(ジャケットは別です)
ベートーヴェンの交響曲全集。たとえば、カラヤンには、多くのリスナーを説き伏せるような「カラヤン流儀」といったものがあり、ベームにはメトロノームを内在したような堂々としたテンポ設定で、リスナーはじっくりと安心して身を委ねられるような安定感がある。
対して、バーンスタインのベートーヴェンの特色は、ダイナミックながらすっきりとした解釈にあり、意外にも過不足なく標準的な印象もある。しかし、全体を通じて解釈の一貫性があり、どの曲を聴いても爽やかな聴後感があるのはやはり只者ではない。けれんみなく素直な解釈によって、ベートーヴェンの素材をもっとも生(き)のままに味わうことができるように思う。良い意味で機能主義的なニューヨーク・フィルもいい。ここには、ベルリン・フィルにみるドイツ本流の、とかウィーン・フィルにみる伝統の誇り高きといったブランドイメージはなく、かわってベートーヴェンという名の偉大なコスモポリタニズムを感じさせる。これこそ、意図してバーンスタインが念頭においていたことであり、かつそのお手本は、トスカニーニにあり!ということかも知れない。
(参考)比較したい全集
◆ベーム: Collectors Edition: Symphonies Nos. 1-9/5 Overture
◆トスカニーニ: Beethoven: The 9 Symphonies
→ Scoprire Beethoven-I Capolavori に所収、聴取
★☆★☆★☆★☆
バーンスタインの前に偉大な先人がいた。ギリシア人指揮者ミトロプーロスである。
ミトロプーロスは1960年64才でスカラ座にてリハーサル中客死する。もしあと10年存命していればステレオ音源が多く残され、今日の評価は格段に高くなっていただろう。死の3年前、ニューヨーク・フィル(NY)の首席の座を新鋭バーンスタインに譲り、古巣の欧州で円熟期の活躍が期待されていたからである。
NY以前の12年間、君臨したミネアポリス交響楽団との録音が本集の中心だが、自身のピアノ&指揮にくわえて、NY時代のルービンシュタイン、スターンらとの協奏曲集も収録されている。
1939〜47年に録音されたミネアポリス響との成果(下記ショーソンからラフマニノフ)をみると現代(同時代)音楽への積極的アプローチが光る。作曲家、ピア二スト、指揮者の恵まれた才能をもった彼にとってバーンスタインはすべてを継承できる逸材であり、NYでは若きバーンスタインがその後、出藍の誉れぶりを発揮した。
小生は、かつてミトロプーロス晩年の マーラー:交響曲第5番 を聴いて、その斬新な音づくりに驚愕したが、協奏曲でもミケランジェリとのシューマン:ピアノ協奏曲 Arturo Benedetti Michelangeli Plays Mozart Chopin, Schumann, Beethoven, etc. など素晴らしい演奏がある。
録音は古いが、この価格で鬼才ミトロプーロス10枚を集中的に聴くことができるのは実に有難い。
(収録情報:録音時点を記載)
【ミトロプーロス ピアノ&指揮】
バッハ:ブランデンブルク協奏曲第5番 NBC響 1945年12月
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 フィラデルフィア・ロビン・フッド・デル管弦楽団 1946年7月26日
クシェネク:ピアノ協奏曲第3番(1948年12月)
【ルービンシュタイン(p)】
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ニューヨーク・フィル 1951年
サン=サーンス:ピアノ協奏曲第2番 ニューヨーク・フィル 1952年
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番(1947年11月16日)
【スターン(vn)】
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 ニューヨーク・フィル 1951年3月4日
ベルク:ヴァイオリン協奏曲(1945年12月30日)
―――――――――――――――
ショーソン:交響曲変ホ長調(1939年)
→ Franck;Symphony/Chausson
フランク:交響曲ニ短調(1940年1月8日)
→ Mendelssohn/Franck: Symphonies
メンデルスゾーン:カプリッチョ・ブリランテ グロードン(p)、(1940年1月10日)
マーラー:交響曲第1番『巨人』(1940年11月4日)
→ Mahler: Symphony No. 1 "titan"
プロコフィエフ:交響曲第1番『古典』(1940年12月7日)
ラヴェル:クープランの墓(1941年12月6日)
メンデルスゾーン:交響曲第3番『スコットランド』(1941年12月6日)
ボロディン:交響曲第2番(1941年12月7日)
バッハ:幻想曲とフーガ BWV 542(1942年4月6日)
グラズノフ:ギリシャの3つの主題による序曲第1番(1942年4月6日)
ラロ:『イスの王様』より序曲(1945年3月2日)
ラフマニノフ:交響詩『死の島』(1945年3月2日)
ミヨー:屋根の上の牡牛(1945年3月2日)
→ Milhaud, D.: Boeuf Sur Le Toit (Le) / Ravel, M.: Le Tombeau De Couperin / Massenet, J.: Scenes Alsaciennes (Mitropoulos) (1941-1952)
マスネ:アルザスの風景(1946年3月11日)
→ Milhaud, D.: Boeuf Sur Le Toit (Le) / Ravel, M.: Le Tombeau De Couperin / Massenet, J.: Scenes Alsaciennes (Mitropoulos) (1941-1952)
チャイコフスキー:交響曲第2番『ウクライナ』(1946年3月10&11日)
シューマン:交響曲第3番『ライン』(1947年1月20日)
ラフマニノフ:交響曲第2番(1947年1月1&20日)
ショパン(ロガール=レヴィツキ):ショピニアーナ(英雄ポロネーズ、ほか)
👉 ミトロプーロス Dimitris Mitropoulos
★☆★☆★☆★☆
現在の常任は、ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン(オランダ語: Jaap van Zweden , 1960年~ )であるが、辞任が決まっている。
👉 ヤープ・ヴァン・ズヴェーデンは2024年にNYフィル辞任へ | MCS Young Artists (mcsya.org)
0 件のコメント:
コメントを投稿