ハンス・クナッパーツブッシュ・コレクション 『パルジファル』録音集~バイロイト音楽祭1951-64(48CD)
今日はしつこい歯痛に悩まされながら、『パルジファル』(1960年)を聴いている。なぜ、これを聴きたくなったのか、自分でもよくわからないが、理不尽な歯痛とこの解読の難しい長大な音楽の相性はそう悪くないとも思う。
クナッパーツブッシュは録音には無頓着だったようだが、よもや天国に召されてのち、自分のバイロイトでの全録音がボックス・セットとなって後世でもてはやされているなど、夢想だにしなかったのではないか。
『パルジファル』についてはライヴで聴いた際の思い出もかつて書いたが、ワーグナーの作品のなかでも最も晦渋で、複雑な心象をもっていると思う一方、名状しがたいドイツ的なメンタリティを具現化しているとも考える。
日本的なメンタリティを一言でといわれても腕組みしてしまうように、ドイツ的なメンタリティもドイツ人にとっては自明でも他国人にとっては解析が難しい。ワーグナーは、これを『パルジファル』に借りて表現せんとしているように思うが、これだけの長大な時間で多くの観念を吐露しても、おそらくは語りつくしているとは少しも思ってはいなかったのだろう。
個人的暴言ながら、『マイスタージンガー』には歌舞伎十八番に通じるものがあるとすれば、『パルジファル』には能楽を連想させるものがある。『マイスタージンガー』には<ものがたり>があるが、『パルジファル』は<モノローグ>が中心である。<ものがたり>には完結性があり、<モノローグ>には心に宿す余韻がある。そんなことを間歇的にずきずきとくる痛みを意識しながら考えた。
【以下は引用】
名実共に『パルジファル』のエキスパートとして名を馳せていたクナッパーツブッシュは、1951年と1952年、そして1954年から亡くなる前年の1964年まで、バイロイト音楽祭に出演して『パルジファル』を指揮し続けていました。
1953年に指揮していないのは、ヴィーラント・ヴァーグナーによる新バイロイト様式の簡素な演出を嫌ったクナッパーツブッシュが抗議してキャンセルしたためで、代わりに呼んだクレメンス・クラウスを気に入ったヴィーラントは、翌年以降も彼をバイロイト音楽祭で重用するつもりでした。
しかし、1954年5月にクラウスがメキシコで客死してしまったため、ヴィーラントは急遽クナッパーツブッシュと和解して音楽祭への復帰を懇願、同年から1964年まで毎年『パルジファル』を指揮したほか、『ニーベルングの指環』『さまよえるオランダ人』『ニュルンベルクのマイスタージンガー』も指揮しています。
なお、1965年の『パルジファル』の指揮がクリュイタンスなのは、クナッパーツブッシュが前年の秋に大腿骨骨折という大怪我をして療養していたためで、体力を失った彼は同年10月25日に亡くなっています。
結局、13の年度にわたってバイロイトで『パルジファル』を指揮したクナッパーツブッシュですが、録音が確認されているのは、1951・1952・1954・1956・1957・1958・1959・1960・1961・1962・1963・1964年の12の年度となっています。
今回登場するセットは、クナッパーツブッシュの『パルジファル』12年分の録音をコレクションしたもので、錚々たる顔ぶれの歌手たちによる歌唱や、手術なども経て変化していったクナッパーツブッシュの指揮ぶりなどを、遺された音源によってつぶさに検証することができるという実にマニアックな企画となっています。(HMV)
【収録情報】Disc1-4
● ワーグナー:『パルジファル』全曲 (録音時期:1951年)
アンフォルタス:ジョージ・ロンドン
ティトゥレル:アルノルト・ヴァン・ミル
グルネマンツ:ルートヴィヒ・ウェーバー
パルジファル:ヴォルフガング・ヴィントガッセン
クリングゾール:ヘルマン・ウーデ
クンドリー: マルタ・メードル
第1の聖杯騎士:ヴァルター・フリッツ
第2の聖杯騎士:ヴェルナー・ファウルハーバー
4人の小姓:ハンナ・ルートヴィヒ、エリフリーデ・ヴィルト、ギュンター・バルダウフ、ゲルハルト・シュトルツェ
花の乙女たち:ヒルデガルト・シュネーマン、エリカ・ツィンマーマン、ハンナ・ルートヴィヒ、パウル・ブリフカルネ、マリア・ラコルネ、エリフリーデ・ヴィルト
アルト・ソロ:ルート・ジーヴェルト
Wagner: Parsifal 1951
Disc5-8
● ワーグナー:『パルジファル』全曲 (録音時期:1952年)
アンフォルタス:ジョージ・ロンドン
ティトゥレル:クルト・ベーメ
グルネマンツ:ルートヴィヒ・ウェーバー
