ザ・ベスト・オブ・ショパン(日本独自企画盤)
最高のショパン弾きの異名をとったルービンシュタインながら、実は苦手な演目もあったようだ。「24の前奏曲」は、初回録音時の手ひどい批判が尾をひいてステレオ再録音はされなかったという。かつて読んだインタビュー記事でも、「もう一度生まれかわってもピアニストになりたいが、今度はショパンの『難曲』も弾けるピアニストがいい・・・」といった下りがあり、これは彼一流の洒脱なジョークだろうと思っていたが、実際、手中の曲とそうでない曲は厳格に区別していたようだ(ラフマニノフの協奏曲でも2番は数次の録音があるがそれ以外は慎重)。
ライヴでもいくども取り上げた「十八番」の曲が本集に集約されている。小生はかねてから、故国の誇りを胸に秘め凛としたポロネーズこそ、他の追随を許さぬルービンシュタインの独壇場と思うが、第7番(「幻想ポロネーズ」)が所収されていないのがちょっと残念。
なお、廉価BOX盤 Chopin Collection や Chopin: Rubinstein Plays Chopinなどもある。
ショパン:バラード&スケルツォ(全曲)
ルービンシュタインのショパン集。小生は CHOPIN COLLECTION がお奨めだが、いまは廉価盤も多く出ておりリスナーの選択如何。
さて、スケルツォ(諧謔曲)とバラード(譚詩曲)では、ルービンシュタインの特有の落着きある演奏も得難いが、白刃をくぐるような緊張感があるフランソワ Samson Francois: L'edition Integrale の天才的な閃光も、複雑な心理の襞を感じさせるこのジャンルでは素晴らしいものと感じる。
ショパン:ワルツ集(全14曲)
ルービンシュタインのショパン集。小生は CHOPIN COLLECTION がお奨めだが、いまは廉価盤も多く出ておりリスナーの選択如何。そうしたなかでも、ワルツ(円舞曲)は、品位、軽やかなタッチ、馥郁たる雰囲気において、いまだルービンシュタイン盤は最右翼だろう。名曲の名盤の名に恥じない成果。
➡ Classique-La Discotheque Ideale も参照
ショパン:ピアノ協奏曲第1番&第2番(日本独自企画盤)
◆ショパンの1番:リスナーの胸のなかにショパンの心象風景が鮮明に焼きつくような、文字通り心の通った名演である。柔な感傷とは別の、いわば「硬質な抒情性」がルービンシュタインの均質な音づくりによって意識され、過度にならない感情表出によって、かえって抑制的な感動が次第にふくらんでいくような演奏。ショパンの静かなメロディのうちに熱きパッションが内在されていることを見事に表現している(録音:1961年7月8、9日)。
◆ショパンの2番:ルービンシュタインの経歴をみているとポーランド出身で神童といわれ、ベルリンに留学、そしてパリで多くの文化人と接触して見聞をひろめるといった10代の凝縮された歩みは、ショパンの生涯そのものの遍歴と重なる。2番は1番よりも早く書か れながら知名度は及ばないが、ショパンの複雑な心象や天才ゆえの重たい憂鬱がより濃厚にでている作品。ルービンシュタインはショパンの使徒とでもいうべき心情の寄り添いをみせる。第3楽章の透明で明るい響きは、若きショパンの高なる感興を代弁しているように爽やかなエンディングで後味がよい(録音:1959年1月20日)
→ Arthur Rubinstein Plays Great Piano Concertos (Sony Classical Masters) にて聴取。
CHOPIN COLLECTION
中学生だった40数年前にはじめて買ったLPが、ルービンシュタイン奏でるショパンのポロネーズ集、とても高価な、そして贅沢な演奏の1枚だった。また、ホロビッツが演奏を再開、大津波のような衝撃が日本にも走ったり、ミケランジェリの稀少なライヴがFMで流れて好事家のあいだで演奏評が沸騰したりと、その時代、いわゆる大家(ヴィルトオーソ)の演奏には、いまでは考えられないくらいの話題性があった。
しかし、ポリーニ、アルゲリッチはじめ、その後の輝かしい若手の台頭によって、また、日進月歩の録音技術の向上もあって、こうした大家の演奏はしばしお蔵入りとなった。
近年、ショパンに関しても、ルービンシュタインに限らずフランソワなど、リヴァイバル盤がふたたび注目されている。その理由は、本全集を聴き直してみて、改めてその薫りたつような品位にあると感じる。真似のできないこの時代特有の演奏家の品位と作曲家に対する熱情が、本全集の底流にも溢れている。演奏技術の高度化では「後世恐るべし」だが、落ち着いて、演奏家の深い解釈にじっくりと耳を傾けるなら、本全集の価値はいまも決して減じてはいない。なにより、これが「全身全霊の1枚」といった極度の集中力が演奏家にも録音技師にも、強くあった時代だからかも知れない。ショパン演奏には特に好みがわかれ「煩型」も多いからそこは割り引いても、この価格なら★4以上の値打ちは十分あるだろう。
