土曜日, 9月 11, 2021

モントゥー 往年の名指揮者【廉価盤BOXセットの魅力】


 










2021年9月6日

フランスを代表する名指揮者ピエール・モントゥーは、1875年パリに生まれ、パリ音楽院でヴァイオリンを学び、30才にして指揮活動を開始。36才の1911年にはディアギレフのロシア・バレエ団の指揮者となり『春の祭典』を初演して歴史に名を残す。晩年の1961年からはロンドン響のシェフを務め1964年に没した。
初演は『春の祭典』のみならず『ペトルーシュカ』や『ダフニスとクロエ』でも華々しい活躍をみせバレエ音楽では泰斗であった。ほかにもレパートリーは広く、得意のロシア物やフランス物はもちろんのこと、ブラームスやエルガーなどでも格調高い名演奏を残した。晩年の演奏では、伸び伸びとして、軽やかな響きに特色があり、屈託がなく、各パートの団員が演奏をこよなく楽しみながら音楽を愛している雰囲気も伝わってくる。大きな抱擁感ある演奏である。
本集は、録音時期に留意。1930年代からの古い音源もあり、ほかに最晩年の再録分もあることから「旧盤」が中心。また、作曲家別にシリーズで聴くには中途半端ながら、多彩な協奏曲もふくまれ、この価格で巨匠の傾向を知る上では有益だろう。
<収録情報>
【J.S.バッハ】
・2つのヴァイオリンのための協奏曲BWV.1043 ユーディ・メニューイン(Vln)ジョルジェ・エネスク(Vln)パリ交響楽団(1932)
【モーツァルト】
・ピアノ協奏曲第18番K.456 リリー・クラウス(pf)ボストン響(1953)
【ベートーヴェン】
・交響曲第3番「英雄」アムステルダム・コンセルトヘボウ管(1962)
【ブラームス】
・ブラームス:交響曲第2番 ウィーン・フィル(1959)
・ハイドンの主題による変奏曲 ロンドン響(1958)
・ピアノ協奏曲第1番 ジュリアス・カッチェン(pf)ロンドン響(1959)
・ヴァイオリン協奏曲 ヘンリク・シェリング(Vln)ロンドン響(1958)
【ドヴォルザーク】
・交響曲第7番 ロンドン響(1959)
【チャイコフスキー】
・バレエ『眠れる森の美女』抜粋 ロンドン響(1957)
【ベルリオーズ】
・幻想交響曲 サンフランシスコ響(1945or1951)
・歌劇『ベンヴェヌート・チェッリーニ』序曲 サンフランシスコ響(1952)
【サン=サーンス】
・ハバネラOp.83 レオニード・コーガン(Vln)ボストン響(1958)
【フランク】
・交響曲 シカゴ響(1961)
【ドビュッシー】
・『海』、『夜想曲』 ボストン響(1955)
【ラヴェル】
・『ラ・ヴァルス』 サンフランシスコ響(1941)
【ストラヴィンスキー】
・バレエ音楽『春の祭典』ボストン響(1951)
【スクリャービン】
・交響曲第4番『法悦の詩』ボストン響(1952)
【イベール】
・交響組曲『寄港地』サンフランシスコ響(1946)
【エルガー】
・エニグマ変奏曲Op.36ロンドン響(1958)

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2019年3月24日

ピエール・モントゥーは幸いにも晩年、ベートーヴェンのいくつかの交響曲をウィーン・フィルと録音した。本盤は第3番(1957年)、第8番(1960年)の2曲が収録されている。まず、第3番だが、まったく気負ったところなき平常心そのままの臨場という気がする。テンポは安定しており劇的な起伏はあまりないが、それに余りある品位と落ち着きがある。後半楽章へと聴きすすむうちに“大家の棒”とはこうしたものかと感じ入る。それは一言でいえば、原曲の“みずみずしさ”をいかにうまく引き出すかといった1点アプロ―チである。そして、その主役はウィーン・フィルであるといった身の預け方である。巨匠のこういうスタイルを理解したウィーン・フィルの響きは控えめながら実に美しい。第8番も同様ながら、録音のせいか、こちらの方がより流麗感がある。あえて見せ場をつくろうといった作為はなし。第1楽章からメリハリの効いた、やや速めの心地よい音の流れに照準がセットされれば、それが最後まで成功の素といわんばかりの安定した運行。終楽章も快活さは維持しつつ、節度を保った美演である。

