最近、ユリア・フィッシャーの演奏を聴いて驚いた。こうした若者がスーとでてくるところが衝撃であり、また醍醐味でもある。クラシック音楽の世界でも、一定の間隔をおいて時代の寵児というような人が登場する。
このブログでも「クラシック音楽の危機」というのを書いているが、ユリア・フィッシャーはもしかするとそれを変えてくれるような逸材ではないかと直観する。
8回のコンクール優勝はヴァイオリン5回、ピアノ3回というのだから恐れ入る。どちらかに命をかけているライヴァル達はやってられないと思うのではないか。かつてショルティは、ピアニストとしても超一流だったし、ミュンシュもコンサートマスターをやったヴァイオリニストだった。でも、この弱冠27才の才媛は、そのどちらもOK。セルも多彩で若くして音楽大学で教鞭をとったが、ユリア・フィッシャーもすでに教授である。しかも軽々とこれをやってのけている印象がある。アルゲリッチも若い頃、そうした雰囲気があった。でもヴァイオリニストでは、どうか?ムター以来かな。なかなか比肩する先行者がいまは思いつかない。これからの成長が大いに楽しみである。
【以下はレビュー】
1983年ミュンヘンで生まれのユリア・フィッシャーの2005~2007年(22~24才)の録音。恐ろしく弓さばきが軽やかで自然体の演奏。その一方、全体から受ける印象は、これが新進ヴァイオリストの演奏かと疑うほどバランスのとれた見事な出来映えである。巷間言われているように、「天才」肌なんだろうなとリスナーは実感するだろう。ただ「巧い」だけではない。フィッシャーはこのアルバムで、現代的モーツァルト演奏への新たな試みを意欲的に行っているようにも思う。それは、ヴィオラとの協奏交響曲や2つのヴァイオリンのためのコンチェルトーネなどで特に感じるが、管弦楽、室内楽といったジャンルを全く意識させない共演者との融合感、一体化があることだ。ともすれば、協奏を「競奏」的に捉える古い録音ばかりを普段聴いている小生には実に新鮮に感じる演奏スタイルである。オランダ室内管弦楽団はそうした点で良きパートナーだろうが、できればもう一歩、サウンドの洗練された名門オケのバックで聴きたいという我儘もある。
(収録情報)
CD1:協奏曲第1番変ロ長調 K.207、第2番ニ長調 K.211、第5番イ長調 K.219『トルコ風』
CD2:第3番ト長調 K.216、第4番ニ長調 K.218、ヴァイオリンと管弦楽のためのアダージョ ホ長調 K.261、ヴァイオリンと管弦楽のためのロンド 変ロ長調 K.269
CD3:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲変ホ長調 K.364、ヴァイオリンと管弦楽のためのロンド ハ長調 K.373、2つのヴァイオリンのためのコンチェルトーネ ハ長調 K.190
【演奏】ヤコフ・クライツベルク(指揮)オランダ室内管弦楽団、ゴルダン・ニコリッチ(ヴァイオリン&ヴィオラ)、ピーテル=ヤン・ベルダー(チェンバロ)/レコーディング風景DVD付
http://www.amazon.co.jp/Violin-Concertos-Mozart/dp/B004DIPKZ0/ref=cm_cr-mr-img
(参考)以下はHMVからの引用
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
ユリア・フィッシャー
クライツベルク&オランダ室内管
DVD付き!
ドイツの生んだ天才ヴァイオリニスト、ユリア・フィッシャーによるモーツァルトのヴァイオリン協奏曲アルバムをまとめて全集にしたセットの登場。通常のCDプレーヤーでも優秀な音質が味わえるほか、SACDプレーヤーではマルチチャンネル音声も再生可能なハイブリッド・タイプで、しかもDVDが付属するというコストパフォーマンス抜群の全集です。
【ドイツの天才ヴァイオリニスト】
ピアニストの母と数学者の父のもとに生まれたユリア・フィッシャーは、参加した8つのコンクールすべてに優勝し、さらに驚くべきことに、そのうち3つはピアノ部門だったという驚きの才能の持ち主。
【軽やかで美しい演奏】
このモーツァルトでも、フィッシャーのソロは軽やかに舞うように美しい見事なもの。指揮のクライツベルクも、表情豊かで典雅なオケの響きを巧みにコントロールしてバランスをとり、ソロと密接に絡み合う対話的な進行をも実現、若き日のモーツァルトにふさわしい晴れやかな爽快感の中にも意味深い音楽を聴かせることに成功しています。
また第1番と第2番では、通奏低音としてチェンバロが登場しますが、演奏はなんと平均律全曲やスカルラッティ全集などの名盤もあるベルダーが担当しており、繊細な彩りを添えているのが印象的です。
【注目のカデンツァ】
フィッシャーとクライツベルクの相性の良さはカデンツァを分担して完成させているところにも感じられます。多くはフィッシャー自身によるものですが、クライツベルクが書いたものもいくつかあり、しかもそれらがモーツァルトの様式にふさわしい華麗さを示しながらも違和感無く曲に溶け込み、大きな聴きどころを形成しているあたりはさすがというほかありません。
【ユリア・フィッシャー】
若くしてすでに「21世紀を代表するヴァイオリニストの一人!」と称されていたユリア・フィッシャーは、スロヴァキア出身のピアニストの母、旧東ドイツ出身の数学者の父のもと、1983年にミュンヘンで生まれました。3歳で母からピアノを習い始め、まもなくヴァイオリンに転向。アウグスブルクのモーツァルト音楽院でヴァイオリンを学び始めるや、彼女の人生にとってヴァイオリンはかけがえの無い大切なものとなります。
その後ミュンヘン音楽大学で名教師アナ・チュマチェンコに師事(今ではこの母校で彼女自身が教鞭をとっており、ドイツの最も若いヴァイオリン教授として名を馳せています)。1995年、11歳の時にユーディ・メニューイン国際コンクールで優勝したほか、数々のコンクールでの優勝を重ね、その後は世界各地のオーケストラ、指揮者たちと共演しています。
2004年にペンタトーンと専属契約を結び、8枚のアルバムをリリース。ペンタトーンでのデビュー盤となったハチャトリアン、プロコフィエフ、グラズノフの協奏曲集はドイツでのクラシック・チャート5位にチャートイン、グラモフォン・マガジンのエディターズ・チョイスでも取り上げられました。デビュー盤に続いてリリースされたバッハ:無伴奏、モーツァルト:協奏曲、チャイコフスキー:協奏曲、ブラームス:協奏曲の録音も同様に高い評価を獲得。
2008年12月にはデッカからバッハのヴァイオリン協奏曲集をリリースして、同曲集のアルバムで最高の売上を記録するなど話題になりました。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3976834
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