木曜日, 7月 14, 2011

グールド

ブラームス:間奏曲集/4つのバラードより/2つのラプソディ

多くの作品がグールド28才、1960年の録音。しかし、深く思索的なピアニズムは「弾き手」の年令を全く意識させない。クリアすぎるほどに研ぎ澄まされた<音>の連続、その一方、グールドのいつもの唸り声も背後で微かに響く。  

だが、「聴き手」の神経は、そこには止まらずブラームス還暦ちかくの深さをたたえた憂愁の<音楽>に自然に行きつく。そして、どうして倍以上も違う作曲家の心情を、20代の若者の「弾き手」がかくも豊かに表現できるのだろうとの驚きが次にくるだろう。

しかも、半世紀前に録音されたいわば「歴史的」な音源のはずなのに、この稀有な演奏は今日ここで奏でられているかの如く生々しくも「現代的」に響く。グールドは健康上の理由で常備薬を手放せなかったと言われるが、この音楽は逆に、グールドから「聴き手」の心に直接投与される最良の音楽サプリメントである。

http://www.amazon.co.jp/product-reviews/B001FOSK3O/ref=cm_cr_dp_synop?ie=UTF8&showViewpoints=0&sortBy=bySubmissionDateDescending#R2HU1SEA5T70WL

(参考)
とてつもない天才ピアニスト。「とてつもない」とは? ――その演奏を聴けば、その意味は誰にも一目瞭然。リズム/テンポ/アクセント……どれもが強烈で躍動感に満ち、痛快とさえ感じられる。「ジャズ風」などと評されることもあるが、もっとも彼にはそういった意識はない。奇抜な新しい演奏を目指したのではなく、作品や作曲家を愛するがゆえの解釈なのである。それは、彼の全生命や限りない愛情が、一つ一つの音に込められているのを聴けば、納得がいくだろう。
1932 年トロントに生まれ。14歳でトロント交響楽団と共演し、デビュー。55年に、当時誰も取り上げることのなかったバッハの「ゴルトベルク変奏曲」を弾いてアメリカ・デビューを果たし、57年にはカラヤン/ベルリン・フィルとの共演でヨーロッパ・デビューを飾る。しかし、64年からは一切のコンサート活動を停止、レコーディングに専念することとなった。レパートリーは幅広いが、バッハ演奏はとりわけ高い評価をされており、バッハといえばグールドを思い浮かべる人も多い。また作曲家としても、いくつか作品を残している。
夏でも冬並みの支度をして外出したりビタミン剤を常用したりと、健康には異常なほど気を配っていたが、82年、50歳で急逝した。
演奏をしながら歌い、体を揺すり(しかも曲に合っているとは限らない)、椅子の高さを極端に下げ、背を丸め、今にも壊れそうな愛用のピアノからは驚くほどデリケートな音色……。この独特の世界に魅せられる人は、後を絶たない。
このバイオグラフィーはアーティスト本人またはその代理人から提供されています
バッハ:ゴールドベルク変奏曲(55年モノラル盤)

内田光子

Piano Concertos

内田光子さんが2011年2月14日、第53回グラミー賞を受賞した。最優秀インストゥルメンタル・ソリスト・パーフォーマンス(オーケストラとの共演)賞で、受賞作はモーツァルトのピアノ協奏曲23、24番(クリ-ブランド管弦楽団)である。その内田モーツァルト・コレクションを集中的、体系的に廉価盤で聴けるのが本アルバムで、下記の全22曲を収録。1985年10月~1990年2月にかけての録音で、バックはテイト指揮イギリス室内管弦楽団。テイトとは音楽的感性が本当にあうのだろう。アクのない聴きやすい演奏で、楷書のようなきちっとした内田さんの芸風が見事に伝わってくる。

【収録曲】
<1>ピアノ協奏曲第5番ニ長調 K.175、<2>第6番変ロ長調 K.238、<3>第7番ハ長調 K.246『リュッツォウ』、<4>第9番変ホ長調 K.271『ジュノム』、<5>第11番ヘ長調 K.413、<6>第12番イ長調 K.414、<7>第13番ハ長調 K.415、<8>第14番変ホ長調 K.449、<9>第15番変ロ長調 K.450、<10>第16番ニ長調 K.451、<11>第17番ト長調 K.453、<12>第18番変ロ長調 K.456、<13>第19番ヘ長調 K.459、<14>第20番ニ短調 K.466、<15>第21番ハ長調 K.467、<16>第22番変ホ長調 K.482、<17>第23番イ長調 K.488、<18>第24番ハ短調 K.491、<19>第25番ハ長調 K.503、<20>第26番ニ長調 K.537『戴冠式』、<21>第27番変ロ長調 K.595、<22>コンサート・ロンド ニ長調 K.382

http://www.amazon.co.jp/Piano-Concertos-Wolfgang-Amadeus-Mozart/dp/B000DZ6VAK/ref=cm_cr-mr-title

(参考)
世界的ピアニスト、内田光子。彼女を「日本のピアニスト」と呼ぶことには少し抵抗がある。なぜなら彼女は1948年熱海に生まれるが、外交官の父と共に61年からウィーンに移り住み、当地で研鑽を積んでいる。それが彼女を、独自性の主張を重視する「西洋音楽」の演奏家へと育てることとなったからだ。模倣と規則を重視する日本の教育では現在の彼女の演奏はありえなかっただろう。だが、欧米のピアニストとも異なる――。それは彼女の日本的な、精度に対する誠実さと執着心。楽譜の読み込みの深さや正確さは、ほかの日本人ピアニストと共通する。そこにヨーロッパ的な教養と感性が融合し、彼女のスタイルが完成されたのだ。
70年のショパン国際コンクール第2位、75年のリーズ国際コンクール第2位で注目され、国際的に活動。82年にロンドンで行なったモーツァルトのピアノ・ソナタ全曲演奏会が、空前の大成功を収め、国際的評価を獲得し、現在に至る。居を構えるロンドンを中心とした演奏活動や、CDのリリースにより、着実に大家への道を躍進している。
リッスンジャパン提供. Copyright © 1999 - 2009 Listen Japan. All Rights Reserved.
Uchida Plays Schubert (Coll)
http://www.amazon.co.jp/Uchida-Plays-Schubert-Coll-Franz/dp/B000654OUG/ref=ntt_mus_ep_dpi_4