パルジファル:ヴォルフガング・ヴィントガッセン
クリングゾール:ヘルマン・ウーデ
クンドリー:マルタ・メードル
第1の聖杯騎士:カール・テルカル
第2の聖杯騎士:ヴェルナー・ファウルハーバー
4人の小姓:ヘルタ・テッパー、ハンナ・ルートヴィヒ、ゲルハルト・ウンガー、ゲルハルト・シュトルツェ
花の乙女たち:リタ・シュトライヒ、エリカ・ツィンマーマン、ハンナ・ルートヴィヒ、パウル・ブリフカルネ、マリア・ラコルネ、ヘルタ・テッパー
アルト・ソロ:ルート・ジーヴェルト
Parsifal (Bayreuth 1952)
Disc9-12
● ワーグナー:『パルジファル』全曲 (録音時期:1954年)
アンフォルタス:ハンス・ホッター
ティトゥレル:テオ・アダム
グルネマンツ:ヨーゼフ・グラインドル
パルジファル:ヴォルフガング・ヴィントガッセン
クリングゾール:グスタフ・ナイトリンガー
クンドリー:マルタ・メードル
第1の聖杯騎士:ジーン・トビン
第2の聖杯騎士:テオ・アダム
4人の小姓:ヘティ・プリュマッハー、ギゼラ・リツ、ゲルハルト・シュトルツェ、ヒューゴ・クラッツ
花の乙女たち:イルゼ・ヘルヴェヒ、フリードル・ペルティンガー、ヘティ・プリュマッハー、ドロテア・ジーベルト、ユッダ・ヴルピウス、ギゼラ・リツ
アルト・ソロ:ヘティ・プリュマッハー
Richard Wagner : Parsifal (Bayreuth 1954)
Disc13-16
● ワーグナー:『パルジファル』全曲 (録音時期:1956年)
アンフォルタス:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
ティトゥレル:ハンス・ホッター
グルネマンツ:ヨーゼフ・グラインドル
パルジファル:ラモン・ヴィナル
クリングゾール:トニ・ブランケンハイム
クンドリー:マルタ・メードル
第1の聖杯騎士:ヨーゼフ・トラクセル
第2の聖杯騎士:アルフォンス・フェルヴィッヒ
4人の小姓:パウル・レンヒナー、エリザベート・シュルテル、アルフレート・プファイフレ、ゲルハルト・シュトルツェ
花の乙女たち:イルゼ・ヘルヴェヒ、フリードル・ペルティンガー、パウル・レンヒナー、ドロテア・ジーベルト、ユッダ・ヴルピウス、エリザベート・シュルテル
アルト・ソロ:マルタ・メードル
Wagner : Parsifal (Bayreuth 1956)
Disc17-20
● ワーグナー:『パルジファル』全曲 (録音時期:1957年)
アンフォルタス:ジョージ・ロンドン
ティトゥレル:アルノルト・ヴァン・ミル
グルネマンツ:ヨーゼフ・グラインドル
パルジファル:ラモン・ヴィナル
クリングゾール:トニ・ブランケンハイム
クンドリー:マルタ・メードル
第1の聖杯騎士:ワルター・ガイスラー
第2の聖杯騎士:オットー・ヴィーナー
4人の小姓:パウル・レンヒナー、エリザベート・シュルテル、ハンス・クロットハマー、ゲルハルト・シュトルツェ
花の乙女たち:イルゼ・ヘルヴェヒ、フリードル・ペルティンガー、パウル・レンヒナー、ドロテア・ジーベルト、ロッテ・リザネク、エリザベート・シュルテル
Disc21-24
● ワーグナー:『パルジファル』全曲 (録音時期:1958年)
アンフォルタス:エーベルハルト・ヴェヒター
ティトゥレル:ヨーゼフ・グラインドル
グルネマンツ:ジェローム・ハインズ
パルジファル:ハンス・バイラー
クリングゾール:トニ・ブランケンハイム
クンドリー:レジーヌ・クレスパン
第1の聖杯騎士:フリッツ・ウール
第2の聖杯騎士:ドナルド・ベル
4人の小姓:クラウディア・ヘルマン、ウルズラ・ベーゼ、 ゲルハルト・シュトルツェ、ハラルト・ノイキルヒ
花の乙女たち:ロッテ・シェードレ、ヒルデガルト・シュネーマン、ゲルトラウト・プレンツロウ、ドロテア・ジーベルト、フリードル・ペルティンガー、エリザベート・シュルテル
アルト・ソロ:マリア・フォン・イロスヴァイ
Disc25-28
● ワーグナー:『パルジファル』全曲 (録音時期:1959年)
アンフォルタス:エーベルハルト・ヴェヒター
ティトゥレル:ヨーゼフ・グラインドル
グルネマンツ:ジェローム・ハインズ
パルジファル:ハンス・バイラー
クリングゾール:トニ・ブランケンハイム
クンドリー:マルタ・メードル
第1の聖杯騎士:ゲオルグ・パスクタ
第2の聖杯騎士:ドナルド・ベル
4人の小姓:クラウディア・ヘルマン、ウルズラ・ベーゼ、ハラルド・ノイキルヒ、ヘロルド・クラウス
