月曜日, 8月 05, 2024

神話と音楽 ベレロポン(ベレロポンテス、ベレロフォン)

 『ベレロフォン』全曲 ルセ&レ・タラン・リリク、オヴィティ、ペリューシュ、他(2010 ステレオ)(2CD)


【以下は引用】

リュリ生涯随一の大成功作『ベレロフォン』
ルセの完璧無比な復活蘇演が登場!


ジャン=バティスト・リュリは、1670、1680年代におよそ14のオペラ(トラジェディ・リリク、抒情悲劇)を書いています。その中でも特に初演当時大成功を収めたものが、1679年に初演されたこの『ベレロフォン』でした。1月31日に初演されるや爆発的人気となり、実に9ヶ月もの間上演が続いたといいます。さらにリュリ自身や第三者の改編を受けながら何度もリバイバルされ、最後の上演は、フランス革命も遠くない1773年というから驚きます。
ところが、1987年の『アティス』に端を発するリュリ再評価の潮流でも『ベレロフォン』は長いこと放置され、ようやく2010年になって演奏会形式上演で取り上げたのがクリストフ・ルセでした。ルセは、まず7月にボーヌで演奏、さらに12月にパリとヴェルサイユ、年が明けた2011年1月にウィーンで『ベレロフォン』を上演、いずれも大絶賛されました。このCDには、パリのシテ・ドゥ・ラ・ミュージックでの演奏が収録されています。
ベレロフォンとは、ギリシャ神話に登場するベレロポン(ベレロポンテス)のこと。彼はペガサスを駆って怪物キマイラ(キメラ)を退治した人物として知られています。それよりも前、彼は誤って兄弟を殺してしまったことから故郷コリントスを去り、ティリンスのプロイテス王の元に身を寄せていました。ところがその王妃ステネボイアがベレロポンに言い寄ってきます。彼が彼女を拒絶すると、怒り狂ったステネボイアは、ベレロポンに誘惑されたと虚偽の告発をし、ベレロポンを彼女の父リュキア王イオバテスの王宮へと向かわせます。しかしベレロポンはここでキマイラ退治を成功、イオバテスの娘ピロノエと結婚します。なおベレロポンはポセイドンの息子であるとされています。
『ベレロフォン』の大成功は、リュリの優れた音楽はもちろんですが、台本がたいへん優れていたことも大きな理由です。トマ・コルネイユはピエール・コルネイユの弟で、彼自身劇作家として大家でした。『ベレロフォン』は、嫉妬深い王女の横恋慕と挫折が軸になっており、この2年前に初演され熱狂を巻き起こした、ジャン・ラシーヌの『フェードル』を受け継いでいます。真の主役はステノベと言ってよいでしょう。
記念すべき復活蘇演は素晴らしい出来栄えです。中でも鍵を握る嫉妬の王女ステノベを歌うイングリッド・ペリューシュの集中力ある歌は強烈、遂げられない愛に苦しむ女の悲しさを見事に描き切っています。ベレロフォンのシリル・オヴィティは、2000年にデビューしたばかりの若いフランスのテノール。ほのかな翳りのある声は常に不幸に晒されるベレロフォンにピタリ。フィロノエのセリーヌ・シェーンは、ラ・フォル・ジュルネに度々出演していたことで日本でもよく知られている美声ソプラノ。その他の歌手も実力派が揃えられています。もちろんルセの指揮は高貴にして力強く、圧倒的。各誌、新聞評で絶賛された名盤。(キングインターナショナル)

【収録情報】
・リュリ:『ベレロフォン』全曲

シリル・オヴィティ(T ベレロフォン)
イングリッド・ペリューシュ(S ステノベ)
セリーヌ・シェーン(S フィロノエ)
ジェニファー・ボルギ(Ms アルジ/パラス)
ジャン・テジャン(Bs アミソダル)
エフゲニ・アレクシエフ(Br ジョバト)、他
レ・タラン・リリク
クリストフ・ルセ(指揮)

録音時期:2010年12月
録音場所:パリ、シテ・ドゥ・ラ・ミュージック
録音方式:デジタル(ライヴ)




【リュリ『ベレロフォン』 簡単なあらすじ】

【プロローグ】
パルナッソス山。アポロがルイ14 世を讃え、「ベレロフォン」を上演すると告げる。

【第1幕】
リュキア王国の首都パトラ。アルゴス王の未亡人ステノベは、かつて相手にされなかった嫉妬から不正に糾弾しアルゴスから追放したベレロフォンを追ってパトラに来ている。だが、リュキア王ジョバトの王女フィロノエがベレロフォンを愛し、彼との結婚を望んでいると聞き、ステノベは嫉妬の炎を燃え上がらせる。彼女は、魔力を使えるアミソダルが自分を愛していることを利用して、結婚を妨害しようと思いつく。ジョバト王はフィロノエの結婚相手をベレロフォンと決める。

【第2幕】
婚約したフィロノエはベレロフォンと喜んでいる。ステノベが現れ、ベレロフォンに愛を訴えるが、彼は素気無くあしらう。ステノベの嫉妬は憎悪へ至り、アミソダルにベレロフォンの殺害を求める。アミソダルは、地獄から呼び出した三匹の怪物を合わせキマエラを創り上げる。

【第3幕】
キマエラが暴れ回り国は荒廃している。ベレロフォンはキマイラに立ち向かおうと決意するが、神託は、キマエラを殺すのはネプチューンの息子で、その男が怪物退治の後、フィロノエと結婚することになる、告げる。恋人たちは悲しむ。

【第4幕】
高い山の頂。ステノベの愛を得られると喜ぶアミソダルだったが、そこに彼女からベレロフォンを殺さないでほしいとの報せが届くと、なおのことベレロフォンを殺そうと考える。フィロノエとの結婚の望みが絶たれ悲しむベレロフォンは、絶望の中、キマエラと戦おうとやって来る。そこに知の神パラスが現れ、彼に天を駆ける馬ペガサスを授ける。ベレロフォンはペガサスに跨り、天空を飛んでキマエラを三度の攻撃、ついにこれを倒すことに成功する。

【第5幕】
ジョバト王は、ベレロフォンがネプチューンの息子だと判明したと告げ、フィロノエとの結婚を許す。一方、自らの非を認めたステノベは、毒を呷って自害する。人々がベレロフォンを讃える喜びの声で幕となる。(キングインターナショナル)

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