Arthur Rubinstein Plays Great Piano Concertos (Sony Classical Masters)
ルービンシュタインのピアノ協奏曲集。以下の13名の作曲家による主要作品を幅広くカヴァーしており、この価格でいわば「ピアノ協奏曲大全」といった集約度。ルービンシュタインのオールマイティぶりを示している。
バックの陣容は、往時、非常な人気を誇った大家だけに、指揮者、管弦楽団の質も第一級で、相性がよかったといわれるウォーレンスタインのほかオーマンディ、ライナー、ラインスドルフらが投入されている。
いまとなっては古い音源(ただしルービンシュタインにおいては複数録音のうち新録)だが、ベートーヴェンの協奏曲全集はバレンボイム指揮で話題となったもの。バレンボイムは自身、クレンペラーの指揮でピアニストとして全集を録音しているが、処をかえて、老練な大家と気鋭の指揮者としての再録となった。
演奏は、いまも聴き継がれる得意のショパン(【参考】Chopin Collection)、チャイコフスキー、ラフマニノフはもちろんだが、シューマン、ブラームスなどドイツものも堂々たる構えで、かつ大らかにして、独特の気品と情感がある。
(収録情報)
◆モーツァルト
・ピアノ協奏曲 第17番、第20番、21番、第23番、*第24番
(演奏)ウォーレンスタイン/RCAビクター交響楽団(1961年)
*クリップス/RCAビクター交響楽団(1958年)
◆ベートーヴェン
・ピアノ協奏曲全集(第1番〜第5番)
(演奏)バレンボイム/ロンドン・フィル(1975年)
◆シューマン
・ピアノ協奏曲
(演奏)ジュリーニ/シカゴ交響楽団(1967年)
◆ブラームス
・ピアノ協奏曲第1番
(演奏)ラインスドルフ/ボストン交響楽団(1964年)
→ ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 Op.15
・同第2番
(演奏)オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団(1971年)
◆ショパン
・ピアノ協奏曲第1番
(演奏)スクロヴァチェフスキ/ロンドン新交響楽団(1961年)
・同第2番
(演奏)ウォーレンスタイン/シンフォニー・オブ・ジ・エア(1958年)
→ ショパン:ピアノ協奏曲第1番&第2番 [Blu-spec CD2]
・ポーランド民謡による大幻想曲
(演奏)オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団(1968年)
・アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ
(演奏)ウォーレンスタイン/シンフォニー・オブ・ジ・エア(1958年)
◆リスト
・ピアノ協奏曲第1番
(演奏)ウォーレンスタイン/RCAビクター交響楽団(1956年)
◆グリーグ
・ピアノ協奏曲
(演奏)ウォーレンスタイン/RCAビクター交響楽団(1961年)
◆チャイコフスキー
・ピアノ協奏曲第1番
(演奏)ラインスドルフ/ボストン交響楽団(1963年)
→ ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
◆ラフマニノフ
・ピアノ協奏曲第2番
(演奏)オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団(1971年)
→ ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
・パガニーニの主題による狂詩曲
(演奏)ライナー/シカゴ交響楽団(1956年)
◆サン=サーンス
・ピアノ協奏曲第2番
(演奏)オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団(1969年)
→ サン=サーンス:ピアノ協奏曲第2番、ファリャ:スペインの庭の夜
◆フランク
・交響的変奏曲
(演奏)ウォーレンスタイン/シンフォニー・オブ・ジ・エア(1958年)
◆ファリャ
・スペインの庭の夜
(演奏)オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団(1969年)
→ サン=サーンス:ピアノ協奏曲第2番、ファリャ:スペインの庭の夜
◆シマノフスキ
・協奏交響曲
(演奏)ウォーレンスタイン/ロサンジェルス・フィル(1952年)
0 件のコメント:
コメントを投稿