日曜日, 10月 17, 2021

ミュンヒンガー Karl Münchinger,


 










 名手 カール・ミュンヒンガー&シュトゥットガルト室内管

往年のファンにはとても懐かしいアルバム集。カール・ミュンヒンガーはドイツはもとより世界各国で尊敬をもって迎えられた名指揮者。手兵シュトゥットガルト室内管もこの時代は世界最高レヴェルにあった。ドイツでも、黒林のなかにあって、当時破竹の勢いの自動車産業の中心都市、シュトゥットガルトの豊かさも本楽団の支えになっていたろう。

当時、謹厳なるリヒター/ミュンヘンバッハ管&合唱団はバッハ演奏の金字塔をたてていたが、ミュンヒンガー&シュトゥットガルト室内管は、鷹揚さと洒脱さも持ち合わせており、バッハのほかヴィヴァルディやモーツァルトでも存分の演奏を披露した。
本集でもそのあたりは過不足なく収録されており、協奏曲などの組手はいずれも一流のプレイヤーである。但し、録音の古さは否めない。純粋にサウンドを愉しみたい向きにはお奨めできないが、ブランデンブルグ協奏曲と管弦楽組曲の「全曲」を優秀な演奏で最廉価で聴きたいリスナーにはいまも好適なBOXであると思う。

<収録情報>
【J.S.バッハ】
・カンタータ第51番「すべての地にて歓呼して神を迎えよ」BWV.51
 シュザンヌ・ダンコ(ソプラノ)、同第202番「いまぞ去れ、悲しみの影よ」 (結婚カンタータ)BWV.202(1953年)

【ヴィヴァルディ】
・「四季」:ヴェルナー・クロツィンガー(ヴァイオリン)(1957年)
・ヴィヴァルディ/ダンディ編:チェロ協奏曲ホ短調 ピエール・フルニエ(チェロ)
 (1952年)

【モーツァルト】
・セレナード第13番 K.525『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』(1951年)
・ディヴェルティメント K.136(1951年)
・モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番 K.271「ジュノーム」、第15番 K.450  ヴィルヘルム・ケンプ(ピアノ)(1953年)
・ヴァイオリン協奏曲第3番 K.216、第7番 K.268 クリスチャン・フェラス(ヴァイオリン)(1954年)
・シェーナとロンド「もうよい、すべて分かった…恐るるな、愛する人よ」K.490
・レチタティーヴォとアリア「もうたくさんだ、お前は勝った…ああ、私を捨てないで」K.295a  エリザベート・グリュンマー(ソプラノ)(1956年ライヴ)
 
【その他】
・ボッケリーニ/グルツマッヒャー編:チェロ協奏曲第9番 G.482(1952年)
・F.クープラン/バズレール編:コンセールのための5つの小品(1952年)
・ハイドン:チェロ協奏曲第2番 (1953年)
以上 ピエール・フルニエ(チェロ)
・コレッリ:合奏協奏曲第8番「クリスマス協奏曲」(1960年)

➡  
Various: Wiener Philharmoniker  も参照

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ミュンヒンガーとウィーン・フィルは相性がよく、ハイドンについては1953~61年にかけて、モーツァルトについても、1953~1968年にかけて交響曲や協奏曲などをあいついで録音している。ミュンヒンガーは手兵シュトゥットガルト室内管との録音では木綿のような手触りのぬくもりを感じさせるが、ウィーン・フィルからは見事なシルキー・サウンドを紡いでみせる。選曲もウィーン・フィルとは、ボスコフスキー(ヴァイオリン)、プリンツ(クラリネット)、トリップ(フルート)、イェリネク(ハープ)の主席奏者の名手を際立たせている。また、協奏曲では、フルニエ(チェロ)、ケンプ(ピアノ)、フェラス(ヴァイオリン)を起用し、いずれもこの時代では最高レヴェルの演奏といえよう。録音は古いながら巧匠の腕とはたいしたものだと感じる。ほかに、ボッケリーニのチェロ協奏曲を併録。一部の演奏は、スイス・ロマンド管のものもある。

