2009年8月9日
中学生だった40数年前にはじめて買ったLPが、ルービンシュタイン奏でるショパンのポロネーズ集、とても高価な、そして贅沢な演奏の1枚だった。また、ホロビッツが演奏を再開、大津波のような衝撃が日本にも走ったり、ミケランジェリの稀少なライヴがFMで流れて好事家のあいだで演奏評が沸騰したりと、その時代、いわゆる大家(ヴィルトオーソ)の演奏には、いまでは考えられないくらいの話題性があった。
しかし、ポリーニ、アルゲリッチはじめ、その後の輝かしい若手の台頭によって、また、日進月歩の録音技術の向上もあって、こうした大家の演奏はしばしお蔵入りとなった。近年、ショパンに関しても、ルービンシュタインに限らずフランソワなど、リヴァイバル盤がふたたび注目されている。その理由は、本全集を聴き直してみて、改めてその薫りたつような品位にあると感じる。真似のできないこの時代特有の演奏家の品位と作曲家に対する熱情が、本全集の底流にも溢れている。演奏技術の高度化では「後世恐るべし」だが、落ち着いて、演奏家の深い解釈にじっくりと耳を傾けるなら、本全集の価値はいまも決して減じてはいない。なにより、これが「全身全霊の1枚」といった極度の集中力が演奏家にも録音技師にも、強くあった時代だからかも知れない。ショパン演奏には特に好みがわかれ「煩型」も多いからそこは割り引いても、この価格なら★4以上の値打ちは十分あるだろう。
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