ワルターによるモーツァルトのレクイエム、抒情的な美しさをもっとも自然にひきだした名演である。ワルターは、その演奏スタイルとして、円熟期以降、全般に金管楽器、打楽器の過度な強調をおさえて、弦楽器と木管楽器の融合の響きを大切にしたが、そうした特質があますところなく表出されているのが本盤である。モーツァルトを得意とした、というよりもモーツァルトといえばワルターともいわれた当代の第一人者が、その最後の作品をどう表現すべきか。自然の流れのなかで、しかしモーツァルトへの畏敬の念あればこその深みをここに感じる。歌手の潜在能力をひきだすうえでも常に配意を忘れなかったワルターらしい美しくしなやかな詠唱と合唱も感動的。
➡ Bruno Walter Conducts Mozart も参照
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なんど聴いてもこころ洗われる想いがする精妙なる音楽。「戴冠ミサ」がかの遺作レクイエム以上に良い曲ではないかと思わせる完成度と昇華感。この演奏を残してくれたクーベリックに感謝の気持ちを伝えたくなる名演奏。
(録音記録)
◆ミサ曲ハ長調K.317「戴冠ミサ」(1. キリエ、2. グローリア、3. クレド、4. サンクトゥス-ベネディクトゥス、5. アニュス・デイ)
◆ミサ・ブレヴィス ハ長調K.220(196b)「雀」(6. キリエ、7. グローリア、8. クレド、9. サンクトゥス、10. ベネディクトゥス、11. アニュス・デイ)
◆12.エクスルターテ・ユビラーテK.165(158a)‾モテット「踊れ,喜べ,幸せな魂よ」 Allegro-Andante-Vivace、
◆13.アヴェ・ヴェルム・コルプスK.618
(演奏)クーベリック/バイエルン放送交響楽団・合唱団、但し12のみベルンハルト・クレー/ドレスデン国立管弦楽団(Orgel:ハンス・オットー)、6〜11、13は合唱指揮:ハンス・シュレムス/レーゲンスブルク教会合唱団
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「レクイエム」については、以下のアーノンクール盤も参考まで。好き嫌いは別れようが、これはこれで面白い演奏である。
フランツ・バイヤー(Franz Beyer)校訂版。この楽譜は1980年に出版されたが、アーノンクールははやくも翌年、この版による録音をウイーン・フィルと世に問うており、本盤はその後20余年をへた再録である。一般にバイヤー版のほうが、オーケストラの響きが純化され、その分独唱がクリアに前面にでるように思うが、それ以上に指揮者の個性如何というのがこの曲の最大の特色かも知れない。
ぼくは、従来、求心力のあるべーム盤や同じバイヤー版ではバーンスタインの劇的な表現に惹かれてきたが、このアーノンクールの演奏も見事である。これはレクイエムらしいレクイエムであり、モーツアルト演奏の第一人者を自負するアーノンクールの解釈ー流麗さなどのシンフォニックな部分を削ぎ、厳格なレクイエムとしての演奏ーをめざしているように感じる。一聴に値する成果。
→ Classique-La Discotheque Ideale での購入も一案
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