エッシェンバッハ

モーツァルト:キラキラ星の主題による変奏曲 K.265

エッシェンバッハは1969年10月8日、初来日であったと思うが、東京文化会館でモーツァルト(k322、k511、k333)を中心に聴いた。抒情性と硬質の美の絶妙なバランスが魅力だった。本盤の録音時点はちょうどその前後、1964~73年でありいまや「古い」ものである。一方、それは逆説的に、「若き」エッシェンバッハのメモリアルであり、当時、その風貌から細く華奢な印象ながら、正統的、端整、新進とは思えぬ深いピア二ズムでファンを捉えた。モーツァルト、シューマンなどが得意の演目であり、ポリーニ、アルゲリッチのショパン、プロコフィエフなどと録音でも差別化していた。いま聴いても、その瑞々しい感性には得難い良さを感じる。周到に用意された連弾の息のあいかたも見事である。

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%84%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%88-%E3%82%AD%E3%83%A9%E3%82%AD%E3%83%A9%E6%98%9F%E3%81%AE%E4%B8%BB%E9%A1%8C%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E5%A4%89%E5%A5%8F%E6%9B%B2-K-265-%E3%82%A8%E3%83%83%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F-%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%95/dp/B000BR2OE2/ref=sr_1_182?s=music&ie=UTF8&qid=1310653295&sr=1-182

(参考)
メンデルスゾーン : 無言歌集 (1)
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3-%E7%84%A1%E8%A8%80%E6%AD%8C%E9%9B%86-1-%E3%82%A8%E3%83%83%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F-%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%95/dp/B00005FI9O/ref=ntt_mus_ep_dpi_18

メンデルスゾーン : 無言歌集 (2)
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3-%E7%84%A1%E8%A8%80%E6%AD%8C%E9%9B%86-2-%E3%82%A8%E3%83%83%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F-%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%95/dp/B00005FI9P/ref=ntt_mus_ep_dpi_22

日曜日, 7月 03, 2011

The Berliner Philharmoniker Play Mozart

The Berliner Philharmoniker Play Mozart

 タイトルのとおり、すべてベルリン・フィルによるモーツァルトの選集。録音は1987年-1995年と比較的新しく、「ポスト・カラヤン時代」のアバド、ジュリーニ、メータの3人が振っている。後期交響曲では25番以降、主要どころはほぼカヴァーしており、39-41番は、かのレクイエムで名演を紡ぎだし、モーツァルトを得意とするジュリーニの演奏。ベルリン・フィルでは先行するべーム盤、カラヤン盤(1980-82年録音)などもあり、また指揮者の好みもあって<最有力>とは言えないかも知れないが7枚でこの価格である。これからモーツァルトの交響曲をまとめて聴きたい向きにはなんとも贅沢な選択肢のひとつだろう。
<収録内容>
Disc 1:交響曲 第25番 ト短調、第28番 ハ長調、第31番 ニ長調「パリ」
Disc 2:同第29番 イ長調、第39番 変ホ長調、フリーメイソンのための葬送音楽からアダージョ
Disc 3:同第23番 ニ長調、第35番 ニ長調「ハフナー」、第36番 ハ長調「リンツ」、歌劇「フィガロの結婚」序曲
Disc 4:同第40番 ト短調、第41番 ハ長調 ジュピター」*
Disc 5:セレナード 第10番「グラン・パルティータ」**、シンフォニー ニ長調(ポストホルン・セレナードによる)
Disc 6:行進曲 第1番 ニ長調、同第2番 ニ長調、ポストホルン・セレナード K.320、ディヴェルティメント 第11番 ニ長調
Disc 7:協奏交響曲 変ホ長調 K.364、同 変ホ長調 K.297b*

【演奏】アバド指揮/ベルリン・フィル、カルロ・マリア・ジュリーニ(指揮:交響曲第39番、40、41番、協奏交響曲K.297b)*、ズービン・メータ(指揮:グラン・パルティータ)**
http://www.amazon.co.jp/Berliner-Philharmoniker-Play-Mozart/dp/B0042GNDNY/ref=cm_cr-mr-title

火曜日, 6月 28, 2011

クラシック音楽 聴きはじめ 7 シュワルツコップ

シュワルツコップの魅力
Icon: Elizabeth Schwarzkopf-Radiant Soprano

20世紀を代表する一人の偉大な女性歌手の集大成。その録音時期は30年におよびレパートリーの広さは前人未到。下記は全体のごく一部を記載したにすぎない。現役最後の頃、東京でヴォルフの深いライヴも聴いたが、「シュワルツコップ女史」とでも呼ぶべき風格がある一方、ときに可憐な表情に思わず引き込まれるような表現力豊かな魅力も湛えていた。バッハのカンタータ、モーツァルトからR.シュトラウスまでの歌曲、オペラの主要アリア、軽く艶やかなオペレッタなど内容の質量はこの価格では文句なし。ただし、輸入盤なので仕方はないけれど、32ページ・ブックレットは簡易、あまりに素っ気なく、はじめてのリスナーにはいささか不親切。
<主要内容>
【CD1】バッハ:カンタータ『もろびとよ、歓呼して神を迎えよ』 BWV51(全曲)他/録音:1950年10月、ロンドン(モノラル)他
【CD2】モーツァルト:歌曲集/pギーゼキング、ブレンデル/録音:1955年5月、ロンドン他
【CD3】モーツァルト:オペラアリア集/録音:1946年11月、ウィーン(モノラル)他
【CD4】シューベルト:歌曲集/pムーア/録音:1954年1月他
【CD5】メンデルスゾーン:「歌の翼に」他/pムーア/録音:1956年4月、ロンドン他
【CD6】ヴォルフ:歌曲集/pフルトヴェングラー/録音:1953年8月12日 ザルツブルク(ライヴ、モノラル)他
【CD7】リヒャルト・シュトラウス:歌曲集&オペラ/フィルハーモニア管弦楽団、マタチッチ指揮/録音:1954年10月、ロンドン(モノラル)他
【CD8】リヒャルト・シュトラウス:ばらの騎士』~第1幕、3幕/フィルハーモニア管弦楽団、カラヤン指揮/録音:1956年12月、ロンドン他
【CD9】ヨハン・シュトラウス2世:『こうもり』他/フィルハーモニア管弦楽団、カラヤン指揮/録音:1955年4月、ロンドン(モノラル)他
【CD10】リヒャルト・シュトラウス:『ばらの騎士』第2幕/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、カラヤン指揮/録音:1947年12月、ウィーン(モノラル)他
http://www.amazon.co.jp/Icon-Elizabeth-Schwarzkopf-Radiant-Soprano-Schwarzkopf/dp/B004HF0PAO/ref=cm_pdp_rev_itm_img_1

http://shokkou.blog53.fc2.com/blog-entry-200.html


かつて書いた文章

 シュワルツコップの魅力はドイツリートである。もちろん!しかし、オペラでの存在感も大きい。フルトヴェングラー、クレンペラー、セル、ベーム、カラヤンらは彼女の才能を極めて高く評価していた。オペレッタの洒脱な雰囲気も上質である。つまり、オールラウンドの歌い手である。そして、それは弛まぬ努力によって保たれていたことは有名である。

