金曜日, 11月 29, 2024

佐渡の「新世界」

 

5つ星のうち4.0


第1楽章、慎重で神経のゆきとどいた出だし、その後の低弦を思い切り生かした雄渾な展開に、佐渡らしい割り切りの良さを感じさせる。胸をキュッと絞めつけられるようなこの曲独特のノスタルジックな抒情性は希薄ながら、健康的で明るい色調はそれ自身の魅力がある。

第2楽章、“家路”に暗さはない。むしろここには暖かな夕餉が待っているような安心感がある。弦のピッチをきれいに合わせて几帳面な演奏を心がけている。第3楽章ともに、テンポをあまり動かさず、速度も比較的ゆったりととる。客演でのライヴ収録ゆえに、オーケストラ奏者が実力を発揮しやすい演奏に気を配っている様子も思い浮かぶ。

終楽章、少しアクセルを強め、緩急をつけて思い切りオケを鳴らしている。ダイナミックでスケールの大きな隈取りである。最盛期の岩城宏之を彷彿とさせるような、自信に満ちた、それでいて激情型とは一線を画した冷静なスタイルを感じた。

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