驚くべきことにトスカニーニは、今日の音楽鑑賞スタイルをあたかも予測していかのように早くから最先端の録音技術に関心をもっていた。1920年「指揮者稼業」のなかで、すでに50才を越えていたにもかかわらず、この時代、トスカニーニほど、数々の音源を残したプレイヤーはいない。
下記の録音記録が面白いが、いわゆるSP時代は片面約5分の収録が限度。なにを選び、どう聴かせるか。1枚で収めようと思えば5分の時限のなかで、メリハリをつけグッとくる見せ場(ならぬ聴かせ場)をつくらなければならない。トスカニーニは見事にそれをなし得た。SPから1950年代のLP時代へ。そこでトスカニーニが巨大な存在として登場する。
「ビクターで多くのクラシック音楽レコードを録音していた当時の世界的著名指揮者のアルトゥーロ・トスカニーニが、曲を分割せずにすむLPを強く推した・・・」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%89
LP録音は当時、革命的な時間概念の変更であった。SPの5~6倍、片面約25~30分の録音が可能となった。リスナーは楽章を跨がずにゆっくりと鑑賞することができるようになった。たとえば、ブラームス。標準的に2楽章が収まり、交響曲1曲がちょうど1枚収納ときわめて便利である。このLP時代に突入して以降、トスカニーニの演奏がかわる。テンポが緩慢になりメロディの磨きこみがより際立つ。晩年にあって演奏が遅くなったのはその年齢のせいとの説もあるけれど、むしろレコードを有力な音楽媒体とみて、最高の音楽を吹き込もうとしたのではないか、と感じる。
トスカニーニ 初期の録音
◆イルデブランド・ピツェッティ
ラ・ピザネル 03:39
ミラノ・スカラ座管弦楽団
録音: 21 December 1920
◆レスピーギ
リュートのための古風な舞曲とアリア 第1組曲 P. 109 - 第2楽章 ガイヤルダ 04:09
ミラノ・スカラ座管弦楽団
録音: 18 December 1920
◆モーツァルト
交響曲第39番 変ホ長調 K. 543 (抜粋) 08:12(3楽章04:20、4楽章03:52)
ミラノ・スカラ座管弦楽団
録音: 18 December 1920
◆ベートーヴェン
交響曲第5番 ハ短調 Op. 67 - 第3楽章 アレグロ - 第4楽章 アレグロ 09:07
ミラノ・スカラ座管弦楽団
録音: 24 December 1920
◆ベルリオーズ
ファウストの劫罰 Op. 24 - 第1部 ハンガリー行進曲 「ラコッツィー行進曲」 04:19
ミラノ・スカラ座管弦楽団
録音: 24 December 1920
◆ドニゼッティ
歌劇「ドン・パスクワーレ」 - 序曲 06:38
ミラノ・スカラ座管弦楽団
録音: 29-30 March 1921
◆メンデルスゾーン
劇音楽「真夏の夜の夢」 Op. 61 (抜粋) 09:06(04:41 04:25)
ミラノ・スカラ座管弦楽団
録音: 09 March 1921
◆エルマンノ・ヴォルフ=フェラーリ
歌劇「マドンナの宝石」 - 序曲 02:38
ミラノ・スカラ座管弦楽団
録音: 10 March 1921
◆ビゼー
アルルの女 組曲第2番(編曲:E. ギロー)03:07
ミラノ・スカラ座管弦楽団
録音: 11 March 1921
◆ベートーヴェン
交響曲第1番 ハ長調 Op. 21 - 第4楽章 アダージョ - アレグロ・モルト 04:41
ミラノ・スカラ座管弦楽団
録音: 30 March 1921
◆ビゼー
歌劇「カルメン」 - 第4幕 前奏曲 02:29
ミラノ・スカラ座管弦楽団
録音: 31 March 1921
◆マスネ
組曲第4番「絵のような風景」 - 第4楽章 ジプシーの祭り 04:35
ミラノ・スカラ座管弦楽団
録音: 03 November 1921
◆メンデルスゾーン
劇音楽「真夏の夜の夢」 Op. 61 (抜粋)10:11(04:42 05:29)
ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団
録音: January / March 1926
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