 引退近くの1970年に来日して、はじめてライヴでヴォルフの歌曲を聴き虜になった。それ以前からのファンだからもう40年近くになる。

 織工のリストマニア(シュワルツコップの項目)を今日久しぶりに更新した。国内での販売(現存盤)が減っていて正直寂しかった。海外ではしっかりと全集や初期の録音も出されているようだ。ライヴは本当に素晴らしかったし、その高潔な人柄も偲ばれる。海外で身近に接した多くのファンがいることは理解できる。むしろ、そうした比較では日本だって結構、根強く聴かれていると評価したほうがいいのかな。

 ヴォルフは好きだが、明るい曲も聴きたくなる。オペレッタの特集が気に入っている。




  

日曜日, 6月 19, 2011

テンシュテット3



テンシュテットのブルックナーの交響曲、以下は以前つくったリストです。
Symphony No.3
Bavarian Radio Symphony Orchestra (19'47/14'38/6'47/11'01) 4 NOV.1976 Munich
Symphony No.4
①BPO (20'37/17'03/10'12) 13,15,16 DEC. 1981 Philharmony Hall, Berlin
②BSO (20'08/17'29/9'49/21'15) 13 MAR. 1982 Symphony Hall, Boston
③LPO (20'57/17'51/9'58/21'50) 11 APR. 1984 Yuport Hall, Tokyo
Symphony No.7
①CSO (21'19/22'40/10'03/12'19) 31 MAY & 2 JUN. 1984 Orchestra Hall, Chicago
②LPO (19'44/21'21/9'38/11'39) 10 MAY 1984 Rotal Festival Hall, London
③Philadelphia Orchestra (21'01/22'55/9'51/11'52) 4 JAN.1985 Academy of Music, Philadelphia
④NYP 16 OCT.1986 Avery Fisher Hall, New York
Symphony No.8
①BSO (13'59/13'16/24'38/20'07) 20 DEC.1974 Symphony Hall, Boston
②NDR (14'46/13'45/26'08/21'11) 24 SEP.1979(?) Misic Hall, Hamburg
③BPO (14'43/13'30/25'57/21'37) 21 NOV.1981 Philharmony Hall, Berlin
④CSO (14'42/14'43/25'56/21'11) 3 DEC.1981 Orchestra Hall, Chicago
⑤LPO (14'16/14'00/26'06/21'04) 24,25,26 SEP. 1982 Abbey Road Studio, London
⑥Philadelphia Orchestra (15'54/14'42/27'49/22'10) 5 JAN.1989 Academy of Music, Philadelphia
これは以前に、テンシュテットとの出会いについて書いたものです。
テンシュテットのブルックナー交響曲第8番
いまは全くご無沙汰ながら、かってはNHKのFMで海外の音楽祭のエアー・チェックを楽しみにしていた。その最後が1981ー84年頃で九州へ転勤し、当時は東京に比べてライブでのコンサートが聴きにくくなったため、FMに一時回帰していたと思う。いまはライブにも全く出かけないし、FMも聴かない。もっぱらCDか過去に収録したテープをまわしている。
さて、過去カセットにとったテンシュテット/ベルリン・フィルのブルックナーの8番を聴いている(1981年11月21日ベルリンでのライブ)。遅い遅い演奏で、特に第3楽章のアダージョ後半の第2主題を奏するヴァイオリンの引っぱり方などは限界に挑んでいるかのような緩慢さである。しかし、そこに籠められるのはとても深い豊かな響きである。フルトヴェングラー、クナッパーツブッシュ、そしてチェリビダッケなどにも共通するが、遅いテンポの持続は、その少しの変化でも微妙な表情づけを可能とする。第4楽章も同様。速くなく(nicht schnell)どころではなく第3楽章の長い延長線が続く。フィナーレもコラール風の句の前後で若干、テンポが上がるが最後までほぼ巡航速度は維持される。フルトヴェングラーのようなアゴーギグにともなうクレッシェンドやディミニュエンドの多用はなく、使われる場合はかなり抑制的に(しかし、それゆえ効果的に)発動される。聴き終わってー深い感動。テンシュテットはやはり凄い。

テンシュテット2



上記は全集ですが、以下はマーラーの第6番について以前、書いたものです。 

マーラー 交響曲第6番

1991年11月、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールでのデジタル録音。6番について、マーラーは5番までの作品を聴いた理解者しか、その特質はわからないだろうと語ったとのことだが、3楽章まではそれ以前の作品との連続性も強いと感じるながら、第4楽章に入ると、古典的なソナタ形式に対するアンチテーゼの思いが横溢しているようだ。「形式」が崩れゆく有り様は、強い芳香を発する熟れすぎた果物のような感をもつ。ハンマーが破壊の象徴であれば、なおのことその感を倍加する。 

テンシュテットの特質である豊饒な音楽の拡散感がこの4楽章に実にマッチしている。しかし、それが「だれない」のは、音楽へののめり込み、集中力が少しも途切れないからだろう。交響曲という名称が付されながら、その実、「交響」の意味は複雑で多義的で、それは、かっての積木をキチッと組み上げていくような律儀な「形式美」ではなく、雪崩をうって積雪を吹き飛ばすような「崩壊美」に通じるように思う。第3楽章の美しいメロディに浸ったあと、音の雪崩が突然と起こり、それに慄然とする恐懼がここにある。 

テンシュテットには、そうした効果を狙ってタクトをとっているような「作為」がない。テクストを忠実に再現していく過程で、崩壊美は「自然」に現れると確信しているような運行である。こうした盤にはめったにお目にかかれない。稀代の演奏と言うべきだろう。 


マーラーのディスコグラフィーです。

 

最近、マーラーの1番を除く以下の選集がでました。以下は概要です。

テンシュテットの魅力は、 自由度の高さを感じさせる曲づくりのなか、流列のはっきりした音楽が豊かに奏でられる一方、それが時に大きく奔流する爽快感です。この「感じ」は20世紀初頭の巨匠時代を彷彿とさせる一方で、彼の演奏にはお仕着せがましさといったものが全くありません。虚心で素直に聴け、しかも聴衆に対して大きな包容力があります。旧東独出身、テンシュテットの特質は本選集でのいわゆる「ドイツ正統派」演目で如何なく発揮されていると思います。まずは、テンシュテットの歩んできた音楽航路を確認して興味が湧いたら、是非どうぞ!下記CDは既にすべて所有していますが、このプライスでまとめて入手できるなら文句なし、推奨します。 

