◇ミトロプーロス
ミトロプーロスでは、かねてより Dimitri Mitropoulos (1896-1960) Conductor によって、その斬新さに魅力を感じている。別の手元の1枚から交響組曲「キージェ中尉」をかける。素晴らしい演奏に舌をまく。明るい色調のなか、ニューヨーク・フィルの奏者の実力をとことん引き出しながら、風刺の精神もピリッと利かせている。“才人中の才人”であったことは、この1曲からでも得心できるだろう。モノラルながら録音も聴きやすい。
◇テンシュテット
クラウス・テンシュテット/コダーイ:「ハーリ・ヤーノシュ」/プロコフィエフ:「キージェ中尉」/R.シュトラウス:「死と変容」 (tower.jp)
◇オーマンディ
ユージン・オーマンディ/オーマンディ・コンダクツ・プロコフィエフ (tower.jp)
◇セル
クリーヴランド管弦楽団/コダーイ:組曲「ハーリ・ヤーノシュ」; プロコフィエフ:組曲「キージェ中尉」 (tower.jp)
◇小澤征爾
小澤征爾/プロコフィエフ:交響曲第1番≪古典≫・第5番 組曲≪キージェ中尉≫ (tower.jp)
「キージェ中尉」は、風刺と諧謔のおとぎ話だが、現実にいま起きているロシアのウクライナ侵略でも、共通するものがある。権力者に従う側近たちの周章狼狽。嘘が嘘をよぶ、小さな嘘が次第に大きな嘘に拡大されていく偽りの連鎖。そして、フェイク・ニュースがいつのまにか「真実化」されていく恐怖。最後の辻褄あわせの当事者の死。死によって、すべてをなかったことにしてしまうというご都合主義的な結末。非条理が悲劇をうみ、その悲劇がくりかえされる、さらなる非条理。この曲にこめられているメッセージは深い。
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