花の乙女たち:ルート=マルグレート・ピュッツ、リタ・バルトス、ギゼラ・シュレーター、ドロテア・ジーベルト、 エリザベート・ヴィッツマン、クラウディア・ヘルマン
アルト・ソロ:ウルズラ・ベーゼ
Wagner: Parsifal 1959
Disc29-32
● ワーグナー:『パルジファル』全曲 (録音時期:1960年)
アンフォルタス:トーマス・ステュアート
ティトゥレル:デイヴィッド・ウォード
グルネマンツ:ヨーゼフ・グラインドル
パルジファル:ハンス・バイラー
クリングゾール:グスタフ・ナイトリンガー
クンドリー:レジーヌ・クレスパン
第1の聖杯騎士:ヴィルフリート・クルーク
第2の聖杯騎士:テオ・アダム
4人の小姓:クラウディア・ヘルマン、ルート・ヘッセ、ハラルド・ノイキルヒ、 ヘロルド・クラウス
花の乙女たち:グンドゥラ・ヤノヴィッツ、ルート・ヘッセ、ルート=マルグレート・ピュッツ、クラウディア・ヘルマン、エリザベート・ヴィッツマン、ドロテア・ジーベルト
アルト・ソロ:ルート・ジーヴェルト
Parsifal
Disc33-36
● ワーグナー:『パルジファル』全曲 (録音時期:1961年)
アンフォルタス:ジョージ・ロンドン
ティトゥレル:ルートヴィヒ・ウェーバー
グルネマンツ:ハンス・ホッター
パルジファル:ジェス・トーマス
クリングゾール:グスタフ・ナイトリンガー
クンドリー:アイリーン・ダリス
第1の聖杯騎士:ニールス・メラー
第2の聖杯騎士:デイヴィッド・ワード
4人の小姓:ルート・ヘッセ、クラウディア・ヘルマン、ゲルハルト・シュトルツェ、ゲオルグ・パスクタ
花の乙女たち:アニア・シリア、グンドゥラ・ヤノヴィッツ、クラウディア・ヘルマン、ドロテア・ジーベルト、リタ・バルトス、エリザベート・シュルテル
アルト・ソロ:ウルズラ・ベーゼ
Disc37-40
● ワーグナー:『パルジファル』全曲 (録音時期:1962年)
アンフォルタス:ジョージ・ロンドン
ティトゥレル:マルッティ・タルヴェラ
グルネマンツ:ハンス・ホッター
パルジファル:ジェス・トーマス
クリングゾール:グスタフ・ナイトリンガー
クンドリー:アイリーン・ダリス
第1の聖杯騎士:ニールス・メラー
第2の聖杯騎士:ゲルト・ニーンシュテット
4人の小姓:ソナ・セルヴェナ、ウルズラ・ベーゼ、ゲルハルト・シュトルツェ、ゲオルグ・パスクタ
花の乙女たち:グンドゥラ・ヤノヴィッツ、アニア・シリア、エルセ・マルグレーテ・ガルデッリ、ドロテア・ジーベルト、リタ・バルトス、ソナ・セルヴェナ
アルト・ソロ:ウルズラ・ベーゼ
Wagner: Parsifal 1962
Disc41-44
● ワーグナー:『パルジファル』全曲 (録音時期:1963年)
アンフォルタス:ジョージ・ロンドン
ティトゥレル:クルト・ベーメ
グルネマンツ:ハンス・ホッター
パルジファル:ヴォルフガング・ヴィントガッセン
クリングゾール:グスタフ・ナイトリンガー
クンドリー:アイリーン・ダリス
第1の聖杯騎士:ヘルマン・ヴィンクラー
第2の聖杯騎士:ゲルト・ニーンシュテット
4人の小姓:ルート・ヘッセ、マルガレーテ・べンス、ゲオルグ・パスクタ、 エルヴィン・ヴォールファルト
花の乙女たち:アニア・シリア、シルヴィア・スタールマン、ジークリンデ・ワーグナー、ドロテア・ジーベルト、リタ・バルトス、ソナ・セルヴェナ
Wagner: Parsifal 1963
Disc45-48
● ワーグナー:『パルジファル』全曲 (録音時期:1964年)
アンフォルタス:トーマス・ステュアート
ティトゥレル:ハインツ・ハーゲナウ
グルネマンツ:ハンス・ホッター
パルジファル:ジョン・ヴィッカーズ
クリングゾール:グスタフ・ナイトリンガー
クンドリー:バルブロ・エリクソン
第1の聖杯騎士:ヘルマン・ヴィンクラー
第2の聖杯騎士:ゲルト・ニーンシュテット
4人の小姓:ルート・ヘッセ、シルヴィア・リンデンストラント、ディーター・スレンベック、エルヴィン・ヴォールファルト
花の乙女たち:アニア・シリア、リゼロッティ・レーブマン、エルセ・マルグレーテ・ガルデッリ、ドロテア・ジーベルト、リタ・バルトス、シルヴィア・リンデンストラント
アルト・ソロ:ルート・ヘッセ
バイロイト祝祭合唱団
ヴィルヘルム・ピッツ(合唱指揮)
バイロイト祝祭管弦楽団
ハンス・クナッパーツブッシュ(指揮)
録音場所:バイロイト祝祭劇場
録音方式:モノラル(Disc37-40のみステレオ)/ライヴ)
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