<収録内容>

CD1:ベートーヴェン:交響曲第3番『英雄』、1991年9月26日、10月3日(ライヴ)、『プロメテウスの創造物』、序曲『コリオラン』、『エグモント』序曲、1984年5月11-12日、ロンドン・フィル  

CD2:ベートーヴェン:交響曲第6番『田園』、第8番、1985年9月15,16,19日、1986年3月27日、『フィデリオ』序曲、1984年5月11-12日、ロンドン・フィル

CD3:ブラームス:交響曲第1番、1983年9月21,22日、ドイツ・レクィエム 第1曲、第2曲、ロンドン・フィル

CD4:ブラームス:ドイツ・レクィエム 第3曲~終曲、1984年8月19,20,23-25日、運命の歌、1985年5月2日、ロンドン・フィル

CD5:ブルックナー:交響曲第4番『ロマンティック』(ハース、1881年版、1981年12月13,15,16日)、ベルリン・フィル

CD6:ブルックナー:交響曲第8番(ノーヴァク、1890年版)、1982年9月24-26日、ロンドン・フィル

CD7:マーラー:交響曲第1番『巨人』、シカゴ交響楽団、1990年5月31日-6月4日

CD8:シューマン:交響曲第3番『ライン』、1978年10月17-18日、交響曲第4番、ベルリン・フィル、1980年4月18-20,22日

CD9:R.シュトラウス:『ツァラトゥストラはかく語りき』、1989年3月、『ドン・ファン』、1986年9月、『死と変容』、1982年3月28,29日、ロンドン・フィル

CD10:ワーグナー:『ワルキューレ』~「ワルキューレの騎行」、「ヴォータンの別れと魔の炎の音楽」、『神々の黄昏』~「夜明けとジークフリートのラインの旅」、「ジークフリートの死と葬送行進曲」、『ラインの黄金』~「ワルハラへの神々の入場」、『ジークフリート』~「森のささやき」、1980年10月6,8,9日、ベルリン・フィル

CD11:ワーグナー:『タンホイザー』序曲、『リエンツィ』序曲、『ローエングリン』第1幕への前奏曲、第3幕への前奏曲、『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第1幕への前奏曲、1982年12月15日、1983年4月16,17日、ベルリン・フィル

CD12:メンデルスゾーン:交響曲第4番『イタリア』、1980年4月18-20,22日、シューベルト:交響曲第9番『グレート』、1983年4月21-22日、ベルリン・フィル

CD13:ムソルグスキー:交響詩『禿山の一夜』(リムスキー=コルサコフ編)、1990年5月10日、コダーイ:組曲『ハーリ・ヤーノシュ』、プロコフィエフ:組曲『キージェ中尉』、ロンドン・フィル、1983年9月22,23,26日

CD14:ベートーヴェン:『レオノーレ』序曲第3番、ロンドン・フィル、1984年5月11-12日、シューマン:4本のホルンのためのコンチェルトシュトゥック 、ベルリン・フィル、1978年10月17-18日、ドヴォルザーク:交響曲第9番『新世界より』、ベルリン・フィル、1984年3月14,15日

以下はブルックナーの第4番について以前書いたものです。

クラウス・テンシュテットは東独の指揮者(1926年メルセベルク生まれ)だったので、早くから頭角はあらわしつつも冷戦下「西側」へのデビューが遅れました。しかし、豊穣なボリューム感をもった音楽性には独自の良さがあります。ブルックナーは得意の演目です。 

当初は、フルトヴェングラー、クレンペラーに続く古式ゆかしい指揮者と思っていましたが、聴き込むうちになんとも素晴らしい音づくりは彼独自のものと感じるようになりました。音の流れ方が自然で、解釈に押しつけがましさや「けれんみ」が全くありません。その一方で時に、柔らかく、なんとも豊かな音の奔流が聴衆を大きく包み込みます。そのカタルシスには形容しがたい魅力があります。ブルックナーの4番は、こうしたサウンドイメージにぴったりですし、ベルリンフィルとの相性も良いと思います。数多の名演のある4番ですが、小生は最も好きな演奏の一つです。 

土曜日, 6月 18, 2011

テンシュテット「ツァラトゥストラはかく語りき」、「ドン・ファン」 LPO



以下は、最近、何度も聴いているものです。実に良い演奏です。


1.R.シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」作品30
2.R.シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」作品20 

ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
クラウス・テンシュテット指揮
録音:1)1989-3  2)1989-9  

もうひとつ。以前書いたドボルザークについて付記しておきます。 

テンシュテット ドヴォルザーク第9番  

「新世界」をかけるのはとても久しぶりの気がする。テンシュテットを聴きたくてなににするか暫し考え、手が伸びたのがこのCDだった。1984年3月14~15日ベルリンでの録音である。カラヤンが帝王としてベルリンに最も君臨していた時代にもかかわらず、テンシュテットは同時期に比較的多くの録音をベルリン・フィルと残している。ライヴェルの存在には人一倍厳しかったと言われるカラヤンがなぜそれを許容したのか、という疑問は残るが、東独出身でおそらくは自分とは全く違うタイプの演奏家であり、覇を競う相手とは考えていなかったのかも知れない。 

 たしかにカラヤン/ベルリン・フィルとは少しく趣きのことなった「新世界」である。ベルリン・フィルはとても伸び伸びと演じているように聞こえる。テンシュテットらしくオケの自由度の幅をとり、全体に鷹揚とした構えながら、要所要所では鋭角的なリズミックさを強調しつつメロディの丹念な彫刻はキチンと行っていく。木訥とした泥臭さをどこか遠くに感じさせながら、ベルリン・フィルのアンサンブルは申し分ない。弦と木管が前面にでて、全体にしなやかな感じをだしている。聴いて飽きのこない佳演だと思う。

以下はテンシュテットについての小生の推薦盤です。 

テンシュテットの名盤
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%86%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%AE%E5%90%8D%E7%9B%A4/lm/R1BC3KPL6YH0LS

金曜日, 4月 29, 2011

チェリビダッケ ブラームス

<<ブラームス:交響曲全集>>
交響曲 第1番 ハ短調 作品68(1)、1976年10月21日マンハイム
交響曲 第2番 ニ長調 作品73(2)、1975年 4月11日シュトゥットガルト 
交響曲 第3番 ヘ長調 作品90(3)、1976年11月19日シュトゥットガルト
交響曲 第4番 ホ短調 作品98(4)、1974年 3月23日ヴィスバーデン
ボーナスCD:ブラームス/交響曲第4番リハーサル (1974年収録)
シュトゥットガルト放送交響楽団 指揮:セルジュ・チェリビダッケ

