1960年代後半を中心に収録されたブーレーズによるドビュッシー集。ベルリオーズ集も同様ながら、『牧神の午後への前奏曲』『海』『管弦楽のための「映像」』といった有名曲だけではなく、『春』『神聖な舞曲と世俗的な舞曲』『クラリネットと管弦楽のための第1狂詩曲』といった普段あまり耳にしない曲も取り上げている選曲の妙が特色(作品番号順に並べてみたので、前後の関係にも注目)。この収録の後になるが、ブーレーズの東京ライヴに接したことがある。期待して足を運んだのだが実はほとんど印象に残っていない。どこも悪くはないのだが、強烈な印象を残すようなコンサートではなかったように思う。ところが、CDで聴くブーレーズは違う。たとえばブルックナーの第8番では、新鮮な驚きがあった。メロディとリズムの融合、そこに独特の音楽的な感性が伏在するといった演奏で、ほかの録音とは異質の響きと深さがあるのである。録音に非常に神経質で完璧を期すブーレーズの音づくりはCDのほうが鮮明にでるということかも知れない。本集は、そうした意味でブーレーズがドビュッシーの音楽の内奥にはいってその特色を引き出す、といったアプローチを感じさせる。一方、『ペレアスとメリザンド』では作曲家よりも歌手の個性を際立たせる方法論をとっているように思う。多芸に通じた才人ぶりである。
<収録曲>
・『春』L.61ニュー・フィルハーモニア管1968年12月
・『牧神の午後への前奏曲』L.86ニュー・フィルハーモニア管1966年12月
・『夜想曲』L.91ニュー・フィルハーモニア管1968年12月
・『神聖な舞曲と世俗的な舞曲』 L.103クリーヴランド管1967年11月
・『海』L.109ニュー・フィルハーモニア管1966年12月
・『クラリネットと管弦楽のための第1狂詩曲』 L.116ニュー・フィルハーモニア管1968年12月
・『管弦楽のための「映像」』L.122クリーヴランド管1967年11月
・『遊戯』L.126ニュー・フィルハーモニア管1966年12月
・歌劇『ペレアスとメリザンド』(全曲)
[演奏]ジョージ・シャーリー(テノール)、ドナルド・マッキンタイア(バリトン)、エリザーベト・ゼーダーシュトレーム(ソプラノ)、イヴォンヌ・ミントン(アルト)コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団&合唱団 1969年12月~ 1970年1月
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ブーレーズが指揮者として旺盛な活動をしていた1960~70年代初頭までに録音されたベルリオーズ集。有名どころの『幻想』『夏の夜』『ローマの謝肉祭』に加えて、めったに聴くことができない『レリオ』『クレオパトラの死』など、いかにもブーレーズらしい選曲でベルリオーズ・ファンならCD4枚組でこの価格には食指が動こう。『幻想』は録音が古くやや個性的ながら屈指の名演。
<収録情報>
『幻想交響曲』ロンドン響 1967年10月、ロンドン
叙情的独白劇『レリオ、または(生への回帰)』同上
『夏の夜』BBC響 1967年10月、ロンドン
『クレオパトラの死』同上
序曲集
・歌劇『ベンヴェヌート・チェッリーニ』序曲
・歌劇『トロイの人々』~王の狩りと嵐
・歌劇『ベアトリスとベネディクト』序曲と間奏曲(シシリエンヌ)
・序曲『ローマの謝肉祭』
ニューヨーク・フィル 1971年4月~72年9月、ニューヨーク
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