、第9番『クロイツェル』 (ヴァイオリン)グリュミオー
→  
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」、第6番、第7番(モノラル録音)
→  
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第8番~10番(モノラル録音)

【1960年】
・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番 アンセルメ/スイス・ロマンド管
モーツァルト:『ああ、お母さん聞いて』による12の変奏曲
・モーツァルト:きらきら星変奏曲ハ長調 K.265
・モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番 K.466、第24番 K.491 マルケヴィチ/ラムルー管

→  
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番・第24番

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へブラーやリリー・クラウスもいるが、ここでは、次にアニー・フィッシャー、ハンガリー出身の女性ピアニストを見てみたい。

清潔感のある響き、豊かな詩情

アニー・フィッシャー(1914〜95年)の若き50年代を中心とするセット。一部演目が共通する60年代の3枚組  Centennial Collection  もでており旧録で廉価だが、その魅力を知るうえでは本セットでも十分だろう。
モーツァルトの後期の協奏曲集ではボールト、サヴァリッシュ、クルツが、シューマン、リストの代表曲は彼女の才能を開花させたといわれるクレンペラーが、そしてバルトークの3番ではマルケヴィチが振るという強力布陣で、当時のフィッシャーの注目度の高さを示している。ソロでも、ベートーヴェン、シューベルト、シューマンの著名曲が並ぶ。
小生が、フィッシャーをはじめて知ったのは、 
アート・オブ・ピアノ-20世紀の偉大なピアニストたち- [DVD ] での見事なテクニックと清潔感のある響きによってであるが、しっかりとした打鍵で安定感がある一方、詩情の豊かさもかねそなえている。

(収録情報)
【協奏曲】
・モーツァルト:ピアノ協奏曲
第20番 ボールト/フィルハーモニア管(1959年)
第21番 サヴァリッシュ/フィルハーモニア管(1958年)
第22番 同上
第23番 ボールト/フィルハーモニア管(1959年)
第24番 エフレム・クルツ/ニュー・フィルハーモニア管(1966年)
第27番 同上


・シューマン:ピアノ協奏曲イ短調
・リスト:ピアノ協奏曲第1番
 クレンペラー/フィルハーモニア管(1960〜62年)

・バルトーク:ピアノ協奏曲第3番 マルケヴィチ/ロンドン響(1955年)

 
【ピアノ・ソナタ等】
・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集(1957〜61年)
第8番『悲愴』、第14番『月光』、第18番、第24番『テレーゼ』、第21番『ワルトシュタイン』、第30番、第32番

・シューベルト: ピアノ曲集(1960年)
即興曲集 D.935〜第2番、同第4番、ピアノ・ソナタ第21番

・シューマン:ピアノ曲集(1957〜64年)
幻想曲ハ長調 Op.17、謝肉祭、子供の情景、クライスレリアーナ

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3人目は日本人の受章作品を。内田光子女史について。

内田光子の芸風

内田光子さんが2011年2月14日、第53回グラミー賞を受賞した。最優秀インストゥルメンタル・ソリスト・パーフォーマンス(オーケストラとの共演)賞で、受賞作はモーツァルトのピアノ協奏曲23、24番(クリ−ブランド管弦楽団)である。その内田モーツァルト・コレクションを集中的、体系的に廉価盤で聴けるのが本アルバムで、下記の全22曲を収録。1985年10月〜1990年2月にかけての録音で、バックはテイト指揮イギリス室内管弦楽団。テイトとは音楽的感性が本当にあうのだろう。アクのない聴きやすい演奏で、楷書のようなきちっとした内田さんの芸風が見事に伝わってくる。

【収録曲】
<1>ピアノ協奏曲第5番ニ長調 K.175、<2>第6番変ロ長調 K.238、<3>第7番ハ長調 K.246『リュッツォウ』、<4>第9番変ホ長調 K.271『ジュノム』、<5>第11番ヘ長調 K.413、<6>第12番イ長調 K.414、<7>第13番ハ長調 K.415、<8>第14番変ホ長調 K.449、<9>第15番変ロ長調 K.450、<10>第16番ニ長調 K.451、<11>第17番ト長調 K.453、<12>第18番変ロ長調 K.456、<13>第19番ヘ長調 K.459、<14>第20番ニ短調 K.466、<15>第21番ハ長調 K.467、<16>第22番変ホ長調 K.482、<17>第23番イ長調 K.488、<18>第24番ハ短調 K.491、<19>第25番ハ長調 K.503、<20>第26番ニ長調 K.537『戴冠式』、<21>第27番変ロ長調 K.595、<22>コンサート・ロンド ニ長調 K.382


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