 40年以上もクラシック音楽を聴いていると、いったいブラームスのシンフォニーは実演、LP以降の音楽媒体をつうじて何回耳にしたことか。聴くまえからある種の想定はあるのだが、それでも、久しぶりにチェリビダッケの全集を今日、一気に聴いていつになく感動した。
 トグロ渦巻く、粘着質の演奏という想定はそのとおりなのだが、今日は弱音のメロディの彫琢された美しさに嘆息し、またテンポの見事な動かし方に思わず身を乗り出し、1曲がおわるたびに、そのスケールの大きな構えにしばし瞠目するといったことであった。

 最近、下記のミュンシュも聴いて、その男性的な割り切りの良い雄雄しさにも大いに魅力を感じたが、チェリビダッケの底知れぬパッションは練習嫌いのミュンシュとは対極だろう。4番の第1楽章のリハーサルは、そこに臨場しているような緊張感があり、そのテンションの強烈な高さになんとも疲れる。シュトゥットガルト放送交響楽団メンバーはよくぞ付いていっているなあと思う。しかし、たとえばリズムについてのチェリビダッケの熱烈たる指示のあと、まるで熱いエスプレッソをカップに注ぐように、音楽の精気が確実に団員に満ちていくことがわかる。


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月曜日, 4月 25, 2011

ミケランジェリ


 アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(1920~95年)の選集。10枚でこの廉価である。かつてドビュッシー集(CD7)などは1枚で実に高価であったことを思うと隔世の感がある。高校生の頃、チェリビダッケとミケランジェリの協演がFMで流れ、伝説と幻の両巨匠の邂逅ということで大きな話題になったことを思い出す。録音は1941~90年と戦前・戦後の分水嶺をへて半世紀に跨っている。

 その演奏は、ドビュッシー、ショパン、シューマンなどにその特質がよく出ているが、パッショネイトな集中力と一音一音がキラキラと輝くような磨きぬいた独特なピアニズムに特色がある。ルビンシュタイン、フランソワ、ホロビッツ、ケンプなど、いずれも20世紀中後半にはこうした巨匠が犇(ひしめ)き各人、甲乙つけがたい名演を残した。ミケランジェリもまぎれもなくその一角を占める強烈な個性の完全主義者であり、本選集はその歴史的記録である。

<収録内容>
◆CD1:モーツァルト/ピアノ協奏曲第15番(1974年)、ピアノ四重奏曲変ホ長調(1972年)
◆CD2:ショパン/スケルツォ第2番(1985年)、バラード第1番(同左)、アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ(同左)、子守歌 変ニ長調(1962年)、ピアノ・ソナタ第2番(1968年)、マズルカop.59-3(1969年)、ワルツ 変ホ長調(遺作) (1962年)
◆CD3:シューマン/謝肉祭 op.9(1968年)、ウィーンの謝肉祭の道化 op.26(1973年)
◆CD4:ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第11番(1981年)、同第12番(1981年)、同第32番(1990年)
◆CD5:ブラームス/バラード op.10(1973年)、パガニーニの主題による変奏曲 op.35(1973年)
◆CD6:ドビュッシー/子供の領分(1968年)、『映像』第1集、第2集(1987年)、前奏曲集 第1巻から9曲(1977年)
◆CD7:バッハ/シャコンヌ[ブゾーニ編曲](1973年)、イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV 971(1943年)、スカルラッティ/7つのソナタ[K.96,29,11,159,322,9,27](1943,69年)、ガルッピ/プレスト 変ロ長調(1941年)、ソナタ第5番 ハ長調(1962年)
◆CD8:ショパン/スケルツォ第1番op.20(1990年)、幻想曲 op.49(1985年)、ワルツ op.34-2(1988年)、同op.34-1(1962年)、同op.69-1(同左)、マズルカop.68-2(1962年)、同op.69-4(1967年)、同op.41-4(1967年)、同op.33-1(同左)、同op.30-2(同左)、同op.67-2(1985年)、同op.33-4(1990年)
◆CD9:【ヴァチカン・ライヴ 1962年4月28日】シューマン/ピアノ協奏曲イ短調 op.54、リスト/死の舞踏 S.126、ベートーヴェン/『荘厳ミサ曲』から「グローリア」
◆CD10:シューマン/ピアノ協奏曲 op. 54、ニューヨーク・フィル、ミトロプーロス(指揮)(1948年)、フランク/交響的変奏曲(1949年)、グリーグ/ピアノ協奏曲イ短調 op.16(1942年)
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土曜日, 4月 16, 2011

ミュンシュ



 シャルル・ミュンシュは、ドイツ語読みではカール・ミュンヒ (Karl Münch)、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団で、フルトヴェングラーやワルターの下でコンサートマスターを務めていたことはよく知られている。弦楽器の使い方の巧みさ、その音色の澄んだ響きは、この時の自らの豊富な経験からか。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A5

 晩年のパリ管との関係、特にフランスものの秀演(上記はその代表作「幻想」など)があまりにも有名だが、ドイツ音楽の正統を継ぎ、かつ黄金時代は、手兵ボストン響との名コンビで全米はもとより世界で鳴らした。    
本選集ではこれに加えて、メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲では、ハイフェッツと、ブラームス/ピアノ協奏曲第2番ではルービンシュタインとの共演を聞ける。どの演奏も大筆で一気に揮毫するような迫力があるけれど、けっして大味ではなく全体の構成が自然でいささかも崩れていない。     
特に得意のブラームスの熱気は凄いし、普段あまり聞くことのないシューベルト/交響曲第2番なども実に楽しく飽きずに聴くことができる。


【収録内容】
CD1:メンデルスゾーン/交響曲第3番『スコットランド』、ヴァイオリン協奏曲ホ短調[v.ハイフェッツ]、華麗なるカプリッチョ ロ短調[p.ゲイリー・グラフマン](録音/1959年、1960年ステレオ)
CD2:同上/交響曲第4番『イタリア』、同第5番『宗教改革』、弦楽八重奏曲変ホ長調~スケルツォ(録音/1958年、1957年、1960年)
CD3:ブラームス/交響曲第1番、悲劇的序曲(録音/1956年、1955年)
CD4:同上/交響曲第2番、同第4番(録音/1955年、1958年)
CD5:シューベルト/交響曲第2番、ブラームス:ピアノ協奏曲第1番[p.ゲイリー・グラフマン](録音/1960年、1958年)
CD6:同上/交響曲第8番『未完成』、同第9番『グレート』(録音/1955年、1958年)
CD7:シューマン/交響曲第1番『春』、『マンフレッド』序曲(録音/1959年)
CD8:同上/『ゲノヴェーヴァ』序曲、ブラームス:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調[p.ルービンシュタイン](録音/1951年、1952年のみモノラル)



