日曜日, 10月 10, 2021

モーツァルト:交響曲・管弦楽曲集 名盤探訪











定番の選択では、どうしてもワルター、ベーム、カラヤンといったところになるが、ここではもう少し別の選択の余地を探ってみたい。

👉 定番 モーツァルト 最後の交響曲2曲 決定盤を生んだ「奇跡の60年代」

アバド、ムーティ、コリンデイヴィス、そして最後は初期演目のお楽しみで・・・

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大らかさが身上

アバドのモーツァルト集。カラヤンの跡目を継いでベルリン・フィルのシュフに就任したアバドには、当初モーツァルトの交響曲・管弦楽などの壮大な全曲録音が企画されたようだが、結局それは中途で終わってしまった。すでにカラヤン、ベームでの主力録音が存在していたので、それをオーヴァーヘッドするのは難しかったからなのかも知れない。
しかし、小生はアバドのモーツァルトは悪くないと思う。ベームに比べて統制が緩く、カラヤンほどの緻密さはないながら、逆にいえば、オーケストラの自由度を引き出し、天性の明るい基調の大らかさがある。
本集はそうしたアバドの良さを知ることのできるアルバムながら、交響曲では第37番以降の後期曲集や、有名な「レクイエム ニ短調」(Requiem in d-Moll)K. 626は収録されておらず留意。なお、これらは、 
モーツァルト:交響曲集 、 モーツァルト:交響曲第40番&第41番「ジュピター」 、 モーツァルト:レクイエム  などで聴くことができる。

【収録情報】
・交響曲:第23番、第25番、第28番、第29番、第31番、第35番『ハフナー』、第36番『リンツ』、交響曲ニ長調『ポストホルン』(セレナード第9番 K.320より)
・ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲K.364(320d)、ライナー・クスマウル(ヴァイオリン)、ヴォルフラム・クリスト(ヴィオラ)
・ディヴェルティメント第11番
・セレナード第9番『ポストホルン』
・行進曲第1番、第2番 K.335(320a)
・フリーメイスンのための葬送音楽 ハ短調 K.477(479a)
・ミサ曲ハ短調 K.427(417a)(エーザー版)、バーバラ・ボニー(ソプラノ)、アーリーン・オジェー(ソプラノ)、ハンス=ペーター・ブロホヴィッツ(テノール)、ロベルト・ホル(バス)ベルリン放送合唱団

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 ムーティ、カラヤン/ウィーン・フィル盤に伍す

指揮者にとっては、モーツァルトの交響曲の試金石。これをウィーン・フィルで世に問えるのは特別な存在である。大胆不敵なカラヤン/ウィーン・フィルの名盤(1959年、1962年収録) モーツァルト:交響曲第40番&第41番「ジュピター」  のほぼ30年後、ムーティの演奏(1991年、1993年収録)はどうか。素晴らしい出来栄えである。オーケストラの編成を小振りにとり、古楽器演奏のスタイルも取り入れながら、古典的な装い(40番)や王朝的ともいえる典雅さ(41番)も意識させる。カラヤン盤に比べて、リズムの刻み方に、ときに意識的なごわごわとした手触りがありアクセントはより強いが、その一方、高音の抜けとメロディの美しさは、しっかりと踏襲している印象。両氏ともに50歳台前半の録音という点でも共通するが、カラヤンとは違ったアプローチながらも、独自のスタイリッシュさの主張ではムーティもけっして負けていない。
➡  
THE ART OF RICCARDO MUTI  にて聴取

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C.デイヴィス34才、40番の佳演

以下は40番について。1961年11月の録音。デイヴィスの34才の青年期の収録だが、自然体で素直な解釈でよどみなく、大らかに歌い上げている。デイヴィスはモーツァルトを得意としており、ロンドン響のほかにも、イギリス室内管弦楽団、シュターツカペレ・ドレスデン  Symphonies 28-41 (Coll)  などとの録音もあるが、 いずれもフレーズがながく音楽が流麗である。

オーケストラは伸び伸びとたくまずに奏し、指揮者の強圧的な緊張を少しも感じさせないが、その一方、ながいフレーズには適度の起伏とみずみずしさが充溢している。40番は明るさのなかにほのかな悲しみがブレンドされているような風情がポイントだが、この時期、デイヴィスは若手とは思えない落ち着いた演奏スタイルでこれを表現している。けれんみなき佳演である。

→ デイヴィス追悼の廉価盤  
Philips Years  で入手可能。同時期録音の25番、32番のほか宗教曲ほかを聴くことができる。

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最近、聴いてとても気に入っているのが下記、フリッチャイの録音。

フリッチャイの初期モーツァルト、5時間付き合いました!

フリッチャイ/RIAS響によるモーツアルト集である。しかし、3つの留意事項がある。第1にメインロードの曲はほとんど入っていない。下記でご覧いただくとおり交響曲はあまり取り上げられる機会のない初期の演目が中心である。第2にラジオ放送のリマスターであり、かつその時期は1951年、52年が中心である。良き録音を求める方には向かない。第3にフリッチャイの集中力のなせる技だろうが、一気呵成に、貪欲に取り組んでいるがゆえにモーツァルトを聴きなれたリスナーにとってこの演奏の精度が耐えうるかどうかということもある。
一方、フリッチャイ好きな向きには関心が向く。小生は、J.シュトラウス『こうもり』1949年を聴いて、そのライヴの思い切りの推進力に惹かれた。 リタ・シュトライヒ(Sop)を輝かせる フリッチャイの技量もたいしたものであり、モーツァルトへの情熱、またしかりだろう。録音の悪さは覚悟のうえ、得難いフリッチャイの足跡を知るうえでの貴重な音源であることにかわりはない。
<収録曲>
【交響曲】
・第1番、第4~9番(1952年5~6月)、第23番(1951年12月)
【協奏曲】
・ファゴット協奏曲 K. 191(1951年12月)
・協奏交響曲 K. 297b(1952年6月)
【管弦楽曲など】
・セレナード第6番「セレナータ・ノットゥルナ」K. 239(1951年2月)、第11番 K. 375(1952年9月)
・ディヴェルティメント第10番「ロドロン伯爵家の夜の音楽 第1番」 K.247
(1952年9月)、第17番 K. 334(1952年9月)
・カッサシオン K. 63(1952年9月)
・音楽の冗談 K. 522(1954年4月)
【歌劇】 
・『フィガロの結婚』 K. 492 - 第3幕 手紙の二重唱 「そよ風に寄せて」
シュザンヌ・ダンコ&リタ・シュトライヒ (ソプラノ) 1952年9月
・『ドン・ジョヴァンニ』 K. 527 - 第2幕「なんという、ふしだらな」
シュザンヌ・ダンコ (ソプラノ) 1952年9月

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