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ブーレーズは周到に準備をしたと思う。驚くべき解析力であり、さすがにスコアを読み尽くし音楽を再構成するという、自身も現代音楽の代表的な作曲家であるブーレーズならではアプローチの演奏である。
残響効果も巧みに計算に入れて全体構成を考えており、ウイーン・フィルの持ち前の木管楽器の世界最高水準の美しさは絶品。その分、金管の咆哮はかなり抑え気味で(実際の臨場感は別、こちらは録音テクニックかも知れないが)、全体のバランス感が見事に統御されている。
アゴーギクなどは抑制されほとんど感じないレベル、いわゆる「激情型」とは無縁の理知的な運行ながら、しかしクールな計算だけでない、音楽へのブーレーズ流の渾身の「入れ込み」は確実に伝わってくる。特に、テンポの微妙な変化と休止ごとに刻み込むようなフレーズの融合、シンクロナイズが絶妙で、長い楽章も局所変化が多様でまったく飽きさせない。ブルックナーでもこうした「知的」演奏スタイルは実に有効といった見本のような演奏。恐れ入って聴いた。
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