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金曜日, 3月 25, 2011

シノーポリ サロメ

 シノーポリで以下のサロメを聴いている。サロメの人格のみならず、音楽そのものの作り方が、美しく上品な面とおどろおどろしく妖艶な面を巧みに均衡、共存させている。その匠の演奏は見事の一言に尽きる。こういう演目でのシノーポリの分析力、構築力はなんとも凄い。

(いま聴いている演奏)HMV レビューから引用

シノーポリ/『サロメ』全曲

1990年、シノーポリがベルリン・ドイツ・オペラを指揮したライヴが待望の復活。主役サロメに同役のスペシャリスト、マルフィターノを向かえ、ヘロディアス役にリザネク、ヘロデ役にヒースターマン、ヨハナーン役にエステスと、きわめて充実したキャストも話題を呼んだものです。演出は、ユニテル製作のオペラ映画の監督としても知られているペトル・ヴァイグレです。

・R.シュトラウス:楽劇『サロメ』全曲

 キャサリン・マルフィターノ(S:サロメ)
 ホルスト・ヒースターマン(T:ヘロデ)
 レオニー・リザネク(M:ヘロディアス)
 サイモン・エステス(B:ヨハナーン)
 クレメンス・ビーバー(T:ナラボート)
 カミール・カバッソ(M:小姓)、他

 ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団
 ジュゼッペ・シノーポリ(指揮)

 演出:ペトル・ヴァイグレ
 美術:ヨゼフ・スヴォボダ
 衣装:ヨゼフ・イェリネク
 振付:ベルント・シンドウスキ
 
 収録:1990年4月 ベルリン・ドイツ・オペラ[ライヴ]

 収録時間:109分

(参考)あらすじ

【全1幕】
 時は西暦30年頃、舞台はイェルサレムのヘロデ王の宮殿。サロメは王妃ヘロディアスの娘で、ユダヤ王ヘロデは義父にあたります。このヘロデというユダヤ王は、サロメの実の父でもある兄を殺し、ヘロディアスを自らの妻としていました。
 宴の席で、ヘロデ王にいやらしい目つきで見つめられていたサロメは、満月に照らされたテラスに逃れてきました。すると、テラスの地下から不気味な声が聞こえます。ヘロデ王によって隠し井戸に幽閉されていた預言者ヨハナーンの声でした。
 この声に興味を持ったサロメは、若い衛兵隊長ナラボートに隠し井戸のフタを開けるよう命じます。王から禁じられているにもかかわらず、ナラボートはサロメの妖艶な美しさに心を奪われ、ヨハナーンを外に出してしまいました。
 しかし、井戸から出てきたヨハナーンはサロメの母ヘロディアスの近親婚の罪をとがめるだけで、サロメの誘いには目もくれません。サロメがくちづけを求めると、ヨハナーンは呪われよと言い捨て井戸の底へと戻っていきました。
 
 サロメのことを追ってヘロデ王がテラスに出てきて、その後を妻ヘロディアスが続きます。地下からはヨハナーンがヘロディアスを非難する声が聞こえてきますが、気にする妻を尻目にヘロデ王はその声に耳を傾けません。それどころか、ヘロデ王の目は常にサロメに注がれ、サロメに踊ってみせよと命じます。サロメは始めは断っていましたが、ヘロデ王に踊りをみせれば望みのものをやろうと言われると、サロメは「七つのヴェールの踊り」を披露しました。
 満足したヘロデ王が、望みは何だと尋ねると、サロメはヨハナーンの首がほしいと言い出します。その言葉に喜ぶ母ヘロディアス。それに対し、聖者を殺すことを恐れたヘロデ王はやめさせようと説得しますが、サロメの望みは変わりません。
 
 銀の皿の上にのせられたヨハナーンの首を持ち上げ、くちづけをするサロメ。その有様を見ていたヘロデ王は兵士達にサロメを殺すように命じたのでした。

【1】 R.シュトラウスの出世作
 
 それまで管弦楽曲や歌曲の分野、また、オペラハウスの指揮者として活躍していたR.シュトラウスは、ワーグナーに影響されて作曲した『グントラム』『火難』という2つのオペラの次に、この『サロメ』を発表しました。このオペラは初演から大きな反響を呼びます。
 このときR.シュトラウスは41才。その後、次々とオペラ史に残る作品を書き上げ、オペラ作曲家としての地位を築き上げます。
 
【2】 スキャンダラスな作品
 
 原作のオスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』は、フランス語で出版され、その後、ワイルドの同性愛者の手で英訳されましたが、その作品の不道徳さとワイルド自身のスキャンダルのせいもあって、イギリスではなかなか上演されませんでした。
 ドイツ語訳をオペラにしたR.シュトラウスの作品も同様に、当初予定されていたウィーンでの初演はできませんでした。
 当時、ウィーン国立歌劇場の音楽総監督だったマーラーが奔走したにもかかわらず、ウィーンで上演されたのは初演から10年以上もあとのことでした。

 
【3】 物議を醸すサロメの踊り
 
 オペラの中では、サロメが踊る「七つのヴェールの踊り」の場面が有名で、サロメ役のソプラノ歌手が裸になるほど過激な演出もあることから、初演以来100年経った現在でも物議を醸しています。
 例えば、2000年に新国立劇場でこのオペラが初演されたときは、スポーツ新聞にも取り上げられました。
 サロメは約10分間踊ったあとに長大なモノローグを歌わなければならず、サロメ役を演じきるのは至難の業です。
http://www.geocities.jp/wakaru_opera/salome.html

木曜日, 3月 10, 2011

ブルックナー~ドイツ的な重厚な響きを求めて

ブルックナー~ドイツ的な重厚な響きを求めて(リストマニア)

 これを作成してみて、なかなか面白かった。なるべく、各番で分散しつつ、かつ指揮者も多く紹介してみたいという<隠し味>で考えてみた。
 まず、バイエルンだが、多様な指揮者と共演しており、数々の名演を残していることがわかる。1,2はぼくが良く聴く演奏である。5では気鋭のナガノを掲載した。

1. ブルックナー:交響曲第0番 他 (BRUCKNER:SYMPHONIE D-MOLL) Doerr
"【バイエルンの響き1】ライトナーの0番、一歩踏み込んだ迫力のある佳演です。"

