火曜日, 9月 14, 2021

ムラヴィンスキー チャイコフスキー交響曲第4~6番


 










昨夜(深夜)NHK、ゲルギエフ、ロシア音楽、サンクトペテルブルクについての古い番組を観る。ゲルギエフの50才の誕生日を記念しての制作だから18年前の作品である。ピョートルⅠ世、エカテリーナⅡ世、ロシア5人組(ロシア民謡)、チャイコフスキー(交響曲第4番、第6番)、レーニン革命、レニングラード攻防戦(64万人の餓死者・戦死者)、スターリニズムと弾圧・粛正、ショスタコーヴィチ(交響曲第7番)、プロコフィエフ(トルストイ『戦争と平和』原作の歌劇)などが紹介された実に内容の濃い番組だった。その影響で今日はロシア音楽を聴く。以下を久しぶりに取り出す。

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2010年8月21日

 ムラヴィンスキーは旧ソビエト連邦時代、全ソビエト指揮者コンクールで優勝、直ちに当時同国最高のレニングラード・フィル(現在のサンクトペテルブルク)の常任となる。1938年、時に35才の俊英であった。
 本盤所収の録音は、4番(1960年9月14〜15日、ロンドン、ウェンブリー・タウンホール)、5番(同年11月7〜9日、ウィーン、ムジークフェラインザール)、6番(同年11月9〜10日、5番と同じ)であり、この「幻の」指揮者とオケの実質、西欧デビュー盤である。
 これぞチャイコフスキー本国の正統的な解釈の演奏というのが当時のふれこみであったろうが、実際は、そんな生易しいものではなく、冷戦時代の旧ソ連邦の実力を強烈に印象づける最高度の名演である。
 日本にはEXPO’70で来演したが、残念ながらこの時はヤンソンスの代演となった。しかし、それですら、レニングラード・フィルの衝撃には言葉を失った鮮烈な記憶がある。オケのメンバーはステージ上、誰も無駄話などしない。皆がソリストのような緊張感にあふれ、彼らの合奏は、よく訓練された軍隊の一糸乱れぬ閲兵式を彷彿とさせるものであった。
 十八番の名演といった表面的なことでなく、この時代、このメンバーでしかなしえない、極度の緊張感と強力な合奏力を背景とした、比類なきチャイコフスキー演奏といってよいだろう。4、5、6番ともに通底する一貫した解釈と各番の性格の違いの明確な浮き彫りにこそ、本盤の特色がある。
 録音は半世紀前であり、いまのレヴェルでは物足りないだろうが、それを上回る往時の覇気がある。歴史的名盤である。



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