マリア・カラスの実力は歴史を大きく塗りかえるものであった。メゾの低音域からソプラノの最高音域までカヴァーするだけではなく、軽快なリリックものから“おどろおどろしい”ドラマティックなものまで豊かな声量と屈指の幅広いレパートリーを誇り、さらに役作りでも、それまで長らく上演されなかった演目をプリマドンナとして牽引し世に問うた。本集では①~⑬の作曲家による全25(うちプッチーニ、ヴェルディは各6)演目を取り上げている(これとて彼女のレパートリーの全部ではない)が、単に有名アリアを歌うのでなく、その多くは全曲演奏での貴重な記録を残している。しかもセッション録音では完璧性を追求し、一方、ライヴ音源では圧倒的な存在感で聴衆を魅了し続けた。
小生は、マリア・カラスによってオペラに開眼し、彼女の全曲盤を聴くことで多くのオペラに親しんだ。けっして美声ではないが、女声としての余すところなき表現力、ときにその抉り出すような深い詠唱に感嘆してきた。本集はそのエッセンス集である。
<収録情報>
【①プッチーニ】
1『トスカ』~歌に生き、恋に生き/待つということは サーバタ/※(1953)
2『トゥーランドット』~氷のような姫君の心も セラフィン/☆(1954)
・同~この宮殿の中で セラフィン/※(1957)
3『修道女アンジェリカ』~母さんもなしに坊やは 同上
4『蝶々夫人』~ある晴れた日に/操に死ぬるは カラヤン/※(1955)
5『ラ・ボエーム』~私の名はミミ/あなたの愛の呼ぶ声に ヴォット/※(1956)
6『マノン・レスコー』~この柔らかなレースの中で セラフィン/※(1957)
【②ヴェルディ】
7『運命の力』~神よ平和を与えたまえ セラフィン/※(1954)
8『シチリア島の夕べの祈り』~ありがとう、愛する友よ セラフィン/☆(1954)
9『アイーダ』~勝ちて帰れ セラフィン/※(1955)
10『リゴレット』~グアルティエール・マルデ 同上
11『イル・トロヴァトーレ』~静かな夜だった/恋はバラ色の翼に乗って カラヤン/※(1956)
12『仮面舞踏会』~ここが罪の報いに/死にましょう、しかし・・・ ヴォット/※(1956)
【③ベッリーニ】
13『ノルマ』~聖らかな女神よ セラフィン/※(1954)
14『夢遊病の女』~おお花よ、お前に会えると思わなかった ヴォット/※(1956)
【④ドニゼッティ】
15『ランメルモールのルチア』~あたりは沈黙にとざされ セラフィン/☆(1959)
【⑤スポンティーニ】
16『ヴェスタの巫女』~おお、不幸な人々を守る女神/いとしいお方 セラフィン/※(1955)
【⑥ケルビーニ】
17『メデア』~あなたの子の母親は セラフィン/※(1957)
【⑦レオンカヴァッロ】
18『道化師』~鳥の歌 セラフィン/※(1954)
【⑧ロッシーニ】
19『イタリアのトルコ人』~フィオリッラのカヴァティーナ カヴァッツェーニ/※(1954)
20『セビリアの理髪師」~今の歌声は心に響く セラフィン/※(1954)
【⑨ジョルダーノ】
21『アンドレア・シェニエ』~私の亡くなった母が セラフィン/☆(1954)
【⑩チレア】
22『アドリアーナ・ルクヴルール』~私は神の卑しいしもべです/哀れな花 セラフィン/☆(1954)
【⑪カタラーニ】
23『ワリー』~遠くへ行かないで セラフィン/☆(1954)
【⑫マイヤベーア】
24『ディノラ』~軽い影よ セラフィン/☆(1954)
【⑬ポンキエッリ】
25『ジョコンダ』~自殺!
ヴォット/※(1959)
※ミラノ・スカラ座管弦楽団、合唱団
☆フィルハーモニア管、合唱団
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