(ジャケットは別です)
フリッチャイ/RIAS響によるモーツアルト集である。しかし、3つの留意事項がある。第1にメインロードの曲はほとんど入っていない。下記でご覧いただくとおり交響曲はあまり取り上げられる機会のない初期の演目が中心である。第2にラジオ放送のリマスターであり、かつその時期は1951年、52年が中心である。良き録音を求める方には向かない。第3にフリッチャイの集中力のなせる技だろうが、一気呵成に、貪欲に取り組んでいるがゆえにモーツァルトを聴きなれたリスナーにとってこの演奏の精度が耐えうるかどうかということもある。
一方、フリッチャイ好きな向きには関心が向く。小生は、J.シュトラウス『こうもり』1949年を聴いて、そのライヴの思い切りの推進力に惹かれた。 リタ・シュトライヒ(Sop)を輝かせる フリッチャイの技量もたいしたものであり、モーツァルトへの情熱、またしかりだろう。録音の悪さは覚悟のうえ、得難いフリッチャイの足跡を知るうえでの貴重な音源であることにかわりはない。
<収録曲>
【交響曲】
・第1番、第4~9番(1952年5~6月)、第23番(1951年12月)
【協奏曲】
・ファゴット協奏曲 K. 191(1951年12月)
・協奏交響曲 K. 297b(1952年6月)
【管弦楽曲など】
・セレナード第6番「セレナータ・ノットゥルナ」K. 239(1951年2月)、第11番 K. 375(1952年9月)
・ディヴェルティメント第10番「ロドロン伯爵家の夜の音楽 第1番」 K.247
(1952年9月)、第17番 K. 334(1952年9月)
・カッサシオン K. 63(1952年9月)
・音楽の冗談 K. 522(1954年4月)
【歌劇】
・『フィガロの結婚』 K. 492 - 第3幕 手紙の二重唱 「そよ風に寄せて」
シュザンヌ・ダンコ&リタ・シュトライヒ (ソプラノ) 1952年9月
・『ドン・ジョヴァンニ』 K. 527 - 第2幕「なんという、ふしだらな」
シュザンヌ・ダンコ (ソプラノ) 1952年9月
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5つの有名オペレッタの全曲を各2枚に収録した10枚組でこのお値段。演奏は古くて誰が買うの…と思われようが、オールド・ファンには懐かしい名前が目に飛び込んでくる。『こうもり』のリタ・シュトライヒは可憐さとともに“コロラトゥーラの女王”といわれた逸材。『メリー・ウィドウ』のローテンベルガーは来日公演でも聴いたが演技力にもましてその魅力的な容姿を誇った。『チャールダーシュの女王』の主役エリカ・ケートは芸域がひろく多方面で活躍したオールラウンダー。『ジプシー男爵』のセーナ・ユリナッチは戦争で苦労したが、音楽家のプロ筋での評価が高かったようだ。そして、『微笑みの国』のシュヴァルツコップは高校生のときの来日公演でヴォルフを聴いて虜になった。一方、女性陣リスナーからみれば、別の観点から贔屓の男声がいるだろう。
日本には“千両役者”という言葉があるが、録音などが限られていたから昔の歌手は本当に偉かった。いまの人達はいつでもWEBでアクセスできるという点では、チャンスも多いかも知れないが、その分消耗も激しく大変だろうなとも思う。しばし、浮世の憂さは忘れてオペレッタの世界に遊ぶも一興。
【曲目】
◆J.シュトラウス:『こうもり』
ペーター・アンダース(Ten) アニー・シュレム(MSop) リタ・シュトライヒ(Sop) ヘルムート・クレープス(Ten) ハンス・ヴェッケ(Br) フェレンツ・フリッチャイ/RIAS響1949年
◆レハール:『メリー・ウィドウ』
ヨゼフ・オラー(Br) アンネリーゼ・ローテンベルガー(Sop) ルドルフ・ショック(Ten) エルフリーデ・トレチェル(Sop) アルフレート・プファイフレ(Ten) ウィルヘルム・シュテファン/ハンブルク放送響1950年
◆カールマン:『チャールダーシュの女王』
エリカ・ケート(Sop) フィリップ・ゲーリー(Ten) フランツ・フェーリンガー(Ten) ヘッダ・ホイサー(Sop) ヴィリー・ホフマン(Ten) フランツ・マルスツァレク/ケルン放送管1957年
◆J.シュトラウス:『ジプシー男爵』
カール・シュミット=ワルター(Br) ウイリー・シュナイダー(Br) ペーター・アンダース(Ten) セーナ・ユリナッチ(Sop) マリアンヌ・シュレーダー(Alt) フランツ・マルスツァレク/ケルン放送管1949年
◆レハール:『微笑みの国』
エリーザベト・シュヴァルツコップ(Sop) エーリッヒ・クンツ(Br) ニコライ・ゲッダ(Ten) エミー・ローゼ(Sop) オットー・アッカーマン/フィルハーモニア管1953年
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