ブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番は、テンシュテット/ロンドン・フィル(録音:1990年)との名盤があり、本演奏は遡って18年前収録の旧盤。バックは、ケンペ/ロイヤル・フィルだが、このコンビでは、かのR.シュトラウス「アルプス交響曲」などの歴史的な秀演もあり実力は十分。
チョン・キョンファは1948年生まれ、この録音時点では24才になったばかりの「才媛」ということになるが、巨匠ケンペの重厚なバックを楯として、存分の力量をこれにぶつけているような迫力ある演奏。第1番の第3楽章の切り立った岩のような鋭く厳しい運行は大いなる驚き。女流ヴァイオリニストといった「属性」はここでは捨象する必要があろう。それは、スコットランド幻想曲の第4楽章も同様で若手とは思えない堂々たるマエストーソ(威厳)性がある。録音はさすがに古くなったが、この価格なら推奨にたる佳演である。
あまたの名演が鎬を削るヴァイオリン協奏曲Op.64。小生、ハイフェッツがいまも座右の1枚ながら、チョン・キョンファ盤はその迫力と抜群の切れで1980年代でもっとも注目される成果(録音:1981年7月)と思う。バックは、デュトワ/モントリオール交響楽団。その実力はストラヴィンスキー「火の鳥」の驚異的演奏で実証済み。
本盤に限らずチョン・キョンファの協奏曲には凡庸な演奏がない。どれも均一な出来で作品の奥行きが深く感じられる。メンデルスゾーンでも情感豊かながらセンチメンタルな弱さとは無縁。カデンツアの弓さばきなど見事としたいいようがない。この価格でチョン・キョンファの名演を入手できるのはお奨め。併録は、交響曲第4番「イタリア」と「フィンガルの洞窟」(ドホナーニ/ウィーン・フィル、録音時期:1978年)。
(参考)
【以下はHMVからの引用】
チョン・キョンファ、テンシュテット/ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
2曲ともチョン・キョンファ2度目の録音。ベートーヴェンは独特の歌いまわしと起伏の大きなつくり、強めのアクセントなど、感情移入の激しいチョン・キョンファならではの演奏。濃厚なロマンティシズムに覆われたブルッフとともに素晴らしい快演です。レコード芸術特選(EMI)
【収録情報】
・ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品61
・ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調 作品26
チョン・キョンファ(ヴァイオリン)
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(ベートーヴェン)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(ブルッフ)
クラウス・テンシュテット(指揮)
1989年ライヴ録音(ベートーヴェン)、1990年録音(ブルッフ)
【以下はHMVからの引用】
HMV レビュー
スタンダード・コレクション
R.シュトラウス、レスピーギ:ヴァイオリン・ソナタ
チョン・キョンファ、ツィマーマン
色彩感に富んだ和声が新鮮な印象を与えるR.シュトラウス、ブラームスを思わせるような重厚で情熱的なレスピーギ。あまり演奏される機会が多くない近代の2曲のヴァイオリン・ソナタを収めたアルバムです。
チョン・キョンファとツィマーマンがヨーロッパ各都市で頻繁にデュオ・コンサートを行っていたころの録音で、シャープでクリアーな響きを本領とするふたりのアンサンブルが作品の真価を十二分に明らかにしています。(ユニバーサルミュージック)
【収録情報】
・リヒャルト・シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 作品18
・レスピーギ:ヴァイオリン・ソナタ ロ短調
チョン・キョンファ(ヴァイオリン)
クリスティアン・ツィマーマン(ピアノ)
録音時期:1988年7月
録音場所:ビーレフェルト、ルドルフ=エトガー=ハレ大ホール
録音方式:デジタル(セッション)
【以下はHMVからの引用】
チョン・キョンファ/ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全曲
ブラームスの深い内容とチョンの真実の音色が合体した名演です。それまでブラームスの録音にだけは絶対に手をつけなかったチョンが、満を持して発表したのがこのヴァイオリン・ソナタ。甘さや媚びを音色面でも排除し、情緒を強調せず、常に凛とした姿勢で臨む彼女の姿勢はヴィルトゥオーゾそのものです。レコード芸術特選盤。(EMI)
ブラームス:
・ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調作品78『雨の歌』
・ヴァイオリン・ソナタ第2番イ長調作品100
・ヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調作品108
チョン・キョンファ(ヴァイオリン)
ペーター・フランクル(ピアノ)
録音:1995年(デジタル)
【以下はHMVからの引用】
Cesar Franck (1822 - 1890)
Sonata for Violin and Piano in A
1. Allegretto ben moderato [5:57]
2. Allegro- Quasi lento- Tempo 1 (Allegro) [8:13]
3. Recitativo - Fantasia (Ben moderato - Largamente - Molto vivace) [7:05]
4. Allegretto poco mosso [6:24]
Claude Debussy (1862 - 1918)
Sonata for Violin and Piano in G minor
1. Allegro vivo [4:43]
Kyung Wha Chung, Radu Lupu
2. Intermede (Fantasque et leger) [4:08]
Radu Lupu, Kyung Wha Chung
3. Finale (Tres anime) [4:15]
Kyung Wha Chung, Radu Lupu
Maurice Ravel (1875 - 1937)
Introduction and Allegro (1905) [10:28]
Claude Debussy (1862 - 1918)
Sonata for Flute, Viola, and Harp
1. Pastorale [5:57]
2. Interlude [5:03]
3. Finale [4:22]
Osian Ellis, Melos Ensemble