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2019年3月31日

フランスを代表する名指揮者ピエール・モントゥーは、1875年パリに生まれ、パリ音楽院でヴァイオリンを学び、30才にして指揮活動を開始。36才の1911年にはディアギレフのロシア・バレエ団の指揮者となり『春の祭典』を初演して歴史に名を残す(現役盤も大変な名演である)。晩年の1961年からはロンドン響のシェフを務め1964年に没した。本盤は、このコンビによる1962年の収録。これだけ見ても大家の技に期待はふくらむ。

伸び伸びとして、軽やかな響きである。屈託がなく、各パートの団員が演奏をこよなく楽しみながら音楽を愛している雰囲気が伝わってくる。ゆえに、リスナーに至福の時間を届けてくれる。モントゥー老練なる腕はけっして表には出ずに、聴き進むうちに、上体が自然に左右に揺れるような、柔らかな心地よきリズム感が支配する。ふと、”そうそう、これは最良のバレエ音楽だったんだ”と気が付くが、そんな呑気な感想も許してくれそうな大きな抱擁感ある演奏である。

織工Ⅲ: モントゥー Pierre Monteux (shokkou3.blogspot.com)


PHILIPS名演集成
PHILIPS名演集成

【曲目】
<DISC1>
1. ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン:交響曲 第3番 変ホ長調 作品55 《英雄》
2. フランツ・シューベルト:交響曲 第8番 ロ短調 D.759《未完成》

<DISC2>
3. ペーター・チャイコフスキー:バレエ《白鳥の湖》 作品20(抜粋)
4. ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン:交響曲 第3番 変ホ長調 作品55 《英雄》 - 第2楽章リハーサル

<DISC3>
5. ヨハネス・ブラームス:交響曲 第2番 ニ長調 作品73
6. 同:悲劇的序曲 作品81
7. 同:大学祝典序曲 作品80

<DISC4>
8. モーリス・ラヴェル:ボレロ
9. 同:バレエ《マ・メール・ロワ》
10. 同:ラ・ヴァルス

<DISC5>
11. クロード・ドビュッシー:管弦楽のための映像
12. 同:交響的断章《聖セバスチャンの殉教》 (カプレ編)

【演奏】
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(1,2,4)
ロンドン交響楽団(3,5-12)
ピエール・モントゥー(指揮)

【録音】
1962年7月1-3日(1,4)、1963年11月28, 29日(2) アムステルダム、コンセルトヘボウ
1962年6月(3)、1963年5月18-21日(11,12)、1964年2月(8-10) ロンドン、ウェンブリー・タウンホール
1962年11月 ロンドン(5-7)

【原盤】
PHILIPS


Pierre Monteux: Complete RCA Stereo Recordings
Pierre Monteux: Complete RCA Stereo Recordings
Pierre Monteux | 2018

【曲目】
[CD1]
チャイコフスキー:交響曲第4番へ短調Op.36
[録音]1959年1月28日

[CD2]
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調Op.64
[録音]1958年1月8日

[CD3]
1. チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調Op.74『悲愴』
[録音]1955年1月26日
2. ストラヴィンスキー:「ペトルーシュカ」
[録音]1959年1月25,26,28日

[CD4]
1. フランク:交響曲ニ短調
[録音]1961年1月7日
2. ドリーブ:バレエ『コッペリア』より「前奏曲とマズルカ」
[録音]1953年12月2日
3. ドビュッシー:『海』より「海の夜明けから真昼まで」
[録音]1954年7月19日
4. サン=サーンス:『ハバネラ』
[録音]1958年1月12-13日

[CD5]
1. R.シュトラウス:『死と変容』
[録音]1960年1月23日
2. ワーグナー:『ジークフリート牧歌』
[録音]1960年1月24日

[CD6]
1. ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.77
[録音]1958年6月18-20日
2. ハチャトゥリアン:ヴァイオリン協奏曲ニ短調
[録音]1958年1月12-13日

[CD7-8]
グルック:歌劇『オルフェオとエウリディーチェ』(全曲)
~リーゼ・スティーヴンズ(オルフェオ)、
リーザ・デラ・カーザ(エウリディーチェ)、
ロバータ・ピーターズ(愛の神)

【演奏】
ピエール・モントゥー(指揮)
ボストン交響楽団(CD1,2,3,4,6)
サンフランシスコ交響楽団(CD5)
ロンドン交響楽団(CD6)
ローマ歌劇場管弦楽団&合唱団(CD7/8)
ヘンリク・シェリング(ヴァイオリン:CD6)
レオニード・コーガン(ヴァイオリン:CD4,6)



Pierre Monteux - Decca Recordings
Pierre Monteux - Decca Recordings
Pierre Monteux | 2016
 