2. ブルックナー:交響曲第1番ハ短調 (Bruckner, Anton: Symphonie No. 1 (Linzer Fassung 1865/66))
"【バイエルンの響き2】端整ななかに初々しさもあるサバリッシュらしい1枚。"

3. ブルックナー:交響曲第3番 [Import]
"【バイエルンの響き3】クナッパーツブッシュの3番、★天下の名演。"

4. ブルックナー:交響曲第3番 クーベリック(ラファエル)
"【バイエルンの響き4】クーべリックの3番、★小生の推薦盤です。"

5. ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」(1874年第1稿) ナガノ(ケント)
"【バイエルンの響き5】ナガノの4番、今後が楽しみな逸材。"


 つぎはドレスデン。6のセルはザルツブルクのライヴ盤。7のブロムシュテットは4番のほか7番も良い。9のシノーポリは、このオーケストラと他番でもユニークな演奏を残している。10ではティーレマンを取り上げた。

6. ブルックナー:交響曲第3番 セル(ジョージ)
"【ドレスデンの響き1】セルの3番、セルの珍しい組み合わせのライヴ。"

7. ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」 ブロムシュテット(ヘルベルト)
"【ドレスデンの響き2】ブロムシュテットの4番、★小生の推薦盤です。"

8. ブルックナー:交響曲第5番 ヨッフム(オイゲン)
"【ドレスデンの響き3】ヨッフムの5番、★小生の推薦盤です。"

9. ブルックナー:交響曲第5番 シノーポリ(ジュゼッペ)
"【ドレスデンの響き4】シノーポリの5番、小生は好んで聴いています。"

10. ブルックナー:交響曲第8番ハ短調 WAB.108(ハース版) (Bruckner : Symphony No.8 / Christian Thielemann, Staatskapelle Dresden (2009 live)) [Import from Germany] [2 SACD Hybrid]
"【ドレスデンの響き5】ティ-レマンの8番、今後が楽しみな逸材。"



 ミュンヘンも名演の宝庫。ケンペも渋いけれどファンも多い。あとはどれも名演の誉れの高いものが並ぶ。

11. ブルックナー:交響曲第5番変ロ長調 ケンペ(ルドルフ)
"【ミュンヘンの響き1】ケンペの5番、この組み合わせでは外れがありません。"

12. ブルックナー:交響曲第6番 ミュンヘン・フィル ヴァント(ギュンター)
"【ミュンヘンの響き2】ヴァントの6番、地味ながら珠玉の1枚。"

13. ブルックナー:交響曲第7番(ノヴァク版) ヨッフム指揮ミュンヘンフィル
"【ミュンヘンの響き3】ヨッフム(2)の7番、ヨッフムの不動の解釈。"

14. ブルックナー:交響曲第8番 クナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィル
"【ミュンヘンの響き4】クナッパーツブッシュ(2)の8番、★天下の名演。"

15. ブルックナー:交響曲第8番ハ短調(ノヴァーク版) チェリビダッケ(セルジュ)
"【ミュンヘンの響き5】チェリビダッケの8番、★小生の推薦盤です。 "

16. Symphony 1 Anton Bruckner
"【ライプツィヒの響き1】ノイマンの1番、★小生の推薦盤です。 "

17. Bruckner: Symphony No 8 Anton Bruckner
"【ライプツィヒの響き2】ブロムシュテット(2)の8番、安定した見事な演奏。"

18. ヘルマン・アーベントロートの芸術(7枚組)
"【ライプツィヒの響き3】アーベントロートの9番、ほかにマズアの名演もあります。"

19. ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」 シュタイン(ホルスト)
"【バンベルク交響楽団】 シュタイン(ホルスト)の4番"

20. ブルックナー:交響曲第8番(DVD) ヨッフム(指揮) バンベルク交響楽団
"【バンベルク交響楽団】ヨッフム(3)の8番<DVD>"


21. ブルックナー:交響曲第3番&第4番「ロマンティック」 ヴァント(ギュンター)
"【ケルン放送交響楽団】ヴァント(2)の3&4番、、★小生の推薦盤です。 "

22. ブルックナー:交響曲第7番 ( Bruckner : Sinfonie Nr. 7 E-Dur / Bertini )
"【ケルン放送交響楽団】ベルティーニの7番、一時はとても人気がありました。"

23. ブルックナー:交響曲第3番ニ短調 (1873年第1稿) ( Bruckner : Symphony No.3 / Norrington, RSO Stuttgart (2007 Live)) [Import Germany]
"【シュトゥットガルト放送交響楽団】ノリントンの3番"

24. ブルックナー : 交響曲 第7,8,9番 シュトゥットガルト放送交響楽団
"【シュトゥットガルト放送交響楽団】チェリビダッケ(2)の後期3曲"

25. ブルックナー:交響曲第9番 スクロヴァチェフスキ(スタニスラフ)
"【ザールブリュッケン放送交響楽団】スクロヴァチェフスキの9番、まだまだオーケストラ、指揮者とも種々ありますが、中締めはスクロヴァチェフスキで・・・。全体は 07/12/22 以来の改訂です。"

土曜日, 2月 26, 2011

ヤニック・ネゼ・セガン マーラー第2番「復活」





 今日、マーラーの2番をヤニック・ネゼ=セガン(Yannick Nézet-Séguin、1975年 - )で聴く。新進気鋭の若手ながら、深く見事な響きをもった英気あふれるマーラー像に感心した。NHK-FM放送の録音記録は以下のとおり。

マーラー「交響曲 第2番 ハ短調“復活”」

(1時間26分00秒)

(ソプラノ)カリーナ・ゴーギャン、(メゾ・ソプラノ)スーザン・プラッツ、(合唱)グラン・モントリオール・メトロポリタン合唱団
(指揮)ヤニック・ネゼ・セガン、(管弦楽)グラン・モントリオール・メトロポリタン管弦楽団
      
~カナダ・モントリオール サル・ウィルフリッド・ペルティエで収録~<2010/9/16>
http://shokkou.blog53.fc2.com/

 彼はブルックナーも後期3曲をすでにリリースしている。これを聴くのも楽しみである。



http://www.hmv.co.jp/product/detail/2767621



http://www.hmv.co.jp/product/detail/3723119



http://www.hmv.co.jp/product/detail/2534575


(参考) プロフィール
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A4%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%8D%E3%82%BC%EF%BC%9D%E3%82%BB%E3%82%AC%E3%83%B3

金曜日, 2月 11, 2011

ユリア・フィッシャー


 最近、ユリア・フィッシャーの演奏を聴いて驚いた。こうした若者がスーとでてくるところが衝撃であり、また醍醐味でもある。クラシック音楽の世界でも、一定の間隔をおいて時代の寵児というような人が登場する。