<収録情報>
【ハイドン】
・交響曲集
*第83番『めんどり』(1961年4月)、*第88番『V字』(1954年11月)、*第96番『奇蹟』(1957年5月)、*100番『軍隊』(1961年4月)、*第101番『時計』(1954年11月)、*第104番『ロンドン』(1957年5月)
・チェロ協奏曲第2番 ピエール・フルニエ(チェロ)(1953年9月)

【モーツァルト】
・交響曲集
第31番『パリ』、第32番、第35番『ハフナー』(1968年4月)、*第33番、*第40番(1955年3月)
*フルートとハープのための協奏曲K.299 ヴェルナー・トリップ(フルート)、フーベルト・イェリネク(ハープ)(1962年9月)
*クラリネット協奏曲K.622 アルフレート・プリンツ(クラリネット)(同上)
*セレナード K.250『ハフナー』ヴィリー・ボスコフスキー(ヴァイオリン)(1960年10月)
・セレナード K.525『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』(1960年11月)
・ディヴェルティメント第1番ニ長調 K.136(1960年11月)
・同第11番ニ長調 K.251『ナンネル・セプテット』(1955年10月)
・バレエ『レ・プティ・リアン』 K.App.10(1956年11月)
・音楽の冗談 K.522(1960年11月)
・ヴァイオリン協奏曲第3番 K.216クリスチャン・フェラス(ヴァイオリン)(1954年10月)
・ヴァイオリン協奏曲第7(6)番K.268(偽作)同上
・ピアノ協奏曲第9番K.271『ジュノム』ヴィルヘルム・ケンプ(ピアノ)スイス・ロマンド管(1953年9月)
・同第15番K.450 同上
【ボッケリーニ】
・チェロ協奏曲変ロ長調 フルニエ(チェロ)(1952年9月)

*ウィーン・フィル、表記のないものはシュトゥットガルト室内管
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カール・ミュンヒンガー/ウィーン・フィルによるハイドンの交響曲。第88番「V字」、第101番「時計」の2曲が所収されている。いずれもウィーンにてセッション収録で音質はこの時代のものとしては良好。

ミュンヒンガーの古典派クラシック演奏の実力が当時、欧州でも十分に認められて、ウィーン・フィルとの作品づくりにいたった記念すべき1枚であるとともに、いまにいたるまで名盤の評価がかわらない。何度聴いても飽きのこないオーソドックスな演奏であるとともに、テンポが実に安定しており、そのしっかりとした土台のうえに、ハイドンの交響曲の構築美をウィーン・フィルの馥郁たる響きにのせて表現している。聴かせどころはけっして外さず「時計」の正確無比さとほのかなユーモアの同居などはいかにも名人芸。
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ミュンヒンガーは、バッハ演奏の権威であるとともにバロック音楽の旗手であった。しかし、前者についてはドイツでカール・リヒター率いるミュンヘン・バッハ管弦楽団が聳えていた。また、後者についてはイタリアでアーヨ率いるイ・ムジチ合奏団の明るく開放的な演奏が世界を制覇した。
本集はミュンヒンガー/シュトゥットガルト室内管弦楽団の優れた特色を知るうえで有益ながら、その編集方針には疑問がある。8枚組のなかで『四季』を3種入れる意味は果たしてあるのか(58年盤だけで十分では)。その一方、バッハはいくらでも優れた音源(『音楽の捧げもの』全曲でも『ブランデンブルク』でも)があり、もっと充実できたはず。さらに、たった1曲のみ入っているハイドンの『告別』はむしろハイドン、モーツァルトを集めたThe Classical Legacy集に入れて、逆にボッケリーニを本集に入れたほうが良かったのでは・・・等々。しかし、以下のラインナップをみても、いまだ揺籃期のバロック音楽の振興にいかに大きな影響力があったかは明らかであり、その足跡を辿る意味は大きいだろう。
<収録情報>
【ヴィヴァルディ】
・ヴァイオリン協奏曲集『四季』(1)ラインホルト・バルヒェット(ヴァイオリン)(1951年3月)、(2)ヴェルナー・クロツィンガー(同)(1958年5月)、(3)コンスタンティ・クルカ(同)(1972年7月)
・チェロ協奏曲 RV.40(V.ダンディ&P.バズレール編)ピエール・フルニエ(チェロ)(1952年9月)

