2012年11月4日
グールドのベートーヴェン/ピアノ・ソナタに対するアプローチの独自性は、よく知られているとおり、最後期の30〜32番を1956年、まっさきに録音したことにある。いわばベートーヴェンの<ゴール>の作品を若きグールドは録音の<スタート>に置いた。では、その後、連続して作品群を取り上げたかというと、さにあらず。次の録音は8年後の64年に5〜7番、66年に8〜10番、67年に「名曲集」たる14番「月光」、17番「テンペスト」、18番、23番「熱情」をとりあげて、以降はふたたび録音を休止、結果的に、初期の1〜3番は最後の79年までかけて録音といった逆さまの対応となった。実にユニークな(ある意味でへそ曲がりな)23年におよぶ録音記録である(下記を参照)。
演奏も独自のグールド流が貫かれ、このベートーヴェンは、バッハ、ブラームスのいわゆる<3B>いずれにも共通し感受性豊かで自由な発想のもと、極度の緊張感とともに作品への凄まじいほどの没入を感じる。その評価はリスナーの好み次第だが、小生はベートーヴェンの強烈なパッションを炙りだし尽くそうとするようなグールドの厳しい対峙をときたま無性に聴きたくなる一人である。
<参考>「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集」録音記録
第1番 1974,76,79年 ※1
第2番 1976年7月、 1979年6,7月 ※1
第3番 1974,76,79年 ※1
第5番 1964年9,7,11月、※2
第6番 1964年9,7,11月、※2
第7番 1964年9,7,11月、※2
第8番「悲愴」1966年4月18,19日、※2
第9番 1966年2〜5月、※2
第10番 1966年2〜5月、※2
第12番「葬送」1979年9月4,5日、※1
第13番 1979年9月4,5日、※1
第14番「月光」1967年5月15日、※2
第15番「田園」1976年7月、1979年6,7月 ※1
第16番 1971年8月、1973年5月 ※1
第17番「テンペスト」1967年1月、※2 &1971年8月 ※1
第18番 1967年3月10日 ※2
第23番「熱情」 1967年10月18日、※2
第30番 1956年6月20〜29日、※2
第31番 1956年6月20〜29日、※2
第32番 1956年6月20〜29日、※2
(録音場所)
※1:トロント、イートンズ・オーディトリアム
※2:ニューヨーク、コロムビア30番街スタジオ
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