火曜日, 5月 03, 2022

リートの女王 ~シュヴァルツコップ 名盤5点 Elisabeth Schwarzkopf












リート集

シュワルツコップ 女声歌曲のベスト規準盤 (amazon.co.jp)


考えぬかれた17の選曲と全体を通して音楽史も意識した連続性を特色とする歌曲集。シュワルツコップ女史がその順番をふくめ慎重に1曲毎に選択している姿が思い浮かぶ。
 たとえば「春へのあこがれ」ではボニー・バーバラのモーツァルト集、「糸を紡ぐグレートヒェン」ではアーメリングのシューベルト集、「献呈」ではグルベローヴァのR.シュトラウス集、「わが歌に翼ありせば」ではスーザン・グラハムのアーン集など各作曲家別には得意とする歌い手の名曲集があるが、シュワルツコップの圧倒的な実力は、 
モーツァルト:歌曲集 、 シューベルト:歌曲集 、 シューマン:歌曲集 、 R.シュトラウス:四つの最後の歌 他 など主要作曲家別の曲集をすべてリリースし今日にいたるまで規準盤になっていることである。本集は、シュワルツコップの至芸、ヴォルフこそ入っていないが文字通り女声歌曲のエッセンスであり、並ぶものなき往時の歌曲の女王の記録である。
 一つ一つの歌詞を慈しむような丁寧な詠法、また、「 わが母の教え給いし歌」(ドヴォルザーク)、「ただ憧れを知るもののみ」(チャイコフスキー)などその落ち着いた歌唱は作曲家の内奥に寄り添うように情感豊かである。ラスト・ソングは誰でも知っている「ダニー・ボーイ」、1968年10月、歌手としては最後期(ほかは1952〜65年)の録音。本当に心に染み透る歌である。なお、 
Icon: Elizabeth Schwarzkopf-Radiant Soprano も素晴らしい記録である。












R.シュトラウス

シュヴァルツコップ女史、先駆者として顕彰されるべき存在 (amazon.co.jp)


最近、シュヴァルツコップとグールドとの異色の組み合わせのR.シュトラウスの歌曲「オフェーリアの3つの歌」 Ophelia Lieder / Piano Sonata / Enoch Arden  を聴いた。1966年1月14日ニューヨークのスタジオでの収録だが、この前後、1965年9月1~3日にベルリンのグリューネヴァルト教会と1968年9月10~18日にロンドンのキングズウェイ・ホールで収録されたのが本盤である。前者は曲目1~9でオケはベルリン放送響、後者の10~16はロンドン響でいずれも名匠セルの指揮である。

以上でもわかるとおり、この時期、シュヴァルツコップは集中的にR.シュトラウスの歌曲を取り上げており、それがいまに至るまで天下の名盤として評価されている。小生はこの録音ののち1970年に彼女のリサイタルではじめてR.シュトラウスの歌曲にふれ、同年リーザ・デラ・カーサでも同じくR.シュトラウスを聴いた。これ以上ないニ大ディーヴァの競演だと思った。しかし、その後グルベロ―ヴァやジェシー・ノーマンなどにも接して、R.シュトラウス歌曲は歌手の持ち味の多様性を生かす懐の深さがあるといまは感じている。

しかし、R.シュトラウスやヴェルフの歌曲の魅力を、自分自身の高度な芸域をもって伝導した功績においてシュヴァルツコップは、その先駆者として顕彰されるべき存在であることは間違いない。歌詞の意味を噛んで含めるように丁寧に伝えていると感じるのは、事前の徹底した歌い込みがあるからなのだろう。いまも座右の1枚である。




















ヴォルフ
ヴォルフを聴きはじめたのは15、16歳の頃でした。きっかけは、ドイツリートの名花、エリザベート・シュワルツコップ(Elisabeth Schwarzkopf)のリサイタルです。事前の勉強で上野の東京文化会館の視聴室に通いました。そこでヴォルフ他のリートを集中してレコードで聴きました。訳もわからず聴いていただけで、当時はワグナーやブルックナーとヴォルフの関係など知る由もありませんでした。

 しかし、シュワルツコップの2回のコンサートには打たれるような感動がありました。彼女はヴォルフ歌手の第一人者との世評で、聴衆の関心も高く緊張感をもって耳を傾けました。
 1回目は、前半はシューベルト、ブラームス、シューマンを歌い、後半は全てヴォルフ。2回目は、前半はハイドン、グルック、モーツアルト、シューマンで、後半にヴォルフ、R.シュトラウスのプログラム・ビルディングでした。ちなみに私は聴いていませんが、東京でのもう一夜の演目(2月10日)は、前半はシューベルト、ワグナー、リスト、レーヴェ、メンデルスゾーンで、後半は2回目と同じく ヴォルフ(<スペイン歌曲集>から※)とR.シュトラウスでした。シュワルツコップの3回の東京公演の特色は、①3夜で一度も同じ歌を取り上げないこと、②必ずヴォルフが入っていること、③全体ではヴォルフの曲が最も多いことでした。