【J.S.バッハ】
・管弦楽組曲第1~4番(1961年6月)
・フーガ BWV.947(ミュンヒンガー編)、フーガ BWV.542『大フーガ』(1951年10月)
・音楽の捧げもの BWV1079より6声のリチェルカーレ(フィッシャー編)同上
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【ガブリエリ】(Giovanni Gabrieli,~1612年)
・8声のソナタ第13番/7声のカンツォーナ第7番/7声のカンツォーナ/第1旋法による8声のカンツォーナ第1番/カンツォーナ第10番(サクラ・シンフォニア集第2巻より)/6声のカンツォーナ第2番/ピアノとフォルテのソナタ/3つのヴァイオリンのためのソナタ第21番/2つの弦楽オーケストラのためのカンツォーナ第1番/ピアノとフォルテのソナタ(2つの弦楽オーケストラ版)
ブライアン・ランネット(チェンバロ)(1969年5月、1952年9月)

【クープラン】(François Couperin, 1668~1733年)
・チェロと弦楽のための演奏会用小品(P.バズレール編)ピエール・フルニエ(チェロ)(1952年9月)

【ペルゴレージ】(Giovanni Battista Pergolesi,1710~36年)
・フルート協奏曲第1番、第2番 ジャン=ピエール・ランパル(フルート)(1963年10月)

【テレマン】(Georg Philipp Telemann,1681~1767年)
・ヴィオラ協奏曲ト長調 ハインツ・キルヒナー(ヴィオラ)(1952年9月)
・組曲『ドン・キホーテのブルレスカ』(1975年6月)

【ヴァッセナール】(Unico Wilhelm rijksgraaf van Wassenaer Obdam, 1692~ 1766年)
・コンチェルト・アルモニコ  第1~6番(1962年10月)

【J.C.バッハ】
・6つのシンフォニア Op.18/1-6(1973年7月、1975年6月)

【ハイドン】
・交響曲第45番『告別』(1951年10月)

【ベートーヴェン】
・大フーガ Op.133(1951年10月)
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ミュンヒンガー/シュトゥットガルト室内管による小品集。小規模な弦楽オケ作品が数多く取り上げられている。演奏は折り紙付きのものだが、一曲の収録時間が短い点は留意。ミュンヒンガーが苦労のすえ、こうした小規模楽団成立に先鞭をつけた功績は、路線こそ異なれども、その後の古楽器演奏集団へのリード線になったことからも高く評価されよう。
<収録情報>
【J.S.バッハ】
・フーガ BWV.947(ミュンヒンガー編)
・管弦楽組曲第3番より第2曲:アリア 
・幻想曲とフーガ BWV.542『大フーガ』よりフーガ(ミュンヒンガー編)
【ヴィヴァルディ】
・弦楽のための協奏曲ト長調『アラ・ルスティカ』 RV.151(抜粋)
【ボッケリーニ】
・メヌエット(弦楽五重奏曲ホ長調 Op.13-5より)
【ホフシュテッター(伝ハイドン)】
・アンダンテ・カンタービレ(弦楽四重奏曲ヘ長調 Op.3-5より)
【ヘンデル】
・合奏協奏曲第6番 Op.6-6より第3曲:ミュゼット
【モーツァルト】
・バレエ『レ・プティ・リアン』 K.App.10(抜粋)
・ディヴェルティメント ニ長調 K.334より第3楽章
【シューベルト】
・5つのメヌエットと6つのトリオ D.89より第5番
【シューマン】
・東洋の絵 Op.66より第1曲(室内楽編)
【グリーグ】
・ホルベルク組曲 Op.40より第1曲:前奏曲
(以上1966年9月)
【グルック】
・シャコンヌ(歌劇『パリーデとエレーナ』より)(1960年10,11月)
【レスピーギ】
・リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲(1951年3月)
【マルタン】
・弦楽オーケストラのためのパッサカリア
【ヒンデミット】
・弦楽オーケストラのための5つの小品
【バークリー】
・弦楽のためのセレナード Op.12
【バーバー】
・弦楽のためのアダージョ Op.11
(以上1955年10月)

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