◆ドイツ・グラモフォン録音全集
クーベリックのドイツ・グラモフォン録音全集。その特色をいくつかメモしておこう。第1に主力演目である交響曲全集は、ドヴォルザーク、マーラー、シューマン、ベートーヴェンだが、前3者の評価はつとに高い。一方、ベートーヴェンは番数によってオケをすべて変えるという“離れ技”を演じており、これが本集の大きな特色になっている(下記、<摘要>を参照)。
第2に、圧倒的な優位性のある母国関連で、先のドヴォルザークのほか、ヤナーチェク、スメタナは他の追随を許さない。
第3に、歌劇および宗教曲をあげたい。『リゴレット』(1964)から『パレストリーナ』(1973)の6演目にくわえて『グレの歌』や宗教曲集は、ドイツ・グラモフォン所属歌手の豪華布陣とともに聴き応えがある。とくに、モーツァルトの『戴冠ミサ』ほか3曲は絶品の魅力をたたえている。管弦楽集は、こうした大曲録音の合間に収録されたものもあり、いわばその付録といってもよいだろう。
第4に、これは若き日、シカゴ響音楽監督時代からのクーベリックの一種の“気配り”だが、共演オケの首席奏者やソリストとのメモリアル・レコーディング集といったものである。ここはクーベリックの好みが強く反映されており、共演者も伸び伸びと臨場している雰囲気で楽しめよう。
<摘要:オーケストラの略号>
A:ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(DVD1:第2番)
B:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(第3番)
Bs:ボストン交響楽団(第5番)
CL:クリーヴランド管弦楽団(第8番)
I
: イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団(第4番)
L:ロンドン交響楽団(第1番)
P:パリ管弦楽団(第6番)
R:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(第2番)
V:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(第7番)
表示のないもの:バイエルン放送交響楽団(第7番、第9番)
<収録情報>(録音年)
《交響曲全集など》
【マーラー】
・交響曲全集(1967-71)
〔付録〕
1)
クーベリック、Ursula Klein とマーラーを語る(英語:1970)
2)
クーベリック、Karl Schumannとマーラーを語る(ドイツ語:1970)
【シューマン】
・交響曲全集B
・序曲集(『ゲノヴェーヴァ』、『マンフレッド』)B(以上1963、1964)
・序奏とアレグロ・アパッショナート(1973)
・ピアノ協奏曲:(1)ゲザ・アンダ B(1963)、(2)ヴィルヘルム・ケンプ(1973)
【ベートーヴェン】
・交響曲全集
第1番L、第2番R、第3番B、第4番I、第5番Bs、第6番P、第7番V、第8番CL、第9番(1970-75)
【ドヴォルザーク】
・交響曲全集B(1966-73)
<管弦楽集>
・スケルツォ・カプリッチョーソOp.66(1973)
・序曲集(『我が家』、『フス教徒』、『自然の王国で』、『謝肉祭』、『オセロ』)
・交響詩など(『水の精』、『真昼の魔女』、『金の紡ぎ車』、『野鳩』、交響的変奏曲)
・スラヴ舞曲集(第1集Op.46、第2集Op.72)
・スターバト・マーテルOp.582
・伝説Op.59 イギリス室内管弦楽団
・弦楽セレナード
ホ長調Op.22 同上(以上1969-76)
【ヤナーチェク】
・ピアノと室内オーケストラのためのコンチェルティーノ、ピアノ(左手の)と管楽器のためのカプリッチョ、シンフォニエッタ、タラス・ブーリバ
・グラゴル・ミサ
・消えた男の日記(以上1963-71)
【スメタナ】
・『わが祖国』Bs(1971)
・交響詩など(『リチャード3世』、『ヴァレンシュタインの陣営』、『ハーコン・ヤール』、プラハの謝肉祭)(1971)
・ストラヴィンスキー:ロシア風スケルツォ(1944)、若い象のためのサーカス・ポルカ B(1963)
・ワーグナー:楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』前奏曲、楽劇『ローエングリン』第1幕への前奏曲、ジークフリート牧歌、楽劇『トリスタンとイゾルデ』第1幕への前奏曲、イゾルデの愛の死 B(1963)
・ウェーバー:序曲集(『オベロン』『アブ・ハッサン』『魔弾の射手』『オイリアンテ』『プレチオーザ』『祝典序曲』)(1964)
・メンデルスゾーン:『真夏の夜の夢』序曲~リハーサル、全曲(1964)
・ハルトマン:交響曲第4番(弦楽オーケストラのための)、第8番(フル・オーケストラのための)(1967)
《協奏曲など》
・ヘンデル:水上の音楽、王宮の花火の音楽HWV351 ヴォルフガング・メイヤー(チェンバロ)B(1963)