【曲目】
MONTEUX DECCA RECORDINGS
CD1
JOHANN SEBASTIAN BACH (1685-1750)
Suite No. 2 in B minor, BWV 1067
CHRISTOPH WILLIBALD GLUCK (1714-1787)
Dance of the blessed spirits
Orfeo e Euridice
WOLFGANG AMADEUS MOZART (1756-1791)
Flute Concerto in D major, K314
Claude Monteux flute
London Symphony Orchestra
Pierre Monteux
Recorded in Decca Studio No. 3, West Hampstead, London, 11/1963

CD2
JOSEPH HAYDN (1732-1809)
Symphony No. 94 in G major "Surprise"
Symphony No. 101 in D major "Clock"
Wiener Philharmoniker
JOHANNES BRAHMS (1833-1897)
Variations on a Theme by Joseph Haydn, Op. 56a
London Symphony Orchestra
Pierre Monteux
Recording locations: Kingsway Hall, London, 12/1958 (Op. 56a), Sofiensaal, Vienna, 4/1959 (Nos. 94 & 101)

CD3
LUDWIG VAN BEETHOVEN (1770-1827)
Symphony No. 1 in C major, op. 21
Symphony No. 3 in E flat major, op. 55 "Eroica"
Wiener Philharmoniker
Pierre Monteux
Recording: 1957 (Op. 55), 1969 (Op. 21)

CD4
LUDWIG VAN BEETHOVEN (1770-1827)
Symphony No. 6 in F major, op. 68 "Pastoral"
Symphony No. 8 in F major, op. 93
Wiener Philharmoniker
Pierre Monteux
Recording: 1958 (Op. 68), 1960 (Op. 93)

CD5
LUDWIG VAN BEETHOVEN (1770-1827)
Symphony No. 5 in C minor, op. 67
Symphony No. 7 in A major, op. 92
Egmont Overture, op. 84
London Symphony Orchestra
Pierre Monteux
Recording: 1961

CD6
LUDWIG VAN BEETHOVEN (1770-1827)
Symphony No. 2 in D major, op. 36
Symphony No. 4 in B flat major, op. 60
King Stephen Overture, op. 117
London Symphony Orchestra
Pierre Monteux
Recording: 1960

CD7
LUDWIG VAN BEETHOVEN (1770-1827)
Symphony No. 9 in D minor, op. 125
Elisabeth Soderstrom soprano
Regina Resnik contralto
Jon Vickers tenor
David Ward bass
London Bach Choir
London Symphony Orchestra
Pierre Monteux
Recording: Walthamstow Assembly Hall, London, 6/1962

CD8
LUDWIG VAN BEETHOVEN (1770-1827)
Symphony No. 3 in E flat, op. 55 "Eroica"
Marcia funebre: Rehearsal
Concertgebouw Orchestra
Pierre Monteux
Recording: Amsterdam, 7/1962

CD9
FRANZ SCHUBERT (1797-1828)
Symphony No. 8 in B minor, D759 "Unfinished"
Concertgebouw Orchestra
Rosamunde, D797 - excerpts
Wiener Philharmoniker
IGOR STRAVINSKY (1881-1971)
Le Sacre du Printemps(The Rite of Spring)
Paris Conservatoire Orchestra
Pierre Monteux
Recording: Amsterdam, 11/1963 (D759), Sofiensaal, Vienna, 11/1957 (D797), Salle uwagram, Paris, 11/1956 (Sacre)

CD10
HECTOR BERLIOZ (1803-1869)
Romeo et Juliette
Dramatic Symphony, op. 17

CD11
HECTOR BERLIOZ (1803-1869)
Romeo et Juliette
Dramatic Symphony, op. 17
Regina Resnik alto
Andre Turp tenor
David Ward bass
London Symphony Orchestra and Chorus
Pierre Monteux
Recording: Walthamstow Town Hall, London, 6/1962

CD12
JOHANNES BRAHMS (1833-1897)
Symphony No. 2 in D, op. 73
Tragic Overture, op. 81
Academic Festival Overture, op. 80
London Symphony Orchestra
Pierre Monteux
Recording: London, 11/1962

CD13
PYOTR ILYCH TCHAIKOVSKY (1840-1893)
The Sleeping Beauty, op. 66
Ballet in three acts and a prologue ? highlights
London Symphony Orchestra
Pierre Monteux
Recording: Kingsway Hall, London, 6/1957 (op. 66)

CD14
PYOTR ILYCH TCHAIKOVSKY (1840-1893)
Swan Lake, op. 20 Excerpts
London Symphony Orchestra
Hugh Maguire violin
Pierre Monteux
Recording: London, 6/1962

