最近、ベートーヴェンの全集がこれでもかといった勢いでマーケットにでている。交響曲に関しても、3000円位を基準に前後で実に多様な選択肢が用意されており、今日リスナーはまことに贅沢な悩みをかかえていると言えよう。
交響曲に関して小生は、一貫してトスカニーニの新盤を座右の友としている。
しかし、自分が親しんできたのは、フルトヴェングラーを別格とすれば、やはりカラヤン/ベルリン・フィルであり、ベーム/ウィーン・フィルであった。
【Symphony Edition [Box set, Import]】
【Collectors Edition: Symphonies Nos. 1-9/5 Overture [Box set, CD, Collector's Edition, Import] 】
この組み合わせでベートーヴェンを、カラヤンは1970年に大阪で、ベームは1975年に東京でいずれもライヴで聞くことができた。さて、1960~70年代の3大巨匠といえば、これにバーンスタイン/ニューヨーク・フィルが加わっていた。バーンスタインも1970年の来日ライヴに接することができたが、演目はマーラーの9番だった。
さて、そのバーンスタインの交響曲全集を以下のボックス・セットで入手した。
【Scoprire Beethoven-I Capolavori [Import]】
これはコストパーフォーマンスからみて「掘り出し物」といってよい充実したラインナップで、協奏曲集も弦楽四重奏曲集もピアノ・ソナタ集もいずれも大いに楽しめるが、改めてバーンスタインを聴いて、やはり3大巨匠の名にふさわしいと今更ながらに思った。
カラヤンには、多くのリスナーを説き伏せるような「カラヤン流儀」といったものがあり、ベームにはメトロノームを内在したような堂々としたテンポ設定で、リスナーはじっくりと安心して身を委ねられるような安定感がある。
対して、バーンスタインのベートーヴェンの特色は、ダイナミックながらすっきりとした解釈にあり、意外にも過不足なく標準的な印象もある。しかし、全体を通じて解釈の一貫性があり、どの曲を聴いても爽やかな聴後感があるのはやはり只者ではない。けれんみなく素直な解釈によって、ベートーヴェンの素材をもっとも生(き)のままに味わうことができるように思う。良い意味で機能主義的なニューヨーク・フィルもいい。ここには、ベルリン・フィルにみるドイツ本流の、とかウィーン・フィルにみる伝統の誇り高きといったブランドイメージはなく、かわってベートーヴェンという名の偉大なコスモポリタニズムを感じさせる。これこそ、意図してバーンスタインが念頭においていたことであり、かつそのお手本は、トスカニーニにあり!ということかも知れない。
【Leonard Bernstein-Beethoven Symphonies [Box set, CD, Import]】
0 件のコメント:
コメントを投稿