・モーツァルト:セレナード第7番ニ長調『ハフナー』K.250(248b)
ルドルフ・ケッケルト(ヴァイオリン)(1963)
・グリーグ:ピアノ協奏曲 ゲザ・アンダB(1963)
・デ・ファリャ、マルティヌー
1)
デ・ファリャ:スペインの庭の夜
2)
マルティヌー:ピアノ協奏曲第5番『協奏的幻想曲』
マルグリット・ウェーバー(ピアノ)(1965)
・モーツァルト、ウェーバー
1)
モーツァルト:クラリネット協奏曲イ長調K.622
2)
ウェーバー:クラリネット協奏曲第1番へ短調Op.73
カール・ライスター(クラリネット)B(1967)
・チェレプニン:ピアノ協奏曲
第2番(第2版)、第5番 アレクサンドル・チェレプニン(1968)
・ベルク:ヴァイオリン協奏曲『ある天使の思い出に』ヘンリク・シェリング(1968)
・マルティノン:ヴァイオリン協奏曲第2番Op.51 ヘンリク・シェリング(1969)
・シェーンベルク:
・ピアノ協奏曲Op.42 アルフレッド・ブレンデル(1971)
・ヴァイオリン協奏曲Op.36 ズヴィ・ザイトリン(1971)
・バルトーク:管弦楽のための協奏曲Sz.116 Bs(1973)
・クーベリック:弦楽のための4つのフォーム イギリス室内管弦楽団(1969)
《歌劇、宗教曲など》
・ヴェルディ:歌劇『リゴレット』(全曲)
レナータ・スコット、ミレッラ・フィオレンティーニ、フィオレンツァ・コッソット(ソプラノ)、カテリーナ・アルダ(メッゾ・ソプラノ)、カルロ・ベルゴンツィ、ピエロ・デ・パルマ(テノール)、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)、ヴィルジリオ・カルボナーリ、イーヴォ・ヴィンコ(バス)、ミラノ・スカラ座管弦楽団(1964)
・オルフ:『オイディプス王』(全曲)
アストリッド・ヴァルナイ(ソプラノ)、ゲルハルト・シュトルツェ(テノール)、ハンス・ギュンター・ネッカー(バス・バリトン)、カール・クリスティアン・コール、キート・エンゲン(バス)(1966)
・ウェーバー:『オベロン』(全曲)
ビルギット・ニルソン、アーリーン・オジェー(ソプラノ)、ユリア・ハマリ、マルガ・シムル(メッゾ・ソプラノ)、プラシド・ドミンゴ、ドナルド・グローブ(テノール)、ヘルマン・プライ(バリトン)、ウーヴェ・フリードセン、Doris Masjos、マルティン・ベンラート、ゲルハルト・フリードリヒ、ハンズ・プッツ(台詞)(1970)
・ワーグナー:楽劇『ローエングリン』(全曲)
グンドゥラ・ヤノヴィッツ、ギネス・ジョーンズ(ソプラノ)、ジェイムズ・キング(テノール)、トーマス・スチュワート(バリトン)、カール・リッダーブッシュ、ゲルト・ニーンシュテット(バス)(1971)
・プフィッツナー:『パレストリーナ』(全曲)
ヘレン・ドーナト(ソプラノ)、ブリギッテ・ファスベンダー(メッゾ・ソプラノ)、ニコライ・ゲッダ(テノール)、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)(1973)
・シェーンベルク:『グレの歌』
インゲ・ボルク(ソプラノ)、ヘルタ・テッパー(メッゾ・ソプラノ)、ヘルベルト・シャヒシュナイダー、ロレンツ・フェーエンベルガー(テノール)、キート・エンゲン(バリトン)(1965)
・ハイドン、ヘンデル、グルック
1)
ハイドン:ミサ曲第7番ハ長調『よき四季斎日のミサ(戦時のミサ)』
2)
ヘンデル:歌劇『セルセ』よりレチタティーヴォとアリオーソ、アリア3曲
3)
グルック:歌劇『トリドのイフィジェニー』よりアリア、レチタティーヴォと二重唱
エルジー・モリソン(ソプラノ)(1)、マージョリー・トーマス(コントラルト)(1)、ペーター・ヴィトシュ(テノール)(1)、カール・クリスティアン・コーン(バス)(1)、フリッツ・ヴンダーリヒ(テノール)(2, 3)((1)1963、(2)1962、(3)1965)
・モーツァルト
1)
ミサ曲ハ長調『戴冠ミサ』K.317
2)
ミサ・ブレヴィス ハ長調K.220(196b)
3)
アヴェ・ヴェルム・コルプスK.618
エディット・マティス(ソプラノ)(1, 2)、ノーマ・プロクター(1)、タティアナ・トロヤノス(2)(コントラルト)、ドナルド・グローブ(1)、ホルスト・ラウベンタール(2)(テノール)、ジョン・シャーリー=カーク(1)、キート・エンゲン(2)(バス)((1) 1973、(2, 3)1968年9月)
《DVD 1》
1)
モーツァルト:交響曲第38番『プラハ』V(1971)
2)
ベートーヴェン:序曲『レオノーレ』第3番A(1969)
3)
同:交響曲第2番A(1969)
4)
同:交響曲第3番『英雄』B(1967)
《DVD 2》
・ブルックナー:交響曲第4番『ロマンティック』V(1971)
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