リヒター/ミュンヘン・バッハ管弦楽団&合唱団の歴史的名盤。歌手は、エヴァンゲリスト:ヘフリガー(テノール)、イエス:プライ(バリトン)、ペテロ、ピラト:キート・エンゲン(バス)、イヴリン・リアー(ソプラノ)、ヘルタ・テッパー(アルト)。1964年2月ミュンヘンにて収録。
1969年、日本でのこのメンバーによる公演があった。マタイもヨハネもロ短調ミサも集中的に演奏された一大ページェントだったが、本曲は5月4日一度だけ取り上げられ、エヴァンゲリスト:ヘフリガー、イエスは、バリトンではなくキート・エンゲン(バス)が担当した。この公演自体がいまだに語り草になっているが、この5年前に収録された本盤はリヒターの厳しくも神々しいバッハ解釈を完璧に表現したものとして当時、大きな話題となった(レコードも3枚組で6,600円と実に高価だった)。
本曲は、聖書の引用が多く、エヴァンゲリスト(福音朗読者)の役割がとりわけ大きいが、エルンスト・ヘフリガーは規範的な第一人者。イエスは若きヘルマン・プライが力演、全篇の合唱もダイナミックで劇的な迫力に富む。リヒターという不世出の敬虔なバッハ使徒が全力を注いだ記録という意味からも、本盤は今後も歴史的名盤の地位をけっして失わないだろう。
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