今日、世界中のどこかでさまざまなコンクールが行われており、ピアニストは登竜門をもとめてエントリーしている。しかし、1950年代はその機会はきわめて限られていた。1957年、ブゾーニおよびジュネーブの国際ピアノコンクールであいついで優勝したアルゲリッチの登場はまさに「彗星のごとく」であったろうし、それ以前にアルゼンチン「国家」期待のミューズであり、その後も周到に研鑽を積んで1960年に満を持してのデビュー。小生はアルゲリッチいまだ20歳代、1970年の初来日でライヴに接して圧倒されて以来のファンだが、その強烈な個性と美貌をもって日本でもすでに大人気であった。
本集は1960年7月のデビュー盤だが、強固な打鍵、楽々とパッセージを弾ききる技巧よりも、曲毎に目くるめく変化する多彩な表現ぶりとそれを支える迸るような音楽的な直観力に改めて驚く。音はいささか古くなったが、豊かな感性の発露は今日聴いても十分に挑戦的ですらある。
Martha Argerich: The Collection 1: The Solo Recordings も参照。下記のラインナップのうち、もう1枚気にいったものがあれば、この全集(第1集)購入がお得です。
<収録情報>
□ショパン:スケルツォ第2番、舟歌 嬰ヘ長調、ブラームス:2つのラプソディ第1番、第2番、プロコフィエフ:トッカータ ハ長調、ラヴェル:水の戯れ、リスト:ハンガリー狂詩曲第6番(本盤)
■ショパン:ピアノ・ソナタ第2番、第3番、スケルツォ第3番、ポロネーズ第6番、第7番、アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ、マズルカ第36番、第37番、第38番、24の前奏曲、前奏曲嬰ハ短調、前奏曲変イ長調(遺作)
■リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調
■シューマン:ピアノ・ソナタ第2番、子供の情景、クライスレリアーナ
■J.S.バッハ:トッカータ BWV.911、パルティータ第2番、イギリス組曲第2番
■ラヴェル:夜のガスパール、ソナチネ、高雅にして感傷的なワルツ
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