§ 作曲家としてのバーンスタイン
バーンスタイン作曲の交響曲は、コープランドが後世を託したといわれるだけの実力を感じさせる力作で、メロディの親しみやすさが現代音楽の晦渋さを緩和している。ラフマニノフの自作自演コンサートをライヴで聴いて感動したといわれるバーンスタインが、そうした体験を自身生かしているといえるかも知れない。リズムの切れ味はストラヴィンスキーに通じる部分もある。マーラーやショスタコーヴィッチで秀でた演奏を残したバーンスタインだが、この2人の影響も垣間見えるような独特の量感もある。作曲家としてのバーンスタインは、フルトヴェングラー、ブーレーズなどと違い若き日から最高の栄誉を得ていた。創造性の高い、しかし誰でもが親しめる人々の心を鷲掴みにする時代の子であった。
(バーンスタイン作品集)
交響曲
第1番『エレミア』 (Symphony No.1 "Jeremiah") (1942年)
第2番『不安の時代』(ピアノと管弦楽のための) (Symphony No.2 "The age of anxiety") (1947年-1949年/1965年改訂)
第3番『カディッシュ』(管弦楽、混声合唱、少年合唱、話者とソプラノ独唱のための) (Symphony No.3 "Kaddish") (1963年/1977年改訂)
第1番『エレミア』 (Symphony No.1 "Jeremiah") (1942年)
第2番『不安の時代』(ピアノと管弦楽のための) (Symphony No.2 "The age of anxiety") (1947年-1949年/1965年改訂)
第3番『カディッシュ』(管弦楽、混声合唱、少年合唱、話者とソプラノ独唱のための) (Symphony No.3 "Kaddish") (1963年/1977年改訂)
バレエ『ファンシー・フリー』 (Fancy Free) (1944年)
ミュージカル『オン・ザ・タウン』 (On the Town) (1944年初演)
ミュージカル『ウエスト・サイド物語』 (West Side Story) (1957年初演)
ミュージカル『キャンディード』 (Candide) (1956年初演/1989年最終改訂)
オペラ『タヒチ島の騒動』 (Trouble in Tahiti) (1952年)
この作品は後年に大幅な拡大改訂が施され、オペラ『静かな場所』 (A Quiet Place)となった。(1983年)
クラリネット・ソナタ (Sonata for Clarinet and Piano) (1942年)
5つの子供の歌『私は音楽が嫌い』 (I Hate Music) (1943年)
合唱曲『チチェスター詩篇』 (Chichester Psalms) (1965年)
歌手と演奏家、踊り手のためのミサ曲 (Mass - A theatre piece for singers, dancers, and players) (1971年)
合唱曲『ソングフェスト』 (Songfest) (1977年)
前奏曲、フーガとリフ (Prelude, fugue and riffs) (1949年/1952年改訂)
映画『波止場』 (On the Waterfront)の音楽 (1954年)
セレナード (Serenade) (1954年)
バレエ『ディバック』 (Dybbuk) (1974年)
オーケストラのためのディヴェルティメント (Divertimento for Orchestra) (1980年)
ハリル (Halil) (1981年)
ピアノ曲『タッチズ』(コラール、8つの変奏とフーガ) (Touches - Chorale, Eight Variations and Coda) (1981年)
アリアとバルカロール(メゾ・ソプラノ、バリトンと4手ピアノのための) (Arias and Barcarolles) (1988年)
§ クラシック高踏主義を砕いた音楽家
クラシックとそれ以外のジャンルの垣根を自在に跳び越えるスケール感もバーンスタインの特色である。グルダはじめ後進は、バーンスタインが切り開いた道を歩み、ゆえなきクラシック高踏主義を砕いた。
レパートリーの広さも他を圧していた。カラヤンと双璧とも言われたが、オペラではカラヤンが圧倒的ながらそれ以外の領域、現代音楽ではバーンスタインのほうがはるかに広範だとも言えよう。
小澤征爾、クラウディオ・アバド、ズデニェク・コシュラーはじめヨーヨー・マ、ティルソン・トーマス、エッシェンバッハ、ネルソンスなど後進の音楽家の育成にも熱心であり、青少年のためのコンサート(これはTVで結構見た)などの語り口も絶妙で時代を風靡した。この点でも小澤征爾らに与えた影響は大きい。 さて、オールド世代にとって、バーンスタインは気さくなスーパースターだった。1970年、東京文化会館でマーラーの第9番をライブで聴いた。当時、コンサートがはねた後、文化会館の楽屋口で待っていると運がよければサインをもらえた。当夜(1970.9.7)、バーンスタインはとても疲れていたろうが一高校生に笑顔でサインをしてくれた。帝王カラヤンではあり得ないことだった。40年たったいまもぼくの貴重な財産である。
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