ベルリン・フィルは、フルトヴェングラー、クナッパーツブッシュ後、
ブルックナーの録音はヨッフム、カラヤンを中心に行っていきますが、
他方、ウィーン・フィルで特定演目ながら、非常な名演を送り出した
のがベームです。
もちろん、ブルックナー受容がすすんでくると多くのユニークな演奏も
でてきます。オールド派と言っては怒られそうですが、大胆な仕振りで
日本でも大変人気のあったマタチッチ、逆にブルックナー解釈に新たな
視座をあたえたインバルなど多彩な音源もブルックナーの魅力です。
しかし、新解釈や新校訂に過度にとらわれるのも問題で、たとえば、
ラトルの9番の第4楽章などは、あまりに貧弱でゲテモノ的に響き、がっ
かりした経験もあります。
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ブルックナー:交響曲第3番《ワーグナー》
作曲者の最終稿をベースとしたノヴァーク版(1958年「ブルックナー協会版」)を使用したベーム/ウィーン・フィルの演奏。アインザッツから、これは凄いぞ!と思わせます。1970年の録音ですがウィーン・フィルの瑞々しい音楽が充溢しておりこの年代の録音としては不足はないと思います。
演奏の「質量」の充実ぶりが本盤の決め手です。フルトヴェングラーやクナッパーツブッシュ時代のように、指揮者とオケが音楽にのめり込んでいく行き方とは異なり、クール・ヘッドな、しかもノー・ミスが前提の演奏ながら、抜群の構築力を誇ります。ベームのこの手法はかってのベルリン・フィルとのブラームスの1番などとも共通し、テンポは一定、それを与件としてダイナミック・レンジは最大限にとります。弦と管のバランスも申し分なし。音に丹念な「入魂」を行うこともベーム流。3番は何故か大家の名演の少ないなか、この1枚は現状まで、おそらくベスト盤といえる出来だと思います。
ベームが実は周到に準備した演奏でしょうが、彼はこれ以降、この音源をオーバーヘッド(再録音)する必要がなかったと思います。そうした意味では会心の演奏と自己評価していたのではないでしょうか。ベームの代表的なメモリアルであるとともに3番でベームが築いた金字塔とでも言える名演です。
ベームの4番は、その求心力ある演奏によって、この曲のスタンダード盤とでもいって良いものです。テンポのコントロールが一定でどっしりとした安定感がある演奏です。
ベームはその著『回想のロンド』になかで、「ブルックナーのように孤独で独特な存在に対して、オーケストラ全体が目標を決めていることこそ決定的なことなのだ。もしも壇上のわれわれみなが納得してさえいれば、われわれは聴衆をも納得させずにはおかない」旨を語り、特にウィーン・フィルとの関係では、この点を強調しています。
ブルックナーにおいて3番、7番、8番とも、ウィーン・フィルとのコンビではこうした強固な意志を感じさせます。同国オーストリア人の気概をもっての魂魄の名演と言えるでしょう。
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ブルックナー:交響曲第8番
ベームのブルックナー交響曲第8番、終楽章。これは実に見事な演奏である。ブルックナーは当初、この交響曲を自信をもって書いた。しかし、ブルックナーを取り巻くシンパはこの作品について厳しい評価をした。7番は成功した。そのわかりやすさ、ボリューム感からみると、8番は晦渋であり、なんとも長い。ブルックナー使徒達は、8番での評価の低下を懼れて、いろいろとブルックナーに意見をした。ブルックナーは深刻に悩み自殺も考えたと言われる。悩みは続き、9番が未完に終わったのも、この桎梏からブルックナー自身が脱けられなかったからかも知れない。
さて、ベームの演奏が見事なのは、ブルックナーの当初の「自信」に共感し、それを最大限、表現しようとしているからではないかと感じる。もちろん8番の名演はベームに限らない。クナッパーツブッシュ、フルトヴェングラー、シューリヒト、クレンペラー、ヨッフム、チェリビダッケ、ヴァント、初期のカラヤンなど大家の名演が目白押しであり、どれが最も優れているかといった設問自体がナンセンスとすら思う。皆、このブルックナー最後の第4楽章に重要な意味を見いだし、魂魄の演奏をぶつけてきており火花が散るような割拠ぶりである。
ベームの演奏は、そうしたなかにあってベームらしい「オーソドックス」さが売りかも知れない。テンポは一定、ダイナミズムの振幅は大きくとり、重厚かつノーミスの緻密さを誇る。しかし、それゆえに、「素材」の良さをもっとも素直に表出しているように思う。飽きがこない、何度も聴きたくなるしっかりとした構築力ある演奏。推薦します。
べーム ブルックナー 4番、5番(1936年録音)
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以下
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![ブルックナー:交響曲第7番[原典版]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51lNvppRGhL._SL110_.jpg)
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