土曜日, 9月 11, 2021

ケンペ 往年の名指揮者【廉価盤BOXセットの魅力】


 






2021年9月6日

ルドルフ・ケンペ(Rudolf Kempe:1910~76年)は、古都ドレスデン近くに生まれ、地元の音楽学校で専門的な教育をうけたのち、1929年ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団にオーボエ奏者として入団します。当時の首席指揮者はブルーノ・ワルターでした。指揮者に転じたのち1950年にはドレスデン国立歌劇場の音楽監督として帰省します。
 冷戦下、1952年には「西側」のバイエルン国立歌劇場の音楽監督に就任します。一時米国でも活躍しますが、1960~63年のシーズンには、バイロイト音楽祭で『ニーベルングの指輪』を振っています。
 東独で専門的な教育をうけ実力で地位を築いたのち、「西側」に転じたキャリアはテンシュテットと共通します。また、その後、イギリス(ロイヤル・フィル、BBC交響楽団)でも高く評価され長きにわたり活躍しますが、1965年-1972年チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団首席、1967年ミュンヘン・フィルの首席と、スイスをふくめ広くドイツ圏にもしっかりと軸足をおいて活動した指揮者です。1976年、チューリッヒにて逝去しますが、円熟の境地をもっと示して欲しかったと惜しまれました。ベイヌム同様、いささか蒲柳の質であったのでしょうか。
 イギリスでは巨匠トーマス・ビーチャムの跡目をつぎ、またミュンヘン・フィルではクナッパーツブッシュ時代とチェリビダッケ時代の中間に位置します。メインの活動の時期は、カラヤンやベームらの全盛期であり、ほかにもミュンシュ(ミュンシュがゲヴァントハウスのコンサート・マスター時代にケンペはオーボエ奏者として仕えています)、バルビローリ、アンセルメはじめそれこそキラ星の如く、国別にスペシャリティの高い領域では大家がいまだ各所で健在でしたから、ケンペの活動は相対的には地味に見えます。しかし、今日、振りかえってみると、ケンペは堂々のドイツ正統派の実力を有し、ドイツ古典派・ロマン派を中心に多くの成果を残しています。
 ミュンヘン・フィルとの演奏では、ときにデューラーの少し暗い色調の絵を観賞するような趣きがあり、また、重量感のある低弦が美しい緩徐楽章では、これぞドイツ的な音の渋さ、くすみ、幾分の暗さが微妙にブレンドされていて、素晴らしい響きを聴くことができます。
<収録情報>
【モーツァルト】
・ピアノ協奏曲第27番 グルダ(Pf) (1972)
【ベートーヴェン】
・交響曲第5番  チューリッヒ・トーンハレ管(1971)
【ワーグナー】
・歌劇『ニュリンベルクのマイスタージンガー』 第1幕への前奏曲(1972)
【ブラームス】:
・交響曲全集(1975)
【ブルックナー】:
・交響曲第4番(1975)、第5番(1976)、第8番チューリッヒ・トーンハレ管(1971)
【ドヴォルザーク】:
・交響曲第8番(1972)、第9番 (1)ロイヤル・フィル(1962)、(2)チューリッヒ・トーンハレ管(1971)
【R.シュトラウス】
・交響詩 「ドン・ファン」ロイヤル・フィル(1964)
【レスピーギ】
・交響詩「ローマの松」ロイヤル・フィル(1964)


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