CD15
ANTONIN DVO?AK (1841-1904)
Symphony No. 7 in D minor, op. 70
London Symphony Orchestra
Pierre Monteux
Recording: Kingsway Hall, London, 10/1959

CD 16
CLAUDE DEBUSSY (1862-1918)
Prelude a "L'apres-midi d'un faune
Nocturnes
Images for orchestra
Le martyre de saint Sebastien
London Symphony Orchestra
Roger Lord cor anglais
Pierre Monteux
Recording: London, 5/1963

CD17
MAURICE RAVEL (1875-1937)
Daphnis et Chloe complete ballet*
Rapsodie Espagnole
Pavane pour une infante defunte
Chorus of the Royal Opera House, Covent Garden*
Douglas Robinson chorus master
London Symphony Orchestra
Pierre Monteux
Recordings: 4/1959 (Daphnis), 12/1961

CD18
MAURICE RAVEL (1875-1937)
Bolero
La Valse Poeme choregraphique
Ma mere l'Oye Ballet
London Symphony Orchestra
Pierre Monteux
Recording: London, 2/1964

CD19
JEAN SIBELIUS (1865-1957)
Symphony No. 2 in D major, op. 43
EDWARD ELGAR (1857-1934)
Variations on an Original Theme (Enigma), op. 36
London Symphony Orchestra
Pierre Monteux
Recording: Kingsway Hall, London, 6/1958

CD20
IGOR STRAVINSKY (1881-1971)
The Firebird Suite, 1919
Petrushka Ballet, 1911
Julius Katchen piano (Petrushka)
Paris Conservatoire Orchestra
Pierre Monteux
Recording: Salle Wagram, Paris, 10 & 11/1956

 
ベートーヴェン:交響曲第3番・第8番
 
ピエール・モントゥーは幸いにも晩年、ベートーヴェンのいくつかの交響曲をウィーン・フィルと録音した。本盤は第3番(1957年)、第8番(1960年)の2曲が収録されている。まず、第3番だが、まったく気負ったところなき平常心そのままの臨場という気がする。テンポは安定しており劇的な起伏はあまりないが、それに余りある品位と落ち着きがある。後半楽章へと聴きすすむうちに“大家の棒”とはこうしたものかと感じ入る。それは一言でいえば、原曲の“みずみずしさ”をいかにうまく引き出すかといった1点アプロ―チである。そして、その主役はウィーン・フィルであるといった身の預け方である。巨匠のこういうスタイルを理解したウィーン・フィルの響きは控えめながら実に美しい。第8番も同様ながら、録音のせいか、こちらの方がより流麗感がある。あえて見せ場をつくろうといった作為はなし。第1楽章からメリハリの効いた、やや速めの心地よい音の流れに照準がセットされれば、それが最後まで成功の素といわんばかりの安定した運行。終楽章も快活さは維持しつつ、節度を保った美演である。    
        
 
チャイコフスキー:白鳥の湖
 
フランスを代表する名指揮者ピエール・モントゥーは、1875年パリに生まれ、パリ音楽院でヴァイオリンを学び、30才にして指揮活動を開始。36才の1911年にはディアギレフのロシア・バレエ団の指揮者となり『春の祭典』を初演して歴史に名を残す(現役盤も大変な名演である)。晩年の1961年からはロンドン響のシェフを務め1964年に没した。本盤は、このコンビによる1962年の収録。これだけ見ても大家の技に期待はふくらむ。

伸び伸びとして、軽やかな響きである。屈託がなく、各パートの団員が演奏をこよなく楽しみながら音楽を愛している雰囲気が伝わってくる。ゆえに、リスナーに至福の時間を届けてくれる。モントゥー老練なる腕はけっして表には出ずに、聴き進むうちに、上体が自然に左右に揺れるような、柔らかな心地よきリズム感が支配する。ふと、”そうそう、これは最良のバレエ音楽だったんだ”と気が付くが、そんな呑気な感想も許してくれそうな大きな抱擁感ある演奏である。
            
 
フランク:交響曲二短調&ストラヴィンスキー:ペトルーシュカ(期間生産限定盤)
 
The Great Conductors からの1枚、「ペトルーシュカ」をなにげなく聴き、本当に驚愕した。たっぷりと原色の油絵具をとり、これを思うさまカンヴァスに叩きつけるような演奏。リズムがあたかも自立的な意思をもって動き出すような躍動感に、めくるめく繰り出されるメロディが乱舞する。最近の整いすぎた大人しい演奏とは全く異質な、トリッキーで自由な動態の面白さ、もろものの抑圧から一気に解き放たれたようなスカット感―はじめて「ペトルーシュカ」の真髄にふれた気がした。初演指揮者モントゥーの面目躍如。            


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