テンシュテットの凄みのある「ライン」
揺れ動く心の振幅―激しいパッションと崩れ落ちそうになるような抒情性の葛藤―この曲の演奏は難しいと思う。思い切りのよい踏み込みで作曲家の心情と同化せんとするテンシュテットの没入型のアプローチで、この曲の「凄み」がはじめて理解できたような気がした。第2楽章は複雑な音型が交錯し、それは希望と懊悩の隠れた表現になっているように感じる。ひとときの静けさの第3楽章、ふたたび心の荒野を見つめるような第4楽章、そして終楽章。色調が明るくなって躍動感が増してくる。このあたりの解釈のメリハリの効いた明快さこそテンシュテットらしさか。最高度の表現能力をもつベルリン・フィルが真剣に臨場している緊迫感、それを十全に引き出しているテンシュテットの実力と背後のひたむきさ。「ライン」の名演である。
珍しい選曲の4つのホルンと管弦楽のためのコンツェルトシュテュックは、「ライン」的な心情の複雑さはなく、むしろ重厚なホルン協奏曲をベルリン・フィルの至芸で聴く喜びがある。
シューマン:交響曲第4番について
生き生きと躍動する音楽。弦楽器の堰を切ったような奔流に吞み込まれる快感。とくに低弦は底流に引きずり込むような迫力である。第1楽章を聴いただけで、この特異な音作りにたじろくだろう。短い第2楽章はロマンツエ、シューマンの夢想的なメロディは聴かせどころだがベルリン・フィルの木管の表情が美しい。仕切り直しの第3楽章、屹立する雄々しさと官能的甘さが共存するスケルツォ。テンシュテットの曖昧さのない解釈が冴える。減速し、遠くから雷鳴が近づくような緊迫感をもって終楽章は開始され、それまでのすべての主題が再構成される。徐々に明るく、力強く、前向きに、開放的に音楽が一層の高みに上昇し一気のエンディングを迎える仕儀は見事。 シューマン:交響曲第3番 ともに名演の誉れがあろう。
生き生きと躍動する音楽。弦楽器の堰を切ったような奔流に吞み込まれる快感。とくに低弦は底流に引きずり込むような迫力である。第1楽章を聴いただけで、この特異な音作りにたじろくだろう。短い第2楽章はロマンツエ、シューマンの夢想的なメロディは聴かせどころだがベルリン・フィルの木管の表情が美しい。仕切り直しの第3楽章、屹立する雄々しさと官能的甘さが共存するスケルツォ。テンシュテットの曖昧さのない解釈が冴える。減速し、遠くから雷鳴が近づくような緊迫感をもって終楽章は開始され、それまでのすべての主題が再構成される。徐々に明るく、力強く、前向きに、開放的に音楽が一層の高みに上昇し一気のエンディングを迎える仕儀は見事。 シューマン:交響曲第3番 ともに名演の誉れがあろう。
0 件のコメント:
コメントを投稿