1929年、ベイヌムはアムステルダム・コンセルトヘボウ管へのデビューが大成功を収め、1931年にピエール・モントゥーの推薦とメンゲルベルクの招きで次席指揮者に、1938年からはメンゲルベルクとともに首席指揮者に就任した。
以上の経緯からは、モントゥーは、ベイヌムにとっていわば大恩人ともいえる存在である。
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そのモントゥーは、ベルリオーズなどフランスものの押しも押されもせぬ巨匠であり、ミュンシュへも大きな影響をあたえた。ベイヌムの幻想交響曲はモントゥー仕込みともいえるのかも知れないが、実はベイヌムの録音は早い。➀1943年9月、②1946年9月、③1951年9月の3つの音源が知られているが、小生は②、③を愛聴している。
ベイヌムの「幻想」、代表的な名盤 (amazon.co.jp)
緻密にして端正な「幻想」である。第1楽章では抑揚をつけた音づくりのなか、管弦楽の絶妙なバランス感覚が生きている。緩急の手綱さばきがよく、そのなかで各楽器が存分に己が役割を果たしている。第2楽章、ハープの導入後、主要動機の提示がなめらかなワルツに乗って展開される。過度な味付けはなく自然体の運行である。第3楽章、イングリッシュホルンとオーボエが誘導し、遅いテンポをとりながら弦楽器のハーモニーが控えめに被さってくる。弦楽器が「主」、木管・金管は「従」のいつもの関係を逆にしてオーケストラの基調の音色をかえている。ベイヌムの指示を完全に共有したコンセルトヘボウの機能的な一体感あればこそだろう。技巧的には全曲のもっとも聴かせどころかも知れない。第4楽章、前楽章最後で暗示的に登場するティンパニーなどの打楽器と金管楽器の“本格”出番の楽章なのだが、あまり大仰に前面には立てず、すっきりとまとめている。終楽章も必要なダイナミズムは意識しながらもバランス重視。フィナーレのみは抑制解除で全力疾走。
この“ベイヌム流スタイリッシュさ”、聴き終わったあとの充足感がことのほか大きく、厭きがこない。1951年録音の音質は劣るがいまだ「幻想」の代表的な名盤である。
織工Ⅲ 拾遺集 ベイヌムの芸術9 ベルリオーズ:幻想交響曲ほか (fc2.com)
織工Ⅲ: ベルリオーズ 幻想交響曲 (shokkou3.blogspot.com)
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(参考1) ベイヌムのベルリオーズの録音
・幻想交響曲 ➀1943年9月、②1946年9月、③1951年9月
・「ローマの謝肉祭」序曲 ➀1951年9月、②1956年9月
・歌劇「ベンヴェヌート・チェリーニ」序曲 1949年9月
・「ファウストの劫罰」より+「トロイ人」~トロイ人の行進曲
1946年3月(mono/recorded at Walthamstow Assembly Hall,
London)
・「ファウストの劫罰」より 1952年
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(参考2) 私的「幻想」10選
ベイヌム/コンセルトヘボウ管
デュトワ/モントリオール響
デイヴィス/コンセルトヘボウ管
カラヤン/ベルリン・フィル
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