オペレッタ

織工Ⅲ: シュワルツコップ3   (shokkou3.blogspot.com)











総括

シュヴァルツコップ 30年の堂々たる軌跡 (amazon.co.jp)


20世紀を代表する一人の偉大な女性歌手の集大成。その録音時期は30年におよびレパートリーの広さは前人未到。下記は全体のごく一部を記載したにすぎない。現役最後の頃、東京でヴォルフの深いライヴも聴いたが、「シュヴァルツコップ女史」とでも呼ぶべき風格がある一方、ときに可憐な表情に思わず引き込まれるような表現力豊かな魅力も湛えていた。バッハのカンタータ、モーツァルトからR.シュトラウスまでの歌曲、オペラの主要アリア、軽く艶やかなオペレッタなど内容の質量はこの価格では文句なし。ただし、輸入盤なので仕方はないけれど、32ページ・ブックレットは簡易、あまりに素っ気なく、はじめてのリスナーにはいささか不親切。

<主要内容>
【CD1】バッハ:カンタータ『もろびとよ、歓呼して神を迎えよ』 BWV51(全曲)他/録音:1950年10月、ロンドン(モノラル)他
【CD2】モーツァルト:歌曲集/pギーゼキング、ブレンデル/録音:1955年5月、ロンドン他
【CD3】モーツァルト:オペラアリア集/録音:1946年11月、ウィーン(モノラル)他
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Le Nozze Di Figaro
【CD4】シューベルト:歌曲集/pムーア/録音:1954年1月他
【CD5】メンデルスゾーン:「歌の翼に」他/pムーア/録音:1956年4月、ロンドン他
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歌の翼に/珠玉の名歌集
【CD6】ヴォルフ:歌曲集/pフルトヴェングラー/録音:1953年8月12日 ザルツブルク(ライヴ、モノラル)他
【CD7】リヒャルト・シュトラウス:歌曲集&オペラ/フィルハーモニア管弦楽団、マタチッチ指揮/録音:1954年10月、ロンドン(モノラル)他
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R.シュトラウス:歌曲集≪クラシック・マスターズ≫  も参照
【CD8】リヒャルト・シュトラウス:『ばらの騎士』〜第1幕、3幕/フィルハーモニア管弦楽団、カラヤン指揮/録音:1956年12月、ロンドン他
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R.Strauss;Der Rosenkavalier
【CD9】ヨハン・シュトラウス2世:『こうもり』他/フィルハーモニア管弦楽団、カラヤン指揮/録音:1955年4月、ロンドン(モノラル)他
【CD10】リヒャルト・シュトラウス:『ばらの騎士』第2幕/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、カラヤン指揮/録音:1947年12月、ウィーン(モノラル)他

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Various: Stille Nacht   COMPLETE 78 RPM RECORDING   Wagner: Die Meistersinger   マーラー:交響曲第4番  も参照

(参考)

<グールド VS シュヴァルツコップ> オフェーリアの3つの歌 (amazon.co.jp)

〔上記ジャケット写真関連など)

エリーザベト・シュヴァルツコップ/クラシック・アーカイヴ・シリーズ~エリーザベト・シュヴァルツコップ (tower.jp)

エリーザベト・シュヴァルツコップ/Stille Nacht (Christmas Album) (tower.jp)

エリーザベト・シュヴァルツコップ/H.Wolf: Lieder (tower.jp)

エリーザベト・シュヴァルツコップ/Elisabeth Schwarzkopf in Strasbourg - 1960 (tower.jp)

エリーザベト・シュヴァルツコップ/恋とはどんなものかしら[モーツァルト:オペラ・アリア集] (tower.jp)

Recordings for German Radio - Elisabeth Schwarzkopf (tower.jp)

ジョン・プリッチャード/MOZART:OPERA ARIAS:ELISABETH SCHWARZKOPF(S)/HERBERT VON KARAJAN(cond)/JOSEF KRIPS(cond)/VPO/JOHN PRITCHARD(cond)/WARWICK BRAITHWAITE(cond)/PHILHARMONIA ORCHESTRA (tower.jp)

エリーザベト・シュヴァルツコップ/Elisabeth Schwarzkopf -Rare Recordings 1946-1954: Mozart, Beethoven, Verdi, etc / Josef Krips(cond), Herbert von Karajan(cond), VPO, Philharmonia Orchestra, etc (tower.jp)


👉 織工Ⅲ: 名盤5点 シリーズ (shokkou3.blogspot.com)


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