 このブログでも「クラシック音楽の危機」というのを書いているが、ユリア・フィッシャーはもしかするとそれを変えてくれるような逸材ではないかと直観する。

 8回のコンクール優勝はヴァイオリン5回、ピアノ3回というのだから恐れ入る。どちらかに命をかけているライヴァル達はやってられないと思うのではないか。かつてショルティは、ピアニストとしても超一流だったし、ミュンシュもコンサートマスターをやったヴァイオリニストだった。でも、この弱冠27才の才媛は、そのどちらもOK。セルも多彩で若くして音楽大学で教鞭をとったが、ユリア・フィッシャーもすでに教授である。しかも軽々とこれをやってのけている印象がある。アルゲリッチも若い頃、そうした雰囲気があった。でもヴァイオリニストでは、どうか?ムター以来かな。なかなか比肩する先行者がいまは思いつかない。これからの成長が大いに楽しみである。

【以下はレビュー】
 1983年ミュンヘンで生まれのユリア・フィッシャーの2005~2007年(22~24才)の録音。恐ろしく弓さばきが軽やかで自然体の演奏。その一方、全体から受ける印象は、これが新進ヴァイオリストの演奏かと疑うほどバランスのとれた見事な出来映えである。巷間言われているように、「天才」肌なんだろうなとリスナーは実感するだろう。ただ「巧い」だけではない。フィッシャーはこのアルバムで、現代的モーツァルト演奏への新たな試みを意欲的に行っているようにも思う。それは、ヴィオラとの協奏交響曲や2つのヴァイオリンのためのコンチェルトーネなどで特に感じるが、管弦楽、室内楽といったジャンルを全く意識させない共演者との融合感、一体化があることだ。ともすれば、協奏を「競奏」的に捉える古い録音ばかりを普段聴いている小生には実に新鮮に感じる演奏スタイルである。オランダ室内管弦楽団はそうした点で良きパートナーだろうが、できればもう一歩、サウンドの洗練された名門オケのバックで聴きたいという我儘もある。

(収録情報)
CD1:協奏曲第1番変ロ長調 K.207、第2番ニ長調 K.211、第5番イ長調 K.219『トルコ風』
CD2:第3番ト長調 K.216、第4番ニ長調 K.218、ヴァイオリンと管弦楽のためのアダージョ ホ長調 K.261、ヴァイオリンと管弦楽のためのロンド 変ロ長調 K.269
CD3:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲変ホ長調 K.364、ヴァイオリンと管弦楽のためのロンド ハ長調 K.373、2つのヴァイオリンのためのコンチェルトーネ ハ長調 K.190
【演奏】ヤコフ・クライツベルク(指揮)オランダ室内管弦楽団、ゴルダン・ニコリッチ(ヴァイオリン&ヴィオラ)、ピーテル=ヤン・ベルダー(チェンバロ)/レコーディング風景DVD付
http://www.amazon.co.jp/Violin-Concertos-Mozart/dp/B004DIPKZ0/ref=cm_cr-mr-img

(参考)以下はHMVからの引用

モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集
ユリア・フィッシャー
クライツベルク&オランダ室内管
DVD付き!

ドイツの生んだ天才ヴァイオリニスト、ユリア・フィッシャーによるモーツァルトのヴァイオリン協奏曲アルバムをまとめて全集にしたセットの登場。通常のCDプレーヤーでも優秀な音質が味わえるほか、SACDプレーヤーではマルチチャンネル音声も再生可能なハイブリッド・タイプで、しかもDVDが付属するというコストパフォーマンス抜群の全集です。

【ドイツの天才ヴァイオリニスト】
ピアニストの母と数学者の父のもとに生まれたユリア・フィッシャーは、参加した8つのコンクールすべてに優勝し、さらに驚くべきことに、そのうち3つはピアノ部門だったという驚きの才能の持ち主。

【軽やかで美しい演奏】
このモーツァルトでも、フィッシャーのソロは軽やかに舞うように美しい見事なもの。指揮のクライツベルクも、表情豊かで典雅なオケの響きを巧みにコントロールしてバランスをとり、ソロと密接に絡み合う対話的な進行をも実現、若き日のモーツァルトにふさわしい晴れやかな爽快感の中にも意味深い音楽を聴かせることに成功しています。
 また第1番と第2番では、通奏低音としてチェンバロが登場しますが、演奏はなんと平均律全曲やスカルラッティ全集などの名盤もあるベルダーが担当しており、繊細な彩りを添えているのが印象的です。

【注目のカデンツァ】
フィッシャーとクライツベルクの相性の良さはカデンツァを分担して完成させているところにも感じられます。多くはフィッシャー自身によるものですが、クライツベルクが書いたものもいくつかあり、しかもそれらがモーツァルトの様式にふさわしい華麗さを示しながらも違和感無く曲に溶け込み、大きな聴きどころを形成しているあたりはさすがというほかありません。

【ユリア・フィッシャー】
若くしてすでに「21世紀を代表するヴァイオリニストの一人!」と称されていたユリア・フィッシャーは、スロヴァキア出身のピアニストの母、旧東ドイツ出身の数学者の父のもと、1983年にミュンヘンで生まれました。3歳で母からピアノを習い始め、まもなくヴァイオリンに転向。アウグスブルクのモーツァルト音楽院でヴァイオリンを学び始めるや、彼女の人生にとってヴァイオリンはかけがえの無い大切なものとなります。
 その後ミュンヘン音楽大学で名教師アナ・チュマチェンコに師事(今ではこの母校で彼女自身が教鞭をとっており、ドイツの最も若いヴァイオリン教授として名を馳せています)。1995年、11歳の時にユーディ・メニューイン国際コンクールで優勝したほか、数々のコンクールでの優勝を重ね、その後は世界各地のオーケストラ、指揮者たちと共演しています。
 2004年にペンタトーンと専属契約を結び、8枚のアルバムをリリース。ペンタトーンでのデビュー盤となったハチャトリアン、プロコフィエフ、グラズノフの協奏曲集はドイツでのクラシック・チャート5位にチャートイン、グラモフォン・マガジンのエディターズ・チョイスでも取り上げられました。デビュー盤に続いてリリースされたバッハ:無伴奏、モーツァルト:協奏曲、チャイコフスキー:協奏曲、ブラームス:協奏曲の録音も同様に高い評価を獲得。
 2008年12月にはデッカからバッハのヴァイオリン協奏曲集をリリースして、同曲集のアルバムで最高の売上を記録するなど話題になりました。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/3976834